志なき者は虫である(吉田松陰)

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一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、幕末の志士である吉田松陰の言葉です。
わたしは、この世で最も大事なものは「志」であると思っています。

 

 

志とは心がめざす方向、つまり心のベクトルです。行き先のわからない船や飛行機には誰も乗らないように、心の行き先が定まっていないような者には、誰も共感しません。ましてや、そんな者には絶対について行こうとしません。志に生きる者のことを「志士」と呼びます。幕末の志士たちはみな、青雲の志を抱いていました。そして吉田松陰は、人生において最も基本となる大切なものは、志を立てることだと門下生たちに説きました。


萩の松陰神社にて

 

志の何たるかについて、松陰はこう説いています。
「志というものは、国家国民のことを憂いて、一点の私心もないものである。その志に誤りがないことを自ら確信すれば、天地、祖先に対して少しもおそれることはない。天下後世に対しても恥じるところはない」
また、志を持ったら、その志すところを身をもって行動に現わさなければなりません。その実践者こそ志士であるとする松陰は、志士の在りよう、覚悟をこう述べました。
「志士とは、高い理想を持ち、いかなる場面に出遭おうとも、その節操を変えない人物をいう。節操を守る人物は、困窮に陥ることはもとより覚悟の前で、いつ死んでもよいとの覚悟もできているものである」


松下村塾の史跡にて

 

最近の経営書などを読むと、志の重要性について言及しているものが多くなってきました。志の条件についてもさまざまな示唆があります。例えば、「長期の視野に立つこと」であるとか、「社会に貢献すること」であるとか、「幼少の頃の夢を思い起こすこと」であるとか、「内部からの願い」であるとかなどです。どれも完全な間違いではありませんが、いずれも志の核心はついていないと思います。また、「夢」と「志」を混同しているものが多いのが気になります。わたしは、志というのは何よりも「無私」であってこそ、その呼び名に値すると思います。

 

松陰の言葉に「志なき者は、虫(無志)である」というのがあります。これをもじれば、「志ある者は、無私である」と言えるでしょう。「自分が幸せになりたい」というのは夢であり、「世の多くの人々を幸せにしたい」というのが志です。夢は私、志は公に通じているのです。自分ではなく、世の多くの人々。「幸せになりたい」ではなく「幸せにしたい」、この違いが重要なのです。

 

企業もしかり。もっとこの商品を買ってほしいとか、もっと売上げを伸ばしたいとか、株式を上場したいなどというのは、すべて私的利益に向いた夢にすぎません。そこに公的利益はないのです。社員の給料を上げたいとか、待遇を良くしたいというのは、一見、志のようではありますが、やはり身内の幸福を願う夢であると言えるでしょう。真の志は、あくまで「世のため人のため」に立てるものなのです。なお、今回の吉田松陰の名言は、『孔子とドラッカー新装版』(三五館)にも登場します。
「令和」への改元まで、あと26日です。

 

 

2019年4月5日 一条真也

同志との再会

一条真也です。
この記事は「一条真也の新ハートフル・ブログ」の3000本目の記事となります。あと、「一条真也のハートフル・ブログ」、「佐久間庸和の天下布礼日記」と合わせれば、これまでに7000本以上の記事を書いたことになります。
4日、サンレー本社に素晴らしいお客様が来られました。
隣人愛の実践者」ことNPO法人抱樸の奥田知志理事長で、久々の再会となりました。

f:id:shins2m:20190404145011j:plainNPO法人抱樸の奥田知志理事長と

 

奥田理事長は『新修・北九州市史 社会編・福祉編』という立派な本を持参して下さいました。オフィシャルな北九州市の歴史記録にNPO法人抱樸の活動の軌跡が紹介され、奥田理事長自身も寄稿されたとのことで、「これまで支えて下さったサンレーさんのおかげです」と寄贈して下さったのです。素晴らしい快挙であり、嬉しい出来事でした。わたしも 『決定版 冠婚葬祭入門』と『決定版 年中行事入門』(ともにPHP研究所)の2冊の拙著にサインをしてお渡ししました。奥田理事長は大変喜んで下さいました。

f:id:shins2m:20190404145041j:plainさまざまな問題について語り合いました

 

