東京五輪開会式

一条真也です。
23日の夜、東京オリンピックの開会式が国立競技場で行われました。いまNHKの生中継を観終わったばかりですが、とにかくIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長の挨拶が長いのには度肝を抜かれました。

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挨拶の長さにビックリ!(NHKより)

 

大会組織委員会橋本聖子会長とバッハ会長の挨拶は併せて9分の予定でしたが、なんと20分になったそうです。しかもバッハ会長は13分の独演会で、あまりの話の長さに疲れて座り込んだり、寝転がったりした各国選手が続出。バッハ会長の挨拶の後にも多くのプログラムが控えており、しかも自分の挨拶のすぐ後は天皇陛下の開会宣言だというのに、この人は「世界一空気を読まない人」ですね。「日本人」を「中国人」と言い間違えたのも、彼が天然ゆえにノー・プロブレムだったのかもしれません。

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登壇するバッハ会長と橋本会長(NHKより)

 

さて、新型コロナウイルスによるパンデミックの中、また4回目の緊急事態宣言が発令されている東京において強行開催される五輪にはまったく祝祭ムードが感じられません。「万人に祝福されない祭典」といった印象です。開会式の印象ですが、長嶋茂雄王貞治のONや大阪なおみの登場など、それなりのサプライズもありましたが、全体的にショボかったですね。とても、開会式だけで165億円もの大金を使ったようには見えません。とにかく、「バッハの挨拶が長かった」ことがまず思い浮かぶという結果となりました。完全な悪目立ちですが、「ある意味で、この人、すごいよ」と思ったのは、わたしだけではありますまい。では、開会式をざっと振り返ってみましょう。

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まもなく開会式 (NHKより)

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オープニング(NHKより)

冒頭、スタジアムではソーシャルディスタンスを保たなければいけない状況下でトレーニングに励んできたアスリートたちの姿を表現するパフォーマンスが行われました。振付は平原慎太郎率いる、ダンスカンパニーのOrganWorks。パフォーマンスの中心は、「看護師ボクサー」としてオリンピック出場を目指してきた津端ありさ選手。

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アスリートの葛藤を表現(NHKより) 

f:id:shins2m:20210723200914j:plainアスリートの葛藤を表現(NHKより)

 

新型コロナウィルスの感染拡大で世界最終予選が中止となり、東京オリンピック出場の夢が絶たれた選手でした。コロナ禍のアスリートたちを表現したパフォーマンスの後、アスリートたちの血管や筋肉、葛藤などの心情を象徴する赤い紐を使ったパフォーマンスが披露されます。これは一度、立ち止まったアスリートが、再び走り出すまでの過程を表しているとか。あまりピンときませんでしたが。

f:id:shins2m:20210723201339j:plain天皇陛下がご臨席(NHKより)

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なぜ、あなたが手を振るのか?(NHKより)

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国旗掲揚国歌独唱(NHKより)

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君が代」を独唱するMISIA(NHKより)

 

その後、場内のプレジデンシャルボックス(貴賓席)に天皇陛下がご臨席。続いて、菅義偉首相、小池百合子東京都知事、IOCのバッハ会長も登場。天皇陛下を差し置いて、バッハ会長がいきなりテレビカメラに向けて手を振ったのには仰天しました。フィールドには、日本国旗が入場。ベアラーはアスリートの三宅義信さん、高橋尚子さん、エッセンシャルワーカーの人々など。それから、国家独唱として、MISIAが「君が代」を独唱し、それに合わせて自衛隊による国旗掲揚が行われました。

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森山未來のダンス (NHKより)

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黙とうの時間(NHKより)

f:id:shins2m:20210723202340j:plain真矢ミキが登場!(NHKより)

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江戸消防記念会の「木遣り唄」(NHKより)

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大工パフォーマンス(NHKより)

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東京ゲゲゲイのダンス(NHKより)

 

それから、追悼式として、俳優・ダンサーの森山未來がコロナ犠牲者にささげるパフォーマンスを披露。コロナ禍で亡くなったすべての人に対し黙とうが行われましたが、あまりにも短い時間でした。黙とうが終わると、江戸時代に生まれた火消しの伝統を今に伝える江戸消防記念会の「木遣り唄」に合わせてフィールドには大工姿のパフォーマーたちが登場。背中に「東京」の文字を背負った大工の棟梁たちと共に、さまざまなジャンルのダンサーが登場。パフォーマンスには、棟梁役に分した真矢ミキ、タップダンサーの熊谷和徳のほか、アーティストグループの東京ゲゲゲイらも登場。伝統と現代が融合するダンスショーを披露。

f:id:shins2m:20210723203841j:plainギリシャ選手団の入場 (NHKより)

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ザンビア選手団の入場(NHKより)

次は、いよいよ選手入場です。指揮者の少女がタクトを振ると、競技の映像と音楽がシンクロしていきます。それはゲーム「ドラゴンクエスト」の序曲「ロトのテーマ」となり、その後、ファイナルファンタジー「勝利のファンファーレ」、テイルズオブシリーズ「スレイのテーマ~導師~」、モンスターハンター「英雄の証」などの日本を代表するゲーム音楽が流れます。その中を難民選手団も含めた、207の国と地域の選手入場へとつながります。まずスタジアムに入ってきたのは、オリンピック発祥の地であるギリシャ。それから最後の日本まで延々と入場行進が続きます。アスリートの入場行進は楽しめました。「こんな国があったのか」という発見や、各国のカラフルな衣装も良かったです。アフリカがこれからの世界のファッションをリードしていくということがよくわかりましたね。

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中国選手団の入場(NHKより)

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アメリカ選手団の入場(NHKより)

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日本選手団の入場(NHKより)

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拍手する天皇陛下菅首相(NHKより)

 

気になったのは、マスクを外して騒ぐ選手もいたことと、やはり人数が多いので、スタジアムが密になっていくことでした。それから、各国の選手団を先導するプラカードベアラーが持つプラカードに違和感がありました。マンガの「吹き出し」をモチーフとしたデザインだそうですが、変だと思いました。プラカードベアラーの衣装は、トロンプ=ルイユと呼ばれる「だまし絵」のようなデザインを採用。ペイントでポケットや襟を描き、スクリーントーン柄で影を表現していました。衣装デザインはファッションデザイナーの若林ケイジで、そのパターンは60種類に及ぶそうですが、まったくピンと来ませんでしたね。とにかく前半の演出は、ゲームとかマンガとかサブカルチャー色が強すぎた印象がありました。ロンドン五輪リオ五輪の豪華絢爛な演出に比べて、あまりにもチープでした。

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花火がリング状に上がる (NHKより)

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オリンピック宣誓のようす(NHKより)

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スタジアムに作られたエンブレム(NHKより)

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エンブレムが球体に・・・(NHKより)

f:id:shins2m:20210723224720j:plain1824台のドローン・アート(NHKより)

 

