KUKAI

降り積もる白雪  

ああ、あなたの亡くなった年に降る白い雪。何と厳しい寒さだろう。(『藤原園人遺族宛書翰』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっています。「日本…

独りで座り、想うこと  

雲の中に独りで座り、松とともに老いていく。何事にも心動かされることなく、ただ真理の道についてだけ想う。(『和陸州東博士』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の…

林泉に酔う  

木々と湧水がわたしを酔わせるので、山の中に一度足を踏み入れてしまうと、思わず帰るのを忘れてしまう。(『如宝宛書翰』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の…

逝く水は留まらず  

春の花が枝の下に落ちていく。秋の露が草の葉に沈んでいく。逝く水は留まることなく、ただ風だけが吹き抜けていく。(『三教指帰』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々…

風と雲と手紙  

風のようなあなたの便りがわたしの住む巌に到来し、雲のようなあなたの手紙がわたしの暮らす岩屋を押し開いた。 (『東宮大夫相公宛書翰』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多…

白い雲を見上げて  

松の生えている巌の下で暮らしているわたしは、空に浮かんでいる雲を見ると、あなたのことを思い出す。秋の月がひとたび過ぎ去って、春の花がまだ咲こうとしている。(『下野太守宛書翰』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さ…

谷に響く鐘の音 

松の生えている谷に、鐘の音が響き渡る。桂の生えている峰に、太陽も月も輝く。朝の雲が目の前に広がり、夕方の霞が頭上に広がる。竹林を吹き抜ける風は、まるで秋風のようで、滝の水の流れる音は、まるで雨音のようだ。(『笠左衛佐造大日禎像願文』) 一条…

自然は絶えず移ろう 

秋の風が颯々と吹いて、黄色い葉を翻している。丸い月の影が、白い露に泣きそぼっている。虫の鳴き声が、もの悲しく草のあいだから聞こえてくる。雁の声が途切れ途切れに、空にかすかに響いている。(『秋日奉賀僧正大師詩』) 一条真也です。空海は、日本宗…

自然の創る美 

松と竹に風が吹きつけて、弦楽器のような音を奏でている。梅と柳に春の雨が降り注ぎ、美しい織物のように見える。(『綜芸種智院式序』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの…

春の終わりに 

風の光、月の光が、この辺鄙な寺を照らしている。鶯がさえずり、柳の花が春の終わりを告げてくれる。(『与新羅道者詩』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対…

山の天候  

雲が湧きあがってきて谷を覆ったせいで、深い谷もすっかり浅くなったように見える。雷が、空の上でまるで地面を走るような音を立てながら鳴り響いている。颯々と吹く風が、わたしの小屋を満たし、雨は音もなく烈風をまといながら降り続けている。(『納涼坊…

箱の中の手紙  

南の峰に独り立ち続け、幾千年経っているのだろうか。そんな古い松や柏の木がわたしの隣人であり、銀河が目の前に広がっている。太陽を頭上に頂き、ツタの衣を着て、長いあいだ、出家生活を送っている。ツタの皮で作った箱に、この手紙を収めて、いまあなた…

喜びに溢れた山の暮らし  

山鳥がやってきて、一声歌って飛び去って行く。山猿がやってきて、飛び跳ねながらすばらしい技を見せてくれる。春や秋の花が、わたしに笑いかけ、夜明けの月や朝の風が、わたしの心を洗ってくれる。(『山中有何楽』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最…

すばらしき高野山  

高野山の松と岩は、いくら見続けていても飽きることがない。高野山の清らかな水の流れは、いつでも心を癒してくれる。(『入山興』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々…

空に浮かぶ雲  

空に浮かんでいる孤独な雲は、一カ所に留まることがなく、ただひたすらに高い峰に心を寄せている。人里の暮らしなど知ろうとも思わず、青い松の下に身を横たえ、月を見上げる。(『贈良相公詩』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お…

都と辺境  

都の梅は春が来るよりも早く咲き、京の柳は春の盛りに葉を茂らせる。辺境の城では春の訪れは遅く、花が咲くこともない。辺境の砦では冬の訪れが早く、果実も実らない。(『贈野陸州歌』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さ…

