正月

一条真也です。
あけまして、おめでとうございます。
ついに、令和4年(2022年)の幕開けですね!

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ブログ「正月withコロナ」に書いたように、一昨年の大晦日、東京の新規感染者は1337人と初めて1000人の大台を超え、国内の感染者も初めて4000人を超えて4519人となり、過去最多を更新しました。当然ながら、昨年の正月が重苦しい空気に包まれたことは言うまでもありません。今年は、コロナの新規感染者も収まりつつあり、おかげで新年を無事に迎えることができました。

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あけまして、おめでとうございます!

 

もっとも、オミクロン株の脅威が叫ばれており、油断はできません。市中感染の危機感が強まっていますが、往来が活発化する年末年始を迎え、専門家からは感染「第6波」が到来するとの見方も出ています。状況次第で緊急事態宣言発令などの判断を迫られる可能性もあるでしょう。例年は家族とともに門司の皇産霊神社で初詣をするのですが、昨年同様に今年も新型コロナウイルスの感染防止のために歳旦祭が中止となり、初詣も延期することにしました。しかしながら今年は2人の娘も一緒で、わが家は賑やかになっています。

f:id:shins2m:20211231151603j:plainわが家の玄関脇の正月飾り

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わが家はセコムと正月飾りで完全防衛!

 

わが家では、いつものように正月の飾りをしました。
鏡餅はもちろん、羽子板や干支にあたる寅の置物も飾りました。ずっと新型コロナウイルスに翻弄され続けてきましたが、正月を迎えると、「ああ、自分は日本人なのだ」と実感します。

 

決定版 おもてなし入門

決定版 おもてなし入門

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2015/01/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

拙著『決定版 おもてなし入門』(実業之日本社)にも書きましたが、正月には日本流「おもてなし」の原点があります。もともと正月というのは、年神を迎える年中行事です。古い信仰の形では、年神は祖霊神としての性格が強かったといわれています。ですから、お盆とは対の関係にあったといえます。そのあたりは、拙著『なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?』(すばる舎)に詳しく書きました。

 

なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?

なぜ、一流の人はご先祖さまを大切にするのか?

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: 単行本
 

 

かつての日本では盆と正月にはふるさとに帰省して、家族で過ごすということが当たり前に行われてきました。特にお盆休みが娯楽性を高める今では、正月だけが家族の絆を深める習慣と言えるでしょう。大晦日から新年を家族で迎え、年に一度、親戚が集まって会食をする。そして孫たちが祖父母からお年玉をもらうという光景が当たり前でした。今では孫たちのお年玉は振り込んでほしい、という親もいるというのですから、お年玉が単なるお金のやりとりになってしまったのは、本当に残念です。

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正月は大切な年中行事です!

 

ブログ『大人のお作法』で紹介した本で、著者である國學院大學客員教授岩下尚史氏は、「正月の本義」として、「『伝統芸能』だの『伝統文化』といった言葉がやたらと取り沙汰されるようになったのは、わたくしたちの暮らしの中で昔から伝承されてきたいろいろな型が、ついに消えてなくなってしまう前触れなのかもしれません。極端なことを言うようですが、正月だってそのうち実体がなくなるでしょうね。おそらく今の80代の人たちが絶える頃には、寺社は別としても、古風な信仰を保つ人たちを除いては、単なる1月になるだろうと、わたくしは見ています」と述べていますが、ここ数年、この予言が的中したような気がしてなりません。

f:id:shins2m:20220101135931j:plain松柏園ホテルの大凧と

f:id:shins2m:20220101135858j:plain松柏園ホテルの招福大羽子板と

 

日本には各種の年中行事がありますが、その最たるものが正月です。年中行事は、なぜ大切か。岩下氏は「年中行事を大切にする心がけがあれば、生活に抑揚も出ます。春の宵に内裏を飾り、端午の菖蒲冑に邪気を払い、七夕の五色の糸に願いを掛け、菊の着せ綿の香も高く、名月に畑の幸を供えて福徳を祈るなど・・・・・・季節ごとの風流を手取り足取り教えれば、書物からは決して得ることのできない、しめやかな情愛が子供に沁み込むことでしょう」と述べます。

 

 

民俗学者折口信夫は、年中行事を「生活の古典」と呼び、『古事記』や『万葉集』や『源氏物語』などの「書物の古典」とともに、正月、雛祭り、七夕、盆などの「生活の古典」が日本人の心にとって必要であると喝破しました。この観点から、わたしは『決定版 年中行事入門』(PHP研究所)を世に送り出しましたが、日本人の「こころの未来」のため心を込めて書きました。コロナ禍はまだまだ続くかもしれませんが、日本人が「生活の古典」を大切にする心を失わないことを願うばかりです。

f:id:shins2m:20220101140027j:plain今年も、よろしくお願いいたします!

f:id:shins2m:20220101232107j:plain長女と次女は和装で・・・

 

2022年1月1日 一条真也

今年の私的10大ニュース! 

一条真也です。
ついに大晦日になりました。前年に引き続き、今年も新型コロナウイルスに翻弄された年となりましたが、感染拡大も収まりつつあり、希望の光も見えています。さまざまな「今年の10大ニュース」が発表されていますが、わたしも私的10大ニュースを考えました。それでは、第10位から行ってみましょう! 

●第10位
「タビ好キファン感謝祭」開催

f:id:shins2m:20211004193052j:plain前川清さんと花束を交換!

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テレビ放映もされました

 

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●第9位 
『心ゆたかな読書』出版

f:id:shins2m:20210703081752j:plain心ゆたかな読書』(現代書林)

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加地伸行先生に贈呈

 

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●第8位
『 「鬼滅の刃」に学ぶ』出版

f:id:shins2m:20201221125540j:plain「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)

f:id:shins2m:20211231004432j:plain20日間で書き上げました! 

