今からでも中止だ中止!!

一条真也です。
14日の午後、東京から北九州に戻りました。
今回の出張はグリーフケア映画製作に大きな進展がありましたが、空港に到着すると、梅雨明けした北九州は気温が34度もあり、暑さで卒倒しそうになりました。その後、さらに卒倒しそうな驚愕のニュースが入ってきました。

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ヤフーニュースより

 

14日に東京都が確認した新型コロナウイルスの新たな感染者が1149人だったというのです。直近7日間の1日あたりの平均は823人で、前の週と比べて130.3%となりました。新たな感染者が1000人を超えたのは5月13日の1010人以来となります。強行開催まであと10日を切った東京五輪ですが、このままでは開催中に感染者が2000人以上になる可能性も出てきました。

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ヤフーニュースより 

 

このニュースも衝撃的ですが、それにしても信じられないのは、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が13日、都内で東京五輪パラリンピック組織委員会橋本聖子会長と面会した際に、公開で行われた会談の中で、日本国民に安全を訴えるつもりが、「最も大事なのはチャイニーズピープル・・・」と、日本人を中国人と言い間違えたことです。バッハ会長は、すぐに「ジャパニーズピープルの安全安心です」と言い直しましたが、これは超弩級の失言です。こんな失言、聞いたことないぞ!



東京都に4度目の「緊急事態宣言」が発令されたばかりの中で、五輪歓迎ムードが皆無といっていい日本人の感情を逆撫でするKY発言を繰り返してきたバッハ会長の発言は、さらなる反感を買いました。SNS上では「開催国がどこでも儲けさえすればいいんだろ」「本音が見えた」「もう頭の中は次の北京冬季五輪か」などと大炎上。この単なる言い間違いでは済まされない痛恨のミスは海外にも波紋を広げており、たとえば英「ガーディアン」紙は電子版で「IOCのバッハ会長が、日本の人々を“チャイニーズピープル”と呼んだことで、東京2020大会の開催に消極的なホスト国を味方につけようとする試みは、恥ずかしいスタートとなった」と否定的に報じました。


どうしても東京五輪を開催させたい日本人の中には、「単なる言い間違いではないか」と弁護する人もいるかもしれません。しかし、ブログ「菅発言はフロイト的失言?」にも書いたように、言い間違いにはその人の本心が反映されているという説があります。その説を唱えたのは、「精神分析学の父」であるジークムント・フロイトです。「フロイト的失言」(Freudian slip)という言葉があるのですが、言い間違いによって人間は思わずその本心や、無意識の願望などを表現してしまっているというのです。ある人が、誰かのお葬式に行き、遺族の方に「ご愁傷様です」と言うはずが、「おめでとうございます」と言ってしまったとします。それは「おめでとう」と言った人の心の中に、その人が死んで良かったという本心があるからだというのです。もっとも、言った本人さえ気づいていない無意識レベルの問題なのですが。


そもそも「ジャパニーズ」と「チャイニーズ」を言い間違えるということ自体が、わたしには信じられません。正直、場所が日本だから無事に済んだものの、もし北京五輪のときに中国で「チャイニーズ」を「ジャパニーズ」とか「チャイニーズタイペイ」とか言い間違えたら、習近平はきっと許してくれませんよ。日本国内だって、バッハ会長が行きたがっている広島で「世界で初めて核兵器の被害に遭ったのは中国人です」などとスピーチしようものなら、日本人も中国人も決して許さないと思います。というか、バッハよ、お前はウルトラ・スーパー馬鹿か?!


東京五輪について思い返せば、エンブレム選定のときから盗作問題が持ち上がっていました。その後も、新国立競技場の工事費の高額予算が問題になり、スペシャルサポーターとして関わるはずだったSMAPが解散。それを引き継ごうとした嵐が活動休止。福島との関わりが特に深かったTOKIO聖火ランナー辞退と、とにかくケチがつきまくりました。極めつけは、東京五輪組織委員会の森会長が女性蔑視発言によって辞任したことですが、「これで、もう東京五輪消えたな」と思っていたら、ダメ押しで開会式の演出トップの佐々木氏が渡辺直美さんの容姿侮辱問題で辞任しました。これだけケチがつき続けるのも珍しい!


