一条真也です。
107冊目の「一条本」となる監修書『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』(メディア・パル)の見本が出ました。「さりげない仕草で見えてくる50のメソッド」というサブタイトルがついています。
『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』(メディア・パル)
本書より
アマゾンの「内容紹介」には、「同じ動きをしているはずなのに、なぜかあの人には品がある。そんなふうに感じることはありませんか。本書では、実践礼道小笠原流をベースに、美しさを感じさせる所作と振る舞いを集めました。美しくみせるコツや、気をつけるポイントを知れば、ぐっと印象が変わります」と書かれています。
立礼(会釈・敬礼・最敬礼)
本書の「目次」は、以下の通りです。
「世界が注目する日本の所作と振る舞い」
【Part.1】
あいさつの基本と礼
「立礼」(会釈・敬礼・最敬礼)
「九品礼」
[所作の豆知識1]
儒教の教えの中心にある「礼」
【Part.2】
日常的な所作と振る舞い
≪生活≫
立つ姿勢(立ち姿・手足の位置)
立ち上がり方・跪座
立った状態での回り方
座るときの姿勢(正座・椅子)
正座の仕方
椅子の座り方
膝行・膝退
座布団の座り方
座った状態での回り方
歩き方・美しく見えるフォーム
だれかと一緒に歩くときの所作
行き逢いの礼
前通りの礼
車の乗り降り
傘の持ち方・閉じ方
お金の支払い方
上着の脱ぎ方
せき・くしゃみが出たときの所作
対面で話す際の振る舞い
名刺の渡し方・受け取り方
扇子のあつかい方
目通り・肩通り・乳通り・帯通り
物の持ち方(1)(ペン・鉛筆・筆・ハサミ)
物の持ち方(2)(カバン・バッグ・手荷物)
物の受け渡し方
[所作の豆知識2]
身だしなみ・立ち居振る舞い・言葉づかい
≪食事≫
箸の持ち方・構え方
ナイフ・フォーク・レンゲのあつかい方
お椀の持ち方・ふたの取り方
おしぼり・ナプキン・懐紙の使い方
お酒の注ぎ方(ビール・ワイン・日本酒)
食事のいただき方
煮物・酢の物の食べ方
骨つきの魚の食べ方
紅茶の飲み方・ケーキの食べ方
≪訪問・来客時≫
靴の脱ぎ方・履き方
ドアの開け閉め(入退室・来客時)
引き戸の開け閉め(立った状態・座った状態)
お茶の淹れ方
茶菓子の出し方
お茶の飲み方・ふたのあつかい
茶菓子の食べ方
手土産を渡すタイミング・渡し方
≪葬儀≫
葬儀・告別式での服装
香典の渡し方・タイミング
焼香・献花・玉串奉奠
≪結婚式≫
結婚式での服装
祝儀の渡し方・タイミング
乾杯の際の振る舞い
[所作の豆知識3]
礼儀作法の基本は武士の所作
おわりに「今こそ求められる所作と振る舞い」
2021年4月11日、男子ゴルフの米マスターズ・トーナメントで、松山英樹選手が日本男子で初制覇。松山選手を支えた早藤将太キャディーが最終一八番グリーンでピンをカップに戻した後、脱帽してコースに向かって一礼したふるまいが世界中で絶賛されました。わたしは、このエピソードに静かな感動をおぼえました。それは、早藤キャディーの「一礼」に対してはもちろんですが、日本人なら何ということのない「一礼」が世界中の人々に感動を与えた事実を素晴らしいと思いました。この年、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、莫大な費用をかけて東京五輪が強行開催されましたが、礼をするというノーコストのふるまいで世界中の人の心を動かし、日本のイメージを大いに向上させたことは快挙ではありませんか。
「一礼」とは「お辞儀」のことですが、お辞儀というのは世界中の人々に感動を与えるぐらい美しいのです。わたしの父である佐久間進は実践礼道小笠原流という礼法の宗家として、ブッダの「八正道」ならぬ「八美道」を提唱しています。「自分には正しいことはわからなくても、美しいことはわかる」というわけですが、その「美しいこと」の象徴が礼法なのです。早藤キャディーの「一礼」に感動した人々も、「正しさ」ではなく「美しさ」を感じたのでしょう。
「お金の支払い方」
「せき・くしゃみが出たときの所作」
コロナ禍の中にあって、わたしは「礼」の価値を再考しています。特に「ソーシャルディスタンス」と「礼」の関係に注目し、相手と接触せずにお辞儀などによって敬意を表せる小笠原流をはじめとする日本の礼法が、「礼儀正しさ」におけるグローバルスタンダードにならないかなどと考えています。西洋式の握手・ハグ・キスではコロナ時代にマッチしないからです。
PHP「ビジネスボイス」1990年秋号
じつは父だけでなく、わたしも礼法家の端くれです。大学時代に小笠原流礼法を学び、1989年5月20日、小笠原家惣領家第三十二代当主・小笠原流礼法宗家の小笠原忠統先生から免許皆伝を受けました。そのため、わたしが社長を務める冠婚葬祭会社では何よりも「礼」を重んじ、冠婚葬祭に必要な、「思いやり」「つつしみ」「うやまい」といった精神を、小笠原流の礼法をもって示しています。
そもそも礼法とは何でしょうか。拙著『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)にも書きましたが、原始時代、わたしたちの先祖は人と人との対人関係を良好なものにすることが自分を守る生き方であることに気づきました。自分を守るために、弓や刀剣などの武器を携帯していたのですが、突然、見知らぬ人に会ったとき、相手が自分に敵意がないとわかれば、武器を持たないときは右手を高く上げたり、武器を捨てて両手をさし上げたりしてこちらも敵意のないことを示しました。
「行き逢いの礼」
「前通りの礼」
相手が自分よりも強ければ、地にひれ伏して服従の意思を表明し、また、仲間だとわかったら、走りよって抱き合ったりしたのです。このような行為が礼儀作法、すなわち礼法の起源でした。身ぶり、手ぶりから始まった礼儀作法は社会や国家が構築されてゆくにつれて変化し、発展して、今日の礼法として確立されてきたのです。ですから、礼法とはある意味で護身術なのです。剣道、柔道、空手、合気道などなど、護身術にはさまざまなものがあります。しかし、もともと相手の敵意を誘わず、当然ながら戦いにならず、逆に好印象さえ与えてしまう礼法の方がずっと上ではないでしょうか。礼法こそは最強の護身術なのです。
さらに、わたしは、礼法というものの正体とは魔法に他ならないと思います。フランスの作家サン=テグジュペリが書いた『星の王子さま』は人類の「こころの世界遺産」ともいえる名作ですが、その中には「本当に大切なものは、目には見えない」という有名な言葉が出てきます。本当に大切なものとは、人間の「こころ」にほかなりません。その目には見えない「こころ」を目に見える「かたち」にしてくれるものこそが、立ち居振る舞いであり、挨拶であり、お辞儀であり、笑いであり、愛語などではないでしょうか。それらを総称する礼法とは、つまるところ「人間関係を良くする魔法」なのです。
魔法使いの少年を主人公にした『ハリー・ポッター』シリーズが世界的なベストセラーになりましたが、「魔法」とは正確にいうと「魔術」のことです。西洋の神秘学などによれば、魔術は人間の意識、つまり心のエネルギーを活用して、現実の世界に変化を及ぼすものとされています。ならば、相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす礼法とは魔法そのものなのです。
本書より
本書より
「礼」を形にしたものが儀式や作法であり、日本では「冠婚葬祭」として集大成しています。冠婚葬祭はわたしの本業でもありますので、結婚式や葬儀のマナーについてもアップデートされた最新情報を紹介しています。本書『イラストでわかる 美しい所作・振る舞い』においては、小笠原流をベースにコロナ時代にあっても美しさを感じさせる所作・ふるまいを集めてみました。これらを実践すれば、あなたの魅力が倍増することを保証いたします。本書は、11月16日に全国の書店・コンビニおよびネット書店で発売されます。個人にも家庭にも会社にも有益な情報が満載です。どうぞ、1冊お求め下さい!
2021年11月7日 一条真也拝