 

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●第7位 
京都大シンポジウム出演

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画期的なシンポジウムとなりました

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「死生観の『かたち』」について語りました

 

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●第6位 
グリーフケア資格認定制度スタート!

f:id:shins2m:20210625123716j:plainパシフィコ横浜で説明会&講演会

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コロナ禍中の会場が満員に!

 

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●第5位 
『アンビショナリー・カンパニー』を出版、サンレーの大志を掲げる

f:id:shins2m:20211102165155j:plainアンビショナリー・カンパニー』(現代書林)

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「財界九州」2022年新年号

 

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●第4位
サンレーズ・アンビション
・プロジェクト始動!!

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西日本新聞」2021年12月7日朝刊

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西日本新聞」2021年12月8日朝刊

 

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●第3位 
サンレー創立55周年
 &社長就任20周年

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サンレー創立55周年記念式典のようす

f:id:shins2m:20211118105438j:plainわたしも社長就任20周年を迎えました

 

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●第2位

次女の就職内定

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2022年卒の就活生が選ぶ人気企業ランキング

おかげさまで、志望の会社に内定!

 

●第1位 
長女の婚約

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結納を終えた直後の二人  f:id:shins2m:20211231032157j:plain結納の日に長女と

 

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この10大ニュースは、あくまでも作家・一条真也にとってのランキングのつもりでしたが、今年は経営者・佐久間庸和としての重要ニュースも混在しています。ここ数年、上梓した著書の数が以前に比べると少ないです。これは、一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の副会長の要職に加え、一昨年からグリーフケアPTの座長、昨年から一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の副理事長にも就任して、さらに多忙になったこともあり、自ら執筆活動を控えた結果です。

f:id:shins2m:20211219215410j:plain2021年に出版された「一条本

f:id:shins2m:20201224102716j:plain2020年に出版された「一条本f:id:shins2m:20191222005447j:plain2019年に出版された「一条本」+α

f:id:shins2m:20191231111638j:plain2018年に出版された「一条本
2017年に出版された「一条本
2016年に出版された「一条本
2015年に出版された「一条本

 

しかしながら、昨年は一条本の数がついに100冊になりましたし、昨年末は『「鬼滅の刃」に学ぶ』(現代書林)を約20日間で書き上げました。来年は、2月に儒教研究の第一人者である中国哲学者の加地伸行先生との対談本、秋には神道研究の第一人者である宗教哲学者の鎌田東二先生との対談本、『心ゆたかな社会』『心ゆたかな読書』の続編としての『心ゆたかな映画』、日本人の論語研究のアンソロジー本としての『論語論』、さらには『サービスからケアへ』というビジネス書を上梓する予定です。来年も、「天下布礼」のために全集中の呼吸で頑張りますので、よろしくお願いいたします。
それでは、みなさま、良いお年をお迎え下さい!

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2021年12月31日 一条真也

一条賞(映画篇)発表! 

一条真也です。
わたしは日々、多くの映画を観ています。その感想は当ブログ、および「一条真也の映画館」(現在、工事中)においてUPしています。ここ数年、「一条賞(映画篇)」と称してベストテン・ランキングを作成していたのですが、2018年からみなさまにもお知らせすることにしました。「一条賞(映画篇)」の選考対象となるのは、製作年やジャンルに関わらず、今年(2021年)観たすべての映画です。ただし、DVD、ブルーレイ、ネットなどでの鑑賞は除外し(ネットフリックス作品のみは別枠選考)、あくまでも映画館で鑑賞した作品に限ります。今年はコロナ禍の中で、77本の映画を劇場で観ました。
では、第10位から発表していきましょう! 

●第10位

劇場版  呪術廻戦  0

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詳しい映画評は、こちらをクリックして下さい

 

●第9位

シン・エヴァンゲリオン劇場版」 

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 ●第8位

花束みたいな恋をした

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●第7位

そして、バトンは渡された

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●第6位

空白

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●第5位

レミニセンス

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●第4位

アンテベラム

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●第3位

ラストナイト・イン・ソーホー

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●第2位

最後の決闘裁判

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●第1位(大賞)

DUNE/デューン 砂の惑星

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 *詳しい映画評は、こちらをクリックして下さい

 

ということで、今年の「一条賞(映画篇)」大賞は。SF超大作映画「DUNE/デューン 砂の惑星」に決定しました。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作ですが、この映画だけはどうしても観たいと思っていました。SF映画には未来が予見されていることが多いので、話題作は必ず観ることにしているのも理由の1つですが、拙著『愛する人を亡くした人へ』を原案とするグリーフケア映画「月あかり」(2023年公開予定)のメガホンを取る作道雄監督が、一番好きな映画監督にドゥニ・ヴィルヌーヴの名を挙げていたからです。ということで公開日に鑑賞したところ、「とんでもない映像体験をした」という思いが湧いてきました。まさに「未来型シネマ・エクスペリエンス」であり、SF映画の歴史に燦然と輝く大傑作でした。なお、映画篇の大賞はアカデミー賞でいえば「作品賞」ですので、他の各賞も以下のように発表させていただきます。

●監督賞
ドゥニ・ヴィルヌーヴ
(「DUNE/デューン 砂の惑星」)

●音楽賞
「ラストナイト・イン・ソーホー」

●演出賞
「レミニセンス」

●撮影賞
「最後の決闘裁判」

 ●ある視点賞
「空白」
長編ドキュメンタリー賞
「世界で一番美しい少年」

●長編アニメーション賞
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」

●主演男優賞
ティモシー・シャラメ
(「DUNE/デューン 砂の惑星」)

