「青天を衝け」スタート!

一条真也です。
2月14日の20時からNHK大河ドラマの新番組「青天を衝け」がスタートしました。わたしは第1回目の放送を観ましたが、ふだんテレビを観ないわたしにとって、きわめて異例のことです。大河の第1回目を観たのは、2010年1月3日開始の「龍馬伝」以来です。あと、大河ドラマスペシャルの「坂の上の雲」(2009年~2011年)は全話観ましたね。わたしは、幕末・明治の物語が好きなようです。



なぜ、わたしが「青天を衝け」を観ようと思ったかというと、主人公が尊敬してやまない渋沢栄一翁だからです。渋沢栄一は、約500の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった「日本資本主義の父」として知られています。晩年は民間外交にも力を注ぎ、ノーベル平和賞の候補に二度も選ばれています。その彼が生涯、座右の書として愛読したのが『論語』でした。渋沢栄一の思想は、有名な「論語と算盤」という一言に集約されます。それは「道徳と経済の合一」であり、「義と利の両全」です。結局、めざすところは「人間尊重」そのものであり、人間のための経済、人間のための社会を求め続けた人生でした。

 

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

論語と算盤 (角川ソフィア文庫)

 

 

NHK公式サイト「青天を衝け」の「番組紹介」の「物語」には、「官尊民卑の世は、承服できん! 百姓からの脱却を決意」として、「天保11年(1840)、武蔵国・血洗島村。藍玉づくりと養蚕を営む百姓の家に、栄一は生まれた。おしゃべりで物おじしないやんちゃ坊主は、父・市郎右衛門の背中に学び、商売のおもしろさに目覚めていく。ある日、事件が起きた。御用金を取り立てる代官に刃向かったことで、理不尽に罵倒されたのだ。栄一は官尊民卑がはびこる身分制度に怒りを覚え、決意する。『虐げられる百姓のままでは終われない。武士になる!』」

f:id:shins2m:20210214200650j:plain「青天を衝け」のタイトルバック(NHKより)

 

また、「目指せ、攘夷の志士! ところが計画中止、追われる身へ・・・・・・」として、「千代と結婚した栄一は、従兄の惇忠や喜作と共に、尊王攘夷に傾倒していく。江戸で仲間を集め、横浜の外国人居留地を焼き討ちする攘夷計画を企てた。しかし、京の情勢に通じた従兄の長七郎の猛反対にあい、あえなく断念。逆に幕府に追われる立場となり、喜作と共に京へ逃げる。彼らに助け船を出したのは、一橋慶喜の側近・平岡円四郎だ。幕府に捕らわれて死ぬか、一橋の家臣となるか。『生き延びればいつか志を貫ける』。この選択が、栄一の運命を変えていく」と書かれています。

f:id:shins2m:20210214200250j:plain吉沢亮演じる渋沢栄一(NHKより)

 

さらに、「心ならずも幕臣に。パリ行きが人生を開く!」として、「栄一は一橋家の財政改革に手腕を発揮し、慶喜の信頼を得る。ところが、慶喜が将軍となり、倒幕を目指すどころか幕臣になってしまった。失意の栄一に、転機が訪れる。パリ万国博覧会の随員に選ばれたのだ。慶喜の弟・昭武とパリに渡った栄一は、株式会社とバンクの仕組みを知り、官と民が平等なだけでなく、民間が力を発揮する社会に衝撃を受けた。そんな折、日本から大政奉還の知らせが届き、無念の帰国へ・・・・・・」と書かれています。

f:id:shins2m:20210214200504j:plain草彅剛演じる徳川慶喜(NHKより)
 

そして、「まさかの新政府入りで、続々改革。33歳でいよいよ民間へ」として、「帰国後、様変わりした日本に衝撃を受けた。静岡で隠棲する慶喜と再会した栄一は、身をやつした姿に涙し、慶喜を支えることを決意する。しかし突然、明治新政府から大蔵省への仕官を命じられて上京。『改正掛』を立ち上げ、租税・鉄道・貨幣制度など次々と改革を推し進めること3年半。栄一はある決意を胸に辞表を提出した。この時、33歳。いよいよ、栄一の目指す民間改革が始まるのだった・・・・・・!」

f:id:shins2m:20210214205759j:plain第一回「栄一、目覚める」(NHKより)

 

15分拡大版の第一回「栄一、目覚める」では、武蔵国血洗島村(現在の埼玉県深谷市)で養蚕と藍玉作りを営む農家の長男として生まれた栄一(子役・小林優仁)が人一倍おしゃべりの剛情っぱりで、いつも大人を困らせていた様子が描かれました。ある日、罪人が藩の陣屋に送られてきたことを知った栄一は、近くに住むいとこの喜作(子役・石澤柊斗)らと忍び込もうと企みます。一方、江戸では、次期将軍候補とすべく、水戸藩主・徳川斉昭竹中直人)の息子である七郎麻呂(子役・笠松基生)を御三卿の一橋家に迎え入れる話が進んでいました。

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父と子(NHKより)

f:id:shins2m:20210214201746j:plain母と子(NHKより)


第一話では、栄一の幼少期に父や母からどのような影響を受けたかも具体的に描かれており、非常に興味深かったです。幼い栄一に、小林薫演じる父は「上の者は、下の者を守るのがつとめだ」と言い、和久井映見演じる母は「みんなが幸せなのが一番だ」と言います。まさに『論語』に通じる「人の道」と呼ぶべきメッセージですが、成長した栄一は両親の教えを忘れませんでした。

f:id:shins2m:20210214200015j:plain北大路欣也徳川家康登場!(NHKより)

 

また、第一話では冒頭に北大路欣也徳川家康が登場して驚きましたが、家康と栄一には時代は違えど大きな共通点があります。それは、ともに『論語』を愛読したことです。『論語』はわたしの座右の書でもありますが、その真価を最も理解した日本人が3人いると思っています。聖徳太子徳川家康渋沢栄一です。聖徳太子は「十七条憲法」や「冠位十二階」に儒教の価値観を入れることによって、日本国の「かたち」を作りました。徳川家康儒教の「敬老」思想を取り入れることによって、徳川幕府に強固な持続性を与えました。そして、渋沢栄一は日本主義の精神として『論語』を基本としたのです。

 

論語 (岩波文庫)

論語 (岩波文庫)

 

 

聖徳太子といえば日本を作った人、徳川家康といえば日本史上における政治の最大の成功者、そして渋沢栄一は日本史上における経済の最高の成功者と言えます。この偉大な3人がいずれも『論語』を重要視していたということは、『論語』こそは最高最大の成功への指南書であることがわかります。わたしの著書に『孔子とドラッカー新装版』(三五館)という本がありますが、渋沢は孔子をリスペクトし、ドラッカーは渋沢をリスペクトしていました。

 

 

まさに、渋沢栄一こそは、まさに孔子ドラッカーをつなぐ偉大なミッシング・リンクでした。『論語』を座右の書とした渋沢は生涯を通じて「利の元は義」であると訴えましたが、これこそは、わがサンレーの目指す「天下布礼」の志を支える思想であると思っています。東京五輪パラリンピック組織委員会の森会長が辞任し、次期会長選びが迷走していますが、この新ドラマが「真のリーダーとは?」ということを教えてくれそうな予感がします。



2021年2月14日 一条真也