「リボルバー・リリー」

一条真也です。
12日、シネプレックス小倉で日本映画リボルバー・リリー」を観ました。かつてない壮大なスケールで繰り広げられる、骨太のエンターテインメント・アクション超大作で、大変面白かったです。「史上最強のダークヒロイン」という新境地に挑んだ綾瀬はるかの熱演も素晴らしく、日本映画史に新たなフィルムノワールが誕生しました。


ヤフー検索の「解説」には、こう書かれています。
「『リバーズ・エッジ』などの行定勲監督が『今夜、ロマンス劇場で』などの綾瀬はるかを主演に迎え、長浦京の大藪春彦賞受賞小説を映画化したアクション。大正時代の東京を舞台に、主人公の女性スパイが躍動する。共演は『はい、泳げません』で綾瀬と共演した長谷川博己やアイドルグループ『Go!Go!kids』の羽村仁成、『のぼうの城』などの野村萬斎、『仕掛人・藤枝梅安』シリーズなどの豊川悦司など」

 

ぴあ「あらすじ」には、こう書かれています。
「1924年。関東大震災から復興する東京には、モダンな建物が増え、繁華街は賑わっていた。3年で57人の殺害に関与した元スパイの百合は、銘酒屋の女将をしている。彼女はある日、家族を殺され、父親に託された陸軍資金の鍵を握る少年に助けを求められる」

 

 

原作者の長浦京は、1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務などを経て放送作家に。その後、難病指定の病にかかり闘病生活に入ります。退院後に初めて書き上げた『赤刃』で、第6回小説現代長編新人賞を受賞。2017年本作で大藪春彦賞を受賞しています。大藪晴彦といえば和製ハードボイルドの代名詞ですが、『リボルバー・リリー』の世界はまさにハードボイルドそのもの。ただし、ハードボイルドといえば男の世界と相場が決まっていましたが、『リボルバー・リリー』は「男が作った不完全な世界を女が終わらせる物語」です。


アマゾンの内容紹介には、「小曾根百合――幣原機関で訓練を受け、東アジアなどで3年間に50人超の殺害に関与した冷徹非情な美しき謀報員。『リボルバー・リリー』と呼ばれた彼女は、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・細見慎太と出会い、陸軍の精鋭から追われる。関東大震災後の帝都を生き抜く逃避行に、終息の地は待っているのか。息をもつかせぬ超弩級エンタメ長編!」と書かれています。

 

映画「リボルバー・リリー」は、とにかく豪華キャスト。ブログ「今夜、ロマンス劇場で」で紹介した2018年の映画などに出演し、老若男女問わずに幅広い人気を集める主演の綾瀬はるかブログ「シン・ゴジラ」で紹介した2016年などの映画の長谷川博己ブログ「偶然と想像」で紹介した2021年の映画などの古川琴音。ブログ「さがす」で紹介した2022年の映画などの清水尋也。久々にシシド・カフカの姿が見れたのも嬉しかったです。ブログ「ひよっこ」で紹介した2017年のNHK朝ドラでの久坂早苗役が好きでした。ちなみに、綾瀬はるかシシド・カフカも38歳の同い年ですね。


その他にも、佐藤二朗吹越満内田朝陽板尾創路橋爪功石橋蓮司阿部サダヲ野村萬斎豊川悦司鈴木亮平など豪華俳優陣が出演しています。中でも、阿部サダヲ山本五十六を演じたのには意表を突かれました。ただ、メインキャストの中に羽村仁成、ジェシーというジャニーズ事務所所属のタレントがいることには不安をおぼえます。もちろん彼に何の罪もありませんが、今後、国連人権理事会が故ジャニー喜多川氏の性加害問題を本格的に調査・追求した場合は、せっかく製作されたこの映画にも悪影響を及ぼすのではないかと思うからです。


この映画のメガホンを取ったのは、行定勲。第25回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した「GO」(2001年)や、興行収入85億円の大ヒットを記録し社会現象となった「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)など数々のヒット作を手がけてきた監督ですね。プロデューサーは、「孤狼の血」(2018年)、「孤狼の血 LEBEL2」(2021年)、ブログ「シン・仮面ライダー」で紹介した2023年の話題作などを手がけた紀伊宗之です。俳優陣といい、制作陣といい、まさに東映が総力を挙げて作った映画といった印象です。実際、かつてない壮大なスケールで繰り広げられる骨太のエンターテインメント・アクション超大作に仕上がっています。


主演の綾瀬はるかの熱演は素晴らしかったです。ブログ「レジェンド&バタフライ」で紹介した2023年1月公開の映画でもキムタクと共に激しいアクションシーンを披露していましたが、今回はそれ以上でした。ノースリーブのドレスから出た美しい腕の先には銃が握られ、そこから飛び出る弾丸の嵐に、男たちがバタバタと倒れていくシーンは爽快です。主人公の百合を演じ、ダークヒロインという新境地を開拓した綾瀬のアクションを間近で見守っていた長谷川博己は「すげえ!」と感嘆の声をこぼしたそうです。また、行定監督は「綾瀬はるかでなければ百合というキャラクターは成立しなかった。全身で役をつかんでくれた」と初日舞台挨拶で彼女を絶賛しました。


