『イラストでわかる 美しい所作と振る舞い』

一条真也です。
107冊目の「一条本」となる監修書『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』(メディア・パル)の見本が出ました。「さりげない仕草で見えてくる50のメソッド」というサブタイトルがついています。

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本書より

 

アマゾンの「内容紹介」には、「同じ動きをしているはずなのに、なぜかあの人には品がある。そんなふうに感じることはありませんか。本書では、実践礼道小笠原流をベースに、美しさを感じさせる所作と振る舞いを集めました。美しくみせるコツや、気をつけるポイントを知れば、ぐっと印象が変わります」と書かれています。

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立礼(会釈・敬礼・最敬礼)

 

本書の「目次」は、以下の通りです。
「世界が注目する日本の所作と振る舞い」
【Part.1】
 あいさつの基本と礼

「立礼」(会釈・敬礼・最敬礼)
「九品礼」
[所作の豆知識1]
 儒教の教えの中心にある「礼」
【Part.2】
 日常的な所作と振る舞い
 ≪生活≫
  立つ姿勢(立ち姿・手足の位置)
  立ち上がり方・跪座
  立った状態での回り方
  座るときの姿勢(正座・椅子)
  正座の仕方
  椅子の座り方
  膝行・膝退
  座布団の座り方
  座った状態での回り方
  歩き方・美しく見えるフォーム
  だれかと一緒に歩くときの所作
  行き逢いの礼
  前通りの礼
  車の乗り降り
  傘の持ち方・閉じ方
  お金の支払い方
  上着の脱ぎ方
  せき・くしゃみが出たときの所作
  対面で話す際の振る舞い
  名刺の渡し方・受け取り方
  扇子のあつかい方
  目通り・肩通り・乳通り・帯通り
  物の持ち方(1)(ペン・鉛筆・筆・ハサミ)
  物の持ち方(2)(カバン・バッグ・手荷物)
  物の受け渡し方
[所作の豆知識2]
 身だしなみ・立ち居振る舞い・言葉づかい
 ≪食事≫
  箸の持ち方・構え方
  ナイフ・フォーク・レンゲのあつかい方
  お椀の持ち方・ふたの取り方
  おしぼり・ナプキン・懐紙の使い方
  お酒の注ぎ方(ビール・ワイン・日本酒)
  食事のいただき方
  煮物・酢の物の食べ方
  骨つきの魚の食べ方
  紅茶の飲み方・ケーキの食べ方
 ≪訪問・来客時≫
  靴の脱ぎ方・履き方
  ドアの開け閉め(入退室・来客時)
  引き戸の開け閉め(立った状態・座った状態)
  お茶の淹れ方
  茶菓子の出し方
  お茶の飲み方・ふたのあつかい
  茶菓子の食べ方
  手土産を渡すタイミング・渡し方
 ≪葬儀≫
  葬儀・告別式での服装
  香典の渡し方・タイミング
  焼香・献花・玉串奉奠
 ≪結婚式≫
  結婚式での服装
  祝儀の渡し方・タイミング
  乾杯の際の振る舞い
[所作の豆知識3]
 礼儀作法の基本は武士の所作
おわりに「今こそ求められる所作と振る舞い」

 

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2021年4月11日、男子ゴルフの米マスターズ・トーナメントで、松山英樹選手が日本男子で初制覇。松山選手を支えた早藤将太キャディーが最終一八番グリーンでピンをカップに戻した後、脱帽してコースに向かって一礼したふるまいが世界中で絶賛されました。わたしは、このエピソードに静かな感動をおぼえました。それは、早藤キャディーの「一礼」に対してはもちろんですが、日本人なら何ということのない「一礼」が世界中の人々に感動を与えた事実を素晴らしいと思いました。この年、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、莫大な費用をかけて東京五輪が強行開催されましたが、礼をするというノーコストのふるまいで世界中の人の心を動かし、日本のイメージを大いに向上させたことは快挙ではありませんか。

 

 

「一礼」とは「お辞儀」のことですが、お辞儀というのは世界中の人々に感動を与えるぐらい美しいのです。わたしの父である佐久間進は実践礼道小笠原流という礼法の宗家として、ブッダの「八正道」ならぬ「八美道」を提唱しています。「自分には正しいことはわからなくても、美しいことはわかる」というわけですが、その「美しいこと」の象徴が礼法なのです。早藤キャディーの「一礼」に感動した人々も、「正しさ」ではなく「美しさ」を感じたのでしょう。