●主演女優賞
ジョディ・カマー「最後の決闘裁判」)

助演男優賞
ベン・アフレック(「最後の決闘裁判」)

助演女優賞
シェイリーン・ウッドリー
(「モーリタリアン  黒塗りの歴史」)

●新人賞
アナ・デ・アルマス
(「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」)

●功労賞
ダニエル・クレイグ
(「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」)

●特別功労賞
千葉真一(8月19日逝去・享年82歳)

●特別賞(劇場外作品)
ザ・ホワイトタイガー
(NETFLIX映画)

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詳しい映画評は、こちらをクリックして下さい

 

こうして、今年もすべての一条賞が決定いたしました。
もちろん、ここで発表した10作品+1作品以外にも素晴らしい映画はたくさんありました。そのすべてが、わたしの「こころ」に強い影響を与えてくれました。本とともに、映画は「こころの食べ物」です。みなさまも、ぜひ、たくさん良い映画を観て、こころを太らせて下さい!

 

死を乗り越える映画ガイド あなたの死生観が変わる究極の50本

死を乗り越える映画ガイド あなたの死生観が変わる究極の50本

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2016/09/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

2021年12月30日 一条真也

一条賞(読書篇)発表! 

一条真也です。
わたしは日々、多くの本を読んでいます。
その感想は当ブログ、および「一条真也の読書館」で発表しています。ここ数年、「一条賞(読書篇)」と称してベストテン・ランキングを作成していたのですが、2018年からみなさまにもお知らせすることにしました。「一条賞(読書篇)」の選考対象となるのは、刊行年やジャンルに関わらず、今年(2021年)に読んだすべての本です。それでは、第10位から発表していきましょう!

 ●第10位

あるヤクザの生涯 安藤昇伝

あるヤクザの生涯

石原慎太郎幻冬舎

詳しい書評は、こちらをクリックして下さい

 

●第9位

昭和プロレス 禁断の闘い: 「アントニオ猪木 対 ストロング小林」が火をつけた日本人対決

昭和プロレス禁断の闘い

福留祟広著(河出書房新社

詳しい書評は、こちらをクリックして下さい

 

●第8位

ポップス歌手の耐えられない軽さ (文春e-book)

ポップス歌手の耐えられない軽さ

桑田圭祐著(文藝春秋

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●7位

黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄

黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄

聴き手・構成=春日太一文藝春秋

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●6位

岸惠子自伝

岸惠子自伝

岸惠子著(岩波書店

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●第5位

逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知

逆・タイムマシン経営論

楠木健&杉浦泰著(日経BP)

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●第4位

ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来

山口周著(プレジデント社)

詳しい書評は、こちらをクリックして下さい

 

●第3位

ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

ブルシット・ジョブ

デヴィッド・グレーバー著、酒井隆史&芳賀達彦&森田和樹訳(岩波書店

詳しい書評は、こちらをクリックして下さい

 

●第2位

52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

町田そのこ著(中央公論新社

詳しい書評は、こちらをクリックして下さい

 

●第1位(大賞)

ぎょらん

ぎょらん

町田そのこ著(新潮社)

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あらゆる本が面白く読める方法

あらゆる本が面白く読める方法

 

 

あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)の著者であるわたしの場合、本来、読んだ本にランキングをつけるという行為はふさわしくないのかもしれません。
しかしながら、出版文化のためにも「本当に面白かった本」「感動した本」「時代を的確にとらえている本」「後世に残したい本」などは明確に示す必要があると思います。自分でも、多くの人の方々の心に残り、人生に影響を与えるような本を書きたいものです。
ということで、今年の「一条賞(読書篇)」大賞は『ぎょらん』に決定しました。著者の町田そのこ氏には、来年1月9日に松柏園ホテルでお会いする予定なので、ぜひ表彰状をお渡ししたいと思います。30日正午には「一条賞(映画篇)」を発表します。どうぞ、お楽しみに!

 

死を乗り越える読書ガイド 「おそれ」も「かなしみ」も消えていくブックガイド
 

 

2021年12月30日 一条真也

年越大祓式 

一条真也です。
いよいよ年の瀬も大詰めであります。
29日は、サンレー本社の御用納めでした。この日は恒例の大掃除で、社長室の片付けをしました。例年は本とDVDと資料類が多すぎて苦労しますが、今年は新しい書架を4本も増やしたので、整理がスムーズにゆきました。それでも、大量の資料や郵便物の整理が大変でしたね。

f:id:shins2m:20211229155736j:plain年越大祓式のようす

f:id:shins2m:20211229155811j:plain最初は、もちろん一同礼!

f:id:shins2m:20211229150153j:plain今年も佐久間会長とともに

f:id:shins2m:20211229150607j:plain祝詞を奏上する神官

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会長とともに低頭

f:id:shins2m:20211229150550j:plain一同低頭

f:id:shins2m:20211229155931j:plain清め祓いのようす

f:id:shins2m:20211229151354j:plain玉串奉奠を行う佐久間会長

f:id:shins2m:20211229151411j:plain拝礼する佐久間会長

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拍手を打つわたし

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神前に拝礼するわたし

f:id:shins2m:20211229151608j:plain年越大祓式withコロナ

f:id:shins2m:20211229151723j:plain最後は、もちろん一同礼!

