KUKAI

山の天候  

雲が湧きあがってきて谷を覆ったせいで、深い谷もすっかり浅くなったように見える。雷が、空の上でまるで地面を走るような音を立てながら鳴り響いている。颯々と吹く風が、わたしの小屋を満たし、雨は音もなく烈風をまといながら降り続けている。(『納涼坊…

箱の中の手紙  

南の峰に独り立ち続け、幾千年経っているのだろうか。そんな古い松や柏の木がわたしの隣人であり、銀河が目の前に広がっている。太陽を頭上に頂き、ツタの衣を着て、長いあいだ、出家生活を送っている。ツタの皮で作った箱に、この手紙を収めて、いまあなた…

喜びに溢れた山の暮らし  

山鳥がやってきて、一声歌って飛び去って行く。山猿がやってきて、飛び跳ねながらすばらしい技を見せてくれる。春や秋の花が、わたしに笑いかけ、夜明けの月や朝の風が、わたしの心を洗ってくれる。(『山中有何楽』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最…

すばらしき高野山  

高野山の松と岩は、いくら見続けていても飽きることがない。高野山の清らかな水の流れは、いつでも心を癒してくれる。(『入山興』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々…

空に浮かぶ雲  

空に浮かんでいる孤独な雲は、一カ所に留まることがなく、ただひたすらに高い峰に心を寄せている。人里の暮らしなど知ろうとも思わず、青い松の下に身を横たえ、月を見上げる。(『贈良相公詩』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お…

都と辺境  

都の梅は春が来るよりも早く咲き、京の柳は春の盛りに葉を茂らせる。辺境の城では春の訪れは遅く、花が咲くこともない。辺境の砦では冬の訪れが早く、果実も実らない。(『贈野陸州歌』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さ…

気ままな生活   

夏の暑さは、涼しい風が吹き抜ける岩の上で避け、流れ落ちる滝の側で体を冷やす。かずらで作った粗末な服を着たまま、心の赴くままに歌い、松と石で作った小屋の中で自由さに酔う。喉が渇けば谷川の水を飲み、飽きるまで霞を食べる。(『遊山暮仙詩』) 一条…

春の雨と秋の霜   

柳の葉は春の雨に出会うことで芽を開き、菊の花は秋の霜に出会うことで花びらを散らす。(『遊山暮仙詩』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなってい…

修業の日々   

わたしは雲山の林の中で苦行の日々を送っている。初春のまだ冷たい風が身に応え、寒さに震えている。それでも懸命に鉢と錫杖を持って、修行に勤しんでいる。このような貧しい生活を送るようになって、もう六年も経った。(『性霊集』) 一条真也です。空海は…

同じ風でも  

夏に吹く涼風。冬に吹く寒風。どちらも冷たい風であることに変わりはないが、人々の受け取り方はずいぶん違う。(『後懐玉』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰…

季節は巡る   

冬になって雁が来たかと思ったら、すぐに去って行った。春になって燕が来たかと思ったら、これもまた過ぎに去って行った。桃の花が紅色に咲き誇ったかと思っていたら、花は散り、香りはすでに過去のものとなっている。季節は巡りゆく。(『遊山慕仙詩』) 一…

春は必ず訪れる  

冬のあいだに張った固い氷も、春になればたちまち溶けて、川の流れになる。良いことも悪いことも、永遠には続かない。(『三昧耶戒序』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの…

私は私   

私には家もなければ、国もない。故郷も遠く離れ、親類縁者との関係もなくなった。人の子でもなく、誰かの子分でもない。ただ一人きりで、貧しい生活を楽しんでいる。一杯の谷川の水が、私の命の支えであり、一口の山の霞が、私の心の支えだ。(『山中有何楽…

花の香り   

山奥の谷にひっそりと咲いている蘭の花は、自分から主張しているわけではないのに、その良い香りははるか遠くまで伝わっていく。(『高野雑筆集』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しま…

仏の教えは自分の中に   

仏の心も、その教えも、最初から自分の中に備わっているものだ。それに気づいていれば、鳥や獣にも草花にも、仏の教えを見出すことができるようになる。はるか西の彼方にあるという極楽も、弥勒菩薩が法を説いているという天上の兜率天も、本来は自分の中に…