全選手が入場すると、花火がリング状に打ち上げられました。ステージに選手、審判、コーチの各代表が登壇。日本の主将・山県亮太と、副主将で卓球女子の石川佳純らがオリンピック憲章を誓いました。子どもたちが空を指差すと、1824台のドローンが上空で「東京2020オリンピック」のエンブレムを描きます。それは立体的に展開し、球体になり、徐々に地球の形へと変化していきます。そして、ジョン・レノンの「イマジン」が歌われました。映像でつながった世界の歌手が歌い継いでいくのですが、これは心に響きました。「やはり、オリンピックは平和の祭典であるべきだ」と思いました。スタジアムには、イスラエルパレスチナ、中国と台湾の選手たちが同じ場にいましたが、こういうのはオリンピックの良き側面です。

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スピーチする橋本会長(NHKより)

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スピーチするバッハ会長(NHKより)

 

それから、末広がりを意味する扇型のスピーチステージに、組織委員会の橋本会長と、IOCのバッハ会長が登壇。スピーチを行います。橋本会長は感極まって涙声でしたが、「前日に解任騒ぎがあって、自身の辞任も取り沙汰されたんだから、この人も大変だよなあ」と少し同情しました。まったく同情できなかったのは、くだんのバッハ会長で、とにかく挨拶が長すぎて、内容がまったく記憶に残っていません。つねづね、わたしは「挨拶が長いのは愚か者の証」だと考えているのですが、それを見事に証明してくれました。直後の天皇陛下の開会宣言が短かかったので、それがコントラストとなって、バッハ会長の挨拶の長さが世界にくっきりと示されました。

f:id:shins2m:20210723231347j:plain開会宣言をされる天皇陛下 (NHKより)

 

天皇陛下の開会宣言が短かったので、隣で悠然と座っていた菅首相が慌てて立ち上がる一幕もありました。菅首相としては、こういうシーンが全世界に流れてしまったことは痛恨の極みでしょうね。まあ、普段から皇室に敬意を払っていないと急に行動に移すのは難しいのでしょう。あと、直前のバッハ会長の挨拶が長過ぎて寝落ちしていた可能性も消せません。1964年の東京五輪の開会式では、観客含めて全員起立しているところへ天皇皇后両陛下が歩いて席に降りてこられたことが映像で確認できます。カメラは真実を写します。わたしは、この意味、「映像の力」というものを感じました。いずれにせよ、 こういう陛下に対して無礼きわまりない段取りになったのは、開会式のプログラムを考えた者にも重大な責任があります。儀式の専門家に相談せず、サブカルの差別集団などを頼るからこんなことになるのです。

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慌てて立ち上がる菅首相(NHKより)

 

それにしても、最高位のスポンサー企業の社長も、経団連経済同友会日本商工会議所経済三団体のトップも、あろうことか東京五輪招致時の首相にして1年延期を決定した当事者である安倍晋三氏でさえ参加を見合わせるという開会式に、コロナ禍に苦しむ国民を想いながら忸怩たる思いで臨席される天皇陛下の心中を拝察すると、わたしは深い悲しみと強い怒りを感じました。あと、ワクチンを1回しか接種されていない陛下が感染されたら、誰がどのように責任を取るつもりなのか!?

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開会宣言直後の花火(NHKより)
 

天皇陛下は、ご自身が東京五輪の名誉総裁ということもあり、開会宣言はされるけれども、大会の観戦は一切されないそうです。これは上皇陛下、秋篠宮殿下をはじめ、皇族方は一切観戦されないとか。国民の大半が反対している東京五輪で、しかも無観客が決定しているのに天皇陛下や皇族方が観戦している姿がテレビに映ったら国民はどう思うかを考慮されたのでしょうが、素晴らしい見識であると思います。また、陛下が「祝い」という言葉を「記念」に言い換えられたことにも安心いたしました。やはり、新型コロナウイルスの感染によって亡くなられた多くの方々、今も闘病しておられる方々、そして医療の現場で必死に闘っている医療従事者の方々、さらには東京五輪ありきの緊急事態宣言で苦境にある飲食店関係者などの心中を思えば、「祝い」という言葉はふさわしくないからです。開会宣言の直後、記念の花火が打ち上げられました。

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五輪旗が入場(NHKより)

 

それから、桃田賢斗ら世界のアスリートに運び込まれて五輪旗が入場。コロナ禍でも社会を支え続けたエッセンシャルワーカーたちに手渡されました。五輪旗が揚がると、平和の象徴である鳩の形のプロジェクションがフィールドに映し出され、特殊効果の鳩が国立競技場を舞います。そして、国連総会で決議された「オリンピック休戦」に基づき、世界にオリンピックとパラリンピック期間中の休戦を呼びかけていることが表現されました。

f:id:shins2m:20210723232720j:plain「スポーツピクトグラム」ショー(NHKより)

f:id:shins2m:20210723232942j:plain「スポーツピクトグラム」ショー(NHKより)

 

それから、「スポーツピクトグラム」をテーマにした映像とパフォーマンスが展開されました。「スポーツピクトグラム」とは、前回1964年の東京オリンピックにおいて、日本を訪れる世界の人々が言語を問わず理解できるように開発された各競技を表現した絵文字のような記号です。イントロダクションの映像は、スポーツピクトグラムの歴史の紹介から始まります。本の形式を通して、ピクトグラムが各大会でどのような変化を遂げたのかを説明。今大会から新しく登場した「動くピクトグラム」を表現するライブパフォーマンスへとつながっていきます。ピクトグラムに扮したパフォーマーたちが、今大会で行われる33競技50種類の図柄をユーモラスかつリズミカルに表現しましたが、これはユニークで素晴らしかったです。開会式で最も受けた演出かもしれません。
f:id:shins2m:20210723233305j:plain歌舞伎座から降臨 (NHKより)

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市川海老蔵でした(NHKより) 
 

会場では「東京2020オリンピック」の職員に扮した劇団ひとり、彼の上司に扮した荒川静香の登場する映像が流れます。劇団ひとりがコントロールセンターのスイッチを次々にオンにすると、明日から競技が行われる各会場に明かりが灯っていきます。さらにスイッチを押していくと、東京スカイツリーや浅草の浅草寺など、都内の名所にも明かりが灯ります。最後に歌舞伎座のスイッチをオンにしますが、舞台にライトがあたっても誰も出てきません。見かねた荒川静香が「ABZ」と記されたスイッチを入れると、国立競技場のステージにライトがあたり、歌舞伎俳優の市川海老蔵と、ピアニストの上原ひろみが登場。

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野村忠宏吉田沙保里の最強コンビ (NHKより) 

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ONと松井秀喜さん(NHKより)

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ON復活には感動!(NHKより) 

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最終走者は、あの人!(NHKより) 

 

次は、いよいよ聖火リレー野村忠宏さんと吉田沙保里さんが聖火とともに入場。長嶋茂雄さん、王貞治さん、松井秀喜さんに聖火が渡ります。松井さんはともかく、ONの復活にはちょっと感動しました。しかし、長嶋さんの病状に心を痛めた部分もあります。松井さんが長嶋さんを支えながらゆっくりと会場を進み、聖火は医療従事者へ。そこから、パラトライアスロンの土田和歌子選手へ。開会式のキャストたちが掲げるひまわりの道の中を進んでいき、東北3県の子どもたちへ。そして、ステージで待つ最後のランナーは、テニスの大坂なおみ選手でした。