 

15時から、「年越大祓式」が執り行われました。例年はサンレー本社の4階で行うのですが、昨年からはわが社が誇る儀式の殿堂である小倉紫雲閣の大ホールで行われています。わが社は「礼の社」=「セレモニー・カンパニー」なので、節目の儀式は必ず行います。皇産霊神社の瀬津神職が、この1年の厄を祓ってくれました。最初に佐久間進会長、続いて社長のわたしが玉串奉奠しました。わたしは、創立55周年を迎えたこの1年間、何事もなく会社と社員が無事であったことに心からの感謝の念を込めて、深々と拝礼しました。そこにいた全社員も一緒に二礼二拍一礼しました。

f:id:shins2m:20211229152001j:plain挨拶する佐久間会長

 

神事の後は、佐久間会長が挨拶をしました。佐久間会長は「みなさん、今日1日お疲れ様でした。というより、今年1年お疲れ様でした。おかげさまで、わが社は大過なく1年を過ごすことができました。最近、オミクロンというのをよく聞きますが、わたしはオラシオンに似ていると思いました。オラシオンはわが社の生花会社の名前ですが、『祈り』という意味があります。どうか、オラシオンの祈りでオミクロンを消し去り、コロナ禍を終わらせてしまいたい」と述べました。わたしは、「会長は、素晴らしいことを言うな!」と思いました。 

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オミクロンからオラシオンへ!

 

それから、佐久間会長は「本当に良い仕事、ありがたい仕事をさせていただいていると思っております。冠婚葬祭は、どんな試練があっても、けっして廃れないものであると確信しています。みなさま、どうか、身体に気をつけて良い年をお迎えください」と述べました。86歳になる佐久間会長ですが、話す時は声にも張りがあり、矍鑠としています。今年は「オミクロンからオラシオンへ!」発言まで飛び出しました。

f:id:shins2m:20211229160302j:plain今年最後の社長挨拶をしました

 

神事の後は、わたしが今年最後の社長挨拶をしました。わたしは、冒頭に「礼の社であるサンレーは儀式に始まり、儀式に終わる!」と言いました。それから、みなさんの1年の労をねぎらいました。「新型コロナウィルスの感染拡大は冠婚葬祭業界にとってはまさに業難でした。この試練の2年を耐え抜き、闘い抜き、わが社はなんとか今年も黒字で終えられそうです。本当に、ありがたいことです。みなさんのおかげです。心より感謝を申し上げます。どうか、この前代未聞の2年間を生き抜いたことに誇りを持って下さい。そして、近い将来に必ず業績を元に戻しましょう!」と言いました。

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マスクを外しました

 

また、パープルの不織布マスクを外しながら「いま、会長が言われた『オミクロンからオラシオンへ』という発言は素晴らしいと思います。どちらも『オ』で始まり『ン』で終わりますが、これは世界の始まりと終わりを暗示しています。これがキリスト教では『アーメン』となり、仏教では『オウム』となる。まさにオラシオンとは『祈り』であり、儀式産業の根幹をなすものです。時代の流れとともに儀式の形式は変化しても、根底にある『祈り』だけは変わりません!」と言いました。

f:id:shins2m:20211229152253j:plain儀式産業は「祈り」の仕事です!

f:id:shins2m:20211229152655j:plain熱心に聴く人びと

 

また、以下のような話もしました。最近、わが社の社会貢献事業が熱い注目を集めています。わたしは多くの新聞社からインタビュー取材を受けましたが、みなさん、『なぜ、このような社会貢献事業をされるのですか?』と質問をされました。わたしは、「わが社の本業である冠婚葬祭互助会はソーシャル・ビジネスだからです」とお答えしました。ソーシャル・ビジネスとは、高齢者や障がい者の介護・福祉、子育て支援、まちづくり、環境保護地域活性化など、地域や社会が抱える課題の解決をミッション(使命)として、ビジネスの手法を用いて取り組むものです。

f:id:shins2m:20211229152637j:plainSAPについて話しました

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熱心に聴く人びと

 

「人間尊重」としての礼の精神を世に広める「天下布礼」の実践です。冠婚葬祭衣装の無償レンタル、天然温泉の無料体験&子ども食堂の開設・・・・・・これら一連の活動をサンレーズ・アンビション・プロジェクト(SAP)と呼びますが、これは、SDGsにも通じています。SDGsは環境問題だけではありません。人権問題・貧困問題・児童虐待・・・・・・すべての問題は根が繋がっています。そういう考え方に立つのがSDGsであるわけです。その意味で入浴ができなかったり、満足な食事ができないようなお子さんに対して、見て見ぬふりはできません。

f:id:shins2m:20211229161221j:plainアンビショナリー・カンパニーを目指そう!

 

「相互扶助」をコンセプトとする互助会こそはソーシャル・ビジネスであるべきです。基本がソーシャルビジネスである冠婚葬祭互助会ほど大志を掲げ、かつ、それを果たせる業界はないと思います。『サンレーが発展すればするほど日本が良くなる』という気概をもって、頑張っていきましょう。高い志を抱くアンビショナリー・カンパニーを目指しましょう!」と述べてから、「どうぞ、みなさん、良いお年をお迎え下さい!」と締めくくりました。

f:id:shins2m:20211229152852j:plain末広がりの五本締め」で中締め 

 

この後、例年だと飲食を伴う直会があります。しかしながら、昨年同様に今年も直会は行いませんでした。最後は、中締めです。以前はわたしが自衛隊の出身である國行部長に「自衛隊方式でお願いしますよ!」と声をかけたので一本締めでしたが、今年は松田常務(北九州本部長)による「末広がりの五本締め」で中締めとなりました。

f:id:shins2m:20211229161715j:plain1年間、お疲れ様でした! 

 

松田常務の気合の入った挨拶と掛け声で、「末広がりの五本締め」は見事に決まりました。今年も無事に年を越すことができ、社員のみなさんと「良いお年をお迎え下さい」と挨拶できて、わたしは本当に幸せです。来年も「天下布礼」を推し進めていきたいです!

