五輪・グリーフケア・笑顔

一条真也です。
17日の午後、夫婦で東京から戻りました。
18日の小倉は、梅雨のしとしと雨。この日の早朝から、松柏園ホテルの神殿で恒例の月次祭が行われました。

f:id:shins2m:20210618080646j:plain月次祭のようす

f:id:shins2m:20210618080604j:plainコロナ完全対応で執り行われました

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拝礼する佐久間会長

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わたしも拝礼しました

 

皇産霊神社の瀬津神職が神事を執り行われましたが、祭主であるサンレーグループ佐久間進会長に続いて、わたしが玉串奉奠を行いました。一同、会社の発展と社員の健康・幸福、それに新型コロナウイルスの感染拡大が終息することを祈念しました。わたしと一緒に参加者たちも二礼二拍手一礼しました。儀式によって「かたち」を合わせると、「こころ」が1つになる気がします。

f:id:shins2m:20210618082851j:plain天道塾の開始前のようす

f:id:shins2m:20210618083517j:plain最初は、もちろん一同礼!

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佐久間会長の訓話

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養生について語りました

 

神事の後は、恒例の「天道塾」です。最初に佐久間会長が登壇し、ポストコロナ時代における温浴事業について語りました。じつは、福岡県田川郡福智町神崎にある温浴施設「日王の湯」をわが社が運営することになりました。新時代の「養生」の道を求める佐久間会長は、「日王の湯」にかける想いを大いに語りました。また、栄西禅師が中国から持ち帰った薬としての茶、千利休が総合芸術にまで高めた茶道の話などをしました。さらには、生活習慣の改善の必要性を説き、わが社の創業時の頃から焼肉屋に行っても、肉は若い社員に食べさせて、自分は野菜ばかり食べていたエピソードなどを披露しました。

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北斎の波をイメージした小倉織マスクで登壇

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小倉織マスクを外しました

 

佐久間会長の後はわたしが登壇して、講話を行いました。今日は小倉織の青白のマスクを着けて登壇したのですが、このマスクは葛飾北斎の「波と富士山」を連想させてお気に入りのマスクです。誕生日に会社からプレゼントされました。最初に、わたしは「昨日、東京から戻ってきました。東京五輪の開幕まで、あと1カ月ちょっととなりました。どうやらコロナ禍にもかかわらず、東京五輪は強行開催される流れになっていますが、わたしは義によって東京五輪の開催中止を訴えてきました。国民のほとんどが望んでいない祭典ですが、わたしが五輪中止を訴えてきたことを、互助会業界の仲間たちも心配してくれているようです。わたしは業界団体の副会長および互助会政治連盟の副会長も務めていますので、正直言って、業界の仲間たちを心配させるのは辛いです」と言いました。

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東京五輪について語りました

 

わたしが冠婚葬祭互助会という経済産業省の許認可事業の経営者でありながら、業界団体の副会長および互助会政治連盟の副会長でもありながら、政府および自民党が強行開催しようとしている東京五輪の中止を願うのは何故か。その最大の理由は、じつは儀式とグリーフケアにあります。コロナ禍で多くの方々が、本来は行われるはずだった儀式を断念しました。入学式、卒業式、成人式、入社式・・・日本人が断念した儀式は数知れません。日本中の祭礼も新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにことごとく中止されました。そして、冠婚葬祭。多くの新郎新婦が夢に描いていた結婚式や結婚披露宴を断念し、今も延期されている方々も少なくありません。葬儀においても、家族葬を希望しなくても結果的に参列者を制限して寂しい葬儀が多く生まれました。新型コロナウイルスの感染によって亡くなられた方に至っては看取りもできず、葬儀さえできませんでした。その悲しみは大きいものでした。

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悲しみはどこに向かうのか・・・・・・

 

それは日本だけではなく、世界中がそうでした。人類全体が理不尽な悲嘆に包まれたのです。その遺族の方々の無念、披露宴を挙げられなかった新郎新婦の落胆、卒業式や成人式を体験できなかった若者たちの悲しみはどこに向かうのでしょうか。こんな状況で東京五輪が開催されれば、彼らの悲しみは増大するばかりです。逆に五輪が中止されれば、「パンデミックの状況下では、オリンピックでも開催できないのだから仕方ない」と少しはあきらめがつくのではないでしょうか。それは仇討ちや復讐とは違うけれども、負のグリーフケアではあります。しかし、日本中、いや世界中の人々の巨大な悲嘆を汲み取る可能性が高いという一点において、わたしは東京五輪の強行開催に最後まで反対いたします。古代ギリシャの葬送儀式として生まれたオリンピックは、コロナで亡くなった世界中の犠牲者および中止されたあらゆる儀式・祭典関係者の悲嘆と無念を受け入れ、今回の東京大会は開催されないことを願います。

f:id:shins2m:20210618093101j:plainグリーフケア資格認定制度について 

 

それから、グリーフケア資格認定制度について話しました。今月末、いよいよ一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団による「グリーフケア資格認定制度」がスタートします。この制度は、葬儀の施行に加え、サポートやケアなどのスキルを持った専門職の育成が非常に重要になってきていることから創設されました。この資格認定制度を行う意義として、グリーフケアが葬儀施行以外にも医療の現場を始め様々な現場で必要とされるものであり、、グリーフケアの知識を持った人材の育成を行うことでグリーフを抱える「悲嘆者」が日常の生活の中でケアされる健全で心ゆたかな社会を構築していくこととなります。

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認定の対象となるのは?

