鎌田東二先生からのメール

一条真也です。
京都大学名誉教授の鎌田東二先生といえば、日本を代表する宗教哲学者として知られています。また、日本における神道研究の第一人者です。ステージ4のガン患者でありながら「ガン遊詩人」として積極的にライブ活動を続ける神道ソングライターでもあります。そんな鎌田先生先生とわたしは、昨年11月に対談本古事記と冠婚葬祭(現代書林)を上梓いたしました。おかげさまで好評です。

古事記と冠婚葬祭』(現代書林)

 

その鎌田先生がブログ「能登半島からのLINE」を読まれ、上級グリーフケア士である金沢紫雲閣の大谷賢博総支配人の実家が全壊したことについて、メールを送って下さいました。そこには、「大震災で苦しみ痛んでいる能登半島の鉞(まさかり)のような半島のほぼど真ん中に真脇遺跡があります。縄文のいぶきといのちが充ち満ちている最高の縄文聖地霊場です。すばらしいです。わたしは、これまでに能登半島を3周していますが、すばらしい、うつくしい、なつかしい半島です。その半島の痛み、わが身の脳にも、心にも魂にも響きます。とても切実に、せつなく。」と書かれていました。被災者の悲嘆に寄り添う、詩人らしい達意のメールに深く感銘を受けました。


鎌田先生のメールの中に登場する「真脇遺跡」ですが、縄文時代前期(約6000年前)から晩期(2300年前)までの約4000年間、人々が住み続けて繁栄した集落遺跡です。全国でもまれにみる長期定住型遺跡で、国指定史跡になっています。この遺跡から出土した、イルカの骨や彫刻柱などの多種多様な遺物は、真脇遺跡縄文館で展示されています。重要文化財に指定された219点を所蔵した館内で、縄文土器風の焼き物作りなどが予約制で体験できます。晩期の環状木柱列と中期の板敷き土壙墓(どこうぼ)が出土した場所に復元されています。

 

じつは、鎌田先生と大谷総支配人は会ったことがあります。2022年5月5日、鎌田先生は、金沢市東山2丁目の「ギャラリー椋」でファイナルトーク&ミニライブを開かれました。そのとき、サンレー北陸の青木博部長らとともに、大谷総支配人も参加しているのです。彼は、「ミニライブはとても感動致しました。どこまでも優しく心が包み込まれるようで一曲目から目頭が熱くなりました。以前、社長がブログで鎌田先生の著書の『歌は宗教を超える。キリスト教も仏教も関係なく、宇宙が歌である』という言葉を紹介されていましたが、まさにそれを実体験致しました。宗教や人種や民族を超えて、人間は歌を聞いて感動することも、それらを超えて巨石を信仰する事もすべて同じ事なんだと思いました。素晴らしい時間でした」との感想をLINEで送ってくれました。


鎌田東二先生と

 

金沢イベントの当日は5人のサンレー社員が参加しましたが、鎌田先生のわが社への想いに全員が感動していました。当日は鎌田先生と写真家の須田郡司さんの写真展も行われましたが、テーマが「東日本大震災の10年と巨石文化」でした。参加した大谷総支配人や他のサンレー社員たちは「東日本大震災」についての考えを深め、地震の恐ろしさを痛感したことだと思いますが、まさか2024年の元旦に震度7能登半島地震が発生するとは! 『古事記と冠婚葬祭』で鎌田先生が発言された「さし昇ってくる朝日に手を合わす。森の主の住む大きな楠にも手を合わす。台風にも火山の噴火にも大地震にも、自然が与える偉大な力を感じとって手を合わす心。どれだけ科学技術が発達したとしても、火山の噴火や地震が起こるのをなくすことはできません。それは地球という、この自然の営みのリズムそのものの発動だからです。その地球の律動の現れに対する深い畏怖の念を、神道も、またあらゆるネイティブな文化も持っています」という言葉を噛みしめています。

 

 

2024年1月2日  一条真也