その後、わたしたちは福祉のこと、困窮者支援のこと、グリーフケアのこと、宗教のことなど、さまざまな問題について縦横無尽に語り合いました。
これまでにブログ「隣人対談」ブログ「無縁社会シンポジウム」ブログ「茂木健一郎&奥田知志講演会」ブログ「包摂社会シンポジウム」ブログ「最期の絆シンポジウム」ブログ「支え合いの街づくり」ブログ「荒生田塾講演」などで紹介したとおり、奥田理事長とは数多くの対談やシンポジウムでご一緒させていただきました。活動の場は違っても、ともに有縁社会あるいはハートフル・ソサエティの創造を目指している点では同じであり、同志であると思っています。奥田理事長からは新しい社会福祉法人のプロジェクトについてもご相談を受けました。社会を良くするためなら、喜んで協力させていただきたいと思います。
「令和」への改元まで、あと27日です。

 

2019年4月4日 一条真也

安住の地はない   

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世の中のどこにも、安住の地などというものはない。あるときは天が家となり、あるときは地獄が家となる。わたしという人間も、あるときはあなたの妻子かもしれないし、あるときは父母かもしれない。すべてのことに定まった形はなく、つねに変化し続けている。(『三教指帰』)

 

一条真也です。
空海は、日本宗教史上最大の超天才です。
「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっています。「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」の異名が示すように、空海は宗教家や能書家にとどまらず、教育・医学・薬学・鉱業・土木・建築・天文学・地質学の知識から書や詩などの文芸に至るまで、実に多才な人物でした。このことも、数多くの伝説を残した一因でしょう。

 

超訳空海の言葉

超訳空海の言葉

 

 

「一言で言いえないくらい非常に豊かな才能を持っており、才能の現れ方が非常に多面的。10人分の一生をまとめて生きた人のような天才である」
これは、ノーベル物理学賞を日本人として初めて受賞した湯川秀樹博士の言葉ですが、空海のマルチ人間ぶりを実に見事に表現しています。
わたしは『超訳 空海の言葉』(KKベストセラーズ)を監訳しました。現代人の心にも響く珠玉の言葉を超訳で紹介しています。「令和」への改元まで、あと27日です。

 

2019年4月4日 一条真也

ベルコ創立50周年記念祝賀会

一条真也です。
3日は姫路で株式会社ベルコさんの創立50周年記念祝賀会が開かれ、わたしも参加しました。会場は「ザ・ロイヤルクラシック姫路」です。わたしは初めて訪れたのですが、とてもゴージャスな結婚式場でした。

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ザ・ロイヤルクラシック姫路の前で

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ザ・ロイヤルクラシック姫路の威容

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待合いで桜のドリンクが出ました

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桜のドリンクをいただきました


ベルコさんといえば、冠婚葬祭互助会の最大手です。また、同社の前社長であり、全互協の齋藤斎相談役には日頃より大変お世話になっており、拙著もたくさんご購入いただいています。いつも感謝しております。

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マスコットのベルちゃん、ルコちゃん

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太鼓で歓迎してくれました

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祝賀会のようす 

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桜が素晴らしかったです!

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テーブルの上にも花が・・・・・・

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テーブル・セッティングも素晴らしい!

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ビデオで半世紀の歴史を紹介

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挨拶するベルコの齋藤秀麻呂社長

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祝辞を述べる全互協の山下会長

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祝辞を述べる全冠協の渡邊理事長

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ビデオメッセージもありました


さすがは最大手互助会の創立50周年記念祝賀会だけあって、非常に盛会でした。最初にビデオによるベルコさんの半世紀の歴史の紹介があり、続いて齋藤秀市会長、齋藤秀麻呂社長の御挨拶、全互協の山下裕史会長(117社長)、全冠協の渡邊理事長(メモワール社長)の祝辞も素晴らしく、感銘を受けました。また、元大阪府知事である太田房江参議院議員からのビデオメッセージもありました。

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鏡割りのようす

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カンパ~イ!

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ステーキが絶品でした

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アトラクションの「よさこい」が圧巻!

 

それから鏡割りがあり、メモリードの吉田茂視会長の音頭で乾杯が行われました。お料理も豪華で、美味しかったです。特に鉄板焼ステーキが絶品でした。
業界の先輩や仲間たちが全国から参集していましたので、みなさんと楽しい時間を過ごさせていただきました。アトラクションは、地元の高校生による「百花繚乱」という“よさこい”チームの演技でしたが、圧巻でした。

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齋藤斎相談役による謝辞に感動しました

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素晴らしい祝賀会でした

 

最後は齋藤斎相談役(みどり生命社長)による謝辞でしたが、想いのこもった感動的な内容でした。斎さんはわたしと同い年ですが、本当に人間力のある素晴らしい方です。経営者として、深くリスペクトしています。それにしても、わずか50年で、規模の大きさといい、財務内容といい、無比の最強互助会を築き上げたベルコさんには感服いたします。
わが社も負けないように、また、わが社にしかできないやり方で頑張りたいと思います。ベルコのみなさま、本日は大変おめでとうございました!