 

この制度は上智大学グリーフケア研究所の監修のもと、葬儀業界関係者だけを対象とせず、多くの方が受験できるようにしています。資格認定の対象となる方としては①互助会事業者等に勤務している方②職務を通してグリーフケアの実践が必要な方(医師、看護師、介護スタッフ等)③悲嘆を抱えた方に寄り添いケアを行う方(遺族会患者会)④グリーフケアに関心の高い方となり、広く門戸を開き、資格として認定することで人材を育成していくものです。グリーフケア士の役割は人生の様々な節目において経験する〈ひと・もの・こと〉の深い喪失に際して、「丁寧に想い起こし、感謝し、祝福し、決別を十分嘆くための特別な場を整える(文化・伝統・宗教資源)」「グリーフを大切に憶え続ける心の準備を促す(ケア資源)」「グリーフを経験した自分を見守ってくれるコミュニティーの再構築を目指す(地域資源)」こととなります。

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熱心に聴く人びと

 

そして、グリーフケア士はその役割を果たすために、「悲嘆者」と誠実に向き合い、ライフサイクルの中で起こるグリーフの諸相を理解し、儀礼と傾聴を通して、悲嘆を抱えた方に寄り添いケアを実現する専門職です。厳しい試験を経て、晴れてグリーフケア士に認定された方には、その上位の資格である上級グリーフケア士の受験や、さらには高度なグリーフケアの能力を獲得するために上智大学グリーフケア研究所の「グリーフケア人材養成講座」の受講を推奨されており、そこではグリーフケアのマネジメント(指導・育成・管理)能力を会得することができます。資格試験は全国の試験会場にてインターネット経由で配信する試験形式(CBT方式)により全ての曜日(祝日及び年末年始休業等を除く。2021年3月末時点での試験会場数は287会場)で受験することができ、試験結果の評価判定に基づいて資格の認定が行われます。

f:id:shins2m:20210618091951j:plain 認定制度を活用しよう!

 

合格者には、認定の証として資格認定証(カード)が交付し登録されます。また資格を所得すれば終わりではなく、知識やスキルの向上、また新たな情報の提供のため、登録者へのフォローを実施していくことも決まっており。具体的には、セミナーやワークの実施、定期的な機関紙の発行(年に1回)等などが検討されています。時代のニーズに答えるためにこの資格認定制度はスタートしていきますが、この資格認定制度をよく活用していきたいものです。そして、社会において必要不可欠な存在となるべく、そして共によりよい社会をつくっていく存在となっていただきたいと願っております。


わたしはグリーフケアにも「ユーモア」や「笑い」が必要であると考えています。コロナ禍の中でストレスがたまる一方ですが、そんな邪気を祓ってくれる素敵な動画をYouTubeで見つけました。「幕末・明治の偉人を【笑顔】にしてみた」という動画です。夏目漱石板垣退助野口英世森鴎外与謝野晶子伊藤博文明治天皇樋口一葉滝廉太郎芥川龍之介福沢諭吉大久保利通木戸孝允大隈重信渋沢栄一、住友友純、豊田佐吉山縣有朋近藤勇土方歳三坂本龍馬西郷隆盛徳川慶喜勝海舟篤姫岩崎弥太郎高杉晋作岩倉具視ら偉人たちのモノクロの肖像写真をカラーに編集し、さらに笑顔に変えるという動画ですが、これは素晴らしい! 

f:id:shins2m:20210618091900j:plain笑顔は、人を美しくする!

 

最初の夏目漱石から、もう大笑いしました。漱石は留学先のロンドンで鬱病になったとされていますが、いつもこんな笑顔を見せていたら健康に長生きできたかもしれませんね。子ども向け偉人伝の常連である野口英世も、自民党の政治家のポスター写真みたいになって笑えます。これまで暗いイメージだった森鴎外芥川龍之介といった文豪も、笑顔になるといい感じです。ぐっと親しみが湧いてきます。なんというか、とても人間臭く感じられますね。それにしても、漱石といい、鴎外といい、龍之介といい、文豪はみんなハンサムですね! 内面の豊かさが顔に出るのでしょうか? 驚いたのは女性の写真です。失礼ながらあまり美人のイメージではなかった与謝野晶子が、笑うと一気に可愛い美人に早変わりしてビックリ! 笑顔というのは、人を美しくするのですね。もともと美女の樋口一葉の笑顔など、現代でも人気女優になれそうなレベルです。

f:id:shins2m:20210618092202j:plain笑うと一気に親しみが増す!