 

2021年12月29日 一条真也

企業成長の鍵は「使命と志」

一条真也です。
29日は、サンレー本社の仕事納めです。
朝から社長室の片付けなどをしていますが、「ふくおか経済」2022年新年号(1月号)が届きました。ブログ「『ふくおか経済』取材」で紹介したわたしのインタビュー記事が掲載されています。

f:id:shins2m:20211229102525j:plain「ふくおか経済」2022年新年号

 

記事は、「2022年の抱負」のコーナーで、「企業成長の鍵は『使命と志』」「子ども食堂児童養護施設へ支援」「佐久間庸和 サンレー社長」の見出しで、以下のように書かれています。

―創業55周年記念出版『アンビショナリー・カンパニー』を発刊されました。
佐久間 社長就任から20年となり、公開社長訓示としてグループの指針をまとめた4冊目の著書となりました。おかげさまで好評をいただいており、儒教研究の第一人者である大阪大学名誉教授の加地伸行先生との対談をまとめた『儒教と日本人』も2月に出版予定です。

―著書の中で「志」の重要性を説かれていますね。
佐久間 これから企業に求められるのは、ミッション(使命)とアンビション(志)です。「志」は「夢」と混同されがちですが、個人の幸せや目標達成を目指す「夢」だけではなく、世の人々の幸せを願う「志」を持つことで、応援者が生まれ、その願いは叶いやすくなります。吉田松陰の言葉に「志なき者は虫(無志)である」とありますが、これはつまり「志あるものは無私である」ということです。「私」ではない「志」を持つことこそがソーシャルビジネスの根幹にあると言えるでしょう。その1つとして、12月に当社が指定管理者である福智町温浴施設「ふるさと交流館 日王の湯」で、子ども食堂を開催しました。天然温泉での子ども食堂は全国的にも珍しく、大変喜ばれており、毎月第2火曜に開催していきます。
北九州市内の児童養護施設の入所者向けには、七五三や成人式の晴れ着を無償レンタルする活動も始めました。衣装一式のレンタルに加えて、ヘアメークやプロカメラマンによる写真撮影まで当社が負担します。通過儀礼は子どもの存在や成長を肯定し応援するもの。これは生きる上で非常に大切であり、力になれることを嬉しく思います。

儀式がつなぐ持続性のある未来

―SDGsの実現に向けても貢献されていますね。
佐久間 冠婚葬祭はSDGsに深く関係しています。公に夫婦を証明する結婚式で秩序ある関係性を築き、大切な人の死の悲嘆を葬儀という儀式で軽減してきたからこそ、人類は「こころ」を安定させ、持続できてきたというのが私の持論です。これからはさらに一歩進み、死を「人生の卒業」と捉えることが必要でしょう。人は必ず死を迎えるのに不幸と捉えてしまえば、不幸に向かって生きていることになってしまいます。そして冠婚葬祭互助会は、儀式を執り行うことだけではなく、人生の卒業に向けて元気と夢や希望を与えるものとして、相互扶助の精神で生きるための応援団であるべきです。

―佐久間社長が提唱されてきた「グリーフケア士」の資格認定制度も始まりました。
佐久間 全国610人の有資格者のうち、当社スタッフが107人を占めています。当然、日本一の人数ですが、今年は200人まで増やしていきます。そして被災地などに派遣することも考えています。

―最後に抱負をお願いします。
佐久間 儀式の必要性の啓蒙活動とともに、社会に老いの豊かさを提言していきます。事業戦略としてはコミュニティホール「紫雲閣」を新たに5施設出店し、95施設体制を目指す方針です。また、実は国家的ビッグプロジェクトにアドバイザー的な立場で関わるかもしれず、その場合は成功に向けて力を尽くしていきます。

 

 

2021年12月29日 一条真也

『あるヤクザの生涯』

あるヤクザの生涯 安藤昇伝

 

一条真也です。
今年最後の書評ブログをお届けします。
『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』石原慎太郎著(幻冬舎)を読みました。あの石原慎太郎が、伝説のヤクザである安藤昇について書くということだけでも驚きですが、さらに驚いたのは本書を読むことを薦めてくれたのが父だったことです。父は生前の安藤昇に会ったことがあるそうで、「それはもう、大した貫禄だった」と言っていました。

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本書の帯

 

本書のカバー表紙にはタバコをふかす安藤昇の顔写真が使われ、帯には「男の最大の武器は知力と色気、そして暴力!」「特攻隊員、愚連隊、安藤組組長、映画俳優・・・・・・ハジキか女を抱いて寝るような、その破天荒な生き様をモノローグで描ききる圧巻のノンフィクションノベル!」と書かれています。

f:id:shins2m:20210924123057j:plain本書の帯の裏

 

帯の裏には、「あんた『雪後の松』という詩を知っているかい。昔、ある坊主から教わったんだ。『雪後に始めて知る松柏の操、事難くしてまさに見る丈夫の心』とな。男というのは普段の見かけがどうだろうと、いざと言う時に真価がわかるものだ。松の木は花も咲かず暑い真夏にはどうと言って見所のない木だが、雪の積もる真冬には枝を折るほどの雪が積もっても、それに耐え、青い葉を保っている。それが本物の男の姿だというのだ。俺はこの詩が好きなんだ。(「長い後書き」より)」とあります。

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アマゾンより

 

安藤昇は、ヤクザから俳優に転身した異色の映画スターでした。少年時代は少年院に収容されるなど荒れた生活を送りました。1952年(昭和27年)には不動産の売買や飲食店の用心棒、賭博なども手掛ける東興業を設立。後に「安藤組」と呼ばれる一大組織となり、組長として1000人を超える組員を率いました。その中には、「最強の喧嘩屋」と呼ばれた花形敬や作家の安部譲二らもいました。