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引き出物には、 ベルちゃん、ルコちゃんが・・・



なお、引き出物の中には、ベルちゃん、ルコちゃんのぬいぐるみが入っていました。CMにも登場するベルコさんのマスコットです。かわいいので、大切にしたいと思います。「令和」への改元まで、あと28日です。

 

2019年4月3日 一条真也

新入社員へのメッセージ  

一条真也です。
元号の「令和」が発表された4月1日はサンレーグループの入社式、新入社員歓迎昼食会、そして新入社員歓迎会が行われました。翌2日も小倉は春爛漫。本社の入口に咲く桜、また小倉紫雲閣の「月の広場」の桜も咲き誇っています。

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起立! 礼! よろしくお願いします!

f:id:shins2m:20190402132749j:plain新入社員合同研修で話しました

 

今日は、朝からサンレー北九州本部会議が行われました。
その後、午後からは新入社員合同研修の「社長訓話」を行いました。会場は、松柏園ホテルバンケットザ・ジュエルボックス」でした。パワーポイントを使って、スクール形式で行いました。まだ学生の面影を残す新入社員たちを前にすると、なんだか大学の客員教授として講義をしているような気分になりました。

f:id:shins2m:20190402132814j:plain大学の講義のようでした

f:id:shins2m:20190402132900j:plainサンレーについて語りました

f:id:shins2m:20190402132937j:plainど真剣に本質論を語りました

f:id:shins2m:20190402133212j:plainS2M」について説明しました

 

新入社員を前に、まずは「サンレー」という社名の意味から説明しました。その意味は「SUNRAY(太陽の光)」「産霊」「讃礼」と3つあります。じつは、これらは「令和」にも通じるキーワードです。そして、経営理念である「S2M」についても説明しました。

f:id:shins2m:20190402133315j:plain「人類社会の流れ」について

f:id:shins2m:20190402133618j:plain情報とは何か?

f:id:shins2m:20190402133906j:plain「思いやりの時代」について

f:id:shins2m:20190402134044j:plain孔子ドラッカーについて

 

さらには、「思いやりの時代」について、「礼」や「ホスピタリティ」の説明を含めて語りました。それから、ドラッカー思考の「自己実現」についても話しました。ドラッカーは「自己実現」の大切さを強調してきました。そして、そのための「自己刷新」や「自己啓発」の大切さを説きました。話を聞いている新入社員たちの目はキラキラと輝いていました。

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サンレー哲学を説きました

f:id:shins2m:20190402141619j:plain「事業の定義」について

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わが社が提供するもの

f:id:shins2m:20190402142141j:plain熱く語りました

 

そして、「マーケティング」から「事業の定義」に話題を移し、わが社が提供するものについて話しました。わが社の事業の柱といえば冠婚・葬祭・互助会ですが、その三本柱はそれぞれ「平和」「平等」「人の道」を提供していると述べました。さらには、「互助会」について、「冠婚葬祭業」について、「サービス業」について・・・・・それぞれ、その本質を説きました。

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わが社にできることは何か?

f:id:shins2m:20190402142545j:plain人にも企業にもミッションがある!

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起立! 礼! ありがとうございました!

 

企業の真の宝は施設などではなく、人です。
特に、わが社のようなミッショナリー・カンパニーは人がすべてです。今日の講話は1時間という短い時間でしたが、みんな真剣に聞いていました。みんな、わたしの話に興味を持ってくれていることが実感できました。彼らが冠婚葬祭の現場あるいはサポート部門で活躍してくれる日が楽しみです。
「令和」への改元まで、あと29日です。

 

ミッショナリー・カンパニー

ミッショナリー・カンパニー

 

 

 2019年4月2日 一条真也

サンレーグループ新入社員歓迎会  

一条真也です。
「令和」という新元号の発表があった4月1日の午後からは、サンレーグループの役員会でした。その夜は新入社員の歓迎会が開かれ、新入社員研修の講師などを務める先輩社員たちも参加しました。松柏園ホテルの庭園の桜が満開で、とても綺麗でした。

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松柏園ホテルの庭園の桜の前で

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最初に、わたしが挨拶しました

f:id:shins2m:20190401175617j:plain改めて歓迎の言葉を述べました

 

わたしが最初に歓迎の挨拶をしました。わたしは、まず、「改めて、入社おめでとうございます! これから、みなさんが冠婚葬祭業という仕事を通じて有縁社会を再生してくれることを大いに期待しています。仕事を通して人を幸せにするという高い志をもって頑張って下さい」と述べました。

f:id:shins2m:20190401175939j:plainカンパ〜イ!

f:id:shins2m:20190401181324j:plain新入社員歓迎会のようす

 

次に、玉中常務の音頭で乾杯しました。乾杯後は、各テーブルで会話の花が咲き、懇親を深めました。わたしも、わが子のような若い人たちと話すと若返る気がします。

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新入社員による歌

f:id:shins2m:20190401190808j:plain新入社員による歌

その後は、お待ちかねのカラオケタイムです。
北陸本部は「女々しくて」(ゴールデンボンバー)、沖縄本部・宮崎事業部は「オジー自慢のオリオンビール」(BIGIN)、北九州本部Aは「世界に一つだけの花」(SMAP)、北九州本部Bは「天体観測」(BUMP OF CHICKEN)を熱唱しました♪ 社長のわたしが言うのも何ですが、わが社の社員は歌が上手です。何かというとカラオケを歌う企業文化もあるとは思いますが、本当に歌のうまい社員が多いと思います。そんな伝統を踏襲して、今年の新入社員たちも大いに歌ってくれました♪

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「まつり」を歌いました♪ 

 

そして、最後にわたしがステージに上がりました。
わたしは、例年通りにオレンジレンジの「」を歌おうかと思っていました。もう10年以上も、新入社員の歓迎会で「」を歌っています。しかし、そろそろオレンジレンジを知らない世代になってきたので、昨年はNHK朝ドラの主題歌であるサザンオールスターズの「若い広場」を歌いましたが、今年はブログ「Lemon」で紹介した歌でも歌おうかなとも考えましたが、ブログ「まつり」で紹介した歌を歌いました。最後は「これが平成祭りだ~よ~♪」と歌詞を替えて、去りゆく平成へのオマージュにしました。

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最後は「末広がりの五本締め」で

 

最後は、玉中常務によるサンレーグループ・オリジナルの「末広がりの五本締め」で締めました。わが社のオリジナル文化は色々とありますが、この「末広がりの五本締め」もそのひとつです。これをやると、みんなの心が本当にひとつになるような気がします。やはり、「かたち」には「ちから」があるのだと強く実感させてくれます。明日は、新入社員研修で社長訓話をします。冠婚葬祭という仕事の意味と価値、そしてわが社の経営理念とさまざまな取り組みについて、じっくり話そうと思っています。
「令和」への改元まで、あと29日です。

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松柏園の夜桜の前で 

 

2019年4月2日 一条真也

新元号は「令和」に!

一条真也です。
本日、ついに新元号「令和」が発表となりました。ブログ「新元号を予想する」で紹介したわたしの予想は残念ながら外れました。菅官房長官が最初「レイワ」と口にしたとき、「ヘイワ」と聞こえて「平和」が新元号かと一瞬思いました。また、「令和」の「令」が「礼」だったら最高なのにとも思いました。しかしながら、新元号は「令和」です。

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元号は「令和」に!(NHKより)

 

正直言って、「令和」という言葉が新しい元号になるということには違和感もおぼえますが、考えてみれば「平成」のときもそうでした。時間が経てば、きっと可憐なイメージに変わっていくと思います。5月1日の改元が楽しみですね。
それにしても、ついに「令和」という新元号が発表されたということは、すなわち、今上天皇の御譲位と東宮殿下の新天皇への御即位が30日後に迫ったことを意味しており、わたしたちは、いま、大きな御代すなわち時代の転換点に立っていると言えるでしょう。

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わたしの予想は外れました

 

残すところあと1ヶ月となってしまった「平成」ですが、31年という期間は、昭和(64年)・明治(45年)・応永(35年)に次いで元号として史上4番目の長さになりました。この元号は、「内平外成(内平かに外成る)」(『史記』五帝本紀)、「地平天成(地平かに天成る)」(『書経(偽古文尚書)』大禹謨)から引かれたもので、発表当時、「平成おじさん」こと時の官房長官であり後の首相・小渕恵三氏が「国の内外、天地とも平和が達成される」という意味で制定された旨を説明されていた様子をおぼえていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

f:id:shins2m:20190401120455j:plain記者会見を開いた安倍首相(NHKより)

 

 一方で、今朝から開催された、有識者による「元号に関する懇談会」で議論され、衆参議長・副議長からの意見聴取、全閣僚会議での協議を経て午前10時20分ごろに閣議で決定すされた新たな元号となる「令和」。
記者会見を開いた安倍首相によれば、『万葉集』三十二首序文の「初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す」が出典です。

 

原文 万葉集(上) (岩波文庫)

原文 万葉集(上) (岩波文庫)

 

 
安倍首相は、「令和は、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味です。典拠となった『万葉集』は幅広い階層の歌がおさめられた日本の豊かな国柄をあらわす歌集であり、こうした日本が誇る悠久の歴史と香り高い文化、四季折々の自然の美しさという伝統を後世へ繫いでいく。また、厳しい冬の後に花開かせる梅の花のように、国民ひとりひとりがそれぞれの花を大きく開かせることが出来る時代になってほしい。その想いこめるにふさわしい元号として閣議で決定いたしました」と述べました。

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「令和」の時代を生きましょう!

 

この「令和」という新元号ですが、史上初の日本古典に基づいた元号と言う意味で、大変画期的かと思います。国際社会の中で「日本らしさ」が求められる昨今、その原点とも言える『万葉集』から引かれたことは、大きな意味と節目になるかと思います。
また、引用元の「令月」は何を行うのにも良い月、もしくは2月の異称とのことですが、元号とその由来に「月」と当社が目指す「和」がこめられていることは、わがサンレーにとっても大変意義深い元号なのではないでしょうか。

f:id:shins2m:20190401173820j:plainサンレーにとっても意義深い元号です

 

改元の候補に挙がった熟語は今後も公表されないことが新聞等では既に報道されており、どのような中から選択されたものであるかはうかがい知ることはできません。しかしながら、いずれにせよ、今上陛下、そして新天皇となられる皇太子殿下のご意向は、ある程度以上に反映されたものでありましょう。僭越ながらわたし自身もそのご意向がかなえられ、これからの新時代が平穏なものになることを心より祈念いたしますとともに、そのための行動として、これまで同様に、当社のミッションたる「人間尊重」、その普及である「天下布礼」を推し進めいていきたいと考えております。

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サンデー毎日」2017年3月26日号


それから、「令和」が梅の花を詠んだ和歌に由来することに感銘を受けました。現在の日本は桜の開花で賑わっていますが、この時期に梅の花に由来する元号が発表されたことは興味深いです。「サンデー毎日」2017年3月26日号の連載コラム「人生の四季」第72回にも書きましたが、梅の花を見ると、わたしはいつも『論語』を連想します。わたしは、日本・中国・韓国をはじめとした東アジア諸国の人々の心には孔子の「礼」の精神が流れていると信じています。

 

論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)

 

 

 ところが、いま、日中韓の国際関係は良くないです。というか、最悪です。三国の国民は究極の平和思想としての「礼」を思い起こす必要があります。それには、お互いの違いだけでなく、共通点にも注目する必要があります。
そこで重要な役割を果たすのが梅の花です。日中韓の人々はいずれも梅の花を愛します。日本では桜、韓国ではむくげ、中国では牡丹が国花または最も人気のある花ですが、日中韓で共通して尊ばれる花こそ梅なのです。
この意味は大きいと思います。それぞれの国花というナンバー1に注目するだけでなく、梅というナンバー2に着目してみてはどうでしょうか。そこから東アジアの平和の糸口が見えないものかと思います。

 

 
梅は寒い冬の日にいち早く香りの高い清楚な花を咲かせます。哲学者の梅原猛氏によれば、梅とは、まさに気高い人間の象徴であるといいます。日本人も中国人も韓国人も、いたずらにいがみ合わず、偏見を持たず、梅のように気高い人間を目指すべきではないでしょうか。各地の梅の名所は、海外からの観光客の姿が目立ちます。わたしは、戦争根絶のためには、ヒューマニズムに訴えるだけでなく、人類社会に「戦争をすれば損をする」というシステムを浸透させるべきであると考えます。梅原氏は今年の1月に逝去されましたが、「令和」という元号そのものが梅原氏の遺言のような気がしてなりません。

 

Society(ソサエティ) 5.0 人間中心の超スマート社会

Society(ソサエティ) 5.0 人間中心の超スマート社会

 

 

ブログ『Society 5.0』で紹介した本の内容のように、日本は現在、大きな時代の変革期にあります。平成の時代そのものが大きな変革の時代であったとも言えるでしょう。インターネットに代表される情報技術の進歩は社会の姿を大きく変化させました。たとえば、今回のような改元の場合、ある研究者によれば、近世なら新元号が発表された後日本中に伝達されるまでには2週間から1ヶ月ほどの期間を要しました。
ところが、今回はテレビやインターネットニュースはもちろん、首相官邸のTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeチャンネルでライブ配信が行われ、瞬く間にほとんどの国民が新元号を知りました。元号の使用が一般的になった近世はもちろん、前回の改元が行われた昭和に比べても、社会の様子は一変しました。

 

ハートフル・ソサエティ: 人は、かならず「心」に向かう

ハートフル・ソサエティ: 人は、かならず「心」に向かう

 

 

 しかし、拙著『ハートフル・ソサエティ』(三五館)にも書いたように、新しい時代が到来しても、人は必ず「心」に向かうと考えます。また、大きく社会の様子が変化している現在だからこそ守っていかなければならないものがあります。それこそ、元号に代表される古代からの伝統であり、わが社が業とする儀式なのです。今回の改元が行われる曲折の中で、情報システム上の問題から、企業の元号離れが進んだといわれています。国際化などが進展する現代において、基準となる西暦以外の紀年法は必要ないのではないかという意見も聞こえました。もちろん、元号不要論の中には、単に西暦と併記することが億劫だからという理由もあるのでしょうが、果たしてそんな理由でこれまでの伝統をなくしてしまって良いのでしょうか? わたしの答えは「否」です。

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元号は日本の伝統です(NHKより)


和を求めて』(三五館)

 

元号であれば、「大化」以降約1400年あまりにわたって受け継がれてきた伝統であり、今回の「令和」に至るまで、平成を含めて約250を経ています。これはルーツとなった中国においても既に喪われてしまったもので、現在は日本固有の文化だということができるでしょう。ここに見える希少性は、無論、今後も元号を続けるべき理由のひとつですが、それ以上に、元号にはこれまで日本が歩んできた道のりや、その時代を生きた人々の想いが凝縮されたものであることが何よりも大切なのです。今回の「令和」であれば、「昭和」に続いて「和」の一字が入ったことが大きいです。
拙著『和を求めて』(三五館)でも述べたように、「和」は「大和」の和であり、「平和」の和です。日本の「和」の思想こそが世界を救うのではないかと思います。

儀式論』(弘文堂)

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儀式なくして人生なし!

 

それは儀式においても同様です。
拙著『儀式論』(弘文堂)、『『決定版 冠婚葬祭入門』『決定版 年中行事入門』(ともにPHP研究所)にも書きましたが、冠婚葬祭・年中行事に代表される儀式は、これまで日本人が培ってきた文化の淵源――核であり、元号と同じく、携わる人間が想いをこめて紡ぎ上げてきた、かけがえのない存在です。そのように重要な存在を、効率化や文明化の美名を被った「面倒くさい」という意識のもとになくしてしまうことは、決して許されるものではありません。

f:id:shins2m:20190314002115j:plain 『決定版 冠婚葬祭入門』と『決定版 年中行事入門

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「こころ」を「かたち」にすることを大切に!

 

そもそも、現代のわたしたちが「改元」や「儀式」を体験できることは、過去のご先祖様たちがわたしたちへ、この文化を繫いできてくれたからです。それを中継地点に過ぎないわたしたちが勝手に途切れさせてしまうことは「おこがましい」としか表現のしようがありません。
世の中には本当に意味のない、ムダな作法「虚礼」が存在することも事実です。このようなものは淘汰されてしかるべきですが、不易と流行の間にある線引きをどこに置くかについて、新時代を迎える今、わたしたちは慎重の上にも慎重に考えを巡らせなければなりません。

f:id:shins2m:20190401143231j:plain「平成」もあと1か月です!

 

ともあれ、ついに新たな元号「令和」が決定しました。
これから今上陛下の御譲位また皇太子殿下の新天皇への御即位にあたり、日本文化の核ともいえる践祚と即位に関する儀式群が幕を開けます。儀式に携わる者として、いま、この時に立ち会えた幸運に感謝し、その推移を見守らせていただくとともに、これから迎える新たな御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の華ひらく時代となることを心より願う次第です。「令和」への改元まで、あと30日です。

 

新しき時代を前に心せよ

   変へてはならぬものを

       知るべし(庸軒)

 

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4月2日の朝刊各紙

 

2019年4月1日 一条真也