気ままな生活   

夏の暑さは、涼しい風が吹き抜ける岩の上で避け、流れ落ちる滝の側で体を冷やす。かずらで作った粗末な服を着たまま、心の赴くままに歌い、松と石で作った小屋の中で自由さに酔う。喉が渇けば谷川の水を飲み、飽きるまで霞を食べる。(『遊山暮仙詩』) 一条…

春の雨と秋の霜   

柳の葉は春の雨に出会うことで芽を開き、菊の花は秋の霜に出会うことで花びらを散らす。(『遊山暮仙詩』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなってい…

修業の日々   

わたしは雲山の林の中で苦行の日々を送っている。初春のまだ冷たい風が身に応え、寒さに震えている。それでも懸命に鉢と錫杖を持って、修行に勤しんでいる。このような貧しい生活を送るようになって、もう六年も経った。(『性霊集』) 一条真也です。空海は…

同じ風でも  

夏に吹く涼風。冬に吹く寒風。どちらも冷たい風であることに変わりはないが、人々の受け取り方はずいぶん違う。(『後懐玉』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰…

季節は巡る   

冬になって雁が来たかと思ったら、すぐに去って行った。春になって燕が来たかと思ったら、これもまた過ぎに去って行った。桃の花が紅色に咲き誇ったかと思っていたら、花は散り、香りはすでに過去のものとなっている。季節は巡りゆく。(『遊山慕仙詩』) 一…

春は必ず訪れる  

冬のあいだに張った固い氷も、春になればたちまち溶けて、川の流れになる。良いことも悪いことも、永遠には続かない。(『三昧耶戒序』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの…

私は私   

私には家もなければ、国もない。故郷も遠く離れ、親類縁者との関係もなくなった。人の子でもなく、誰かの子分でもない。ただ一人きりで、貧しい生活を楽しんでいる。一杯の谷川の水が、私の命の支えであり、一口の山の霞が、私の心の支えだ。(『山中有何楽…

花の香り   

山奥の谷にひっそりと咲いている蘭の花は、自分から主張しているわけではないのに、その良い香りははるか遠くまで伝わっていく。(『高野雑筆集』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しま…

仏の教えは自分の中に   

仏の心も、その教えも、最初から自分の中に備わっているものだ。それに気づいていれば、鳥や獣にも草花にも、仏の教えを見出すことができるようになる。はるか西の彼方にあるという極楽も、弥勒菩薩が法を説いているという天上の兜率天も、本来は自分の中に…

酒の効能   

適量のお酒は体に良い。とくに風邪をひいたときは、効果てきめん。まさに酒は百薬の長なのだ。(『御遺告二十五条』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象と…

奥深い経典  

仏教の経典は、とても奥深いものだ。もし、経典の中に理解できない部分ふぁあったとしても、それはあなたの智慧や知識が浅いだけなのだから、仏の教えを疑ってはいけない。(『秘密三味耶仏戒義』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「…

慈悲喜捨  

仏教には、人々を救う四つの教えがある。それは、「慈」、「悲」、「喜」、「捨」の四無量観と呼ばれるものだ。「慈」とは、楽しみを与えること。「悲」とは、苦しみを取り除くこと。「喜」とは、他人の幸福を妬まないこと。「捨」とは、感情に流されないこ…

「仏・法・僧」と鳴く鳥  

静かな林の中の草堂で、座禅を組んで明け方を迎えると、ふいに鳥が、「仏・法・僧(ブッポウソウ)」と鳴いた。鳥ですら、仏の教えを説いているのに、どうして人間が仏の教えを無視できるだろうか。鳥の声と人の心。雲の光と水の色。あらゆるものが仏の徳の…

仏の正体  

仏とは、青色でもなく、黄色でもない。赤色でもなく、白色でもない。紅色でもなければ、紫色でもない。もちろん、透明でもない。また、長くもなく、短くもない。丸くもなければ、四角でもない。明るくもなければ、暗くもない。男でもなければ、女でもない。…