天皇陛下東京五輪開催を心配されているという宮内庁長官の拝察発言もありましたし、最近も東京五輪の海外スタッフがコカイン所持で逮捕など、これからは毎日のようにバッド・ニュースが続く可能性さえあります。これでは、池江選手が金メダルを何個取ろうともイメージダウンは避けられません。強行開催まで日がない東京五輪ですが、じつは今からでも中止にした方が、このまま開催するよりも国税の負担は少なくて済みます。ここまでケチにケチがつきまくった東京五輪の開催はオリンピアの故郷であるギリシャのオリュンポス12神も、わが日本の八百万の神々も、決して望んでいないと思います。

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ヤフーニュースより


読売新聞の調査によれば、東京五輪強行開催のせいで、菅内閣の支持率は37%となり、昨年9月の内閣発足以降最低だった前回(6月4~6日調査)の37%から横ばいとなりました。不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となりました。不支持率が支持率を上回るのは今年5月から3回連続。支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるのは確実です。これが政権に批判的な朝日や毎日ではなく、政権寄りと見られている読売の調査というのも驚きですが、13日の時点でも「東京五輪は中止すべき」という人が50%というのが驚きます。互助会業界の人たちや社員が心配するのでもう東京五輪についての発言は控えようかと思っていましたが、これだけは言わずにはおれません!
今からでも中止だ中止!!

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2021年7月14日 一条真也

「東京リベンジャーズ」

一条真也です。
4回目の緊急事態宣言が発令された東京に来ています。
13日、いくつかの打ち合わせを済ませ、TOHOシネマズ日比谷で日本映画「東京リベンジャーズ」を観ました。ヤンキーが暴れる映画なんて観たのは、中山美穂がヒロインを務めた「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)、「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」(1986年)以来です。でも、タイムリープが登場する時間SFで、意外と面白かった!


ヤフー映画の「解説」には、「アニメ化もされた、和久井健のコミック『東京卍リベンジャーズ』を原作にしたSFアクション。どん底の生活を送る青年が元恋人を事故で失い、不良だった高校時代にタイムリープして事故の回避に挑む。監督を務めるのは『映像研には手を出すな!』シリーズなどの英勉。『とんかつDJアゲ太郎』などの北村匠海、『あの頃、君を追いかけた』などの山田裕貴、『羊とオオカミの恋と殺人』などの杉野遥亮のほか、今田美桜鈴木伸之、眞栄田郷敦らが出演する」と書かれています。

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「フリーターの花垣武道(北村匠海)は、高校時代の恋人・橘日向(今田美桜)と彼女の弟・直人(杉野遥亮)が殺され、その死に巨悪組織・東京卍會が絡んでいることを知る。その翌日、駅のホームで何者かに押されて電車が迫る線路に落とされる武道。目を覚ますと不良だった10年前にタイムリープしていた。そんな武道の前に直人が現れ、彼と握手した武道は再び現代に戻る」


なぜ、わたしは「東京リベンジャーズ」を観ようと思ったか? それは、まず、ブログ「映画『愛する人へ』の監督さんに会いました」で紹介したように、12日、わたしは拙著『愛する人を亡くした人へ』が原案のグリーフケア映画「愛する人へ」の第1回ミーティングに参加しましたが、そこでキャスティングが話題となりました。そして、同作の主演俳優候補がこの「東京リベンジャーズ」のメインキャストの1人であると知ったからです。その俳優のことはあまりよく知らなかったのですが、「東京リベンジャーズ」では異彩を放っていて、一発で気に入りました。

 