1958年(昭和33年)に、後にホテルニュージャパン社長となる実業家の横井英樹とトラブルになり、組員を伴って襲撃事件を起こしました。恐喝などの容疑で指名手配を受け、都内で逮捕。6年間の服役後、64年に安藤組を解散。翌65年に手記『激動』を映画化した「血と掟」に主演して映画俳優に転向し、松竹と専属契約を結びました。精悍なマスクに、左ほおに本物の刀傷がある元ヤクザの迫力もあり、たちまち人気俳優となりました。



本書の冒頭を、著者は「人間の本性はそう簡単に変わるものでありはしない。ましてその時代が人間を生きにくいものにすればなおさらのことだ。特にあの大きな戦争が惨めに終わった後の混乱は腹の立つことばかりだった。あのでかい戦は負けはしたが、それなりに意味があった。この俺もそれを信じて死ぬ覚悟で兵隊になり、志願して特攻隊員にもなったのだ」と書きだしています。兵隊になったことについては、「軍隊と言えば、襟に付けている星が一つ違うだけで絶対の秩序が成立する世界なのに、その中で俺一匹が小さなナイフをかざして俺の言い分をまかり通したという体験は、結局俺の一生を支配する強い信念になったと思う。それは人間の世の中のある部分では、理屈ではなしに理屈からはみ出た暴力が事を容易に左右するという、人の世の隠れた原理への自覚だった。そして俺はそれを選んだ」と書かれています。


戦後、安藤昇は渋谷を本拠に「安藤組」を立ち上げますが、組員の中でも最も有名だったのが「ステゴロ最強ヤクザ」との異名を持っていた花形敬でした。花形が安藤の子分になるとき、花形は殊勝に手をつき、安藤の下で働く約束をしますが、そのときの様子が以下のように書かれています。

 

 その時、テーブルに殊勝に手をついて頭を下げる彼に言い渡した。
「いいか花形、お前の命はこれからこの俺が預かる。生きるも死ぬも俺が決める。勝手なことは許さない。それでいいな」
「結構です」
    とあいつも強く頷いた。
    それからの彼はうちの看板の戦力となった。
    しかし、俺から眺めるとあいつは一種の二重人格だったな。頭がいい癖に粗暴で、何かが気に障ると紙の裏表が引っ繰り返るように人間が一変してしまう。そんな男の手綱はこの俺しか引けはしなかったろう。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.67~68)


花形敬といえば、あの「日本プロレス界の父」である力道山も恐れた男として知られています。本書には、「男同士の力ずくのいざこざで俺の組の存在感が高まり、世間の耳目を集めたのは、当時人気の高かったプロレスラーの力道山との軋轢だった。相撲の関脇からプロレスラーに転じた彼は外人のレスラーを痛めつけるショウで人気を高め、戦後のアメリカ支配に鬱屈していた国民の憂さ晴らしを代行していることで国民的な人気があったが、それを良いことに増長し、酒癖も悪く顰蹙を買うことが多かった」と書かれています。


安藤組は、地元の博徒落合一家と縁の深いテキ屋の武田組との小競り合いが続いていました。武田組との全面衝突を避けるべく、安藤は武田組の大親分筋の巻頭一円を仕切っている尾津組の親分に掛け合おうとします。懐に拳銃を忍ばせて尾津の自宅を早朝に訪ねた安藤は、尾津から奥の応接間に通されます。緊迫したやり取りの後、尾津組長は以下のように言いました。

 

「武田にどんな事情があるのか俺にはわからねえが、俺が呼びつけて話してやるよ」「で――」
 身を乗り出していった俺を手で制して、
「わかってる、わかってるよ。もう言うな、アハハハハ」
    笑い飛ばされて終わりだった。その後、
「おうい、酒を持ってこい」
    言われて若い者が持ってきた日本酒を、並べた茶碗に自ら注いでくれた。
    その手が緊張で微かに震えているのを俺は見届けた。
(よし、これでこいつには勝った)
    密かに俺は思った。
    あれは俺の生涯にとっても大層な教訓だった。暴力はこちらも死ぬ覚悟で使わなくては本当の役には立たぬという人生の真理の体得だった。あの大親分の尾津が俺たち若造の前で媚びて震えながら酒を注いでくれたのだ。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.86~87)

 

尾津組長には勝った安藤でしたが、ある人物に貫禄負けします。異色の実業家・横井英樹です。後にオーナーを務めるホテルニュージャパンの杜撰な管理によって火災事故を起こしたことで知られる横井を安藤は日本橋のデパート・白木屋の株取得の際にサポートしましたが、安藤組の賭場の常連だった元山富雄社長から依頼を受けます。用件は白木屋の大株主になっていた横井の債務の取り立てでした。安藤は、腕の立つ舎弟の千葉一弘を連れ、懐に拳銃をしまって元山と一緒に出かけました。通された部屋には先客が3人いましたが、安藤が座るなり取り出した拳銃をテーブルに置いたら全員が仰天して離席しました。しかし、まったく動じず、金を返すつもりがないばかりか、安藤のことをチンピラ扱いし、出されたコーヒーをすする安藤に「まったく、うちじゃヤクザの借金取りにまでコーヒーを出すんだからな」と吐き捨てるように言った横井の一言に安藤がキレました。

 