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聖火を点火する大阪選手 (NHKより) 

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聖火を点火した大阪選手(NHKより) 

富士山をモチーフにしたステージが開くと、頂上に佐藤オオキがデザインした聖火台、そしてその聖火台へ向かう道が現れました。最終ランナーの大坂選手が聖火台に火を灯すと、聖火が太陽のようにステージを照らしていきます。会場全体がオレンジ色の光に包まれ、フィナーレの花火が盛大に打ち上げられました。ざっと以上が開会式の様子です。この開会式が行われるまでの一連のドタバタ劇はブログ「五輪の呪い・天皇の祝い」ブログ「開会式前日の解任劇」をお読みいただきたいと思いますが、中でも開閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」として統括役を務めていた小林賢太郎氏が過去にホロコーストユダヤ人大量虐殺)が題材のコントを発表していた事実が判明し、批判の広がりを受けて解任されたことに衝撃が走りました。ユダヤ人問題を甘く見ることはできません。ホロコーストに対する揶揄や言動は、国によっては厳罰に処されますし、ユダヤ人の影響力は世界最大の国であるアメリカにも及んでいます。問題はあまりにも重大です。

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富士山型のステージ (NHKより) 

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地獄の釜の蓋が開いたか?(NHKより) 

組織委員会の理事約20人は、開会式の中止か、簡素化への変更を同組織委・武藤敏郎事務総長に申し入れていたそうです。同理事らは21日に五輪・パラリンピックの開閉会式の楽曲を担当する小山田圭吾氏のいじめ問題について、22日には開閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」として統括役を務めていたた小林賢太郎氏のホロコーストを揶揄する発言について、臨時にオンラインでの会議を行いました。ある理事は「2つとも大問題。急きょ、会議を行うことになった。小林氏は開会式の演出全体の調整役と聞いている。それだけに、これまで通りの演出で開会式を行えば、世界中に小林氏の発言を認めたと取られてしまう」と危機感をあらわににしました。わたしもまったく同意見であり、今日の早朝にブログ「セレモニーは中止すべき!」を書いた次第です。

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ついに東京五輪が開幕! (NHKより) 

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これから何が起こるか?(NHKより) 

バッハ会長の長演説のおかげで時間が大幅に延びたとはいえ、開会式は無事に終了しました。しかし、なにしろ「呪われた東京五輪」ですので、閉会式が終わるまでは何が起こるかまったく予想がつきません。最後に、ここまでトラブルが続き、開会式の前日になって超弩級の大問題が発生した東京五輪のこれまでの流れを思い起こすにつれ、人智を超えた神や仏や天といったサムシング・グレートの存在を感じずにはいられません。このような呪われた五輪、誰も祝福しない祭典を強行開催した人物、平和の祭典たる五輪を政争の具に使った逆賊には必ずや天罰が下るでしょう。とまれ、五輪には日本人だけでなく世界中の人々が参加しています。これ以上おかしなトラブルが発生し、日本の恥が広く晒されないことを願うばかりです。

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7月24日の各紙朝刊

 

2021年7月24日 一条真也

94歳で叶えた夢

一条真也です。
今日から強行開催される東京五輪は、大会ビジョンとして「多様性と調和」を掲げています。多くの大会関係者が、ことごとくこのビジョンに違反して舞台から退場していったわけですが、熊本にお住まいの鮫島さんという読者の方が、まさに「多様性と調和」を思い起こさせる素晴らしいニュースを送ってくれました。非常に感動しました。

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ヤフーニュースより 

 

クーリエ・ジャポン」が配信した「『黒人だから着られなかった』 70年間思い続け、94歳で叶えたウェディングドレスの夢」という記事なのですが、「マーサ・タッカーは、クラシックな純白のウェディングドレスを着て結婚式を挙げることをいつも夢見ていた。しかし、彼女が結婚した1952年当時、人種を理由に彼女はブライダル洋品店に入ることができなかった。レースに覆われた、刺繍入りの白い長袖のドレス──。彼女が夢見ていたのは、そんなウェディングドレスだった」と書きだしています。


現在94歳のマーサ・タッカーは、「お店に入れないとわかっていたので、ウェディングドレスを買うなんて考えてもいませんでした」と当時を振り返ります。米アラバマ州バーミンガムに暮らす黒人女性の1人として、タッカーはドレスの試着が禁じられていたのです。その街に黒人が経営するブライダル洋品店はありませんでした。そして、白人が営む商店に黒人が入り、服を試着することは許されていませんでした。タッカーは「何かを買うにしても、地下で中古品を手にすることしかできなかったのです」と回想します。「ジム・クロウ法(黒人分離法)」により、白人と同じレストランで食事をしたり、同じ乗り物に乗ったりすることも禁じられていた頃でした。


タッカーとその夫は、牧師の家のリビングルームで慎ましやかな式を挙げました。伝統的な披露宴やドレスはありませんでした。それが心残りだったという彼女は、「ずっと悲しい思いを抱えてきました。私が着たいと思えば着られるべきだと思っていましたから」と語っています。しかし、結婚式から70年近く経った2021年、いまや4人の子供、11人の孫、18人のひ孫、1人の玄孫(!)を持つタッカーの夢がついに叶ったのです。きっかけは、タッカーが孫娘のアンジェラ・ストロジャー(46)とともに映画『星の王子 ニューヨークへ行く』(1988年)を見ていたときの会話でした。結婚式のシーンで、彼女は孫娘に「ずっとウェディングドレスを着たいと思っていたの。結婚したときからずっと、そう思い続けているわ」と言ったのです。


ストロジャーは、祖父母が耐えてきた人種差別やあざけりについては聞いてきました。しかし、その言葉を聞くまで、祖母が黒人だという理由だけでウェディングドレスを着られなかったことを知りませんでした。彼女は、「祖母がドレスを着られなかった理由はひどいものでした。ショックでしたし、ひとつやってやろうという気になりました」と言います。タッカーの口からウェディングドレスへの思いを聞いた後、彼女は祖母のドレスの試着のため、フーバーにあるブライダルストア「デビッズ・ブライダル」の予約を取りました。それから彼女は、店でのサプライズのため、何人かの家族を招待しました。ストロジャーは、「祖母に、夢は遅れることはあるけれど、叶わないわけではないと伝えたかったのです」と言いました。


ストロジャーは、祖母のことを「与え続ける人」だと表現します。タッカーはその人生を、選挙権の擁護に捧げてきました。1963年、彼女は投票所の職員になり、自分で最後と決めた2020年の選挙が終わるまで、誇りを持ってその役割を全うしたのです。子供たちを育てながら、彼女は家政婦として何年も働き、70年代半ばに退職するまで、高校の栄養科でも働きました。歌も教え、これまでいくつものゴスペルグループに属したそうです。いま彼女は、教会の聖歌隊の最年長メンバーです。また、彼女はスポーツの大ファンで、子供たちや孫たち、ひ孫たちのスポーツの試合を見逃したことはないそうです。特にバスケットボールが大好きで、NBAのステフィン・カリーがお気に入りの選手だといいます。最後に、ストロジャーは「彼女は私たちのヒーロー。彼女がしたいと言うことなら何でも、私たちは叶えたいと思っています」と語りました。

f:id:shins2m:20210723140256j:plainタッカーの94歳のウェディングドレス姿 

 

