「ひよっこ」

一条真也です。
今日で9月も終わりですね。
30日、NHKの連続テレビ小説ひよっこ」が最終回を迎えました。わたしは今月に入ってから、毎日、「ひよっこ」を観ていました。


番組HPより



NHKの連続テレビ小説は通称「朝ドラ」と呼ばれ、1961年(昭和36年)からずっと放送されています。わたしは基本的にテレビを観ない人間なのですが、あることから「ひよっこ」だけはフォローしていました。もっとも、朝8時の放送時間、昼12時45分の再放送時間は忙しいので、なかなか視聴することはできません。そこでNHKオンデマンドで観ていました。


30年ぶりに観た朝ドラでした



朝ドラを完全フォローしたなんて、1986年の「はね駒」以来です。なんと30年ぶりということになりますね。「はね駒」を観たのは、大ファンだった斎藤由貴が主演したからですが、彼女はいま大変なことになっていますね。パンツを頭にかぶる変態男にだまされたようで、ちょっと心配しています。


さて、なぜ、わたしが「ひよっこ」を観るようになったのか?
それは、今年の8月24日にNHK「SONGS」で桑田佳祐スペシャルが放送されているのを出張先のホテルでたまたま目にしたからです。その日、すずふり亭の近く(?)にある東京・赤坂のカラオケ・スナックで配信されたばかりの桑田佳祐の新曲「若い広場」を初めて聴いたのですが、「おお、良い曲だなあ!」と思いました。「PON PON PON♪」から始まるところに卓越したセンスを感じます。サビの合唱部分も素晴らしい!


「SONGS]で桑田と乙女たちのコラボが実現!



その後、ホテルに戻ってテレビをつけたら、いきなり「SONGS」に桑田サンが出演していたのです。番組では桑田サンの最新アルバム「がらくた」より複数の曲をテレビ初披露していたので、桑田ファンのわたしはチェックしようと思いました。すると、「ひよっこ」に出演している若手女優たちが登場し、桑田サンとのコラボが実現したのです。


「若い広場」を一緒に歌う♪



ひよっこ」の主人公は有村架純が演じる「谷田部みね子」ですが、彼女は集団就職で上京後、トランジスタラジオを製造する向島電機の工場で働くことになります。工場敷地内には女子社員寮の「乙女寮」がありましたが、そこでみね子のルームメイトになったのが、佐久間由衣演じる「助川時子」、松本穂香演じる「青天目(なばため)澄子」、藤野涼子演じる「兼平豊子」、高島幸子演じる「秋葉幸子」、そして八木優希演じる「夏井優子」でした。彼女たちが揃って「SONGS」の桑田ライブに駆けつけ、「ひよっこ」の主題歌である「若い広場」を一緒に歌ったのです。


松本穂香が素晴らしかった!


独特の個性と魅力にあふれる彼女たちを見て、私は一発でファンになりました。特に、澄子と豊子の「中卒コンビ」の輝きに魅了されました。澄子と豊子は、それぞれピンで朝ドラの主役を張れる個性の持ち主。
澄子の実家は福島県の農家ですが、父の再婚により居場所を失ったこともあり、中学卒業後に就職しました。食いしん坊でマイペース。大きなメガネを掛け、自分のことを「オレ」と言うのがチャーミングです。
豊子は、青森県の中学校時は成績が体育を除いてオール5を取るなど優秀な生徒でしたが、家計が苦しいために、働きながら通信制高校で学ぶ進路を選択しました。優等生ですが、倒産した向島電機勤務の最終日は仲間と離れることを嫌がり、抵抗して職場に篭城しました。泣けました。


藤野涼子も素晴らしかった!



演じている松本穂香藤野涼子もともに素晴らしい女優さんで、これから日本の芸能界を支える存在になると確信しました。松本穂香は、「あまちゃん」で主演した“のん”に雰囲気がよく似ているし、藤野涼子は初の主演映画である「ソロモンの偽証」の演技で非凡な才能を感じさせてくれました。「あまちゃん」で注目された有村架純が数年後に「ひよっこ」で主演したように、松本穂香藤野涼子もいつかは朝ドラの主演女優になるような気がします。とりあえずは、澄子と豊子を主人公にしたスピンオフ・ドラマを観てみたいです。2人はクイズ番組の優勝景品としてハワイ旅行に行っているはずなので、「澄子と豊子のハワイ珍道中」がぜひ観たい!


