グリーフケア講演in横浜

一条真也です。
24日から横浜に来ています。
25日の朝の横浜は曇りでした。
10時過ぎからは雨が降り始めました。

f:id:shins2m:20210625095009j:plain
今朝の横浜は曇りでした

f:id:shins2m:20210625101914j:plain
本日の各紙朝刊をチェックしました

 

昨日、宮内庁の西村長官が定例会見で「天皇陛下がオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大に繋がらないかご懸念されている」と述べました。西村長官は昨日午後の定例会見で、「天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を大変ご心配されておられます」と発言し、大騒ぎになりました。わたしは朝一番でコンビニに行って新聞各紙を購入、関連記事をチェックしました。政治に関与できない天皇陛下としては宮内庁長官の「拝察」という形で、メッセージを発せられたのだと理解いたします。

f:id:shins2m:20210625123324j:plainパシフィコ横浜を背に

f:id:shins2m:20210625123716j:plain
さあ、これから出番です!

 

一雨降った後、10時半ぐらいから空が晴れてきました。13時から、 パシフィコ横浜で講演しました。「フューネラルビジネスフェア2021」シンポジウム内の講演ですが、「重要性高まるグリーフケアの意義と役割」という演題でした。作家の一条真也としてではなく、サンレーの社長としてでもなく、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の副会長でグリーフケアPT座長の佐久間庸和として登壇しました。

f:id:shins2m:20210625130421j:plain
鬼滅マスクで登壇しました

f:id:shins2m:20210625130437j:plain
グリーンはグリーフケアの色!

 

冒頭、進行役による本講座開設の趣旨と登壇者紹介がありました。わたしが市松模様の鬼滅マスクで登壇すると、どよめきが起こりました。わたしは「このマスクの緑色は、グリーフケアの色です。わたしは子どもの頃から緑色が好きでたまりませんでした」と言ってから、マスクを外しました。演壇にはパネルがあり、不要だと思ったからです。

f:id:shins2m:20210625130643j:plain
超満員になりました!

f:id:shins2m:20210625130716j:plain
資格認定制度の意義について

最初に、いよいよ今月からスタートした冠婚葬祭文化振興財団による「グリーフケア資格認定制度」の話から始めました。わたしは全互協のグリーフケアPTの座長として、ずっと資格認定制度の発足に取り組んできましたので、ついに開始のはこびに至り、感無量であります。グリーフケア資格者認定制度は、葬儀の施行に加え、サポートやケアなどのスキルを持った専門職(グリーフケア士)の育成が非常に重要になってきたため、創設されました。

f:id:shins2m:20210625130805j:plain
グリーフケア士とは

 

資格認定の対象者としては、①互助会事業者等に勤務している方②職務を通してグリーフケアの実践が必要な方(医師、看護師、介護スタッフ等)③悲嘆を抱えた方に寄り添いケアを行う方(遺族会患者会)④グリーフケアに関心の高い方となり、広く門戸を開き、資格として認定することで人材を育成していくものです。グリーフケア士の役割は人生の様々な節目において経験する〈ひと・もの・こと〉の深い喪失に際して、「丁寧に想い起こし、感謝し、祝福し、決別を十分嘆くための特別な場を整える(文化・伝統・宗教資源)」「グリーフを大切に憶え続ける心の準備を促す(ケア資源)」「グリーフを経験した自分を見守ってくれるコミュニティーの再構築を目指す(地域資源)」こととなります。

f:id:shins2m:20210625130842j:plain
会場のようす

 

この資格認定制度を行う意義として、グリーフケアが葬儀施行以外にも医療の現場を始め様々な現場で必要とされるものであり、グリーフケア士の育成を行うことでグリーフを抱える「悲嘆者」が日常の生活の中でケアされる健全で心ゆたかな社会を構築していくこととなります。また、この制度は、わたしが客員教授を務める上智大学グリーフケア研究所による監修のもと、葬儀業界関係者だけを対象とせず、多くの方が受験できるようにしています。

f:id:shins2m:20210625131056j:plain
パワポを使って説明しました

 

そしてグリーフケア士とは、その役割を果たすために、「悲嘆者」と誠実に向き合い、ライフサイクルの中で起こるグリーフの諸相を理解し、儀礼と傾聴を通して、悲嘆を抱えた方に寄り添いケアを実現する専門職です。グリーフケア士に認定された方には、その上位の資格である上級グリーフケア士の受験や、さらには高度なグリーフケアの能力を獲得するために上智大学グリーフケア研究所の「グリーフケア人材養成講座」の受講を推奨されており、そこではグリーフケアのマネジメント(指導・育成・管理)能力を会得することができます。

f:id:shins2m:20210625131229j:plain
テキストと試験について説明

 

グリーフケア士の資格試験は全国の試験会場にてインターネット経由で配信する試験形式(CBT方式)により、すべての曜日(祝日及び年末年始休業等を除く。2021年5月末時点での試験会場数は300会場)で受験することができ、試験結果の評価判定に基づいて資格の認定が行われます合格者には、認定の証として資格認定証(カード)が交付し登録されますまた、資格を所得すれば終わりではなく、知識やスキルの向上、また新たな情報の提供のため、登録者へのフォローを実施していくことも決まっています。具体的には、セミナーやワークの実施、定期的な機関紙の発行(年に1回)等などが検討されています。

f:id:shins2m:20210625131314j:plain
「サービス」から「ケア」へ!

f:id:shins2m:20210625133702j:plain
「ケアの本質」について

 

それから、「心のケアの時代」のテーマで話しました。「『サービス』から『ケア』へ」として、縦の関係(上下関係)であるサービスと横の関係(対等な関係)であるケアの本質を説いて、そのの違いを説明しました。「さまざまなケア」として、ヘルスケア、メンタルヘルスケア、コミュニティーケア、インフォーマルケア、ターミナルケア、緩和ケア、スピリチュアルケア、そしてグリーフケアについて説明しました。特に、無縁社会に加えてコロナ禍の中にある日本において、あらゆる人々の間に悲嘆が広まりつつあり、それに対応するグリーフケアの普及は喫緊の課題であると訴えました。さらには、「ケアすることは、自分の種々の欲求を満たすために、他人を単に利用するのとは正反対のことであり、相手が成長し、自己実現することを助けること」などのケアについての自分の考えを明らかにしました。

f:id:shins2m:20210625132031j:plain「心のエッセンシャルワーク」 を提唱

f:id:shins2m:20210625134304j:plain
ハートフル・エッセンシャルワーク!

 

葬祭業は、サービス業というよりもケア業です。他者に与える精神的満足も、自らが得る精神的満足も大きいものであり、いわば「心のエッセンシャルワーク」とでも呼ぶべきでしょう。厚生労働省が、今年度から「心のサポーター(ここサポ)」の養成を開始します。これは、うつ病などの精神疾患や心の不調に悩む人を支える存在で、精神疾患への偏見や差別を解消し、地域で安心して暮らせる社会の実現につなげる狙いです。全国で百万人の養成を目指しているそうです。地域社会における心のケアを目指すのなら、人と人とをつなぐ互助会との相性も良いはず。わたしは、「グリーフケア士」が、プロの「ここサポ」と位置付けられることを願っています。グリーフケア士を含む冠婚葬祭業こそは心のエッセンシャルワーク、そう、「ハートフル・エッセンシャルワーク」と呼ばれるでしょう。

f:id:shins2m:20210625133044j:plain「グリーフフル・ソサエティ 」について

f:id:shins2m:20210625133115j:plain
そのとき、会場が沸きました!

それから、「グリーフケア」について話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。

f:id:shins2m:20210625135531j:plain
「こころ」と「かたち」のメタファー

f:id:shins2m:20210625135639j:plain
儀式文化=冠婚葬祭+年中行事

2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまで実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会+コロナ禍=グリーフフル・ソサエティを超える方策についての私見を語りました。

f:id:shins2m:20210625135807j:plain
「礼欲」の発見

f:id:shins2m:20210625133639j:plainグリーフケアの時代が来た!

f:id:shins2m:20210625135929j:plain
ありがとうございました!

f:id:shins2m:20210625140349j:plain
盛大な拍手を頂戴しました


最後に、「時代のニーズに答えるためにグリーフケア資格認定制度はスタートしていきますが、皆様方にはこの資格認定制度をよく活用していただき、社会において必要不可欠な存在となるべく、そして共によりよい社会をつくっていく存在となっていただきたいと願っております」と述べて、わたしは講演を終えました。

f:id:shins2m:20210625140048j:plain
質疑応答で質問を受ける

f:id:shins2m:20210625140605j:plain
真摯に答えさせていただきました

講演後は質疑応答もお受けしました。質問者を募ったところ、なんとベルコの齋藤社長、日冠の小泉社長、出雲殿の浅井社長といった業界の超大物のみなさんがマイクを取り、素晴らしい質問をして下さいました。その1つ1つに、わたしは真摯に考え、答えさせていただきました。この日は全互協の仲間たちが揃っていましたので、安心感がありました。その後は、多くの方々と名刺交換をさせていただきましたが、みなさん、「グリーフケア士を必ず受験します!」と言って下さって嬉しかったです。コロナ禍にもかかわらず、大勢の方々にご参集いただき、本当にありがとうございました!

f:id:shins2m:20210625141301j:plain
多くの方々と名刺交換しました

f:id:shins2m:20210625141200j:plain
名刺交換のようす

 

その夜は「横浜の冠婚葬祭王」ことメモワールの渡邊社長(全互協副会長)の御好意で、中華料理の名店で打ち上げをしていただきました。本場・横浜の美味しい中華料理に舌鼓を打ちながら、わたしは業界の仲間との「業縁」の有難さを噛みしめ、この世が無縁社会などでなく、有縁社会であることを痛感しました。ふと夜空を見上げると、見事な月が上っていました。そう、今宵の月はストロベリームーンです。ストロベリームーンとは、アメリカ圏の6月の満月の呼び方です。6月はイチゴの収穫時期であり、その頃にちょうど月が紅くなることが多いことから、ストロベリームーンと呼ぶようになったそうです。Tonyさんにムーンサルトレター第195信を書かねば!

f:id:shins2m:20210624202148j:plain
横浜のストロベリームーン

 

2021年6月25日 一条真也