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「お金の支払い方」

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「せき・くしゃみが出たときの所作」

 

コロナ禍の中にあって、わたしは「礼」の価値を再考しています。特に「ソーシャルディスタンス」と「礼」の関係に注目し、相手と接触せずにお辞儀などによって敬意を表せる小笠原流をはじめとする日本の礼法が、「礼儀正しさ」におけるグローバルスタンダードにならないかなどと考えています。西洋式の握手・ハグ・キスではコロナ時代にマッチしないからです。 

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PHP「ビジネスボイス」1990年秋号

 

じつは父だけでなく、わたしも礼法家の端くれです。大学時代に小笠原流礼法を学び、1989年5月20日、小笠原家惣領家第三十二代当主・小笠原流礼法宗家の小笠原忠統先生から免許皆伝を受けました。そのため、わたしが社長を務める冠婚葬祭会社では何よりも「礼」を重んじ、冠婚葬祭に必要な、「思いやり」「つつしみ」「うやまい」といった精神を、小笠原流の礼法をもって示しています。

 

 

そもそも礼法とは何でしょうか。拙著『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)にも書きましたが、原始時代、わたしたちの先祖は人と人との対人関係を良好なものにすることが自分を守る生き方であることに気づきました。自分を守るために、弓や刀剣などの武器を携帯していたのですが、突然、見知らぬ人に会ったとき、相手が自分に敵意がないとわかれば、武器を持たないときは右手を高く上げたり、武器を捨てて両手をさし上げたりしてこちらも敵意のないことを示しました。

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「行き逢いの礼」

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「前通りの礼」

 

相手が自分よりも強ければ、地にひれ伏して服従の意思を表明し、また、仲間だとわかったら、走りよって抱き合ったりしたのです。このような行為が礼儀作法、すなわち礼法の起源でした。身ぶり、手ぶりから始まった礼儀作法は社会や国家が構築されてゆくにつれて変化し、発展して、今日の礼法として確立されてきたのです。ですから、礼法とはある意味で護身術なのです。剣道、柔道、空手、合気道などなど、護身術にはさまざまなものがあります。しかし、もともと相手の敵意を誘わず、当然ながら戦いにならず、逆に好印象さえ与えてしまう礼法の方がずっと上ではないでしょうか。礼法こそは最強の護身術なのです。

 

 

さらに、わたしは、礼法というものの正体とは魔法に他ならないと思います。フランスの作家サン=テグジュペリが書いた『星の王子さま』は人類の「こころの世界遺産」ともいえる名作ですが、その中には「本当に大切なものは、目には見えない」という有名な言葉が出てきます。本当に大切なものとは、人間の「こころ」にほかなりません。その目には見えない「こころ」を目に見える「かたち」にしてくれるものこそが、立ち居振る舞いであり、挨拶であり、お辞儀であり、笑いであり、愛語などではないでしょうか。それらを総称する礼法とは、つまるところ「人間関係を良くする魔法」なのです。

 

 

魔法使いの少年を主人公にした『ハリー・ポッター』シリーズが世界的なベストセラーになりましたが、「魔法」とは正確にいうと「魔術」のことです。西洋の神秘学などによれば、魔術は人間の意識、つまり心のエネルギーを活用して、現実の世界に変化を及ぼすものとされています。ならば、相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす礼法とは魔法そのものなのです。

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本書より

f:id:shins2m:20211106134949j:plain本書より

「礼」を形にしたものが儀式や作法であり、日本では「冠婚葬祭」として集大成しています。冠婚葬祭はわたしの本業でもありますので、結婚式や葬儀のマナーについてもアップデートされた最新情報を紹介しています。本書『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』においては、小笠原流をベースにコロナ時代にあっても美しさを感じさせる所作・ふるまいを集めてみました。これらを実践すれば、あなたの魅力が倍増することを保証いたします。本書は、11月16日に全国の書店・コンビニおよびネット書店で発売されます。個人にも家庭にも会社にも有益な情報が満載です。どうぞ、1冊お求め下さい!

 

 

2021年11月7日 一条真也

『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』

一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第162回分が掲載されています。今回は、『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』春日太一著(文藝春秋)です。

f:id:shins2m:20211102201810j:plainサンデー新聞」2021年11月6日号

 

時代劇・映画史研究家の著者が、2018年に女優生活60周年を迎えた岩下志麻さんにインタビューし、岩下さんが出演してきた数々の作品について自ら詳細に語り下ろした内容です。わたしは岸惠子岩下志麻が好きな二大女優なので、興味深く読みました。今年6月に文庫化された本書には、岩下志麻さんの女優人生が余すところなく語られていますが、「おわりに」に書かれた岩下さん自身の言葉がその見事な要約となっています。

 

「女優として欲のなかった私ですが、松竹という映画会社に入社し、当時松竹にいらした小津安二郎監督、木下惠介監督をはじめ大勢の巨匠の作品に出演させていただいてその度に鍛えられ一歩一歩前進しながら育てていただきました。また、篠田正浩という気鋭の監督との出会い、そして一緒に独立プロ『表現社』を設立し、松竹の枠の中ではできなかった沢山の作品の中でいろいろな役柄を体験できる機会を得ることができました。特に『心中天網島』や『はなれ瞽女おりん』では沢山の主演女優賞を頂くことができ、これも大きな励みとなりました。40代後半からは、東映というそれ迄とは全く異質な映画会社の映画に出演できるようになり、しかも『極道の妻たち』というシリーズを持つ事ができました。振り返りますと、大変、運の良い恵まれた女優生活だったと思います」

 

わたしは昨年、松本清張原作の映画全作品をDVDで一気に鑑賞したのですが、名作揃いの作品群の中でも特に「影の車」(1970年)、「内海の輪」(1971年)、「鬼畜」(1978年)、「疑惑」(1982年)といった岩下さんの主演映画に魅了されました。その後、「極道の妻たち」を除くさまざまな岩下さんの主演映画を観ましたが、若い頃の可憐さから大ベテランになってからの凄味まで、あまりにも多彩な役柄に感嘆しました。

 

NHK大河ドラマ草燃える」や映画「鑓の権三」で岩下さんと共演した郷ひろみのヒット曲「How many いい顔」には「処女と少女と娼婦に淑女♪」という歌詞がありますが、まさに岩下さんのことだと思います。本書を通読して思ったのは、女優・岩下志麻の本質は巫女ではないかということです。岩下さんは「卑弥呼」(1974年)で白塗りメイクで邪馬台国の女王・卑弥呼を演じていますが、実際に卑弥呼と同じようなシャーマン体質であるような気がします。卑弥呼額田女王北条政子をはじめ、岩下さんは歴史上の人物を演じるたびに観客や視聴者に「その人の生まれ変わりではないか」と思わせてきました。まさに「女優の中の女優」だと思います。今年で80歳になられる岩下志麻さんのご健勝をお祈りいたします。

 

 

2021年11月6日 一条真也

「アンテべラム」

一条真也です。
5日の夜、この日から公開された映画「アンテベラム」を観ました。小倉のコロナシネマワールドで、観客はわたしを含めて2人。黒人差別をテーマにしたスリラーですが、想像を超えるドンデン返しに仰天する一方で、松田優作演じるジーパン刑事の最期みたいに「なんじゃこりゃ!」と叫びたくなる自分がいました。ヤバい映画です!


ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『ゲット・アウト』などのプロデューサー、ショーン・マッキトリックが製作したスリラー。社会学者として華やかな日々を送っていた女性の転落と、ある黒人奴隷の女性の運命が描かれる。メガホンを取るのは、ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツ。『ムーンライト』などのジャネール・モネイ、『ウインド・リバー』などのエリック・ラング、『スターダスト』などのジェナ・マローンのほか、ジャック・ヒューストン、カーシー・クレモンズらが出演している」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
社会学者で人気作家でもあるヴェロニカ(ジャネール・モネイ)。招かれたニューオーリンズで見事なスピーチを披露して喝采を浴び、友人たちとディナーを楽しんだ直後、順風満帆だった彼女の日常は突如崩壊してしまう。一方、アメリカ南部の綿花畑で奴隷として重労働を強いられているエデン(ジャネール・モネイ)。ある悲劇に見舞われた彼女は、それを機に奴隷仲間と脱走を企てる」


冒頭、アメリ南北戦争時代の綿花プランテーションの描写が延々と続きます。「風と共に去りぬ」じゃあるまいし、「おかしいな、こんな映画なの?」と戸惑いましたが、そのうちに驚愕の展開となります。冒頭にアメリカの文豪ウィリアム・フォークナーの「過去は死なない、過ぎ去りさえしない」という言葉が紹介されますが、まさにその言葉の通りの物語でした。予告編を観て、現代社会で活躍している黒人女性の前世が南北戦争時代の黒人奴隷で、悪夢のような前世の記憶が蘇るスピリチュアル・スリラー映画かなと思いました。もしくは、現代から南北戦争時代の過去へとタイムスリップするSFスリラー映画かなとも思いましたが、2つの予想はまったく外れてしまいました。正直、とんでもない脚本です。良い意味でも、悪い意味でも、一連のマイケル・ナイトシャマラン作品の影響(特に「ヴィレッジ」)を明らかに受けていますね。


思わせぶりなシーンが多い映画なのですが、ニューオーリンズでの講演会に招かれた主人公ヴェロニカが、ホテルのエレベーターに乗り込んだとき、古風なドレスをまとった不思議な少女が現れます。少女に話しかけるヴェロニカに対し、少女は「喋ると怒られるわよ」と警告を発します。その後、エレベーターから降りて自室へ戻るヴェロニカの背後には少女が不気味な視線を送っています。古風なドレスをまとった少女が薄暗いホテルの長い廊下に立っている姿を観て、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画史に燦然と輝く金字塔的名作「シャイニング」(1980年)を連想する人は多いでしょう。「シャイニング」も、「アンテベラム」も、不気味な少女の出現が、これから始まる悲劇を予告しています。


ヴェロニカとエデンを演じた主演のジャネール・モネイは良かったです。黒人女性の権利を謳う社会学者で、ベストセラー作家でもあるヴェロニカは、夫と一人娘を愛する良き家庭人でもありますが、その鋭い舌鋒によって敵もたくさんいます。特に、黒人の活躍を苦々しく思っている白人たちからは目の敵にされています。ニューオーリンズへの出張前にオンライン取材を受けた白人女性と、映画の最後でヴェロニカは対決するのですが、その凄惨な死闘はブログ「ザ・ハント」で紹介した映画の壮絶なラストを思い出してしまいました。ともに黒人女性であるエデンとヴェロニカとの関係については、「先祖と子孫かな」ぐらいに想像していましたが、その真実は思考がぶっ飛ぶトンデモない関係でした。いやあ、もう、ぶったまげました!

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ロイターより

 

主人公は講演のために南部のニューオリンズを訪れますが、ここはもともと黒人差別の激しかった土地で、現在でもホテルやレストランで黒人が理不尽な差別を受けるシーンが映画に登場します。また、映画「アンテベラム」には、狂信的な白人主義者が登場しますが、どうやらモデルがいるようですね。2017年4月27日にロイターが配信した「米ニューオーリンズ市、人種差別的モニュメントの撤去開始」という記事によれば、ニューオーリンズ市は同年4月24日、1874年に白人至上主義者グループによって警官と州兵が襲撃された事件を記念して1891年に建造されたモニュメントを撤去しています。


当時、ニューオーリンズ市のミッチ・ランドリュー市長は記者団に「この像は、白人至上主義者による警官襲撃を賞賛するために建造された。4つの像のうち、米国とニューオーリンズを強めている価値観に最も激しく挑戦するものといえる」と語りました。南北戦争時代に南部の「アメリカ連合国」を率いたジェファーソン・デービスの像と、軍人のロバート・E・リー将軍、およびP・G・T・ボーリガード将軍の像を撤去したそうです。ちなみに、映画「アンテベラム」のラスト近くにはリー将軍の像が登場します。スクリーンでこの像を観たとき、多くの観客はこの映画のぶっ飛んだ真実を知ることになるのでした。


黒人差別がらみのスリラー映画といえば、 ブログ「ゲット・アウト」で紹介した2017年の作品を想起させます。アメリカのお笑いコンビ“キー&ピール”のジョーダン・ピールが監督・脚本を務めたサプライズ・スリラーです。低予算ながらも全米初登場でNO.1大ヒットを記録し、監督デビュー作にも関わらず米映画レビューサイト「TOMATO」で99%大絶賛された話題作です。恋人の実家を訪ねた黒人の青年が、そこで想像を絶する恐怖を体験する物語なのですが、これが大絶賛されたというのは、ちょっと驚きです。アメリカ人は人種差別というテーマをエンターテインメントとして消化できるのでしょうか。わたし個人の感想をいえば、人種差別を感じさせるようなシーンはやはり不快でしたし、さらに言えば、主人公が黒人である必然性すら感じられず、「別に黒人でなくてもいいのでは?」と思ってしまいました。