タッカーの94歳のウェディングドレス姿は美しく、威厳に満ちていました。この記事を読んで非常に感動したわたしは、わが社のブライダル部門の責任者たちにLINEで転送しました。すると、冠婚本部長を兼任しているわたしを支えてくれている副本部長の山下執行役員からは「事務所で泣きそうになりました。結婚は最高の平和です!またすべての人に平等に与えられる権利だと思います。コロナ禍で様々なスタイルを提案しながら、家族のカタチを残していきます!」という返信が、 松柏園ホテルの井口総支配人からは「少し話しは違いますが、今コロナで結婚が仕事上延期せざるを得なかっり、破談や鬱になった方もいらっしゃいます。我々が今お手伝いの出来ること、少しでも寄り添い、ご提案し新郎新婦様に、後悔させないように取り組んでいきたいと思います」という返信が届きました。

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ブライダル業は夢を叶える「こころの仕事」 

 

さらに、マリエールオークパイン小松の伊藤支配人からは「素敵で素晴らしい話でした。感動して涙が出ました」という返信が、マリエールオークパイン那覇の崎山支配人からは「沖縄は長寿祝いが盛んに行われており、主役が女性の場合、ドレスを着用してお祝いされるお客様も少なくありません。差別とは違いますが、ドレス着たかったけど、結婚当時は着れなかったお客様も居ると聞き、お勧めして恥ずかしながらも、夢だったドレスを来て頂き大変喜んで頂いております。お客様の気持ちを少しでも引き出して、思い出に残る1日を過ごして頂ける様に今後も頑張ってまいります」という返信が届きました。記事を教えて下さった鮫島さんは「こういう思いに携わるお仕事だからすごいと思います」とのメッセージを送って下さいましたが、自分でもそう思います。わたしは、結婚とは「最高の平和」であり、五輪などよりも1件1件の結婚式こそが真の平和の祭典であると考えています。ブライダル業は、お客様の夢を叶える「こころの仕事」だと思っています。素敵な記事を教えて下さった鮫島さんには心より感謝いたします。東京の空に描かれた五輪マークではなく、タッカーさんの花嫁姿の写真がわたしの心をゆたかにしてくれました。

 

 

2021年7月23日 一条真也

東京五輪とグリーフケア

一条真也です。
7月23日、ついに東京五輪が強行開催されます。まことに暗澹たる思いでありますが、時事通信社が配信した「『素直に喜べない』 五輪開幕、心境複雑 コロナ遺族、医療従事者ら」という記事が目に留まりました。

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ヤフーニュースより 

 

記事には、「新型コロナウイルスで家族を亡くした遺族や医療従事者らは、東京五輪を心待ちにする選手の心情に理解を示しつつ、『素直に喜べない』『医療崩壊が心配』と大会への不安をあらわにする」と書かれ、昨年、新型コロナで80代の父親を亡くした東京都内に住む50代の女性の「直後はあまり実感がなかったが、最近になって喪失感を感じる」というコメントなどを紹介しています。東京五輪について、その女性は「開催したいという気持ちも分かる。楽しいことをキャンセルするのは勇気がいる」と一定の理解は示すものの、「感染対策を徹底しても、静かに広まってしまうのがこの病気の怖いところ」と話しています。また、延期しないことに不満を募らせ、「父も非常識だと思うのでは」と厳しい口調で語ったそうです。

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ヤフーニュースより
 

CNNが配信した「コロナで親や祖父母を亡くした子ども、世界で150万人超 共同研究」という記事では、新型コロナウイルス感染症によって世界で100万人以上の子どもたちが親を亡くし、150万人以上が親や祖父母を含む養育者を亡くしていることが分かったことが紹介されています。記事には、「子どもが親や養育者を亡くすとその直後だけでなく、将来にかけて自分自身が病気になったり、虐待や貧困に苦しんだりするケースが多い。チームによれば、身心や感情面、性的な問題を抱える危険性も高く、その影響で自殺や未成年の妊娠、エイズを含む感染症や慢性疾患のリスクも大きくなる。祖父母が死亡して精神面、生活面、経済面の支援が途絶え、親戚や里親に預けられる子どもも多い。感染対策の行動制限により、子どもを保護する体制は最近大きく後退した。研究者らは、150万人の子どもがこうして親や養育者の死に直面する状況を『隠れたパンデミック』と呼び、社会全体としての支援を呼び掛けた」と書かれています。

f:id:shins2m:20210618092033j:plain6月18日の「天道塾」のようす

 

まさに、コロナ時代はグリーフ時代であり、世界的なグリーフケアが求められると言えます。そして、世界中の人々の巨大なグリーフをケアする1つの方法として、わたしは東京五輪の中止を提案しました。ブログ「五輪・グリーフケア・笑顔」で紹介した6月18日の「天道塾」において、わたしは「冠婚葬祭互助会という経済産業省の許認可事業の経営者でありながら、また業界団体の副会長および互助会政治連盟の副会長でもありながら、わたしが日本政府が強行開催しようとしている東京五輪の中止を訴えるのは何故か。その最大の理由は、じつは儀式とグリーフケアにあります」と述べました。

f:id:shins2m:20210618094221j:plainコロナ禍の中の悲しみについて 

 

コロナ禍で多くの方々が、本来は行われるはずだった儀式を断念しました。入学式、卒業式、成人式、入社式・・・日本人が断念した儀式は数知れません。日本中の祭礼も新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにことごとく中止されました。そして、冠婚葬祭。多くの新郎新婦が夢に描いていた結婚式や結婚披露宴を断念し、今も延期されている方々も少なくありません。葬儀においても、家族葬を希望しなくても結果的に参列者を制限して寂しい葬儀が多く生まれました。新型コロナウイルスの感染によって亡くなられた方に至っては看取りもできず、葬儀さえできませんでした。その悲しみは大きいものでした。

f:id:shins2m:20210625133046j:plainグリーフフル・ソサエティ

 

それは日本だけではなく、世界中がそうでした。人類全体が理不尽な悲嘆に包まれたのです。その遺族の方々の無念、披露宴を挙げられなかった新郎新婦の落胆、卒業式や成人式を体験できなかった若者たちの悲しみはどこに向かうのでしょうか。こんな状況で東京五輪が開催されれば、彼らの悲しみは増大するばかりです。逆に五輪が中止されれば、「パンデミックの状況下では、オリンピックでさえ開催できないのだから仕方ない」と少しはあきらめがつくのではないでしょうか。それは仇討ちや復讐とは違うけれども、負のグリーフケアではあります。

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五輪よ、悲嘆と無念を受け入れよ!
 