酒の効能   

適量のお酒は体に良い。とくに風邪をひいたときは、効果てきめん。まさに酒は百薬の長なのだ。(『御遺告二十五条』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象と…

奥深い経典  

仏教の経典は、とても奥深いものだ。もし、経典の中に理解できない部分ふぁあったとしても、それはあなたの智慧や知識が浅いだけなのだから、仏の教えを疑ってはいけない。(『秘密三味耶仏戒義』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「…

慈悲喜捨  

仏教には、人々を救う四つの教えがある。それは、「慈」、「悲」、「喜」、「捨」の四無量観と呼ばれるものだ。「慈」とは、楽しみを与えること。「悲」とは、苦しみを取り除くこと。「喜」とは、他人の幸福を妬まないこと。「捨」とは、感情に流されないこ…

「仏・法・僧」と鳴く鳥  

静かな林の中の草堂で、座禅を組んで明け方を迎えると、ふいに鳥が、「仏・法・僧(ブッポウソウ)」と鳴いた。鳥ですら、仏の教えを説いているのに、どうして人間が仏の教えを無視できるだろうか。鳥の声と人の心。雲の光と水の色。あらゆるものが仏の徳の…

仏の正体  

仏とは、青色でもなく、黄色でもない。赤色でもなく、白色でもない。紅色でもなければ、紫色でもない。もちろん、透明でもない。また、長くもなく、短くもない。丸くもなければ、四角でもない。明るくもなければ、暗くもない。男でもなければ、女でもない。…

心は平等  

もしも、自分の心こそが仏の心であることに気づいたならば、すべての人の心が仏であることがわかるだろう。それゆえ、仏の心、自分の心、人々の心の三つは平等なのだ。(『性霊集』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あ…

人間と仏       

仏の体はわたしたちの体であり、わたしたちの体は、すなわち仏の体だ。仏とわたしたちは、違うものであると同時に、同じものなのだ。(『即身成仏義』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親…

生きたまま仏になる  

真言密教の修行を行なえば、精神統一によって誰でも生身の体のままで仏になることができる。ほかの教えには、この方法が欠けており、書き記されていない。(『即身成仏義』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「…

世界を照らす光   

仏が発する光は、世界の隅々までを照らしてくれる。そして、その光は、あらゆる人の良い心を育ててくれる。(『雑問答』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対…

仏の教えは甘露の味  

仏は、してはいけないことと、すべきことをわたしたちに示すことで、迷いから救ってくれる存在だ。仏の教えは甘い蜜のようなもので、心を焼く苦悩を消してくれる。(『性霊集』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるい…

果てしない慈悲   

仏の持っている慈悲は、天のようにすべてを覆い尽くし、大地のようにあらゆるものを抱いている。(『性霊集』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっ…

仏の心  

仏の心とは、つまるところ「慈」と「悲」のふたつのことだ。「慈」は、人々に楽を与え、「悲」は、人々の苦を取り除く。しかも、人気の「慈」は、どんな人にも平等に楽を与えてくれるし、仏の「悲」は軽い重いを問わず、あらゆる苦を取り除いてくれる。(『…

密教の修業    

密教の修行である「三密」の力を使えば、迷いを払うことができる。すなわち、一、手で印を結ぶこと二、仏の言葉である真言を唱えること三、瞑想すること以上の三つだ。(『秘蔵記』) 一条真也です。空海は、日本宗教史上最大の超天才です。「お大師さま」あ…

あらゆる音は「阿」からはじまる   

すべての教えのもとになっているのが、「阿」という文字だ。誰しも、最初に口を開いたときに発せられる音は、「阿」だ。「阿」の音を離れては、どんな言葉も成立しない。それゆえ「阿」こそが、あらゆる音の母といえる。(『梵字悉曇義』) 一条真也です。空…

安住の地はない   

世の中のどこにも、安住の地などというものはない。あるときは天が家となり、あるときは地獄が家となる。わたしという人間も、あるときはあなたの妻子かもしれないし、あるときは父母かもしれない。すべてのことに定まった形はなく、つねに変化し続けている…