 

幕末維新の英雄では、坂本龍馬西郷隆盛の笑顔が気に入りました。映画やTVドラマに何度も取り上げられ、いろんな俳優が彼らの笑顔姿も見せてくれていますが、やはり定番の肖像が笑顔になるインパクトは大きいですね。笑顔はやはり目が笑わないといけません。岩倉具視などは、ちょっとウソっぽいですね(笑)。偉大な教育者の笑顔も素敵です。現在の1万円札の顔である慶應義塾大学創始者福沢諭吉、わたしの母校である早稲田大学創始者大隈重信はともに厳しい顔の肖像写真しか知りませんが、笑うと一気に親しみが増し、「そのへんのオジサン」みたいになりますね(笑)。

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熱心に聴く人びと

 

いやはや、こんな幸せな気分にしてくれる動画は久しぶりに見ました。YouTubeで偶然見つけたのですが、2020年8月23日にUPされています。動画の作成者はコー吉さんという方で、いろんな有名人の顔を加工する動画をたくさん作られています。この動画を見て、「やはり笑顔は素晴らしい!」と痛感しました。拙著『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)の「笑――ユーモアと笑顔が福を呼ぶ」にも書きましたが、笑顔は世界共通のコミュニケーションの「かたち」です。わが社の経営理念であるS2Mには「SMILE TO MANKIND(すべての人に笑顔を)」があります。わが社のような「ホスピタリティ」すなわち「親切な思いやり」というものを提供する接客サービス業においては、笑顔・挨拶・お辞儀といったスキルが非常に大切となります。中でも特に笑顔が必要であると言えます。サービスの現場だけではありません。営業においても、明るい笑顔でお客様に接するのと暗い無表情で接するのとでは雲泥の差があり、それは確実に成果の差となって出てきます。

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グリーフケアと笑顔について

 

マンカインドとは「人類」であり、「すべての人」という意味です。すべての人は、わたしたちのお客様になりえます。ぜひ、お客様のみならず、取引業者の方や社内の人たち、部下や後輩にも笑顔で接していただきたいと社員の皆さんにお願いしています。冠婚葬祭互助会であるわが社は、死別の悲嘆に寄り添う「グリーフケア」にも積極的に取り組んでいますが、そこでも笑顔やユーモアというものを大切にして、愛する人を亡くされた遺族の方々を対象とした「笑いの会」などを開催しています。葬儀においては、ひと昔前の遺影写真は笑顔がタブーとされてた時もありましたが、最近は笑顔の写真で遺影写真を作られる方も増えてきました。遺影写真は代々その家に残る写真なので、かしこまった写真より笑顔の写真がご遺族も心穏やかに過ごせるのではないでしょうか?

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すべての人に笑顔を!

 

笑顔は、接客サービス業においてだけでなく、ありとあらゆるすべての人間関係に大きな好影響を与えます。ミュージシャンの高橋優が、「福笑い」という歌で「きっとこの世界の共通言語は、英語じゃなく笑顔だと思う」と歌っていましたが、国籍も民族も超えた、まさに世界共通語、それが笑顔です。また、性別や年齢や職業など、人間を区別するすべてのものを超越してしまいます。「すべての人に笑顔を」は、「人間尊重」そのものです。笑顔のない組織に潤いはなく、殺伐とした非人間的な集団にすぎません。会社にも社会にも笑顔が必要です。現在、コロナ禍のマスク越しでは笑顔が伝わらず、目の表情やアイコンタクトが大切になります。せめて、「マスクの下は笑顔です!」を心掛けたいものですね。

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「礼」とお辞儀について

 

また、笑顔と並んで人間関係を良くする魔法がお辞儀です。わたしは儒教研究の第一人者である大阪大学名誉教授の加地伸行先生と7月7日に大阪で対談することになりましたが、加地先生の最新刊である『論語入門』(幻冬舎)を読みました。そこには「礼」についてたくさん書かれていましたが、「礼」とは抽象的な概念よりもお辞儀などの現実的なスキルが重要と書かれていて感銘を受けました。「なぜ、古代中国人が拱手といって両手を前で組んでお辞儀をするのか?」「なぜ、デパート店員やホテルマンは下腹部に両手を添えてお辞儀をするのか?」などについても加地先生の御本から学び、それをみんなに披露しました。

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最後は、もちろん一同礼!

 

そして、わたしの講話は終わりました。今日は、この後、全互協のグリーフケア資格認定制度紹介動画の撮影、そして出演する映画の撮影もあります。タイトなスケジュールですが、笑顔で頑張ります!

 

2021年6月18日 一条真也