「東京リベンジャーズ」には、日本映画界の現在を代表し、未来を担う若手俳優たちが大量に出演しています。北村匠海山田裕貴杉野遥亮今田美桜鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也磯村勇斗間宮祥太朗吉沢亮という、じつに豪華なメンバーです。吉沢亮などは、東京卍會」という半グレ組織のリーダーを演じています。しかしながら、ブログ「『青天を衝け』スタート!」で紹介したように、NHKの大河ドラマで主人公の渋沢栄一を演じている真っ最中です。「吉沢亮、本当にこの役でいいの?」と思ってしまいますが、彼が演じるマイキーは倫理を重んじるリーダーで、渋沢栄一に通じるところがありました。渋沢が「論語と算盤」なら、マーキーは「論語と喧嘩」といった印象です(笑)。マイキーを演じた吉沢亮と同じか、それ以上に輝いていたのが、ドラケンを演じた山田裕貴(2人とも超イケメン!)です。まあ、「いま、旬の俳優」を知るために、若手人気俳優が一堂に会した「東京リベンジャーズ」をイケメンのカタログのような感じでチェックするのもいいかもしれません。


それから、ブログ「小倉高校の評議員になりました」で紹介したように、今月9日に母校を久々に訪れ、わが高校時代を思い出し、「高校生が主役の映画でも観るか」という気になったこともあります。この映画に出てくる高校の校舎や教室や下駄箱の感じとかも、なつかしかったです。わたしは高校1年生のときに教室で大喧嘩をしたことがあるのですが、相手は某中学の番長だった男で、名うての不良でした。でも、彼とガチの喧嘩をして以来、仲良くなったのでした。「東京リベンジャーズ」の喧嘩のシーンは派手でしたが、「ちょっとリアルじゃないよなあ」と思った箇所も多々ありました。映画だから、いいですけど。


俳優たちは20代半ばから後半の者が多く、高校生役にはトシを取っていますが、それなりによく似合っていました。ただ、女子高生役の今田美桜だけは「うーん」と言いたくなる違和感がありました。ショートカットがあまり似合いません。彼女はロングヘアの大人っぽい役の方が似合うのではないでしょうか。「福岡一かわいい女の子」などと言われた彼女ですが、本人は「橋本環奈さんがいるのに、申し訳ないです」と言っていました。福岡県在住のわたしも、福岡一は橋本環奈で、二番が今田美桜だと思います。橋本環奈といえば、ドコモのCMで浜辺美波と美少女共演していましたが、北村匠海ブログ「君の膵臓をたべたい」で紹介した映画で浜辺美波の恋人役、「東京リベンジャーズ」で今田美桜の恋人役を演じました。おいおい、それはちょっと、うらやましすぎるぞ!(笑)


さて、「東京リベンジャーズ」はタイムリープ・ストーリー、すなわち時間を遡る物語です。タイムリープは「時間跳躍」を意味する和製英語で、アニメ映画「時をかける少女」で登場した造語です。「やり直したい過去」や「変えたい過去」は誰もが持っているものであり、観客が共感できる部分が多いジャンルです。タイムリープをテーマにした作品は数多く作られています。切ない恋愛映画からSFアクション大作まで、ジャンルも多岐に渡っています。そして、このジャンルにはグリーフケアの要素が強いことも特徴です。愛する人を亡くした人なら、誰でも過去に遡って「愛する人が死ぬ未来」を「愛する人が死なない未来」に変えたいと思うのは当然であり、人情だからです。


「東京リベンジャーズ」では、主人公の武道が恋人・日向の弟の直人と握手をするとタイムリープが起こるというストーリーになっていました。まったく論理的ではなく、正直「なんじゃらほい?」という感じでしたが、理屈の合うタイムループというのはなかなか難しいもの。「タイムリープ」というテーマ、SF小説やSF映画、さらにはSFマンガなどで数え切れないほど描かれていますが、じつは矛盾なく描くのは至難の業です。日本が誇るSFマンガ「ドラえもん」をはじめ、多くの作品に“つじつまの合わない”タイムリープが散見されます。たとえば、ブログ「オール・ユー・ニード・イズ・キル」で紹介した2014年のトム・クルーズ主演作を観て、「?」と思った突っ込み所は正直言って多々ありました。


しかし、ブログ「テネット」で紹介したSF映画のタイムリープには「?」がありませんでした。「テネット」は、クリストファー・ノーラン監督が驚異のスケールで放つ、極限のタイムサスペンス超大作です。未知なる映像体験の連続に大いに興奮させられました。エントロピーを逆行させることのできる時間逆行マシンというのが登場するのですが、一応、理にかなっているというか、「ああ、その理論なら時間を逆行できるかもしれないな」と観ている者に思わせる不思議な説得力がありました。拙著『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)において、わたしは映画を含む動画撮影技術が生まれた根源には人間の「不死への憧れ」があると述べました。

死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)

 

写真は、その瞬間を「封印」するという意味において、一般に「時間を殺す芸術」と呼ばれます。一方で、動画は「時間を生け捕りにする芸術」であると言えるでしょう。かけがえのない時間をそのまま「保存」するからです。「時間を保存する」ということは「時間を超越する」ことにつながり、さらには「死すべき運命から自由になる」ことに通じます。写真が「死」のメディアなら、映画は「不死」のメディアなのです。わたしは同書に「だからこそ、映画の誕生以来、無数のタイムトラベル映画が作られてきたのでしょう」と書いたのですが、「テネット」の場合は単なるタイムトラベルではありませんでした。まったく新しく「時間」というものをとらえ直した印象でした。


ブログ「夏への扉―君のいる未来へ―」で紹介した日本映画も、タイムトラベルSFの古典を映画化したものです。この映画では、冷凍睡眠(コールド・スリープ)で未来に飛んだ主人公が技術者として人生をやり直し、そこから過去に飛んで、自分を陥れた連中にリベンジする場面は痛快そのもので、大いなるカタルシスを感じました。この物語は、冷凍睡眠やロボットやタイムマシンなどが登場するSFなのですが、それ以上に、絶望の底から回復する希望の物語であると思いました。そう、この映画は「東京リベンジャーズ」のようにグレート・リベンジの物語なのです。
観れば、勇気が湧いてきます!

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TOHOシネマズ日比谷のボックスシート

 

時間と復讐をテーマにした「夏への扉―君のいる未来へ―」と「東京リベンジャーズ」という日本映画の2作品が同時上映されていることは、4回目の緊急事態宣言の中にある東京砂漠に咲く2輪の花のように思えてなりません。わたしは、TOHOシネマズ日比谷のボックスシートで「東京リベンジャーズ」を鑑賞したのですが、快適かつ感染防止対策もバッチリでした。ちなみに、もしも、わたしが時間を遡ることができたら、3年前の中国・武漢に飛び、新型コロナウイルスの発生を防ぎたいです!

 

2021年7月14日 一条真也

映画「愛する人へ」の監督と初対面しました

一条真也です。東京に来ています。
12日から東京では4回目の緊急事態宣言が発出されましたが、その日の夕方、永田町にあるキャピトル東急ホテルで開かれた会合に出席しました。拙著『愛する人を亡くした人へ』を原案とするグリーフケア映画「愛する人へ」の第1回ミーティングです。

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映画関係者のみなさんと

 

このミーティングには、「愛する人へ」のエグゼクティブプロデューサーである志賀司氏、プロデューサーの益田祐美子氏も参加されました。そして、同作の監督を務める作道雄氏も参加、わたしは初めて作道監督にお会いしました。失礼ながら、わたしの第一印象は「若い!」でした。なんと、30歳だそうです。すごいなあ!


 「神さまの轍」予告編  


「いのちのスケッチ」予告編


「鬼ガール」予告編


「光を追いかけて」予告編

 

作道監督は、1990年大阪府茨木市生まれ。2009年、洛南高等学校卒業、2013年、京都大学法学部卒業。株式会社クリエイティブスタジオ ゲツクロ代表取締役京都大学法学部在学中に、劇団月面クロワッサンを旗揚げし、脚本と演出を務めました。監督作品に「神様の轍」(2018年)、脚本作品に「いのちのスケッチ」(2019年)、「鬼ガール」(2020年)、「光を追いかけて」(2021年)があります。

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死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)

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最期のセレモニー』(PHP研究所)

 

京大出身の作道監督は、知的で爽やかな方でした。何よりも、映画への深い愛情を感じました。偶然アマゾンで購入した拙著『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)を読まれて、わたしの名前を知っておられたそうです。今回、映画原案となる『愛する人を亡くした人へ』が同じ著者の本だと知って驚かれたのだとか。それ以来、わたしのブログもよく読まれているそうです。やはり、この世は有縁社会ですね。作道監督には、葬儀とグリーフケアの具体的エピソード集である『最期のセレモニー』(PHP研究所)を脚本作りの参考として、お渡ししました。

f:id:shins2m:20210712194920j:plain作道雄監督と初対面! 

 

作道監督とは、映画の話をたくさんしました。わたしが、「どんな監督さんの作品が好きですか?」と質問すると、「日本では是枝裕和監督、海外ではドゥニ・ヴィルヌーヴですね」と答えられました。ヴィルヌーヴは、ブログ「メッセージ」で紹介したSF映画の監督で、SF超大作「DUNE 砂の惑星」の公開を控えています。わたしが、「是枝監督は家族を描き、ヴィルヌーヴの映画は哲学的ですが、『愛する人へ』には両方の要素がありますよ」と言うと、作道監督はニッコリと笑ってくれました。

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作道雄監督と
 

愛する人へ」の脚本も作道監督自身が書かれます。この日渡された第一稿では、なんと小生が大学教授役でグリーフケアの講義をすることになっており、仰天しました。もしこれが実現したら、人生で3回目の映画出演となります。相済みません。最後に、作道監督は「お会いできて光栄です。『愛する人へ』は私の出世作、代表作となるような作品としたく、脚本開発から全力で取り組んでいます」との力強い言葉をいただきました。ここには詳しいことは書けませんが、キャスト案も具体的に出ました。ヒントは、主役の俳優は現在公開中の「東京リベンジャーズ」のメインキャストの1人です。いよいよ日本初いや世界初のグリーフケア映画「愛する人へ」が始動しました!


いよいよ映画化されます!

 

2021年7月13日 一条真也

4回目緊急事態宣言初日に東京へ!

一条真也です。
11日、福岡県の「まん延防止等重点措置」が解除されました。飲食店などへの時短要請も約3カ月ぶりになくなりました。12日の夜は小倉の繁華街に飲みに出たいとところですが、この日から東京に出張しなければなりません。ちなみに、東京は4回目の緊急事態宣言が発出です。

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北九州空港の前で

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メーテルが待っていてくれました

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いつも見送りありがとう💛


この日は、北九州空港からスターフライヤー80便で羽田空港に向かいます。こんな時期に何をしに東京に行くのかというと、拙著『愛する人を亡くした人へ』を原作とするグリーフケア映画「愛する人へ」の第1回ミーティングに参加するのが最大の理由で、同作品の監督さんに初めてお会いします。他にも、「グリーフケア資格認定制度」の進捗確認や「儀礼儀式文化学会(仮称)」の設立準備の打ち合わせ、さらには次回作の出版打ち合わせなどスケジュールがびっしり詰まっています。

f:id:shins2m:20210712110949j:plainラウンジで二重の黒マスクに交換 

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機内のようす

ラウンジから、紫と白の小倉織マスクから黒の不織布マスク&黒のウレタンマスクに交換。サンレー流通事業課の梅林課長が探してきてくれた超強力な二重マスクであります。プロレスの「スーパー・ストロング・マシン」にあやかったわけではありませんが、この「スーパー・ストロング・マスク」で、東京五輪開催のために世界中から流入している可能性もある変異株への感染を抑えたいものです。そのまま、スターフライヤー80便に乗り込みました。

f:id:shins2m:20210712115434j:plain機内では読書をしました 

 

機内では、いつものように読書しました。『日本人はもっと幸せになっていいはずだ』前田日明著(サイゾー)という本です。「日本を憂う最強・最後の論客、前田日明降臨!!!」という触れ込みで、日本が抱える尖閣竹島、コロナ、南海トラフなどの諸問題を鋭い舌鋒で斬っています。国民の怒りを著者が代弁した問題提起の書であり、一刻も早く日本国民が自国防衛に立ち上がるための啓蒙の書となっています。大変な名著で、著者が第一級の思想家であることがよくわかりました。著者は、プロレスと格闘技の世界におけるカリスマ的存在ですが、祖父が韓国の儒者であり、本書には儒教エートスが満ちています。そういえば、昔、「闘う為の論語」という著者のCDブックを聴いたことがありました。儒教論語といえば、ブログ「加地伸行先生と対談しました」で紹介しましたように、先週、日本を代表する儒者と対談させていただきましたが、いつか前田日明氏とも対談する機会を持ちたいですね!

f:id:shins2m:20210712130401j:plain羽田空港に到着しました

f:id:shins2m:20210712130636j:plain意外と人が多いです!

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満席でいつものラーメン店に入れず!

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さあ、東京での行動開始です!

 

搭乗した飛行機は順調に飛び、無事に羽田空港に到着しました。思っていたよりも人が多くて、ちょっと驚きました。ランチタイムなので、空港出口近くのいつものラーメン店に入ろうとしたら、なんと満席でした。時間がないので入店しませんでしたが、コロナ前も含めて、こんなことは初めてです。仕方ないので、持参したポンパドールの蒸しパンと缶コーヒーで昼食を済ませ、そのまま赤坂見附の定宿に向かいました。本当は、「【速報】警察出動! IOCバッハ会長宿泊ホテル前で五輪反対デモ」というネット記事にも紹介されているようにバッハ会長が宿泊している虎ノ門のホテルを予約したかったのですが、IOC関係者の貸し切りということで叶いませんでした。定宿に着いたら、まずは出版の打ち合わせ、それから映画の打ち合わせです。感染防止に最大の配慮をしつつも、「 天下布礼」のために全力で頑張ります!

 

2021年7月12日 一条真也

『礼を求めて』 

一条真也です。
59冊目の「一条真也による一条本」は、『礼を求めて』(三五館)です。「なぜ人間は儀式を必要とするのか」というサブタイトルがつけられています。2012年6月3日に刊行されました。

f:id:shins2m:20210414160553j:plain礼を求めて』(2012年6月3日刊行) 

 

わたしは2012年に第二回「孔子文化賞」を受賞いたしましたが、それを記念して出版された本です。本書の表紙タイトルの「礼」には、赤と紫が配色されています。それぞれ、わが社のロゴマークにも使われている「婚礼」と「葬礼」のシンボル・カラーです。

f:id:shins2m:20210414160623j:plain本書の帯

 

帯には「孔子文化賞受賞!」と大書され、「一条真也は世界一の礼の実践者だ!!」という孔健孔子・第75代直系子孫)先生の言葉が寄せられています。本当に「身に余る」お言葉です。そして、「『天下布礼』の道をさらに歩まん」と書かれています。わたしが黄金の孔子像を孔健先生から授与される写真も使われています。

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本書の帯の裏

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに〜孔子文化賞を受賞して」
花は天国のもの〜葬儀こそART
葬式は必要!〜葬儀は人類の存在基盤
茶と人間関係〜お茶は人間を平等にしてくれる
悲しい出来事
 〜絆を結び、縁を再確認し、感謝の心を思い起こす
葬式の現状、どう思う?〜NHK討論番組に出演
連続性の中で生きている〜先祖や子孫への「まなざし」
孤独死常盤平団地孤独死ゼロを目指して
隣人祭り〜「孤独死」をなくすための方法の一つとして
夏は死者の季節〜もっとも大規模な先祖供養
ご先祖さまとのつきあい方〜先祖を想い、月を見上げる
念ずれば花ひらく〜太陽を追う男と月を見上げる男の志
自殺のない社会〜支えあい、安心して暮らせる社会に
有縁社会へ
 〜人の世を有縁にするのはわれらのつとめ
呪いの物語・癒しの物語
 〜葬儀がなかったら人類は絶滅していた?
タイガーマスク運動〜素晴らしい日本人の心
ソーシャル・ネットワーク
 〜人間同士がつながることへの欲望
東日本大震災〜支え合い、助け合うことは人類の本能
葬儀と人間尊重〜死は最大の平等
シャーマニズムの未来〜本来の葬儀に不可欠な要素
ザ・ライト〜儀式の持つ力とは何か
天使との再会〜わたしたちは死者とともに生きている
隣人愛の実践者〜自分自身の経験が他人への共感となる
マナーについて考える
 〜本当に大切なものは、目に見えない
小倉に落ちるはずの原爆
 〜死者を忘れて、生者の幸福はない
お盆は、要らない?〜今こそ考えてほしい
被災地の月〜すべての人が帰るふるさと
台風と神道〜ありえねーくらい、こわい!
人は死なない〜本当に、人は人に助けられている
エンディングノート〜二つの大きな役割
クリスマスとサンタクロース
 〜聖なる夜の知られざる過去
正月のひみつ〜もうひとつの意味
父の喜寿祝い〜「老い」とは神に近づいていくこと
無縁社会を乗り越えて
 〜人と人との「絆」を再構築するために
孔子文化賞〜葬礼は人間の尊厳を重んじた価値ある行為
のこされたあなたへ〜きっとまた会えるから
すべての儀式は卒業式〜今こそ別れめいざさらば
「おわりに」
一条真也著書一覧」
大学の講義で「礼」を説く

 

「礼」の文字が入ったタイトルの本を出せて、わたしは感無量でした。わたしは、冠婚葬祭の会社を経営しています。日々、多くの結婚式や葬儀のお手伝いをさせていただいていますが、冠婚葬祭の基本となる思想は「礼」です。「礼」とは、「人間尊重」ということだと思います。ちなみに、わが社のミッションも「人間尊重」です。また、わたしは大学の客員教授として多くの日本人や中国人留学生に「孔子」の思想を教えてきました。


平成心学塾」の看板の前で

 

主宰する平成心学塾では、日本人の心の柱である神道儒教・仏教を総合的に学び、日本人の幸福のあり方を求めてきました。さらに、これまで多くの本も書いてきました。孔子や『論語』にまつわる著書もあります。それらの活動はバラバラのようで、じつは全部つながっていると考えています。それらは、すべて「天下布礼」ということです。人間尊重思想を広く世に広めることが「天下布礼」です。

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冠婚葬祭ほど、人間関係を良くするものはありません。太陽の光が万物に降り注ぐごとく、この世のすべての人々を尊重すること、それが「礼」の究極の精神です。天下、つまり社会に広く人間尊重思想を広めることがサンレーの使命です。わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいていると思っています。これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。また、わたしが大学で教壇に立つのも、講演活動を行うのも、本を書くのも、すべては「天下布礼」の活動の一環であると考えています。ですから、本を書くのも好きな仕事ではありますが、わたしの天職は礼業すなわち冠婚葬祭業であると思っています。


すべては「天下布礼」のために

 

そして、冠婚葬祭業もホテル業も、あるいは高齢者介護業も、すべては「人間尊重」というわが社のミッションに直結しています。わが社は単なるサービス業というよりは、「礼」の実践を生業とする「礼業」であると思っています。「礼業」とは「人間尊重業」であり、「ホスピタリティ・インダストリー」の別名でもあります。以前、「思いやり 形にすれば礼となり 横文字ならばホスピタリティ」という短歌を詠みましたが、東の「礼」も西の「ホスピタリティ」も結局は「思いやり」を形にしたものであり、それが「もてなし」へと発展するのだと思います。


孔子文化賞受賞祝賀会で挨拶する

 

本書に収められた文章は、日本最大のニュースサイト「毎日jp」の「風のあしあと」連載の「一条真也の真心コラム」に掲載されたものです。関係者の皆様に感謝いたします。なお、本書『礼を求めて』は、2012年5月18日18時半から松柏園ホテルで開催された「孔子文化賞受賞祝賀会」の引出物として配られました。

 

礼を求めて

礼を求めて

 

  

 

2021年7月11日 一条真也

死は不幸ではない

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一条真也です。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「死は不幸ではない」という言葉を取り上げることにします。ちょうど30年前の1991年に上梓した『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』(国書刊行会)で初めて示した言葉です。


ロマンティック・デス』(国書刊行会

 

わたしは「死は不幸ではない」ということを日頃から考えています。「不幸」の反対は「幸福」です。物心ついたときから、わたしは人間の「幸福」というものに強い関心がありました。学生のときには、いわゆる幸福論のたぐいを読みあさりました。それこそ、本のタイトルや内容に少しでも「幸福」の文字を見つければ、どんな本でもむさぼるように読みました。

 

そして、わたしは、こう考えました。政治、経済、法律、道徳、哲学、芸術、宗教、教育、医学、自然科学・・・人類が生み、育んできた営みはたくさんある。では、そういった偉大な営みが何のために存在するのかというと、その目的は「人間を幸福にするため」という一点に集約される。さらには、その人間の幸福について考えて、考えて、考え抜いた結果、その根底には「死」というものが厳然として在ることを思い知りました。

命には続きがある』の単行本カバー後そで

 

そこで、わたしが、どうしても気になったことがありました。それは、日本では、人が亡くなったときに「不幸があった」と人々が言うことでした。わたしたちは、みな、必ず死にます。死なない人間はいません。いわば、わたしたちは「死」を未来として生きているわけです。その未来が「不幸」であるということは、必ず敗北が待っている負け戦に出ていくようなものです。

 

わたしたちの人生とは、最初から負け戦なのか。どんな素晴らしい生き方をしても、どんなに幸福感を感じながら生きても、最後には不幸になるのか。誰かのかけがえのない愛する人は、不幸なまま、その人の目の前から消えてしまったのか。亡くなった人は「負け組み」で、生き残った人たちは「勝ち組」なのか。わたしは、そんな馬鹿な話はないと思いました。わたしは、「死」を「不幸」とは絶対に呼びたくありません。なぜなら、そう呼んだ瞬間、わたしは将来かならず不幸になるからです。

f:id:shins2m:20210125113650j:plain命には続きがある』(PHP文庫)

 

死は決して不幸な出来事ではありません。愛する人が亡くなったことにも意味があり、あなたが残されたことにも意味があるのだと確信しています。そして、人が亡くなっても「不幸があった」と言わなくなるような葬儀の実現をめざしています。なお、この「死は不幸ではない」という言葉は、『ロマンティック・デス〜月と死のセレモニー』だけでなく、わたしの多くの著書に登場します。最近では、矢作直樹氏との共著『命には続きがある』(PHP研究所・PHP文庫)にも登場しています。

f:id:shins2m:20200715153103j:plain死を乗り越える読書ガイド』(現代書林)

 

同じく、単著『死が怖くなくなる読書』『死を乗り越える読書ガイド』(ともに現代書林)の「はじめに」にも書きました。わたしは、これからも「死は不幸ではない」と伝えていきたいと思います。死ぬまで、そして死んだ後も、伝え続けていくつもりです。

 

2021年7月10日 一条真也

死を乗り越えるシェイクスピアの言葉

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なあに、かまいやしない。
人間、一度しか死ぬことはできない。
命は神さまからの借りものだ。
シェイクスピア

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、ウィリアム・シェイクスピア(1564年~1616年)の言葉です。イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物です。四大悲劇『ハムレット』『マクベス』『オセロ』『リア王』をはじめ、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』『夏の世の夢』『ジュリアス・シーザー』『ヘンリー四世』などの多くの傑作を遺しました。

 

 

「なあに、かまいやしない。人間、一度しか死ぬことはできない。命は神さまからの借りものだ」というのは、シェイクスピアの代表作の1つである『リアの王』の言葉です。イギリス、いや世界でも最も優れた劇作家を1人上げろと言われたら、きっと彼が選ばれるでしょう。人間の本性をこれでもかと描きだした彼の作品には時代を超えた普遍性があり、今日でも世界各地で上演されています。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写にもっとも優れた英文学の作家とも言われていますね。この死生観も、そうした尋常ならざる観察のもとに生まれたものでしょう。

 

 

数あるシェイクスピアの傑作の中でも、『リア王』で描いたテーマは、超高齢社会を迎えた現代社会にもそのまま通じます。リア王は今でいう認知症の老人です。娘たちに疎まれながら、晩年を過ごしていきます。彼の姿はコミカルでもあるし、哀れでもあります。でも年を取るということは、子どもに還っていくということをつくづく感じました。子育てで世話をしたように、高齢になると、逆にお世話をされる。これが人間というものなのでしょう。ちなみに日本でも『恍惚の人』という有吉佐和子の名作があります。高齢者をどう描くかは、普遍のテーマといえます。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。ご一読下されば、幸いです。

 

 

2021年7月10日 一条真也