正しければ味方ができる

一条真也です。
「月刊リトル・ママ」2020年10月号が刊行されました。朝日新聞社系の「ママと子どもの明日を応援!!」するフリーペーパーで、各幼稚園などに配布されます。わたしは同紙で「一条真也のはじめての論語」というコラムを連載しています。拙著『はじめての「論語」 しあわせに生きる知恵』(三冬社)の内容をベースに、毎月、『論語』の言葉を紹介していきます。

f:id:shins2m:20200916223338j:plain「リトル・ママ」2020年10月号 

 

第8回目は「子曰く、徳は孤ならず、必ず隣あり」という言葉を紹介しました。ブログ「オフィシャル・シークレット」でも登場した言葉です。孔子さまはこのようにおっしゃいました。「徳」を身につけている人は、けっして仲間はずれにはなりません。同じこころざしをもつ仲間が集まって、意気投合するものですよ、と。

 

昔の中国に、孔子さまが理想とした「瞬」という国がありました。そこの人たちはみんな、社会に役立とう、人のために何かしようという「徳」を目標にしていたそうです。そういう気持ちの人が大勢集まって、この国はたいへんに栄えたそうです。でも「社会に役立とう、人のためになにかしよう」とするためには、まず人間が社会で生きていくためのルールを守らなければなりません。

 

「人を叩いてはいけません」「人のものを盗んではいけません」など、お父さんやお母さんが教えてくれたものもそうですし、「ウソをついてはいけません」「人には親切にしてあげなさい」というのも同じです。それが守れない人は、人から信用されず、軽蔑されて仲間に入れてもらえません。そうした基本を身につけて、さらに自分をみがいた人が、みんなから尊敬され、どんどん仲間が増えていくのです。

 

はじめての「論語」 しあわせに生きる知恵

はじめての「論語」 しあわせに生きる知恵

  • 作者:一条真也
  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: 単行本
 

 

2020年9月17日 一条真也

「オフィシャル・シークレット」

一条真也です。
東京に来ています。ずいぶん涼しくなりました。
14日は東京の新型コロナウイルスの感染者が80名で少し安心しましたが、15日はまた191名に増えましたね。その夜、TOHOシネマズシャンテで映画「オフィシャル・シークレット」を観ました。この映画も北九州では観ることができません。


 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
イラク戦争の開戦直前に起きた事件を映画化した実録サスペンス。イラク攻撃をめぐるアメリカの違法工作活動を知ったイギリス諜報機関所属の女性が、告発に乗り出す。メガホンを取るのは『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』などのギャヴィン・フッド。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのキーラ・ナイトレイ、ドラマシリーズ「ドクター・フー」などのマット・スミスのほか、マシュー・グードレイフ・ファインズらが出演する」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「2003年、イラク戦争開戦の機運が高まる中、イギリスの諜報機関である政府通信本部(GCHQ)で働くキャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)は、アメリカの諜報機関国家安全保障局からメールを受け取る。イラクへの攻撃を推し進めることを目的にした、違法な盗聴の要請が記されていたことに憤りを感じた彼女は告発を決意する。その後イギリスのオブザーバー紙の記者マーティン・ブライト(マット・スミス)によってキャサリンのリークは記事になり、GCHQ内部で告発者探しが始まる」



事実に基づいた映画ということですが、ここに描かれている事実は驚くべき内容です。しかし、イギリスという民主主義の国だからこそ主人公キャサリンの生命は保証されたと思いました。これが中国や北朝鮮での出来事だったら、おそらく彼女は生きていられなかったでしょう。嘘だらけの理由で開始される戦争が発生することを回避し、多くの人命を救おうと試みたキャサリンの行動は正しかったと思います。

 

論語 (岩波文庫)

論語 (岩波文庫)

 

 

わたしは、キャサリンの行動から『論語』を連想しました。『論語』為政篇には「義を見てせざるは勇なきなり」という有名な言葉が登場します。ブログ「孔子講義収録」で紹介した「孔子からのメッセージ」と題した大学の特別講義でも説明したのですが、「人として行うべき正義と知りながらそれをしないことは、勇気がないのと同じことである」という意味です。勇とは「正義を実行する」ことにほかなりません。また、キャサリンが起こした行動は大変なリスクを伴う行動でしたが、さまざまな迫害にも負けず、彼女を応援してくれる弁護士や新聞記者や、その他にも多くの人々がいました。わたしは、『論語』里仁篇に登場する「徳は孤ならず必ず隣あり」という言葉を連想しました。「徳のある者は孤立することがなく、理解し助力する人が必ず現れる」という意味です。



それにしても、あのアドルフ・ヒトラーの一連の蛮行でさえ、当時のドイツの法律に則っていたことを思えば、無理やりに「大量破壊兵器」の存在をデッチさげてイラクへの攻撃を開始したジョージ・W・ブッシュの杜撰さがよくわかります。世界史上から見ても、あまりにもお粗末な指導者でした。現在のアメリカ大統領であるドナルド・トランプがよく「反知性主義」などと批判されますが、イラク戦争を起こしたブッシュこそ「反知性主義」であり、21世紀最大の「大ウソつき」と呼ばれても仕方ありません。

 

繰り返しになりますが、キャサリンは民主主義の国、そして法治国家の国民で幸いでした。共産主義国家や独裁国家の国民なら、とっくに命はなかったでしょう。彼女は大変な危険を冒して多くのイラク人の生命を救おうとしたわけですが、彼女の夫がイスラム教徒であったという事実があったにせよ、無実の人命を救うことはイエスでも、ムハンマドにしろ、必ずや推奨したはずです。人命を救うという人類普遍の「人の道」の前に、宗教的信条など関係ありません。そんな彼女に対して、同僚が「あなたは正しい」と言い、夫が「君を誇りに思う」と述べたことに感動しました。



さて、イラク戦争の真実を描いた映画といえば、ブログ「記者たち~衝撃と畏怖の真実」で紹介した作品を連想しました。イラク戦争のさなかに真実を追い続けた実在のジャーナリストたちを描く実録ドラマでした。ブッシュ政権下で奔走した記者たちを、ブログ「スリー・ビルボード」で紹介した映画などのウディ・ハレルソン、「X-MEN」シリーズなどのジェームズ・マースデン、「ハリソン・フォード 逃亡者」などのトミー・リー・ジョーンズが演じるほか、ジェシカ・ビールミラ・ジョヴォヴィッチらが共演。ウディ主演作「LBJケネディの意志を継いだ男」などのロブ・ライナーがメガホンを取りました。



ジャーナリストのあり方を問う「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を観ながら、わたしはブログ「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」で紹介した映画を思い出しました。「ペンタゴン・ペーパーズ」は1971年当時のアメリカにおける最高権力者であったニクソン大統領と新聞メディアが闘う物語です。もちろん実話に基づいています。スピルバーグ監督が、本作の製作を思いついたのは、トランプ政権誕生の瞬間だそうです。結果、彼はわずか1年でこの映画を完成させました。当然ながら、過去の出来事を描きながらも、現在の政治に対する抑止力としてのメディアへのエールとなっています。



ペンタゴン・ペーパーズ」の核心は、アメリカ政府がベトナム戦争について真実を隠していたということです。ベトナム戦争では、多くのアメリカ人兵士が死にました。当時の新聞メディアが、そして米国民がどうしても許せなかったのは、そこに無念の死を遂げた死者たちへの想いがあったからではないでしょうか。「記者たち 衝撃と畏怖の真実」にも、アメリカがイラクに戦争を仕掛けるとき、ある人物が「戦没者の慰霊碑に行ってみるといい。毎日、誰かが故人を想って涙を流している」と言うシーンが出てきます。いつの時代でも、戦争とは巨大な「グリーフ」の発生装置であることを忘れてはなりません。


この映画を観て、外交の重要性というものも痛感しました。イギリスとアメリカの外交でのある出来事が、イラク戦争へと繋がり、多くの人間が死ぬのです。14日、自民党の新総裁に菅義偉氏が決定しました。16日の午前に開かれた閣議で、安倍晋三内閣が総辞職しました。歴代最長の7年8カ月にわたる安倍政権の実績に対する評価は、メディアによって賛否が分かれています。国内でいえば、消費増税共謀罪の成立、「森友・加計」や「桜を見る会」の問題への批判が全般的に根強いです。しかし、外交・安全保障にかかわる分野については、海外からの評価は極めて高いと言えます。中国や韓国の難癖に対して毅然とした態度で接したのも素晴らしかったですが、アメリカのドナルド・トランプ大統領と良好な関係を築いたことが特筆されます。安倍首相の外交手腕は世界中から注目されました。日本が米国との良好な関係なくして存在できない事実を踏まえれば、安倍首相の対トランプ外交は日本でももっと評価されるべきでしょう。「オフィシャル・シークレット」では、イギリスのアメリカに対する弱腰外交が描かれていましたが、安倍外交の見事さを改めて痛感しました。ぜひ、新首相となられる菅氏にも安倍外交の踏襲を期待したいところです。



「オフィシャル・シークレット」では、主人公キャサリンアメリカのとんでもない陰謀を暴露しますが、最近、超弩級の暴露事件がありました。香港大学の公衆保健学部でウイルス学と免疫学を専攻したイェン・リーモン博士が英国のトークショーに出演し、「新型コロナウイルスは中国の武漢ウイルス研究所から出た」と暴露したのです。イェン博士は「遺伝子の塩基配列は人間の指紋のように識別が可能だ。私は中国でこのウイルスがどのように出たのか、なぜ彼らがこのウイルスの創造者なのかに関する証拠をつかんでいる」と強調し、さらに「ウイルスの根源は私たちが知らなければならない重要なもの」だとし、「私たちがこれを知らなければ克服することは出来ないだろう。このウイルスは全ての人々の生命を脅かすだろう」と警告したました。イェン博士は香港大学での勤務中に身辺に危険を感じ、米国へ亡命している状態です。米国政府は、ぜひとも彼女の生命の安全を生涯にわたって保障してほしいものです。
そして、この告白がもし真実ならば、彼女の勇気ある行動をぜひ映画化してほしいと思います。



2007年に「シルク」という日本・カナダ・フランス・イタリア・イギリスの合作映画が製作されました。アレッサンドロ・バリッコによる小説『絹』を原作として、日本では2008年1月にアスミック・エースの配給により公開された他、8カ国で上映されました。物語は、19世紀のフランス、兵役を終えて故郷の村に帰ってきた青年・エルヴェは、美しい小学校教師・エレーヌと恋に落ち、結婚します。このエレーヌを演じているのが、「オフィシャル・シークレット」でヒロインのキャサリンを熱演したキーラ・ナイトレイです。

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共演した芦名星さんとキーラ・ナイトレイ

 

「シルク」には、役所広司をはじめ、日本人俳優も多数出演しています。物語の重要な役割を果たす謎の美女を演じたのが、14日に東京都内の自宅で亡くなっているのが発見された女優、芦名星さん(享年36)でした。女優業ではミステリアスな雰囲気をまとい多彩な役を演じてきた芦名さんですが、死因は自死とされています。死を選択した彼女の心の中は他人には知りようもありませんが、「シルク」での彼女とキーラ・ナイトレイの競演は映画史に残るもので、2人とも本当に美しく、演技合戦も素晴らしかったです。映画を観る時間とは死者を想う時間でもあります。イラク戦争のすべての犠牲者とともに、芦名星さんの御冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

2020年9月16日 一条真也

『情報吸収力を高めるキーワード読書術』

情報吸収力を高めるキーワード読書術

 

一条真也です。
東京に来ています。『情報吸収力を高めるキーワード読書術』村上悠子著(フォレスト出版)を読みました。著者は、情報クリッピングマスター。京都市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。2005年から現在まで、クリッピング業務(=新聞・雑誌から必要な記事を見つけて切り抜くこと)に従事。「文章を読むプロ」として14年間、毎日朝から晩まで「アンテナを立てて、情報を漏らさず、大量の活字を読みまくる生活」を送り、クライアントに20万点以上の記事を提供してきた実績を持ちます。プライベートでも近所の図書館を10カ所はしごするほどの“無類の本好き"で、これまでに3500冊を読破。読んできた文字数の合計は、公私を合わせると「30億字」を超えているとか。これまでの経験・知識・知恵から導き出したノウハウを「キーワード読書術」として完全体系化。本書が初の著書となります。

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本書の帯

 

本書の帯には「超一流「情報クリッピングマスター」が伝授する、必要な情報を吸収し、忘れない読書術」「なぜ、同じ本を読んでも、欲しい情報を吸収できる人、できない人がいるのか?」「3500冊を読破・吸収するテクニック大公開!」と書かれています。帯の裏には、「質の高い読書は、事前準備が9割。人生が変わる新・読書術、一挙大公開!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

カバー前そでには、「キーワード読書術」の4つの特長として、
●欲しい情報を着実に吸収できる
●省エネができる(速く読めるようになる)
●自分に合った本を選べるようになる
●期待外れの本からも、役立つ情報を吸収できる
と紹介され、「クリッピング業務から完全体系化した自分を成長させる読書術、大公開!」と書かれています。

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「はじめに」
第1章 なぜ、今まで「欲しい情報」が
              とれなかったのか?
第2章 キーワードを設定する方法
第3章   設定したキーワードが出ている
              本を選ぶ方法
第4章   キーワードをアップデートする方法
第5章   読書でさらに情報を吸収する秘策
第6章   インスタグラムに読書記録を残そう!

 

「はじめに」では、「なぜ同じ本を読んでも、欲しい情報を『とれる人』と『とれない人』がいるのか?」として、本を読んでも情報がとれないのは、ズバリ、「読む前にキーワードを設定していないから」だと断言する著者は、「普段、何か調べたいことがあるときは、Googleで検索しますよね。いわゆる『ググる』という行為ですが、これは検索ボックスにキーワードを入力することで、欲しい情報をとっているわけです。キーワードを入れなければ、当然、何の情報も表示されません」と述べています。

 

また、著者は「現代においては、『情報をとること』と『キーワードを入力すること』は常にセットになっているのです。これを読書に当てはめて考えると、本を読む前に『キーワード』を設定して、それを『検索するような感覚』で本文を読めば、欲しい情報がとれると思いませんか?」とも述べています。



本書の中で最も面白かったのは、第1章「なぜ、今まで『欲しい情報』がとれなかったのか?」の「『キーワード』を意識して欲しい情報をキャッチする練習」に登場する「村上座談会」という架空の座談会です。著者は、「キーワード」を意識して欲しい情報をキャッチする練習として、同じ姓の有名人たちとの架空対談を行います。著者「村上悠子」さんの他には、作家の「村上春樹」「村上龍」、お笑い芸人の「村上ショージ」、プロフィギュアスケーターの「村上佳奈子」も加わって、以下のような会話が展開されます。

 

悠子「皆さん、好きな食べ物は何ですか?」

春樹「僕はやっぱりカキフライだね」

龍「僕は魚とか、和食系が好きかな」

ショージ「僕は醤油味のものなら何でも。しょうゆうこと!」

佳菜子「私はかき氷です。1日3食、かき氷を食べないと気が済まないんですよ。食べ歩きもよくするんですが、皆さんは何か趣味はありますか?」

春樹「僕はランニングかな。1日のうちにだいたい1時間ぐらい走る。だから僕は1日は23時間しかないんだと決めて生きているんですよ」

悠子「私もマラソンやってます! 走るのって楽しいですよね」

ショージ「僕は水墨画です。京都の誓願寺で個展を開いたこともあるんですよ」

龍「それは知らなかった。僕は『無趣味のすすめ』という本を出しているぐらいだから、特にないなぁ」(『情報吸収力を高めるキーワード読書術』P.29)

 

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 2011/04/12
  • メディア: 文庫
 

 

第2章「キーワードを設定する方法」では、「『自分株式会社』が必要な情報を、自分でクリッピングするような感覚で読む」として、著者は「私が働いているクリッピング会社は、『クライアントが必要な情報を、調査料金をいただいて、代わりに収集する』のが仕事です」と述べます。これを読書に当てはめると、「『自分株式会社』が必要な情報を、書籍代を払って、自分で収集する」ということになります。つまり、読書とは「1人クリッピング」みたいなものであるというのです。著者は、「最近は、1人カラオケ・1人映画・1人焼肉などのソロ活をする人が増えているそうですが、読書をするときはぜひ、『1人クリッピングをしている』という感覚で本を読んでほしいのです」と述べています。

 

また、読書とは自分の未来に「お金」と「時間」を投資する作業であるとして、著者は「1冊の本の価格は、だいたい1500円前後。図書館の本は無料で借りることができますが、図書館まで往復する時間を差し出しています。何かと忙しい日々の中で、それだけの投資をしたからには、全力でリターン(=欲しい情報)をとりにいかないといけません」とも述べます。

 

第3章「設定したキーワードが出ている本を選ぶ方法」では、「『読者のレビュー』を参考にして、表示された本を精査する」として、著者はこう述べます。
「『口コミ』や『レビュー』を見るときに、常に心の片隅に置いておかないといけないのは、『どんな人が書いているかわからない』ということです。たとえば、“芸能界のグルメ王”と呼ばれている寺門ジモンさんや渡部建さんが、『料理がまずかった』と星1つをつけたとしても、衣食住の中で『食』の優先順位が低くて、お腹が膨れれば満足という人なら、『すごくおいしかった』と星5つをつけることもあります。同じお店で同じものを食べても、レビュアーのレベルによって評価は異なる、ということです」
ここで「渡部健」という固有名詞を目にして、思わず苦笑いしたのは、わたしだけではありますまい。

 

第4章「キーワードをアップデートする方法」では、「読み進めるうちに、気になるキーワードが出てきた場合」として、著者は「『村上座談会』でも、最初は『春樹』目当てで読んでいたけれど、だんだん『龍』のコメントに魅力を感じてきた。『ショージ』のギャグもなんだかクセになるし、『佳菜子』もすごくかわいい。何者かよく知らない『悠子』も、意外にいいことを言っている。このような心境の変化は、往々にして起こるものです。それだったら、途中でキーワードを『村上春樹』から『気に入った人物の名前』にアップデートして読み続ければいい。規定外の『NEW WORD』に出会えるのは、読書の魅力の1つです。気になったキーワードはスルーしないで、頭の中にどんどん追加していってください」と述べています。これは、キーワードの効果というものの、わかりやすい説明になっていると思います。

 

21世紀の資本

21世紀の資本

 

 

第6章「インスタグラムに読書記録を残そう!」では、「インスタグラムで人気の『読書アカウント』の2つの特徴」として、最初に「本の情報(=要約)が書いてある」ということが挙げられ、著者は「トマ・ピケティの『21世紀の資本』のような分厚い学術書や、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』ような難解な小説に挑むときに、先にSNSで『読みます宣言』をしてあとに引けない状態にする(自分を追い込む)のは全然ありだと思います。でも毎回、『今から読みます』だけだと、『この人は本当に読んでいるのだろうか?』『読書家アピールをしているだけでは?』などと、見ている側が意地の悪いことを考えてしまうのです・・・・・・」と述べています。ちなみに、2つ目の特徴は「投稿数が多い」ということだそうです。

 

 

本書の最後に「読むときは『1人クリッピング』、読んだあとは『1人マーケティング』」として、著者は「床に食べ物を落としたときに、3秒以内に拾えば食べても大丈夫という『3秒ルール』ってありますよね。何でも落としたものはすