『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』

世界の一流は「雑談」で何を話しているのか

 

一条真也です。
『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』ピョートル・フェリクス・グジバチ著(CROSSMEDIA PUBLISHING)を読みました。「年収が上がる会話の中身」というサブタイトルがついています。


本書の帯

 

著者は連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、株式会社GA Technologies社外取締役モルガン・スタンレーを経て、 Googleで人材開発・組織改革・リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『NEW ELITE』他、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』『世界最高のコーチ』など執筆。ポーランド出身。


本書の帯の裏

 

本書の帯には、「さりげなく相手の心をつかむSmall Talkのコツ」と書かれています。また、帯の裏には「上司はマネジメントするより雑談をしなさい」「営業マンは説明するより雑談をしなさい」「『会議』も『1on1』も『商談』も不要! 雑談のすごい効果とは?」と書かれています。さらにカバー前そでには、「一流が『本題』に入る前に必ず聞くこと・話すこと」とあります。


アマゾンより

 

ここが違う!「世界」の雑談と「日本」の雑談
・日本の雑談には「定番のフレーズ」が多い
・一流は「その人」に特化した雑談をしている
・なぜ日本のビジネスマンは雑談が苦手なのか?
・ひとつの質問だけで、多くの情報が得られる
・欧米の一流は周到な「準備」をして雑談に臨む
・一流が雑談に求めているのは「リベラルアーツ


アマゾンより

 

強いチームをつくる「社内雑談力」の極意
Part1 
グーグルは雑談とどう向き合っているのか?
Part2 
なぜ「社内の雑談」が重要なのか?
Part3 
マネジャー(上司)に求められる雑談とは?
Part4 
メンバー(部下)に必要な雑談


アマゾンより

 

武器としてのビジネスの雑談
・ビジネスの雑談には4つの「目的」がある
・日本のビジネスマンは相手と
   「上下関係」を作ってしまう
・ビジネスの相手と「対等」な関係を
    作るためのアプローチ
・エグゼクティブな雑談で「スクリーニング」している
・教養は時間がかかるが「質問力」は短時間で身につく
・「聞きにくいこと」を質問する時に便利なフレーズ


アマゾンより

 

こんな雑談は危ない!6つのNGポイント
雑談のNG01 
相手のプライベートに、いきなり踏み込まない
雑談のNG02 
「ファクト」ベースの質問は意外に危険
雑談のNG03 
ビジネスの場で「収入」の話はしない
雑談のNG04 
「シチュエーション」を考えた雑談を心がける
雑談のNG05 
「宗教」の話は無理に避ける必要はない
雑談のNG06 
「下ネタ」で距離感が縮まることはない

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
はじめに 
「日本人は『雑談』を世間話や無駄話と考えている」
第1章 「世界」の雑談と「日本」の雑談
第2章 強いチームをつくる「社内雑談力」の極意
第3章 武器としてのビジネスの雑談
第4章 こんな雑談は危ない! 6つのNGポイント
おわりに 「リモートワークの増加が
                      雑談の重要性を浮き彫りにした」


はじめに「日本人は『雑談』を世間話や無駄話と考えている」の冒頭を、著者は「僕は東欧ポーランドで生まれて、ドイツやオランダ、アメリカで暮らした後、千葉大学の研究員として2000年に来日しました。今から23年前のことです。日本では、ベルリッツで異文化間コミュニケーションやマネジメントコンサルティング部門を立ち上げたり、モルガン・スタンレーで組織開発や人材育成を担当してから、グーグルに入社し、人材育成統括部長として組織改革やリーダーシップマネジメントに従事してきました。現在は、起業家、経営コンサルタント社外取締役として、主に人材・組織開発のためのコンサルティングコーチング、研修などを手がけています」と書きだします。


「グーグル流・雑談の特徴とは?」では、グーグルで「Let′s chat!」というフレーズが頻繁に飛び交っていたことが紹介されます。直訳すれば、「雑談しましょう!」という意味になりますが、世間話や無駄話をするわけではありません。アジェンダ(行動計画)が成立していない段階で、お互いのプランや課題をシェアして、「どんなプロジェクトができるのか?」、「どんなアウトプット(成果)を目指すのか?」、「どこに問題があるのか?」などについて、オープンで「ざっくばらん」な情報交換をすることが目的であるとして、著者は「グーグルは、全員がフレックスタイムで働いており、仕事をする場所も自宅であったり、カフェであったり、自由に選んでいますから、コミュニケーションの機会を意識的に増やしておかないと、仕事に支障が出る可能性があるのです。これがグーグル流の『雑談』の正体です」と述べています。


世界のビジネスシーンで、一流のビジネスマンが交わしているのは、日本的な雑談ではなく、「dialogue」に近いものだといいます。ダイアログとは「対話」という意味ですが、単なる情報のやりとりだけでなく、話す側と聞く側がお互いに理解を深めながら、行動や意識を変化させるような創造的なコミュニケーションを目指した会話です。また、最近実施する企業が増えている「1on1」ミーティングは、メンバー個々のパフォーマンスの向上を目指すものです。外資系企業や一部のIT企業では10年ほど前から導入されていましたが、その背景にあるのは、チームのメンバーがプライベートな問題を抱えていると、著しく仕事のパフォーマンスが落ちるという考え方が定着したことだといいます。コロナ禍によるテレワークの増加によって、メンバーの孤立化の問題が表面化したことも、「1on1」の実施に拍車をかけているとか。


第1章「『世界』の雑談と『日本』の雑談」の「日本の雑談には『定番のフレーズ』が多い」では、ポーランド人である著者は日本語は非常に覚えやすい言語だと思っているとして、日本人は気づいていないかもしれないが、日常的に交わされる会話には「定番のフレーズ」が多いという特徴があるといいます。例えば、「お疲れ様です、ピョートルさん」「どうも、お疲れ様です」「いつもお世話になっております」「こちらこそ、お世話になっています」といったような言葉です。著者は、「シニカルな見方をすれば、日本人の雑談は、『社交辞令』と『演技』と『決まり文句』の3つで構成されているといえます」と述べます。


「日本人が『自己開示』に慣れていない理由」では、ヨーロッパやアメリカでは、「社交的な会話」ができることが美徳とされていることが紹介されます。社会や政治、経済、歴史など、あらゆることについて自分なりの意見を持ち、それを話すことは「大人の嗜み」と考えられているとして、著者は「欧米の人たちは、子供の頃から自分の意見を持ち、それを表現して自己開示する・・・・・・という教育を受けていますが、日本ではそうした教育は重要視されていません。決められたカリキュラムを学ぶとか、受験勉強でも暗記が優先されていますから、自分の頭で考えて、自分の意見を持ち、それを表現することに慣れていないのだと思います」と述べています。現在は、日本でも「ダイバーシティー&インクルージョン」(多様な人々がお互いの個性を認め、一体感を持っている状態)の考え方が強くなっているのが現状です。著者は、「多種多様な価値観を持つ人たちと良好な人間関係を構築し、お互いに信頼感を深めていくためには、雑談を通して自己開示していくことが大事だと思います」と述べます。



「雑談を通じて『ラポール』を作る」では、世界の第一線で活躍するビジネスマンたちが雑談を通して「手に入れたい」と考えているのは、次の3つのことだといいます。(1)お互いに「信頼」できる関係を築く
(2)お互いが「信用」できることを確認する
(3)お互いを「尊敬」できる関係を作る
著者は、「雑談を通して、『信頼』と『信用』、『尊敬』のある関係を築いて、心理学でいう『ラポール』を作ることを目指しています。ラポールとは、お互いの心が通じ合い、穏やかな気持ちで、リラックスして相手の言葉を受け入れられる関係性を指します」と述べています。


「目の前の相手に対して『無条件の肯定的関心』を持つ」では、ビジネスの場で交わされる会話は、すべてが「営業行為」と考える必要があるとして、著者は「何らかの価値を相手に提供し、それと引き換えに何らかの価値を得る・・・・・・。その一連の行為が会話であり、雑談なのだと思います。人と人が交わす会話には、必ず『意図』があります。いくら会話をしても、そこに意図がなければ、人間関係は成立しません。世界のビジネスマンにとっては、その意図を達成するためのツールが雑談なのです」と述べています。


ここで大切なのは、無条件の肯定的関心だけでなく、「empathy」(エンパシー)を持って会話をすることだといいます。エンパシーは「共感」と訳されていますが、厳密には、自分と異なる考え方や価値観を持つ相手に対して、「相手が何を考えているのか?」とか、「どう感じているのか?」を想像する能力を指します。著者は、「ただ相手の考えや気持ちを理解したり、想像するだけで終わるのではなく、『相手の感情に合わせる』ことや、『相手の隠れた意図を汲み取る』ことまでを含みます」と述べています。


「日本は世界に類がない『ハイコンテクスト社会』」では、欧米と日本の雑談の違いは、日本が「ハイコンテクスト社会」であることにも理由があると考えられるといいます。コンテクストとは、空間的、時間的、社会的な「場面」、「文脈」、「背景」といった意味合いを含む心理学の概念です。著者は、日本について「『以心伝心』という言葉に象徴されるような、相手の気持ちや意図を『察する』とか『忖度する』、『空気を読む』、『行間を読む』というコミュニケーションが成立しやすい社会であり、そもそも自己開示の必要がなかったり、自分の好みを相手に伝えることが必ずしも美徳とは考えられていません。日本は世界でも類がないほどの『ハイコンテクスト社会』と位置づけられています。これに対して、欧米の国々は人種や文化、価値観がバラバラですから、言葉でストレートに情報交換をする必要があります。自分の意見を相手にハッキリと伝えることで会話が成り立つ『ローコンテクスト』な社会が形成されているのです」と述べます。


「ビジネスの雑談は『BtoB』ではなく『CtoC』」では、流動的で変化の激しい現代のビジネスでは、商談やプレゼンの場で効果を発揮するのは、マーケティング戦略でいう「BtoB」(Business to Business=会社対会社)の関係ではなく、あくまで「CtoC」(Consumer to Consumer=個人対個人)の関係性であると指摘します。その上で、著者は「会社の看板や規模で押し切れるほど、現在のビジネス環境は甘くありませんから、戦略的な雑談がますます重要な時代になっていると考える必要があります」と述べています。


「一流が雑談に求めているのは『リベラルアーツ』」では、その冒頭を著者は「ヨーロッパの国々では、日本やアメリカと比べて『教養』が重要視されています。ビジネスで雑談をする場合でも、相手が大学を出ているならば、それなりの知識を持っていることを前提として、会話が進んでいきます。専門知識はそれぞれ違っても、歴史や政治、アートなどについて、『このレベルの話はできるはず』という水準を見越して話題を選んでいます」と書きだしています。日本のビジネスマンは雑談を潤滑油と考え、その場の緊張感を解きほぐして相手との心理的な距離感を縮める効果を期待していますが、世界のビジネスマンが雑談に求めているのは、「リベラルアーツ」だというのです。


「『グローバル』な視点と『トランスナショナル』な考え方」では、その冒頭を著者は「世界で活躍するビジネスマンが雑談で重要視しているのは、『グローバル』な視点と国の枠組みを超えた『トランスナショナル』な考え方です。それぞれの国によって、文化や価値観が大きく異なりますから、その違いをどう乗り越えて信頼関係を築き、ビジネスで成果を出していくか・・・・・・に意識を集中させているのです」と書きだしています。また、「気の利いている人であれば、『英語で話してもいいですか?』という確認の言葉があって、お互いの理解を深めるために、あえて英語を選択すると思います」とも述べます。


「『トランザクション文化』『リレーション文化』」では、最初にビジネスがあり、その後で付き合いが始まるという、いわば「トランザクション」(商取引)の文化があることが指摘されます。アングロサクソン系の人たちの飲み会は、ほとんどが「打ち上げ」となり、今後の付き合いを深めていくために、お互いの人間性を確認し合うような雑談を交わすといいます。これに対して、日本はビジネスが成立する前の段階で、「どうぞ、よろしく」とお酒を酌み交わし、お互いの関係性を深めてから一緒に仕事を始めるとして、著者は いわば、『リレーション』(人間関係)の文化です。日本では、ビジネスを成立させるための雑談が求められますから、相手に安心感を与え、不安なく仕事ができるという状況を作ることが大切ですが、どうしても『接待』的な意味合いが強くなる傾向があるようです」と述べます。


第2章「強いチームをつくる『社内雑談力』の極意」のPart1「グーグルは雑談とどう向き合っているのか?」の「社員が自分の意見を経営陣にぶつける機会が用意されている」では、その冒頭を著者はいかのように書きだしています。
「グーグルはアメリカの雑誌『フォーブス』が選ぶ「働きがいのある企業ランキング」で何度も世界の第1位に選ばれています。その理由のひとつは、社内コミュニケーションを重視していることにあります。どの分野の企業でも、従業員や部下が抱える一番の不満は「上司から十分な情報が得られない」、「上司が何を考えているのかわからない」という点にあります」


グーグルでは、社内のコミュニケーションを充実させることが、部下の幸福感の維持につながると考えているそうです。その象徴的な例が、毎週金曜日の午後に開かれているTGIF(Thanks Google It′s Friday)という全社的なミーティングだと指摘し、著者は「ここでは、社会や経営幹部が壇上にあがり、会社の方向性や新規事業、新商品などについて、全社員に説明をします。その場には、お酒やおつまみも用意してあり、参加者同士がフランクに議題について話し合うことができますが、ポイントは普段は接することのない経営幹部に対して、ダイレクトに質問ができることです」と述べます。


Part2「なぜ『社内の雑談』が重要なのか?」の「『雑談をするチームは生産性が高い』というエビデンス」では、日本の大手広告代理店が、興味深い実験結果を発表していることが紹介されます。それは、パフォーマンスを出しているチームと、パフォーマンスを出していないチームの働き方を比較検討するという試みだとして、著者は「あるチームは空き時間を見つけるとメンバー同士で雑談ばかりしていたのに対して、あるチームは仕事以外の話は一切していなかったといいます。その結果、雑談をしていたチームの方が、圧倒的にパフォーマンスが上回っていることが明らかになったのです」と述べています。


「職場の雑談には7つの『相乗効果』がある」では、具体的に以下の7つの相乗効果を紹介しています。
(1)職場の人たちと仕事以外の「つながり」ができる
(2)お互いの「信頼感」が高まる
(3)職場の「心理的安全性」が高まる
(4)「働きやすい環境」が生まれる
(5)仕事の「モチベーション」が高まる
(6)ミーティングで「発言」しやすくなる
(7)会議の結論に「納得」して働けるようになる


「働く女性が新たに直面している『慈悲的性差別』」では、その冒頭を著者は以下のように書きだしています。
「女性の活躍やダイバーシティインクルージョンに対する意識の高まりによって、最近では、女性に対する『ベネヴォレント・セクシズム』(慈悲的性差別)も問題化しています。ベネヴォレントとは、『親切な』とか『慈悲深い』という意味ですが、一見すると善意や親切心のように見える方法で表現される性差別のことを指します。『女性社員にストレスのかかる仕事を任せるのはかわいそうだ』とか、『小さな子供がいる女性には、負担が伴う仕事は任せるべきではない』などが代表的なケースです」


Part3「マネジャー(上司)に求められる雑談とは?」の「『キャリア・カンバセーション』も雑談で対応できる」では、キャリア・カンバセーションについて説明されます。それは、マネジャーとメンバーが「仕事観」や「期待値」などを共有して、お互いの理解を深め合いながら、キャリアへの意識を育んでいくことです。 海外の企業や外資系企業では一般的ですが、日本でも大手企業だけでなく、社員を資産と考えて大事にしている中小企業でも実施する会社が増えています。キャリア・カンバセーションの主なテーマは、「現在、何に興味や関心を持っているか?」「短期と長期の将来についての希望」「現在の目標や実現可能なキャリアの選択」「目標を達成するための準備や具体的なアクションの構想」などです。


「マネジャーはもっと自分の『弱み』を開示していい」では、著者がこれまで接してきた優秀なマネジャーには、ひとつの共通する特徴があることが紹介されます。それは、仕事ができる人ほど「腰が低い」ということです。著者は、「これは経営トップにも共通しますが、海外でも日本でも、優秀なリーダーほど尊大な態度を取ることはなく、常に謙虚な姿勢で相手と向き合っています。相手を見下すような不遜な態度のリーダーは、一時的には成功することがあっても、それが長続きすることはありません。リーダーに資質があるとすれば、それは発想力とか行動力ではなく、常に謙虚な姿勢を貫ける人間的な強さにあるように思います」と述べています。


第3章「武器としてのビジネスの雑談」の「相手を喜ばせることより、本質的な雑談を目指す」では、露骨なヨイショ話などは逆効果になることもあることが指摘されます。相手と信頼関係を築くには、雑誌を通じてラポールを作ることが大切であり、ラポールを作るための「3原則」は次のようになるといいます。
(1)相手が「何を大切にしているか?」を知る
(2)相手が「何が正しいと思っているか?」を知る
(3)相手が「何を求めているか?」を知る


第4章「こんな雑談は危ない! 6つのNGポイント」のNG03「ビジネスの場で『収入』の話はしない」では、日本企業では、他人の「懐事情」を詮索するのは不躾な行為と考えられていますから、無遠慮に相手の収入を聞くことは「ご法度」とされていることが指摘されます。海外の企業や外資系企業の場合は、マナーとしてだけでなく、そもそも給料やボーナスの額を明らかにすることを雇用契約就業規則などで、禁止している企業が多いとして、著者は「同じチームで働いていても、そこには極端な『賃金格差』が生じているため、自分のモチベーションを保ったり、無駄な軋轢を避けるためにも、お互いの年収は聞かないのが不文律です」と述べています。


雑談のNG05「『宗教』の話は無理に避ける必要はない」では、著者は「日本のビジネスマンは、『海外の相手と雑談をする時は宗教の話は避けるべき』と考えていますが、僕はそれが正解とは考えていません。中途半端な知識を披露したり、その是非を議論するのは問題外ですが、相手とビジネスをするのであれば、雑談を通して、きちんと話をしておく必要があるからです。相手がイスラム教の人であれば、お祈りの時間とビジネスが重なった場合、どのように対応すればいいのか、あらかじめ知っておく必要があります。ヒンドゥー教の人であれば、基本的には肉を食べませんから、ランチや会食の前に事前にチェックしておくことが求められます」と述べます。

100文字でわかる世界の宗教』(ワニ文庫) 

 

宗教についてダイレクトな質問をするのではなく、「どのような日常を過ごしていますか?」「食べられないものはありますか?」「お酒は飲みますか?」と聞けば、知りたい情報は得ることができると指摘して、著者は「『ビジネスの場だから宗教の話はNG』なのではなく、相手を尊重して、不快な思いをさせないために、聞くべきことはきちんと聞くという姿勢が大事です」と述べるのでした。そのあたりは、わたしの監修書である100文字でわかる世界の宗教(ワニ文庫)などが参考になるのではないかと思います。

 

雑談のNG06「『下ネタ』で距離感が縮まることはない」では、わたしの業界にもいるのですが、日本のビジネスマンには、雑談で「下ネタ」を話したがる人がいます。その数はさすがに時代と共に減っているとは思いますが、中高年層には少なからず生き残っているようです。著者は、「男性同士であれば、下ネタを話題にすることで、お互いの距離感が縮まったように感じられます。その場に女性がいても気にすることはなく、女性も楽しんでいるだろうと勝手に思い込んでいる人もいます。残念ながら、どちらも勘違いであることは、すでに世の中の常識になっています」と述べます。



おわりに 「リモートワークの増加が雑談の重要性を浮き彫りにした」では、ビジネスの場における雑談では、どんな話をする場合でも、次の4つのポイントを常に意識することが大切であるといいます。
(1)相手を驚かせないレベルの「自己開示」をして、自分という人間を知ってもらう
(2)好奇心を持って、相手の「人間性」や「人となり」を知ろうとする
(3)「信頼関係」の構築が目的であることを忘れない
(4)相手と「ラポール」を作れているか、客観的な目で観察しながら話す
こうした雑談を丁寧に積み重ねていくことが、ビジネスで成果を生み出すための「原動力」となるといいます。本書は、非常にわかりやすく雑談の効果やその生かし方について説明しており、勉強になりました。

 

 

2024年5月3日 一条真也