しかしながら、日本中、いや世界中の人々の巨大な悲嘆を汲み取る可能性が高いという一点において、わたしは東京五輪の強行開催に最後まで反対いたします。そして、「古代ギリシャの葬送儀式として生まれたオリンピックは、コロナで亡くなった世界中の犠牲者および中止されたあらゆる儀式・祭典関係者の悲嘆と無念を受け入れ、今回の東京大会は開催されないことを願います」と述べたのでした。今夜、開会式は行われる予定ですが、この未曾有の大混乱の中、最後まで何が起こるかわかりません。願わくば、愛する人を亡くした人たちの悲しみが少しでも軽くなりますように・・・・・・。

 

 

2021年7月23日 一条真也

開会式は中止すべき!

一条真也です。
この文章を書き始めたのは、7月23日の午前5時です。いろんな考えが頭をよぎり、一睡もできません。23日の0時ちょうどにアップしたブログ「東京五輪よ!」では、「何事も陽にとらえる」というわが信条に基づいて、この日に開会式を行う東京五輪が無事に終了することを願いましたが、その後、強い不安感がわたしを襲ってきました。

f:id:shins2m:20210723101424j:plainヤフーニュースより

東京オリンピックパラリンピック組織委員会は22日、23日の五輪開会式を予定通り実施するとの声明を発表しました。この日、開閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」として統括役を務めていた小林賢太郎氏が過去にホロコーストユダヤ人大量虐殺)を題材にしたコントを発表していたことが分かり、批判の広がりを受けて解任を発表。橋本聖子会長が式典の内容を見直しする考えを示していましたが、組織委員会は「本日、小林賢太郎氏を解任したことを踏まえ、改めて開会式の演出内容を精査しましたが、演出内容は様々な分野のクリエーターが検討を重ねて制作したものであり、小林氏が具体的に一人で演出を手掛けている個別の部分は無かったことを確認しました。開会式については、予定通り実施する方向で現在準備を進めています」とのコメントを発表しただけでした。

f:id:shins2m:20210723101440j:plainヤフーニュースより 

 

しかし、「スポーツ報知」配信の「組織委理事約20人 開会式の中止か簡素化を要望していた・・・武藤事務総長に記者会見で説明要望も開かれず」という記事によれば、組織委員会の理事約20人が、23日に行われる東京五輪開会式の中止か、簡素化への変更を同組織委・武藤敏郎事務総長に申し入れていたそうです。同理事らは21日に五輪・パラリンピックの開閉会式の楽曲を担当する小山田圭吾氏のいじめ問題について、22日には開閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」として統括役を務めていた小林賢太郎氏のホロコーストを揶揄する発言について、臨時にオンラインでの会議を行いました。ある理事は「2つとも大問題。急きょ、会議を行うことになった。小林氏は開会式の演出全体の調整役と聞いている。それだけに、これまで通りの演出で開会式を行えば、世界中に小林氏の発言を認めたと取られてしまう」と危機感をあらわにしました。

f:id:shins2m:20210723101456j:plainヤフーニュースより
 

そのため、小林氏が演出に一切関わってない開会式にするためには、中止にするか、各国・地域の選手の入場行進、聖火点火、開会宣言のシンプルなものにするしかないと会議に出席した理事全員が同意したとか。開会式の式典の変更については、国際オリンピック委員会(IOC)総会での承認が必要だという規約を理解した上で「時間が大幅に短くなるかもしれない。特に高額な放映権料を払っている米NBCからはクレームがあるかもしれないが、今回の問題の重要さを考えたら変更もやむなしの理解されるのではないか」と別の理事は話したそうです。

f:id:shins2m:20210723101512j:plain「スポーツ報知」より 

 

小林氏の解任問題について、多くの人がコメントを出しています。脳科学者の茂木健一郎氏は22日に自身のツイッターを更新し、英文と日本文で「コメディを文脈から切り離してこのように取り上げることに私は断固反対。小林賢太郎さんがどのようなクリエイターか、わかっているはず。著しくフェアでない。小林賢太郎さんのことは、絶対におかしい。ごく短時間の言葉尻をとらえて、小林さんのクリエイティヴの全体を(敢えて)見ようとしないひとたち、オリンピックに反対する立場から、それを炎上、拡大しようとするひとたちに対して、私は抗議します。小林さんのお仕事を全体として見るべき」と綴りました。

f:id:shins2m:20210723101527j:plain「スポーツ報知」より

 

また、22日に放送されたTBS系「ひるおび!」では、「公表された小林氏の謝罪文について、コメンテーターで出演した八代英輝弁護士が「私は小林さんの謝罪文は小山田(圭吾)さんの言い訳がましい謝罪文より、ずっと本人の気持ちが伝わってくる」とし、「もし、今回の事実がそうであるとしたら、多様性や価値観を共有する祭典の開会式や閉会式に関わる人選に、ふさわしいものではないというのは当然だとは思いますけど、小林さんが考えられていること、今、思われていることはよく伝わって来たなと思います」と語りました。

f:id:shins2m:20210723101546j:plain「スポーツ報知」より

 

さらに、22日に放送された日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」では、コメンテーターで出演した元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が「組織委員会も100%完璧に(人選を)チェックするっていうのは不可能ですよ。だから(問題が)発覚した時の対応が重要であって…」とまず話した上で、「僕は小山田(圭吾)さんに関しては、どう考えたって即時解任だと思っていたんですけど。絶対許されるような行為じゃないし、被害者への償いもないし。僕は小林さんに関してこそ、もっと、その後の活動とかを組織委が見てね、それでもダメだったら解任かも知れないけど、ワンクッション入れずにいきなり解任で…」と続けた上で「しかも言い訳がましく小林さんは『特定のパートでなく全体の調整だから』とか特定のパートじゃないから削除しなくてもいいみたいな言い訳の布石に使っているんじゃないのか?って。全体の調整なら削除しなければいけませんよね」と話しました。

f:id:shins2m:20210723102856j:plain「スポーツ報知」より
 

しかし、茂木氏・八代氏・橋下氏の意見がいかに国際社会の現実を見ない甘い考えかということが、22日に放送されたTBS系「ゴゴスマ~GOGO!Smile!」にコメンテーターで出演した元宮崎県知事でタレントの東国原英夫氏のコメントでわかります。東国原氏は、「結論から言うと、セレモニーの部分はカットして中止した方がいいと思いますね」と提案。小林氏が解任されたことについては「普通は辞任を勧めて辞任をさせるようにするのですが、とにかくスピード感を持って解任ですよね。(橋本聖子)会長もおっしゃっていたように、国際問題に発展する可能性がある。ユダヤ問題はあんまり甘く見ない方がいいですよ。ホロコーストに対する揶揄や言動は、国によっては厳罰に処される所もある」と問題があまりに重大だと訴えました。そしてセレモニーの中止を提案した理由を「国際問題としては障害者の方をいじめも大問題なのですが、それ以上に問題になるのがユダヤ人の問題。外交的に、問題の重要さ等々を判断されての解任だと思いますね。僕はこれをそのままセレモニーで流すのは、ちょっと危険じゃないかなと思っていますね」と説明しました。


ユダヤ教vsキリスト教vsイスラム教

 

