助け合いの輪

一条真也です。
石川県に来ています。石川県は能登半島地震の死者を202人、安否不明者を102人と発表。避難者数はなんと2万8000人です。そんな中、ヤフーニュースで「【助け合いの輪】「遠慮せんで、住めばみんな家族」農業用ハウス“自主避難所”に高齢夫婦が仲間入り【能登半島地震】」という記事を見つけました。

ヤフーニュースより

 

FNNプライムオンライン配信の記事では、「能登半島地震から1週間が経過。輪島市では、多くの人が避難所に身を寄せていますが、避難所以外の場所でも『助け合いの輪』が広がっています」として、「農業用ハウス“自主避難所”に高齢夫婦が参加」「輪島市内の自宅ガレージで物資を配る遊漁船業の男性」といった具体的事例を紹介しています。読んでいて、心が温かくなる記事です。

 

 

この記事のタイトルには「助け合い」という言葉がありますが、これは正確には「相互扶助」ということです。相互扶助のメカニズムを解明するには、現代の進化生物学や、「人の心の歴史」をさぐる進化心理学の見方に照らし合わせてみるとわかりやすいでしょう。人類は、数百万年前から共同体を形成して、その中で暮らすという環境で進化してきました。アリやハチなど、社会をつくる生物は珍しくありません。しかしながら、社会生活からこれほどの利益を得ている動物は、脊椎動物の中でも人間の他にはそう多くありません。オックスフォード大学で動物学を専攻し、英国「エコノミスト」誌の科学記者であるマット・リドレーは、ブログ『徳の起源』で紹介した著書において、「人間は、人嫌いであるくせに、人と交わらずには生きてゆけない」と述べています。


避難所で苦労の末に映ったテレビ

 

ブログ「北陸へ!」を読んだ金沢紫雲閣 の大谷賢博総支配人(上級グリーフケア士)からLINEが届きました。大谷総支配人は正月に能登半島にある実家に帰省中に被災。実家は全壊しました。現在は避難所で生活している彼からのLINEには、「北陸入りありがとうございます! 私は今日は罹災証明の書類の下準備をしておりました。昨日は避難所に自力でアンテナ付けてテレビが映るようになりました。1週間ぶりにテレビを見て、映像で七尾市輪島市珠洲市の被害の大きさに驚いております😥」と書かれていました。彼が苦労して自力で映るようにしたテレビはきっと避難所の人々を勇気づけていることでしょう。

 

 

拙著心ゆたかな社会(現代書林)でも紹介しましたが、リドレーは「人類を他の動物から区別し、生態系の中で優位な存在にしている理由の1つは、わたしたちが非常に高度な社会的本能を数多く持っているからなのだ」と主張しました。古代ギリシャアリストテレスは「人間は社会的動物である」と言いましたが、近年の生物学的な証拠に照らし合わせてみると、この言葉はまったく正しかったことがわかります。結局、人間はどこまでも社会を必要とするのです。人間にとっての「相互扶助」とは生物的本能であるとともに、社会的本能でもあるのです。

 

相互扶助を基本理念とする互助会であるわが社は、現在、北陸の被災地への物資の提供や人的支援を行っています。わが社が推進している「CSHW」は、Compassion(思いやり)⇒Smile(笑顔)⇒Happy(幸せ)⇒Well-being(持続的幸福)と進んでいきます。そして、Well-being(持続的幸福)を感じている人は、Compassion(思いやり)をまわりの人に提供・拡大していくことができます。これが「CSHW」のハートフル・サイクルです。すなわち、ハートフル・サイクルはそこで回り続けるのではなく、周囲を巻き込みながら拡大し「思いやり」を社会に拡散をしていくサイクルなのです。

 

 

記事のタイトルには「助け合いの輪」という言葉がありますが、輪とはサークルのこと。「助け合いの輪」とは「ハートフル・サイクル」のことなのです。このハートフル・サイクルが社会に浸透した状態が「ハートフル・ソサエティ」であり、「互助共生社会」です。サンレーは、その起点となるべくCSHWハートフル・サイクルを回していきます。まずは、コンパッションからです。というわけで、10日の午前中、能登半島に向かいます!

 

2024年1月10日 一条真也