 この男に一杯のコーヒーで蔑まれる覚えはなかった。
   この俺とて一介のチンピラから伸し上がって今では少しは名の通った男になっているのだ。その俺と同じように無名無一文の身から這い上がってきた男に、ある種の共感こそ抱いていたが、無理算段で掠めてきた金の多寡が違うことで蔑まれたなら俺の男としての自負が成り立たない。
   ならばこの場で、この男をこの手で殺して俺という男を立てて見せてやろうかと思い、テーブルに置いてあるものに手をかけ直した。
   しかし、その手を横にいた元山さんが慌てて取り押さえた。
   それを見て横井が鼻でせせら笑って、
「お前さん本気かね。お前みたいなチンピラが俺みたいな名の通った経済人を殺したら、すぐに死刑か、まず無期だな。だから帰れ、帰れよ。そのほうが身のためだ、バカはよせよ」
   言われたら元山さんが手をかけ強く俺を制したので、立ち上がり、
「覚えていろよ」
   捨て台詞を吐いて部屋を出てきてしまった。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.94~95)


拳銃を前にして、「帰れ」と言い放つ横井も大したもので、後日、「あれは俺の貫禄負けだった」と安藤は著者に語ったそうです。しかし、どうにも腹の虫が収まらず、自分を喪いかけていたことに気づいた安藤は「よし、このまま引き返してあの野郎をやっちまおう」と言ったら、子分の千葉が「それはやばいですよ。あなたはここにいてください。あいつは俺一人でやります。あなたが捕まってしまったら組はどうなります。俺一人でならどこへでも隠れられるし、外国に逃げてもいいんですから。あなたが直にやるのは絶対にやめてください。頼みますから俺一人で」と懇願するので、安藤も「そうか、わかった。そうしよう。その代わり殺すな。心臓は外して右側の肩にでもしておけ」と言いつけ、千葉を送り出したそうです。これが「横井英樹襲撃事件」の真相でした。

 

 

さて、横井英樹襲撃事件で逮捕状が出された安藤は、逃亡中に女たちのもとを渡り歩きます。とにかく安藤はモテたようで、34日間の逃亡中にはなんと7人の女がいたとか。その中には、作家の山口洋子、女優の嵯峨美智子などもいました。わたしのような凡人から見ると羨ましいのを通り越して、一種の求道者精神のようなものさえ感じてしまいあますが、そのときのことが本書には以下のように書かれています。

 

 警察の目をごまかして転々と放浪する経験はまたとないもので、俺の第三の人生とも言えそうな新しい張りがあった。中でも俺が愛した女たちの誠意は厄介な出来事の最中だけに如実に身に染みて感じられ、今までのそれとは次元の異なる男と女の繋がりを感じさせてくれた。とりわけ世間にすでに名の知れて通った、後に直木賞を受賞する作家の山口洋子や女優の嵯峨美智子などは指名手配された俺を匿ったことが知れれば致命的なことにもなったろうが。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.104)

 

34日間に渡る逃亡劇の末、安藤は葉山の別荘に警察に踏み込まれて、ついに逮捕されます。どうせなら、武士の嗜みとしてオシャレをしていこうと、安藤は真新しい下着に仕立て下ろしの紺の背広、チェック柄のシャツ、ブルーのストライプのネクタイを締めて手錠を受けます。それから葉山警察署、さらに神奈川県警から護送車で東京へ向かいます。臨時ニュースで聞いたらしく沿道には見物人が溢れていたそうです。桜田門の警視庁前には500人ほどの野次馬と報道陣が待ち受けていました。

 

 車から降りた途端、カメラマンたちが俺を取り囲んだ。口々に「もっとゆっくり歩いてくれ」「こっちを向けよ」、それには応えず俺は黙ったまま取調室までの百メートルを十分もかかって歩いた。その間、一度だけカメラに向かってにっこり笑ってみせた。あれは山口洋子との約束だった。
「もし捕まったら、その時は私に向かって笑ってみせてね」
   と彼女は言ったのだ。その約束を俺は果たしてやったのだ。あれは俺たちの別れの儀式だった。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.112)



逮捕された安藤は6年間服役した後、安藤組を解散します。1965年、自らの自叙伝を映画化した『血と掟』(松竹配給)に主演し映画俳優へ転向。この作品がヒットを記録し、松竹と契約金2000万円、1本当たりの出演料が看板女優である岩下志麻を凌ぐ500万円で専属契約を結びました。その後、67年に東映に移籍。この移籍は本来なら五社協定違反でしたが、映画界の慣習を知らない安藤が松竹に「(五社協定なんて)知らない」と言うと、それで通ってしまったといいます。長身ではありませんが、端整な顔立ちに曰くありげな左頬の傷跡、有名暴力団の元組長という類い希な経歴から、数々のヤクザ映画に出演し、人気を博しました。

 

 引退した後、ある週刊誌に載せた俺の自伝が映画化され、大当たりしたのがきっかけで心ならずも映画に俳優として出ることにもなった。これはいい実入りになったのでずるずる居座ったが、映画は所詮作り事で命を張っての緊張がある訳でもなし、誰かが言っていたが男子一生の仕事と思えもしなかった。それにしても俺が死にもの狂いで生きてきた世界の焼き直しの作り物が世間であんなに受けるというのは、人間の本性の裏側に暴力という禁忌なエネルギーへの渇仰が在るに違いない。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.134)

 

 安藤は、自分が引退した後に出た映画による人気など、これまでの命懸けの綱渡りへの喝采の余禄でしかないと考えていました。松竹・日活・東映各社で多くの主演作を持った安藤は、自ら主題歌も歌い、レコードも数枚リリースしています。俳優となった後も暴力団関係者との交流は続いており、友人がある一家の跡目を襲名した際には、その記念に開かれた賭場に顔を出し、後日警察に逮捕されています。安藤の話によると、この時警察で著書へのサインを頼まれたとか。79年、東映映画「総長の首」出演を最後に俳優を休業。これ以降はごく希にVシネマに客演する程度で、Vシネマのプロデュースや文筆活動に勤しんでいました。

