三浦瑠璃と黄色いハンカチ

一条真也です。
27日の午後、沖縄から北九州に戻ってきました。
ネット記事で、国際政治学者の三浦瑠麗さんが離婚を発表した際に「夫婦を卒業」と表現したことを知りました。


ヤフーニュースより


三浦さんは26日、X(旧ツイッター)で「先日、夫婦を卒業しました。友人になりました。わたくし事ですが、三浦姓を選びましたのでお知らせいたします」と報告したそうです。この「夫婦を卒業」という文言にネットが反応。したようで、「ユーモアがある」「卒業て言い方かっこいい笑」と好意的に受け止める声がある一方、「普通に『離婚しました』でいいじゃん・・・」「物言い一つにプライドの高さがにじみ出てんのよなー」「大喜利かなんか知らんけど・・・いやな表現や」などと違和感を感じる声が目立ったとか。わたしは、「なるほど」と思いました。


2010年10月4日「読売新聞」夕刊


「『離婚』→『夫婦を卒業』『脱退』→『アイドルを卒業』『卒業』の意味が増えたなあ」という書き込みもありました。別に赤の他人である三浦さんの離婚については特に感想もありませんが、この「『卒業』の意味が増えたなあ」という言葉には、ちょっと反応してしまいました。というのも、わたしは「死」のことを「人生の卒業」、「葬儀」のことを「人生の卒業式」と呼んでいるからです。なんでも物事を陽にとらえた表現をすることは大切なことであると思っています。でも、死というものは誰にでも訪れるものであり、それは「卒業」の名にふさわしいでしょうが、離婚は誰でも経験するものではありません。書き込みの中には「卒業じゃなく中退やな」「退学じゃねーの?」「除籍やろ」「じゃあ世の中の夫婦は留年してるって言いたいの?」とのツッコミもありましたが、わたしも同意見です。離婚とはあくまで「結婚の失敗」であって、夫婦とは「卒業」すべきものではないと思います。

 

 

わたしが三浦瑠璃さんという方を初めて意識したのは、ブログ『孤独の意味も、女であることの味わいも』で紹介した彼女の著書を読んだときです。2019年に刊行された同書は、当時、新進気鋭の国際政治学者として注目を集めていた彼女の初の自伝的著作です。以前はよくTVで見た著者の外見や発言や身のこなしには「恵まれた、いい女」といったイメージが強く、それが鼻につくという人は多いと思います。正直わたしもそんな1人でしたが、同書を読み、けっして彼女の人生が順風満帆でなかったこと、それどころか逆風の連続だったことを知り、認識を改めました。何より、彼女の表現力の高さに脱帽しました。


同書にはショッキングな内容が多々書かれています。中学時代に遭ったいじめ、集団レイプの被害者となった悲劇、大学生時代に妻子ある男性と不倫していたこと、そして最初の子どもを死産したこと・・・・・・正直、「ここまで書くとは!」と驚きました。そして、そんな彼女を伴侶に選んだ元夫の三浦清心氏の包容力に感銘を受けたものでした。その清心氏は昨年3月、横領の容疑で東京地検特捜部に逮捕されました。まだ収監中であると思いますので、三浦瑠璃さんは夫の帰りを待たなかったということになります。もちろん、人それぞれの人生であり、わたしのような赤の他人に言うべきことは何もありませんが、わたしが大好きな映画である幸福の黄色いハンカチのラストシーンを思い浮かべてしまいました。


幸福の黄色いハンカチ」は、刑務所帰りの中年男が、偶然出会った若い男女とともに妻の元へ向かうまでを描いた山田洋次監督によるロードムービーです。1977年に公開されるや大ヒットを記録し、その年の映画賞を独占しました。新車を買って、あこがれの北海道をドライブする欽也(武田鉄矢)は、一人旅の朱美(桃井かおり)をナンパして2人で旅を続けます。途中、出所したばかりの中年男・勇作(高倉健)と知り合い、3人は旅を共にすることに。やがて勇作は、「自分を待っていてくれるなら、家の前に黄色いハンカチを掲げておいてくれ」と妻に手紙を書いたことを打ち明けるのでした。三浦瑠璃さんは1980年生まれなので、この映画が公開された3年後に生を受けたわけですね。彼女はこの映画を観たことがあるでしょうか? もし、まだなら、ぜひ一度観ていただくことをおススメします。まあ、余計なお世話ですけど・・・。


2024年4月27日  一条真也