アクション超大作である「リボルバー・リリー」で、38歳の綾瀬はるかが激しいアクションを見せてくれますが、同い年のシシド・カフカも負けじと女スナイパーぶりを披露してくれます。この映画のテーマの1つは「男が作った不完全なを女が終わらせる」というものですが、わたしは前日に観たブログ「バービー」で紹介したハリウッド映画を思い出しました。「バービー」はバービー人形という女性性(フェミニン)のシンボルを使って男性社会を批判するフェミニズム映画でしたが、「女が男に勝つ」ことを映画いている点は「リボルバー・リリー」と共通しています。でも、女性監督がメガホンを取った「バービー」はストーリー展開がモヤモヤしてどうにもスッキリしませんでした。「女が男に勝つ」ことを描くなら、「リボルバー・リリー」みたいにわかりやすい方が好きですね。

 

リボルバー・リリー」は、けっしてアクションだけでなく、行定監督ならではの映像美が素晴らしかったです。特に、大正時代の東京の描き方が最高でした。鉄筋コンクリートのモダンな建物や最大規模の花街・・・・・・関東大震災の復興で活気あふれる東京の様子からは、限りないロマンを感じました。そういえば、鬼滅の刃の舞台も大正時代でしたね。明治と昭和のはざまに漂う幻想の時代といった印象があります。大正時代といえば、モボにモガ。綾瀬はるかのウェーブのかかった断髪のヘアスタイルや、ストレートシルエットのドレスなど、20年代特有のモガ・ファッションも、よく似合っていて素敵でした。

 

そして、大正時代といえば、帽子です。この「リボルバー・リリー」という映画にわたしが何よりもシビレたのは、登場する男たちがみんな白のボルサリーノを被っていたからです。それが、この映画のスタイリッシュな映像美に大いに寄与していました。長谷川博己豊川悦司ジェシーも、なんと佐藤二朗までもが、みんな白のボルサリーノを被っている。陸軍の刺客たちもみんな被っている。最後に登場した鈴木亮平だけは黒のボルサリーノでしたが、とにかくみんな被っている。もう、登場する男たちの半分は帽子を被っていた印象ですね。そう、前例のないほどに、「リボルバー・リリー」は帽子の映画だったのです!


時谷堂百貨HPによれば、ボルサリーノは、1857年イタリアのアレッサンドリアにおいて、ジュゼッペ・ボルサリーノによって創業された帽子ブランドです。彼がフェルト帽の芸術的職人だけを集めた工房を設立したところから、このブランドの歴史は始まります。ジュゼッペは創業当初から、「効率のために、いかなる品質を犠牲にすることもできない。」というフィロソフィーを持ち、最上の素材と上質の機械を値段に関係なく揃えることに徹していました。こうしたボルサリーノの哲学は、20世紀に入ると大きく花開きます。1900年に開催されたパリ万国博覧会でグランプリを受賞したのを皮切りに、ボルサリーノの高品位な帽子は世界的な注目を集め、一躍トップクラスの有名ブランドへと成長しました。以来、現在に至るまで、紳士帽を代表するブランドとして抜群の人気を誇ります。


時谷堂百貨HPによれば、ボルサリーノの帽子は、1970年にアラン・ドロンジャン・ポール・ベルモンドが出演した映画「ボルサリーノ」により、世界中で人気に火がついたそうです。日本においては、「ボルサリーノ帽」が中折れ帽の代名詞となり、フェルト製のハット全般を指す愛称として広く用いられるようになったほどです。ボルサリーノの帽子には特別な大人の色気があり、スーツやコートなどダンディーなスタイルとの相性がよく、多くの帽子ファンにとって憧れの存在となっています。帽子種類としては中折れ帽(フェルトハット、パナマハット)が有名ですが、キャップ、ハンチング、アルペンハット、バケットハットなどもラインナップされています。


大正6年の創業です!

 

さて、「リボルバー・リリー」は大正時代の物語ですが、この時代の帽子といえば、おそらくは 銀座トラヤ帽子店で求めたのではないでしょうか。同店は、神田・神保町のすずらん通りに大正6年(1917年)3月に開店しました。学生相手に帽子を売り始めますが、これが当たりました。在庫がなくなってしまうことも、しばしばあったといいます。銀座に出店したのは昭和5年(1930年)3月。続いて昭和6年に日本橋店、丸ビル店と出店。昭和20年、東京大空襲により閉店を余儀なくされます。昭和23年、銀座店を再開、同時期に浅草店も開店。昭和35年(1960年)から銀座2丁目、令和4年(2022年)10月から現在の銀座1丁目で営業中です。


 銀座トラヤ帽子店で青のボルサリーノを購入

昨夜は、赤のボルサリーノで同窓会へ!

 

ブログ「新しい帽子を買わなくちゃ」で紹介したように、わたしは昨年、 銀座トラヤ帽子店で白と青のボルサリーノを求めました。その直後にお店が移転しました。新しいお店を訪ねて店長さんと話したのですが、「昔は銀座にはボルサリーノを被ったお洒落な紳士がたくさんいまいしたが、今ではもうほとんど見なくなりました。帽子は売れなくなりましたね」とのこと。「それなら、俺がボルサリーノを被ってやる!」と思い、それ以来、ことあるごとに帽子姿で各所を訪れます。ブログ「還暦同窓会」で紹介したように、昨夜は赤のボルサリーノ姿で高校の同窓会に参加しました。「リボルバー・リリー」を観たのはシネプレックス小倉ですが、本当は銀座の東映本館で鑑賞したかったですね。もちろん、白のボルサリーノ姿で・・・。


この映画、白のボルサリーノ姿で観たかった!

 

2023年8月13日 一条真也