黒人が主演の人種差別をテーマとしている映画には、 ブログ「ムーンライト」で紹介した2017年の映画があります。ジャネール・モネイも出演しています。ブラッド・ピットが製作陣に名を連ね、さまざまな映画祭・映画賞で高評価を得たドラマで、第89回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝いた作品です。マイアミの貧困地域に生きる少年が成長する姿を、三つの時代に分けて追う物語です。タイトルの「ムーンライト」というのは、「月光の下では黒人の少年は青く見える」という老婆の言葉からきているそうです。この「ムーンライト」すなわち月光は「平等」のシンボルと言ってよいでしょう。月光の下では、白人も黒人も黄色人も、ノーマルもゲイも、金持ちも貧乏人も、みんな平等なのです。そして、月光は「慈悲」のシンボルでもあります。わたしたちは、月光のような慈悲の心をもって、すべての人に接していきたいものです。

 

2021年11月6日 一条真也

日本赤十字社感謝状贈呈式

一条真也です。
11月5日、わたしは飯塚市に向かいました。
「福岡県日赤紺綬会第61回総会」に参列するためです。

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のがみプレジデントホテルの前で

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看板の前で

 

この日、日本赤十字社名誉副総裁寛仁親王妃信子殿下御臨席のもと、わたしの母である佐久間徳子が「金色有功章」および「厚生労働大臣感謝状」を、父である佐久間進が「紺綬会会長感謝状」を受章(表彰)するのですが、両親とも高齢ゆえに、長男であるわたしが代理で参上いたしました。会場は、「のがみプレジデントホテル」でした。

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会場のようす(開始前)

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贈呈式のリハーサル

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会場にて(開始前)

 

総会は、10時10分に参会者一同着席。30分に日本赤十字社名誉副総裁寛仁親王妃信子殿下が御臨席され、開会されました。第1部の式典では、開会の辞、国歌斉唱、物故会員に対する黙祷、福岡県日赤紺綬会の会長挨拶、日本赤十字社福岡県支部支部長挨拶、有功章の御授与、日本赤十字社感謝状の贈呈、厚生労働大臣感謝状の伝達、会員斡旋功労感謝状の贈呈、日本赤十字社名誉副総裁寛仁親王妃信子殿下のおことば、日本赤十字社社長の挨拶、来賓祝辞(飯塚市長)、閉会の辞、日本赤十字社名誉副総裁寛仁親王妃信子殿下御退席という流れで、11時30分に終了しました。

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両親はわたしの誇りです!

 

母の「金色有功章」は寛仁親王妃信子殿下から直々に、同じく母の「厚生労働大臣感謝状」は福岡県の服部誠太郎知事から、父の「紺綬会会長感謝状」は日赤紺綬会の田中優次会長から、それぞれ拝受しました。合計で3回登壇しましたが、父と母の代理で感謝状を拝受したとき、「自分の両親は他者の幸せを願う志を抱いていた」という事実を痛感し、心からの誇りが湧いてきました。


11時50分から開始の第2部のアトラクションでは、寛仁親王妃信子殿下御臨席のもと、学校法人嶋田学園・飯塚高等学校吹奏楽部による演奏が行われました。12時20分に寛仁親王妃信子殿下が御退席され、総会は終了しました。わたしは、寛仁親王妃信子殿下のご様子を拝見しながら、「皇族の方のご公務は大変だなあ。皇族を離れられた小室眞子さんには幸せになっていただきたいなあ」と思いました。ブログ「長女の結納」で紹介したように、一昨日の「文化の日」にわたしの長女は結納式を執り行いましたが、長女より2歳上の眞子さんが一切の儀式をしないで結婚されたことに思うところが大きいです。結婚するすべての若い二人には、ぜひ儀式によって縁を結び、幸せになっていただきたいと願うばかりです。

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帰りは荷物がいっぱい!(笑)

 