わたしも、東国原氏の意見に賛成です。わたしは『ユダヤ教vsキリスト教vsイスラム教』(だいわ文庫)を書いたときにユダヤ問題について徹底的に調べましたが、この問題は絶対に甘く見ない方がいいです。ブログ『2016年の週刊文春』でも紹介したように、かつて「マルコポーロ事件」というものがありました。『週刊文春』から異動した花田編集長体制となった『マルコポーロ』1995年2月号(1月17日発売)に掲載された〈戦後世界史最大のタブー。ナチ「ガス室」はなかった。〉が、文藝春秋を揺るがす大問題へと発展しました。『2016年の週刊文春』の著者である柳澤健氏は、同書で「若手医師の西岡昌紀が独力で調べ上げて書いた記事の概略」として、「第二次世界大戦中にナチスドイツが採ったユダヤ人政策を弁護するつもりはまったくない。ドイツが罪のないユダヤ人を苦しめたことは明白な歴史的事実である」「しかし、ナチスユダヤ人を虐殺するためにガス室を作ったということには大きな疑問がある」と紹介しています。

 

また、柳澤氏は「ナチスユダヤ人を戦争中は労働力として使い、ドイツがソ連に勝利した暁には、ソ連領内に移住させるという計画を持っていた。強制収容所はそのために作られたものだ」「従って、右の計画と両立し得ない『ユダヤ人絶滅』をドイツ政府が計画、実行したことは一度もなかった」「ところがソ連戦線でドイツは敗退し、その結果、ユダヤ強制移住計画は頓挫してしまう」「戦争末期の混乱の中、収容所内の衛生状態が悪化して伝染病が蔓延し、多くのユダヤ人が死んだ」「戦後、収容所で病死したユダヤ人らの死体を撮影した連合軍は、病死者の死体を、ありもしないガス室の犠牲者であるかのように発表した――」と紹介しています。これに目をつけたのが、米国カリフォルニア州に本部を置くサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)でした。ホロコーストユダヤ人大量虐殺)の記録保存や反ユダヤ主義の監視を行い、世界中のユダヤ人の人権を守ろうとする団体です。ちなみに、今回の小林賢太郎氏の「ユダヤ人大量虐殺ごっこ」発言に対して猛烈に抗議したのも同団体です。



柳澤氏は、「SWCには、抗議文だけで済ますつもりなど毛頭なかった。『マルコポーロ』に広告を載せている企業に対して、ホロコーストを否定する文藝春秋への広告掲載を中止することを強く要請してきたのである。雑誌は広告が入らなければ存続できない。問答無用の実力行使である。日本の雑誌社が外国の組織から抗議を受けるのは極めて稀なケースだ。文春社内では『もし、全世界のユダヤ人の団体が日本大使館に石を投げたら、俺たちはどうやって責任をとればいいんだ?』と真剣に議論されたという証言もある」と述べています。事態の収拾を図るべく、文藝春秋はSWCに「1、当該号の店頭からの回収」「2、花田紀凱編集長の解任」「3、『マルコポーロ』の廃刊」という3つの提案をして了承を得ました。この発表がなされたのは1995年1月30日のことでした。2月14日には、文藝春秋社の田中健五社長がJR東日本事件、マルコポーロ事件の責任を取る形で会長に退き、安藤満専務が新たに社長に就任しました。当時は世間を騒がす大きな筆禍事件で、わたしも関心を持った記憶があります。なにしろ創刊したばかりの雑誌がいきなり廃刊したのですから。


ユダヤ人はアメリカにも多く、彼らの意向はアメリカの政策そのものにも大きな影響力を与えます。米国のサキ大統領報道官は22日の記者会見で、東京五輪開会式の制作、演出を担当した小林賢太郎氏が過去にホロコーストユダヤ人大量虐殺)をコントの題材にしたとして解任されたことについて「決定を支持する。不快な発言には異議を唱える」と述べ、組織委員会の判断を支持しました。いくら高額な放映権料を払っているNBCが「放映時間が短くなる」などと不満を感じたとしても、開会式の演出中にユダヤ人差別発言を行ったディレクターの仕事が含まれていると知れば、事の重大さに納得する可能性は高いです。



そもそも、3兆円もの日本国民の税金を使う東京五輪に対して、IOCはもちろんですが、アメリカの一民間テレビ局に過ぎないNBCが多大な発言力を有しているということがおかしいのです。また、東京五輪の開会式だけに165億円もの費用をかけることがおかしいのです。いたずらに日本の大手広告代理店や米国のテレビ局を儲けさせるだけではないですか。この大混乱の中で、いま必要なのは「そもそも」を考える本質論であると思います。しかしながら、「そもそも」の本質論が必要ではあるものの、「いま、どうするか」を考える現実論も大切です。



わたしが最も心配するのは、開会式に臨席されて「開会宣言」を行われる天皇陛下のことです。組織委員会の某理事が語ったように「小林氏は開会式の演出全体の調整役と聞いている。それだけに、これまで通りの演出で開会式を行えば、世界中に小林氏の発言を認めたと取られてしまう」ならば、そんな演出の開会式に天皇陛下が臨席すれば、どうなるか。しかも、差別と不寛容に汚されきった暗黒祭典の開会宣言をすればどうなるか。どうか、今からでも開会式の中止、それがどうしても難しいならば、演出部門を一切省いて、各国・地域の選手の入場行進、聖火点火、開会宣言だけのシンプルなものにするしかありません。報道によれば、開会式には市川海老蔵が登場し、MISIAが「君が代」を歌うそうです。それも悪くない演出ではありますが、今回はシンプル・イズ・ベストだと思います。


儀式論』(弘文堂)

 

わたしは、58年生きてきましたが、セレモニーの中止を訴えるのは初めてです。わたしは『儀式論』(弘文堂)という本を書きました。「儀式とはなにか」を突き詰めた書であり、「人間が人間であるために儀式はある」との持論を展開しました。人類は生存し続けるために儀式を必要としたという仮説の下、儀式が人類存続のための文化装置であることを解明することに努め、儀式軽視の風潮に警鐘を鳴らしました。わたしは、儀式の意味と重要性を理解していると自負していますが、だからこそ東京五輪の開会式には強い危惧を抱くのです。それは、ひとえに我が国の儀式王である天皇陛下に災厄が及ばないためであり、ひいては日本国が国際社会から糾弾され、孤立しないためです。



最高位のスポンサー企業の社長も、経団連経済同友会日本商工会議所経済三団体のトップも、あろうことか東京五輪招致時の首相にして1年延期を決定した当事者である安倍晋三氏でさえ参加を見合わせるという開会式に、コロナ禍に苦しむ国民に心を寄せながら忸怩たる思いで臨席される天皇陛下の心中を拝察すると、わたしは深い悲しみと強い怒りを感じます。最後に、ここまでトラブルが続き、開会式の前日になって超弩級の大問題が発生した東京五輪のこれまでの流れを思い起こすにつれ、人智を超えた天や神や仏といったサムシング・グレートの存在を感じずにはいられません。このような呪われた五輪、誰も祝福しない祝祭を強行開催した人物、平和の祭典たる五輪を政争の具に使った者には必ずや天罰が下るでしょう。

 

2021年7月23日 一条真也

 

東京五輪よ!