 

 人生はラグビーのボールだとも言うが、地面に落ちた時、どっちに跳ねるかわかったものじゃない。俺がつくった安藤組はヤクザの組織とは違って愚連隊の集まりだから、ヤクザのような仕来りは一切ありはしなかった。俺と舎弟たちとの繋がりは口頭での繋がりだけで盃を交わしたりもせず、ヤクザとは全く違っていた。それが弱みでもあり強みでもあった。それに俺は舎弟たちに入れ墨は一切させなかった。何かの落ち度で指を詰めるなどということもさせなかった。着る物も並みの勤め人と同じにさせていた。その仕来りが不良の学生たちには馴染みやすいものに見えたろう。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.135)

 

 思えば俺の一生というものは並の人間たちとは違ったものだった。聖人してから脂の乗り切った俺はいつもハジキか女を抱いて寝るような生き様だった。いつも惚れた女のいない人生なんてこの俺には考えられない。そんな人生なんて何の感動もありはしまい。惚れた女の存在だけが男の人生を彩ってくれるのだ。女のことを『色』とも言うが、女こそ男の人生の彩りなのだ。あの俳句の名人の芭蕉のような渋さに徹した男でさえ『万婦ことごとく小町まり』と言っていたそうな。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.142)

 

 思い返してみれば、十九歳で特攻隊に志願した時、俺の人生は終わったと覚悟したな。終戦を迎えて後の人生は余禄だと思った。顔を切られた時、これで一生をヤクザで終わると腹を決めたよ。前を見つめながら一直線に必死で走ってきたつもりでも、ふと立ち止まり、振り返ってみると、その曲折には唖然とさせられるな。生きようとして叶わず、死のうとしても叶わず。己の知らぬところで運命は決まっていくものなのだなあ。俺の座右の銘は柄にもなく「心善淵」。「心、淵を善とする」だが、つまり変化する速い川の流れの中で深く澱んで静かな淵がいい、深く澱んで静かな川のようになりたいものだが、この年齢になっても俺はまだまだ血が騒ぐんだ。
(『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』P.146)


「長い後書き」の冒頭を、著者はこう書きだしています。
    晩節の私が今さらこんな本を書いたことに世間は顰蹙するかもしれないが、肉体派の私にとって死を背景にした暴力なるものは、目を背けることの出来ぬ人生の主題だった。人生の過程にはさまざまな闘いが待ち受けるが、それを克服するためには時には理不尽な力を行使しなくてはならない。それは理性の範疇を超越した行為によってのみ達成され、人はそれを理不尽な行為を見なし、暴挙とも呼ぶが、その行為によってしか達成されぬ事柄が、この世には横溢している。(「長い後書き」)


著者があるとき訪れた八丈島で選挙の話になったとき、あの安藤昇が島に居を構えており、しかも著者を支持していると漏らしたと聞いて、著者は早速ある興味に駆られて過去の伝説を背負った男に会うことを決めました。そして、2人はついに会い、以下のような会話が交わされたといいます。

 

「この島の友達から、あなたがこの私を支持してくださっているとお聞きしましたので、改めて今後のお願いに参上したのですが」
「あんたは、この国は核兵器を持つべきだと言っているんでしょ。それは今時珍しいことだが、俺も同感だね」
「それは何故です」
   思い切って質した私に、薄く笑うと、
「だって相手が拳銃を持っているのに、こちらがドスだけじゃ喧嘩にならないからね。そんな当たり前の道理が何故通らないのかねえ。私みたいな渡世をしてきた人間にはわかりきった話だが、平和惚けしたこの世では通らない話なのかね。しかしあんただけはよく言ってくれたよな」(「長い後書き」)


この安藤の意見にはわたしも基本的に賛成です。しかし、「拳銃」や「ドス」という物騒な単語が出てきますが、若い頃から彼はつねに懐にジャックナイフを、ヤクザなってからは拳銃をしのばせて、相手を脅していたというのが正直ありカッコ良くいと思います。彼の分には「ステゴロ最強ヤクザ」と呼ばれ、力道山も避けたという花形敬や、國學院大學の空手部の元主将だった西原健吾もいたではないですか。西原は、奇妙な縁で石原慎太郎裕次郎の兄弟とも親交がありました。西原が森戸の浜で慶應の水泳部員7人と喧嘩したとき、一瞬にして全員をノックアウトした姿を眺めて、慶應の不良グループで副番長を務めていた裕次郎がしみじみ、「あいつは強い、本当に強いなあ」と慨嘆していたそうです。安藤昇もチャカやドスに頼るだけでなく、花形や西原のようにステゴロで漢を見せてほしかったと思います。そんな安藤昇も、2015年12月16日に89歳で永眠しました。

 

2016年2月28日、東京・青山葬儀所で執り行われた安藤昇の「お別れ会」には、北島三郎岩城滉一や梅宮辰夫なども訪れました。「人生の浮き沈みは人の世の常だが、それは誰のせいでもなく手前自身のせいだ。自分の進め方の選択は自分で決めるしかなく、たとえ誰か信用出来る仲間なり他人に相談して決めたとしても所詮自分の選んだことでしかありはしない。それを後になって悔いたり、ぼやいたりするのはみみっちい姿だ。何が起ころうと愚痴ったり嘆いたりせず、男は棺に入るまで毅然として生き抜きたいと思うがね」と言ったという安藤昇の言葉が胸に沁みます。最後に、ブログ『天才』で紹介した本で田中角栄を、本書で安藤昇の生涯を描いた著者には、昭和三部作の最後として、ぜひ三島由紀夫のノンフィクションノベルを書いていただきたいです!

 

 

2021年12月29日 一条真也