2021年11月5日 一条真也

「月への送魂」最新動画

一条真也です。
先月18日の夜は十三夜でしたが、ブログ「月への送魂」で紹介したように、夜空に浮かぶ月を目指して、故人の魂をレーザー(霊座)光線に乗せて送る新時代の「月と死のセレモニー」が行われました。多くの方々が夜空のスペクタクルに魅了されましたが、その最新動画がYouTubeにアップされました。


それにしても、なぜ月に魂を送るのか? 
この質問は、これまで数え切れないほど受けてきました。その答えは、月は死者の霊魂が赴く死後の世界だからです。多くの民族の神話と儀礼において、月は死、もしくは魂の再生と関わっています。規則的に満ち欠けを繰り返す月が、死と再生のシンボルとされたことは自然です。夜空にくっきりと浮かび上がる月は、あたかも輪廻転生の中継基地そのものと言えます。かくして、わたしは、月にレーザー(霊座)光線を使って、地球から故人の魂を月に送るという計画を思い立った次第です。

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これが「月への送魂」だ!

 

月への送魂」の背景には、「まなざし」の問題があります。現代の墓について考えますと、すべては遺体や遺骨を地中に埋めたことに問題が集約されます。エコロジーの視点から見ても、人間の遺体や遺骨が土に還ることは正しいと思います。しかし問題は、生き残った人間の方にあるのです。死者が地下に埋められたことによって、生者が、人間は死んだら地下へ行くというイメージ、つまり「地下へのまなざし」を持ってしまったのです。「地下へのまなざし」は当然、「地獄」を連想させます。いくら宗教家が霊魂だけは天上へ昇るのだと口で言ったとしても、目に見えるわけではありません。実際に遺体を暗くて冷たい地中に埋めるインパクトの方が強くて、そんな言葉は打ち消されてしまうのです。その証拠に、魂の帰天を信じる熱心なキリスト教徒でさえ、屍体がよみがえって生者の血を吸うという吸血鬼伝説に脅えていました。

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天上へのまなざし」を持つために

 

死後の世界のイメージが地獄と結びつくと、死の恐怖が生まれます。死の恐怖など抱かないためにも、わたしたちは、死後に地獄などではなく、天国に行かなければならないのです。わたしたちは、天国へ行くために「地下へのまなざし」を捨て、「天上へのまなざし」を持たなければなりません。そして、月がその鍵となることは明らかです。同じ月を見ることによって、同じまなざしを持つ。まなざしという視線のベクトルは、こころざし=志という心のベクトルにつながります。ともに月を見上げ、「天上へのまなざし」を持つことによって、人々の心の向きも1つになるのです。この「月への送魂」は、人類の死生観をポジティブ・シフトする力を持っています。じつは、2025年に日本で大規模国際イベントが開催されますが、その事務局からアドバイスを求められています。そのイベントは「老い」と「死」をテーマとするということだそうですので、それらのシンボルである「月」を基軸にしたコンセプトや演出の提案をしたいと考えています。

 

2021年11月5日 一条真也

『結納力』

一条真也です。
11月3日の「文化の日」、長女の結納式を行いました。
わたしは、これまで多くのブックレットを刊行してきました。わたしのブックレットは一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として出しています。いつの間にか44冊になっていました。それらの一覧は現在、一条真也オフィシャル・サイト「ハートフルムーン」の中にある「佐久間庸和著書」で見ることができます。整理の意味をかねて、これまでのブックレットを振り返っていきたいと思います。 


『結納力』(2010年5月刊行)

 

今回は、『結納力〜必ず幸せになれる結婚』をご紹介します。このブックレットでは、第一部に拙著『結魂論』(成甲書房)の内容の一部を抜粋し、第二部では「結納入門」の実用的な情報を集めています。多くの方々から「非常にユニークかつ使える構成」との評価を頂きました。

f:id:shins2m:20131003155104j:plain結魂論』(成甲書房)

目次は以下の通りです。
第1部 結婚とは結魂である

  • 離婚大国、日本
  • 結婚式場とは「夫婦工房」
  • 離婚しにくいノウハウ
  • 婚礼とは「恥の文化」
  • 人類史上の恥とならないために
  • 冠婚葬祭やめますか、人類やめますか
  • 結納力を見直す

第2部 結納入門
    ~その準備とマナー~

  • 婚約と結納
  • 結納品
  • 仲人の依頼
  • 結納式の準備
  • 結納式


必ず幸せになれる結婚

 

サンレーグループでは、ブライダル・スタッフのことを“むすびびと”と呼んでいます。“むすびびと”は何を結ぶのか。新郎新婦の「魂」を結びます。すなわち、「結魂」のお手伝いをするのです。日本人の離婚が年間で30万件を超え、なお増え続ける一方ですが、その負の流れを食い止めるキーワードこそ「結魂」です。かつて古代ギリシャの哲学者プラトンは、元来1個の球体であった男女が、離れて半球体になりつつも、元のもう半分を求めて結婚するものだという「人間球体説」を唱えました。わたしは、プラトンのいう球体とは「魂」のことであったと思います。“むすびびと”は、男女の未熟な魂を結んで夫婦という完成品を作るのです。

f:id:shins2m:20131003121113j:plainむすびびと~こころの仕事』(三五館)

でも、“むすびびと”が結ぶものは男女の魂だけではありません。両家の家族の絆をも強く結びます。現在では、新郎新婦2人の名前で披露宴が行なわれるケースがほとんどですが、少し以前までは「○○家、△△家、結婚披露宴」というふうに、両家の結びつきが結婚式、披露宴のメインテーマでした。この四半世紀で日本人の結婚式や披露宴は大きく変化しました。仲人、結納、金屏風といったものがどんどん消え、和装を着る花嫁さんも減るいっぽうです。結婚式や披露宴のキーワードも「自由」「個人主義」「合理主義」に集約されてきました。その結果、日本人の離婚件数は激増しました。

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妻と長女を囲んで


どんなに時代が変わろうとも、わたしは結婚式や披露宴のキーワードは「家族」であると思います。昔の日本の婚礼は「家」がキーワードでしたが、それはなくなりました。でも、今でも「家族」はキーワードです。最近、社会がどんどん悪くなっていますね。凶悪犯罪はさらに増加し、より残虐になっている。親が子を殺し、子が親を殺すような事件も多くなっています。まさに「ありえないことなどありえない」状況ですが、日本の家族というものがドロドロに溶け出していることが最大の原因でしょう。未曾有の不況による貧困社会を迎えた現代の日本。日本人の心はますます荒廃するばかりです。その心を救うものは、やはり家族しかないのではないでしょうか。

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松柏園の茶室に飾られた結納品

 

そして、最も強調したいことは、結納の持つ秘密の力です。もともと日本人の結婚式とは、結納式、結婚式という2つのセレモニー、それに結婚披露宴という1つのパーティーが合わさったものでした。結納式、結婚式、披露宴の三位一体によって、新郎新婦は「結魂」の覚悟を固めてきたのです。今では結納式はどんどん減っていますが、じつはこれこそ日本人の離婚が増加している最大の原因であると思います。

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結納式のようす

 

日本人の冠婚葬祭の「かたち」を作ってきた小笠原流礼法は「結び」方というものを重視し、紐などの結び方においても文化として極めてきました結納とは「結び」を「納める」こと、まさに結納は「結び」方の文化なのです。そう、結納によって、新郎新婦の魂、そして両家の絆を結ぶのです。それは、いわば「固結び」と言えるでしょう。現代のカジュアルな結婚式とは、いわば「チョウチョ結び」なのです。だから見た目はいいけれども、すぐに解けてしまうのです。つまり、離婚が起こりやすくなるのですね。結納こそは、新郎新婦の魂を固く結び、両家の絆を固く結ぶ力を秘めています。

f:id:shins2m:20211102011925j:plain決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)

 

儀式というのは「かたち」です。「かたち」には「ちから」があります。拙著『決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)で一番訴えたのも、そのことです。だいたい、儀式というのは少しくらい面倒なほうがいいのです。そのほうが、脳に強い情報を与えられるのです。この場合の情報とは、もちろん「わたしたちは結婚する」であり、「けっして離婚しない」というメッセージですね。日本人の離婚が増加する一方だったのも、新郎新婦の魂を固く結びつける秘儀である「結納」をおろそかにしてきたことが大きな原因の1つだと思います。「かたち」には「ちから」があり、儀式は魂に決定的な影響を与えるのです。

 

2021年11月4日 一条真也

長女の結納

一条真也です。
11月3日は「文化の日」です。ブログ「文化の日」に書いたように、わたしは冠婚葬祭こそは日本文化の核であると考えています。この日、わたしの長女の結納式が小倉の松柏園ホテルで行われました。

f:id:shins2m:20211103180545j:plain松柏園ホテルの庭園にて親子三人で

f:id:shins2m:20211103115512j:plain松柏園の茶室に飾られた結納品
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結納式開始前のようす

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桜茶をいただきました

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結納品の目録をお受けしました

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受書をお納め下さい

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よろしくお願い申し上げます

f:id:shins2m:20211103200128j:plain若い二人に幸あれ!

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婚約指輪をはめてもらう長女

 

この日の11時半から、松柏園ホテルの茶室で両家の結納式が行われ、相手のお父様が「結納の品でございます。どうぞ幾久しくお納め下さい」と述べて結納品の目録を差し出されました。わたしは、「ありがとうございます。幾久しくお受けいたします」と結納品を拝受しました。また、目録を確認して受書をお渡ししました。

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会食前のようす

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乾杯!

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祝い鯛

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松茸の土瓶蒸し

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会食のようす

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美味しいお酒をいただきました

f:id:shins2m:20211103191653j:plain祖父も大喜びでした!

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祖父を囲んで

儀式の終了後は、両家で会食。この日のために用意してあったシャンパンと赤ワインも飲みました。特に味わい深く感じました。食事が済むと、同ホテルの貴賓室で待っていたわたしの父に婚約者およびその御両親を紹介し、歓談。その後は、足が悪いので実家で待っているわたしの母のもとを訪れ、母と長女の2人で記念写真を撮りました。父も母も、とても喜んでくれました。こんなに家族が笑顔になれるなんて、やはり結婚とは良いものですね!


結納力』(サンレーグランド文庫)

 

さて、結納という儀式には力があります。もともと日本人の結婚式とは、結納式、結婚式という2つのセレモニー、それに結婚披露宴という1つのパーティーが合わさったものでした。結納式、結婚式、披露宴の三位一体によって、新郎新婦は「結魂」の覚悟を固めてきたのです。今では結納式はどんどん減っていますが、じつはこれこそ日本人の離婚が増加している最大の原因であると思います。日本人の冠婚葬祭の「かたち」を作ってきた小笠原流礼法は「結び」方というものを重視し、紐などの結び方においても文化として極めてきました。結納とは「結び」を「納める」こと、まさに結納は「結び」方の文化です。

f:id:shins2m:20211101235431j:plain決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)

 

そう、結納によって、新郎新婦の魂、そして両家の絆を結ぶのです。それは、いわば「固結び」と言えるでしょう。現代のカジュアルな結婚式とは、いわば「チョウチョ結び」なのです。だから見た目はいいけれども、すぐに解けてしまうのです。つまり、離婚が起こりやすくなるのですね。結納こそは、新郎新婦の魂を固く結び、両家の絆を固く結ぶ力を秘めています。儀式という「かたち」には「ちから」があります。拙著『決定版 冠婚葬祭入門』(PHP研究所)で最も訴えたのも、そのことです。

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わたしたち夫婦も一安心です

 

長女はいわゆる「父親っ子」で、わたしも目に入れても痛くない存在でした。これまで東京の結婚式場で働いていましたが、今年から小倉の実家に帰って花嫁修業をしていました。10月24日(日)、以前からお付き合いしていた男性がわが家を訪問。彼から「お嬢さんと結婚させて下さい」とお願いされたときは、いろいろなことが心をよぎって感無量でした。本当は、もっと早く事が進む可能性もあったのですが、コロナ禍の影響で少しだけ遅くなりました。緊急事態宣言も解除され、新規感染者数も激減して、ようやく今日の結納を迎えることができました。わたしも妻も、ようやく一安心といったところです。

f:id:shins2m:20211103195326j:plain彼にバトンを渡さないと!

 

長女の婚約者は現在は会社員ですが、読書と映画鑑賞が趣味で、わたしと話も合います。これまで映画にもよく長女と行っていましたが、これからは代りに彼が行ってくれるでしょう。ブログ「そして、バトンは渡された」で紹介した映画を観て、結婚とは娘を守るためのバトンを新郎に渡すことだと痛感しました。結婚する2人にも、ぜひ、この映画を観てほしいです。結婚式および披露宴は来年6月5日(日)に、ともに 松柏園ホテルで行う予定です。長女の婚約者にバトンを渡す日まで、頑張らないと!


2021年11月3日 一条真也