一条真也です。
23日になりました。ついに今日、東京五輪の開会式が行われます。これまで当ブログで開催中止を訴えてきましたが、いま、ただただ大きな無力感に包まれています。

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ヤフーニュースより

 

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ヤフーニュースより

 

東京五輪開催の直前になって、IOC(国際オリンピック協会)のトーマス・バッハ会長の発言が物議を醸しています。新型コロナの感染拡大は人命に関わることであるにも関わらず「東京五輪を中止にする選択肢はなかったが、開催への疑念は持っていた」と発言したのですが、ネットでは「バッハ会長が今、開催に疑念があったって言うのは流石に卑怯&後出しジャンケン&無責任の最悪のミルフィーユじゃんね」「バッハ会長は五輪開催に疑念があったなどと急に言い出して梯子を外しにきてて嫌な予感」などと厳しい声が相次いでいます。

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ヤフーニュースより

 

また、菅義偉首相が米紙「ウォールストリートジャーナル」に語ったインタビューも大波紋を呼んでいます。21日に配信された同紙のインタビューで、東京五輪の開催を中止するよう周囲から何度も助言されたことを明かしながら、菅首相は「やめることは一番簡単なこと、楽なことだ。挑戦するのが政府の役割だ」と開催を強行した背景を明かしたのです。 この発言には非難の声が殺到し、ネット上では「やめるのは簡単? なら、すぐやめろよ」「即やめろよ! 五輪もアンタも!」と怒りを爆発させる声があふれかえっています。さらには「第二次世界大戦の時と一緒。日本国民の命を質に博打をうっている」と国民の生命を危険にさらし、ひたすら無謀な開催強行へ突き進む姿を大戦時と重ねる声も出ています。

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ヤフーニュースより

東京五輪招致時の総理大臣であり、IOCや大会組織委員会森喜朗会長(当時)などがコロナ禍の中で開催の2年延期を提言したにもかかわらず、1年延期を決定した安倍晋三前首相は、開会式への参加を見送るそうです。これには驚くとともに、強い違和感をおぼえました。正直、「逃げたな」と思いました。他にも、経団連の十倉雅和会長、経済同友会桜田謙悟代表幹事、日本商工会議所の三村明夫会頭の経済3団体のトップ全員も欠席。最高位スポンサーも、トヨタ自動車パナソニックをはじめ、多くの企業の社長が不参加を表明しています。そんな状況でも、天皇陛下は開会式に臨席され、開会宣言を行われます。わたしは開会式をテレビで見る気はしませんが、天皇陛下の開会宣言だけは拝見させていただきます。競技は、まったく観るつもりはありません。今回のオリンピック競技は公平性に欠け、メダルも従来の価値を持っていないからです。そんなものを観戦する暇があったら、本を読んだり、映画を観ることにします。

f:id:shins2m:20200516165530j:plain心ゆたかな社会』(現代書林)

 

しかし、わたしは、最初から東京五輪開催反対派だったわけではありません。それどことか、昨年は開会式および閉会式に参加予定で楽しみにしていました。拙著『心ゆたかな社会』(現代書林)の最終章「共感から心の共同体へ」には、「いくら商業化しようとも、オリンピックの火はけっして絶やしてはならない。言うまでもなく、オリンピックは平和の祭典である。悲しいことだが、古今東西、人類の歴史は戦争の連続だった。有史以来、世界で戦争がなかった年はわずか十数年という説もある。戦争の根本原因は人間の『憎悪』であり、それに加えて、さまざまな形の欲望や他国に対する恐怖心への対抗などが悲劇を招いてきたのである。だが、それでも世界中の人々が平和を希求し、さまざまな手法で模索し続けてきたのもまた事実である。国際連盟国際連合の設立などとともに人類が苦労して生み出した平和のための最大の文化装置こそがオリンピックであることには違いないのである」と書きました。

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西日本新聞」2020年4月21日朝刊

 

また、「西日本新聞」朝刊に連載していた「令和こころ通信」の最終回「何事も陽にとらえる」で、「現在のわたしたちは、深く考えることなく『WHO』や『IOC』などの国際機関の名前を口にしますが、これらはものすごい苦労の末に生まれたグローバルな合意の表れなのです。そして、第一次世界大戦が起こったから国際連盟が生まれ、第二次世界大戦が起こったから国際連合が生まれた歴史的事実を忘れてはなりません。国連もWHOもIOCも、すべて人類の叡智の果実です。さらには、グローバリズムの『負のシンボル』がパンデミックであり、『正のシンボル』がオリンピックであることを知る必要があります」と書き、「新型コロナウイルスを克服した後に開催される五輪こそ、真の『人類の祭典』となるでしょう。世界は必ず良くなります。あなたはきっと幸せになります。そう信じて、ともに前に進んでいきましょう!」と結びました。

f:id:shins2m:20210719165419j:plain最後は、何事も陽にとらえよう!

 

新型コロナウイルスの克服には程遠く、スポーツ競技大会としてのオリンピックも本来の姿からはかけ離れた歪なスタイルになったことはまことに残念です。政府の新型コロナ分科会尾身会長は「今のパンデミックで普通はやらない」と発言しましたが、わたしもパンデミック下のオリンピックはあり得ないと思います。先の戦争の開戦と同じく、明らかな災厄に向かって猪突猛進した日本政府には大いに失望しました。しかし、「何事も陽にとらえる」のがわが信条。アフター五輪の明るい日本の未来を信じ、最後に「東京五輪よ、無事に終われよ!」と言いたいです。

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こうなったら、無事に終われよ! 

 

2021年7月23日 一条真也

「竜とそばかすの姫」

一条真也です。
7月22日は休日でした。「海の日」だそうです。帰省している(東京都も福岡県も、ともに緊急事態宣言が発令されていない時期に帰りました)長女と一緒に、シネプレックス小倉でアニメ映画「竜とそばかすの姫」を観ました。まったく未知の映像体験で、驚くとともに非常に感動しました。なぜなら、100%のグリーフケア映画だったからです。最近は、どんな映画もグリーフケア映画です!



ヤフー映画の「解説」には、「『おおかみこどもの雨と雪』や、アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされた『未来のミライ』などの細田守が監督を務めたアニメーション。“もうひとつの現実”と呼ばれる巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に、心に傷を抱え自分を見失った17歳の女子高生が、未知の存在との遭遇を通して成長していく。企画・制作は、細田監督らが設立したアニメーション制作会社・スタジオ地図が担当する」とあります。

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「高知の田舎町で父と暮らす17歳の女子高生・すずは周囲に心を閉ざし、一人で曲を作ることだけが心のよりどころとなっていた。ある日、彼女は全世界で50億人以上が集うインターネット空間の仮想世界『U』と出会い、ベルというアバターで参加する。幼いころに母を亡くして以来、すずは歌うことができなくなっていたが、Uでは自然に歌うことができた。Uで自作の歌を披露し注目を浴びるベルの前に、ある時竜の姿をした謎の存在が現れる」

 

まず、この映画、Uというインターネット空間の豪華絢爛なビジュアルに圧倒されます。ジブリアニメにも新海誠作品にも見られない仮想空間の光景は、細田守監督の独壇場と言えます。なぜなら、彼は「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」(2000年)、「サマーウォーズ」(2009年)と約10年おきにインターネット世界を題材にした映画を手がけてきたからです。今回の「竜とそばかすの姫」に登場する仮想空間は途方もないスケールですが、想像を絶するエネルギーが注ぎこまれた手描きと3DCG両輪のアニメーションから成立した世界です。スタッフの卓越した技術と情熱があったからこそ実現できたわけですが、本当に素晴らしかった!


この映画、声優陣も信じられないほど豪華です。
竜の声は佐藤健、しのぶくんは成田凌、カミシンは染谷将太、ルカちゃんは玉城ティナ、主人公すずの合唱仲間で彼女を見守る吉谷さんは森山良子、喜多さんは清水ミチコ、奥本さんは坂本冬美、中井さんは岩崎良美、すずの父親は役所広司なのですから、贅沢極まりないですね。この役所広司演じる父親がまた優しくて素敵なお父さんなのです。この映画には、妻を亡くした男性が2人登場しますが、彼らの生き方はまるで対照的でした。ネタバレになってしまうので、これ以上詳しく書くのは控えます。


主人公の「すず」という、いっぷう古風な名前は、映画の世界でよく聞くようになりました。ブログ「海街diary」で紹介した是枝裕和監督作品、ブログ「この世界の片隅に」で紹介したアニメ映画の名作の主人公も名前が「すず」でした。芸能界でも、広瀬すず山之内すずが活躍していますし、この「竜とそばかすの姫」によって、すっかり「すず」が人気の名前になった観があります。その「すず」は仮想空間Uでは「ベル」という名前になります。主人公が同じ名前である「美女と野獣」そのものの物語が展開されていきますが、「美女と野獣」へのオマージュ作品としては最高の出来になっているように思えました。


さらに、この映画、なんといっても音楽が最高に素晴らしい! 「すず」や「ベル」の声を担当したミュージシャン・中村佳穂の歌声は聴く者の魂を震わせるような力を持っており、神々しささえ感じます。わたしは、聴いているだけで泣きたくなってきました。そして、無性に歌いたくなってきました。わたしは会社を経営したり、本を書いたりしていますが、じつは一番好きなのは歌うことなのです。生まれ変わるなら歌手になりたいとさえ思っているのですが、Uという仮想空間は実在するならば、わたしは「シン」という名を名乗って思う存分歌ってみたいです。


コロナ以前はカラオケで好きな歌を歌うのが最高のストレス発散でしたが、コロナ以後はそれもできません。Uの中で、自由に歌うベルの姿を見て、わたしは「ああ、歌って素晴らしいなあ!」と思いました。ベルの歌声が神々しかったと言いましたが、MISIAの「Everything」を初めて聞いたときの感動や、英国のオーディション番組で「レ・ミゼラブル」の劇中歌「夢やぶれて」を歌ったスーザン・ボイルの歌声に驚愕したときに近い経験だったと言えば、少しはおわかりでしょうか。


そして、この映画はグリーフケアが大きなテーマになっています。すずは、幼い頃に水難事故で母親を亡くします。すずの母は、見ず知らずの子どもを救出するために自身が命を落としたのでした。「お母さんは、知らない子を助けて、わたしを残して死んでしまった」と考えるすずは暗くなる一方で、歌うこともできなくなっていました。そんな彼女がインターネット空間のUでは、別人格のベルとして軽やかに歌うのです。

 

グリーフケアにおいては、音楽力とともに、仮想力とでもいうべきものが大きな影響力を持つように思いました。すずと同じように母を亡くし、父を愛せない者が実体である竜もグリーフの中にあります。グリーフを抱える者同士が最後に抱き合う姿には、隣に娘がいるにもかかわらず落涙しました。そこには、最高のグリーフケアの実現があったからです。グリーフケアといえば、拙著『愛する人を亡くした人へ』を原案とするグリーフケア映画「愛する人へ」の作道雄監督が中村佳穂さんと旧知の仲だそうで、彼女の音楽性を絶賛していました。ぜひ、「愛する人へ」の主題歌は中村佳穂さんに歌っていただきたいです!


この日は、久々に長女と映画鑑賞をしました。前に観たのは、ブログ「未来のミライ」で紹介したアニメ映画です。奇しくも「竜とそばかすの姫」と同じ細田守監督の作品ですが、鑑賞したのは2018年7月22日。つまり、ちょうど3年前です。以前はよく2人で映画を観たものですが、彼女も遠くない将来に結婚して家庭を持つことと思います。もしかしたら、今回が最後の父娘での映画鑑賞かもしれません。そう考えると、この「竜とそばかすの姫」がとてもかけがえのない映画のように思えてきました。最後に、北九州市内のシネコンではわが社のCMをシネアドとして流しているのですが、この日も映画の上映前に流れました。それを観た長女はかなり驚いて、「すごい・・・」とつぶやいたのですが、そのときのわたしがマスクの下でドヤ顔をしたことは言うまでもありません。


2021年7月22日 一条真也

「海の日」に・・・

一条真也です。
東京五輪開催の関係で7月22日は休日でした。なんでも「海の日」だそうです。いま長女が帰省している(東京都も福岡県も、ともに緊急事態宣言が発令されていない時期に帰りました)のですが、彼女が「これ、おぼえてる?」と言って1冊の絵本を見せてくれました。

f:id:shins2m:20210722104621j:plain『おとうさんとうみへいったんだよ』 

 

それは『おとうさんとうみへいったんだよ』しばたしんご/さく・たむらなおみ/え(偕成社)という絵本でした。1994年に出版されましたが、現在は絶版になっています。アマゾンの内容紹介には、「マキはおとうさんと海に行きました。初めての海は広くって、寄せてくる波に足をとられて転んだり海水を飲んだり。水の中の石拾い、砂の舟作り、すいかわり、波のり・・・ケンちゃんと友だちになっていっぱい遊びました・・・」と書かれています。

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『おとうさんとうみへいったんだよ』の前扉

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f:id:shins2m:20210722104716j:plain『おとうさんとうみへいったんだよ』の後扉


じつは、この本の最初と最後の扉には、わたしと長女が海に行ったときの写真がたくさん貼られています。今からもう24年ぐらい前の海水浴の写真です。妻が撮影してくれました。あれからもう四半世紀近くが経過して、この写真を見たわけですが、まず思ったのが「俺もいい身体をしていたな」ということ(笑)。当時はスポーツジムに通って、120キロぐらいのバーベルを上げていました。

f:id:shins2m:20210722191339j:plainこの肉体美を見よ!(笑) 

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この肉体美を見よ!(笑)

 

当時はまだ幼稚園児だった長女も、いまやすっかり大人の女性となりました。そのうち、彼女も結婚して家庭を持つことと思います。いずれは、わたしの孫が生まれるかもしれません。東京五輪開会式の前日で何かと落ち着きませんが、「海の日」にふさわしい絵本となつかしい写真を見て、しばしハートフルな気分になりました。

 

 

2021年7月22日 一条真也