1964年から始まる物語でした



ひよっこ」は東京五輪が開催された1964年から始まる物語です。茨城から集団就職で上京したヒロイン・みね子の成長を描く波乱万丈青春記ですが、30日の最終回まで20%の大台超えは62回連続となりました。全156回を通じた期間平均視聴率は20・4%で、前作「べっぴんさん」の20・3%を上回り、朝ドラは4作連続大台超えを達成しました。「ひよっこ」は序盤こそ苦戦したものの、中盤以降は盛り返し、大台突破を達成したわけです。なによりも、岡田惠和氏の脚本が素晴らしかったと思います。それぞれの登場人物の人生には深みがありましたし、これだけ世間で「不倫」がタブー視されている中で、白石和子演じるアパートの大家の富さんの清らかな「不倫愛」を堂々と描いたのもお見事でした。


登場人物の人生に深みがありました



それから、高視聴率をキープした大きな原因として、他の朝ドラのように実在の人物をモデルにしていないため、先の展開がまったく読めなかったことが指摘されています。確かに、実在の人物をモデルにしていたら、面白くなかったでしょうね。そもそも、総合商社、洋酒会社、アパレル・メーカー、そして興行会社・・・業種は問わず、国営放送であるNHKが特定の民間企業のPRにつながるドラマを放送することは間違っていると思いますよ。


血縁、地縁、職縁のドラマでした



集団就職した「乙女」たちがさまざまな苦難にも負けずに、明るく前向きに生きる姿には勇気を貰いました。向島電機が倒産したときのエピソードには涙が止まりませんでした。乙女たちの不安な気持ちはもちろん、彼女たちを見守る立場である愛子や松下の心中を思うと、たまりませんでした。
わたしは、1人の経営者として、「わが社の社員のみなさんには決して辛い経験はさせない」という思いを強くしました。


広場では「隣人祭り」が開かれました



また、谷田部家、向島電機、すずふり亭、あかね荘、あかね坂商店街といったコミュ二ティの人々が優しく、思いやりに満ちている姿には何度も涙しました。「すずふり亭」と「あかね荘」の間にある広場では、いつも「隣人祭り」が開かれていました。ここでは、家族も隣人も職場の仲間もみんな「かけがえのない」存在です。そう、「ひよっこ」は日本で血縁、地縁、職縁といったものが最後の輝きを放った物語かもしれません。


2010年に「無縁社会」を打ち出したNHKですが、素晴らしい「有縁社会」のドラマを作ってくれました。日本映画の名作「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)にも通じる内容でした。同作品は昭和33年、「ひよっこ」は昭和39年から物語が始まりますが、ともに古き良き昭和の東京が描かれています。ちなみに、「ひよっこ」とまったく同じ時代を描いた「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」(2012年)も製作されています。これらの作品で描かれた血縁、地縁、職縁の素晴らしさを日本人が再確認し、有縁社会を再生する日をわたしは信じています。また、そのための活動を続けていきたいです。


ひよっこ」が終了して、全国には多くの「ひよっこ」ロスの人々が生まれていることでしょう。明日からは10月ですが、この9月はわたしの人生にとって忘れられない出来事がたくさんありました。
中でも、ブログ「松柏園ホテル新館竣工式」に書いたように、松柏園ホテルの新館「VILLA LUCE(ヴィラルーチェ)」がついに完成し、29日に無事に竣工式を行ったことは嬉しかったです。その竣工式の主催者挨拶で、わたしは「呪いの時代に、祝いの光を!」と訴えました。


悲しい出来事に幸せな出会いが勝った!



ひよっこ」の最終回のヒデとみね子がみんなに結婚の報告をする場面で、みね子の叔父である宗男(峯田和伸)が感極まって泣きながら、「最高だよ、勝ったんだ。なあ、勝ったんだよ。たった今、悲しい出来事に幸せな出会いが勝ったんだよ!」と言います。この言葉に、わたしは非常に感動しました。この言葉は、単なる「禍転じて福となす」ということではありません。「悲しい出来事」に「幸せな出会い」が勝つとは、「呪い」に「祝い」が勝つということにほかなりません。


ヴィラルーチェを「若い広場」に!



実際、みね子にはたくさんの「おめでとう!」が贈られました。このとき、わたしの中で、「ひよっこ」と「ヴィラルーチェ」がつながりました。わたしは、ヴィラルーチェを幸せな出会いに満ちた「若い広場」にしたいです。じつは個人的にもとても大きな出来事があったのですが、「ひよっこ」とともに生きた2017年の9月をわたしはずっと忘れないでしょう。


ひよっこ」ロスになりそうです



2017年9月30日 一条真也