葬祭責任者会議

一条真也です。
28日の午後から、サンレーグループ葬祭責任者会議が行われました。わたしは、いつものように社長訓話を行いました。1時間にわたって話しました。


最初は、もちろん一同礼!


葬祭責任者会議のようす

 

最初にわたしは、8月19日に通夜式、20日に告別式が行われた義兄の葬儀について話しました。義兄は妻の姉の夫でしたが、わたしと同い年の60歳で亡くなりました。施行は東京の公益社さんのセレモニーホールで、火葬は東京博善社さんの幡ヶ谷斎場でした。遺族の1日として感じたことを色々話しました。

「互助会業界将来ビジョン報告会」について

 

8月21日には、ANAインターコンチネンタルホテル東京で一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の創立50周年記念式典、22日には、ホテルベルクラシック東京で、全互協の創立50周年記念行事が行われました。理事会の後、「互助会業界将来ビジョン報告会」が開催。互助会業界の若手経営者たちが苦心して作成した将来ビジョンは多くの示唆に富んでいました。


ハートフル・ソサエティの実現


熱心に聴く人びと

 

将来ビジョンの結論は、「即ち、『将来に向けて業界が目指すべき姿』は『生まれてから亡くなるまでの一人ひとりの暮らしがよりウェルビーイングなものになるように『健康』『交流』『助け合い』を軸として、個々の会員としての関係を深め、会員同士のつながりを広げることで『心ゆたかな社会=ハートフル・ソサエティ』を実現していくことにある』といえる」とありました。

サンレー思想が満載でした!

 

さらに、「まさに将来ビジョンとして、業界が掲げるべきは『冠婚葬祭産業からウェルビーング推進産業への昇華』であり、その事業活動を通じて、『感動』や『感謝』、『思いやり』に溢れる社会『ハートフル・ソサエティ』の実現に貢献していくことが求められていると考えている。」として、【一人ひとりにウェルビーイングな暮らしを届ける】」とまとめられていました。これを聴いて、わたしは非常に感動しました。互助会業界全体のビジョンに「心ゆたかな社会」「ハートフル・ソサエティ」「ウェルビーイング」が入ったことは画期的です。これは、サンレー思想そのものだからです。わたしには『ハートフル・ソサエティ』『心ゆたかな社会』『ウェルビーイング?』というタイトルの著書もあります。


言葉の矢を放つ

 

わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。それを「矢を放つ」と表現しています。新しい言葉(思想)とは一本の矢であり、それが放たれることによって、人々の心に刺さっていきます。そして、世の中は確実に変わり始めます。言葉には力があるのです。「ハートフル」も、「ロマンティック・デス」も、「グランドカルチャー」も、「結婚は最高の平和である」も、「死は最大の平等である」も、「有縁社会」も、「修活」も、「悲縁」も、「礼欲」も、すべてわたしが放った心の矢です。このたび、リメンバー・フェスという矢を放ちました。これは「お盆」をアップデートした言葉なのですが、ブログ「リメンバー・ミー」で紹介したディズニー&ピクサーの2017年のアニメ映画から発想したネーミングです。


「リメンバー・フェス」とは何か 

 

リメンバー・ミーは第90回アカデミー賞において、「長編アニメーション賞」と「主題歌賞」の2冠に輝きました。過去の出来事が原因で、家族ともども音楽を禁止されている少年ミゲル。ある日、先祖が家族に会いにくるという「死者の日」に開催される音楽コンテストに出ることを決めます。伝説的ミュージシャンの霊廟に飾られたギターを手にして出場しますが、それを弾いた瞬間にミゲルは死者の国に迷い込んでしまいます。カラフルな「死者の国」も魅力的でしたし、「死」や「死後」というテーマを極上のエンターテインメントに仕上げた大傑作です。


死者は二度死ぬ

 

わたしたちは、死者を忘れてはなりません。9月1日からクラインクインする映画「君の忘れ方」の原案である拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)で紹介しましたが、アフリカのある部族では、死者を二通りに分ける風習があるそうです。人が死んでも、生前について知る人が生きているうちは、死んだことにはなりません。生き残った者が心の中に呼び起こすことができるからです。しかし、記憶する人が死に絶えてしまったとき、死者は本当の死者になってしまうというのです。誰からも忘れ去られたとき、死者はもう一度死ぬのです。

「死者を忘れないこと」が大事!


熱心に聴く人びと

 

映画「リメンバー・ミー」の中でも、同じメッセージが訴えらえました。死者の国では死んでもその人のことを忘れない限り、その人は死者の国で生き続けられますが、誰からも忘れられてしまって繋がりを失ってしまうと、その人は本当の意味で存在することができなくなってしまうというのです。「死者を忘れないこと」は、死者へのコンパッションのためだけではなく、わたしたち生者のウェルビーイングのためでもあります。もともとお盆に関連した盆踊り、祇園太鼓、花火といったものは死者への「もてなし」でした。でも、生者も楽しむことができます。

「お盆」をアップデートせよ!

 

お盆は故人を供養することの大切さを再確認する大切な年中行事ですが、小さなお葬式、家族葬直葬、0葬といったように葬儀や供養に重きを置かずに薄葬化の流れが加速している日本にあって、お盆が今後もずっと続いていくかどうかは不安を感じることもあります。特に、Z世代など若い人々がどのように理解しているかもわかりません。そこで、「お盆」をアップデートする必要があります。

リメンバー・フェス」を提案

 

リメンバー・フェス」は、なつかしい亡き家族と再会できる祝祭ですが、都会に住んでいる人が故郷に帰省して亡き祖父母や両親と会い、久しぶりに実家の家族と語り合う祝祭でもあります。そう、それは、あの世とこの世の誰もが参加できる祭りなのです。日本には「お盆」、海外には「死者の日」あるいは「ハロウィン」など先祖や亡き人を想い、供養する習慣がありますが、国や人種や宗教や老若男女といった何にもとらわれない共通の言葉として、わたしは「リメンバー・フェス」という言葉を提案します。


未来はあまり明るくないな・・・

 

また、ブログ『未来の年表 業界大変化』で紹介した本の内容に言及。【物流】運転手不足で10億トン分の荷物が運べない、【インフラ】水道料金が月1400円上がる、【鉄道】駅が電車に乗るだけの場所でなくなる、【住宅】30代が減って新築が売れなくなる、【公務員】60代の自衛官が80代を守る、【金融】IT人材80万人不足で銀行トラブル続出・・・などの未来を紹介しました。

「多死社会」と「寺院消滅」について

 

その後、「多死社会なのに『寺院消滅』の危機――寺院業界に起きること」の「多死社会なのに寺院消滅?」「檀家制度が崩壊しつつある」「なぜ檀家が激減しているのか」「『無住寺院』『兼務寺院』の増加」「寺院が社会問題化する日」、「会葬者がいなくなり、『直葬』が一般化する――葬儀業界に起きること」の「盛り上がるエンディングビジネス」「『家族葬』が拡大する納得の理由」「超高齢者の葬儀の会葬者が少ない」「『直葬』を選ぶ人も」「葬儀業はローカルビジネスである」などの内容について紹介し、詳しく説明しました。

「死後離婚」と「夫婦別墓」について

 

さらに、ブログ『日本の死角』の内容についても言及。日本では「死後離婚」と「夫婦別墓」が増えていますが、認定NPO法人エンディングセンター理事長の井上治代氏によれば、そもそも「離婚」という言葉は、夫と妻の関係性を表わすものであって、「姻族関係終了届」のように、配偶者の死後に、自身と姻族(配偶者の父母兄弟姉妹)との関係を絶つことだけに「離婚」の語を使うのは適当ではないそうです。

これからの災害避難所について

 

また、わが社は災害避難所の提供も行っていますので、災害や紛争時の避難所について国際赤十字などが策定した最低基準(スフィア基準)に「世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保する」「1人あたり最低3.5平方メートル以上の広さで、覆いのある空間を確保する」「最適な快適温度、換気と保護を提供する」「トイレは20人に1つ以上。男女別で使えること」と定めていることを紹介。


礼業に心からの誇りを持とう!


最後は、もちろん一同礼!

 

最後に、二宮尊徳の話をしました。わたしが最も尊徳を尊敬する点は、心の底から農業に誇りを持っていたことです。ブログ『猛き黄金の国 二宮金次郎』で紹介した本宮ひろ志のコミックにも描かれていましたが、極貧の中にあっても、少年・金次郎は「父ちゃん、母ちゃん、おいらを農民に生んでくれて、ありがとう!」と田んぼに向かって叫びます。この場面が一番感動しました。人間の幸せとは「自分の仕事に誇りを持つ」ことに尽きます。わたしたちは、冠婚葬祭業という礼業に対して心からの誇りを持ちましょう。そこに、持続的幸福としての「ウェルビーイング」が生まれるのです。わたしは、そう訴えました。


懇親会の冒頭で挨拶しました


東専務の発声でカンパイ!

 

終了後は、久しぶりに懇親会も開かれました。懇親会は松柏園ホテルの「長浜」で開かれました。冒頭、社長であるわたしが挨拶をしました。わたしは、「じつに4年ぶりに葬祭責任者会議の懇親会が開けることを嬉しく思います。やはり、人間、オンラインだけではダメ。実際に顔を合わせて、酒を飲みながら語り合うのが一番です。今夜は大いに飲んで、意見交換して、有意義な夜になることを願っています!」と言いました。葬祭副本部長の東専務が「社長は、これまで多くの矢を放ってこられました。われわれは、その矢をしっかり受け取りましょう!」と言ってから乾杯の発声をしました。


最後は、黒木取締役が挨拶しました

最後は「末広がりの五本締め」で♪

 

松柏園の料理もいつもに増して美味しく、4年ぶりの懇親会は非常に盛り上がりました。わが社は冠婚葬祭を単なる商売としてだけでなく、社会が健全に持続するウェルビーイング装置であるととらえ、新しい葬祭部門のあり方も追求しています。幹部やスタッフのみなさんに対して、わたしは何よりも「この仕事に誇りを持て!」と言い続けています。みなさんコロナで不安もあったでしょうが、わたしの話を聴いて少しは安心してくれたようです。懇親会も終わりに近づき、沖縄の黒木取締役が締めの挨拶をしました。黒木取締役は「ウェルビーイングの追求とコンパッションの実践に努めましょう!」と訴えて、最後は「末広がりの五本締め」で楽しい時間は終わりました。みんなで「こころ」をひとつにして頑張ろう!

 

2023年8月29日  一条真也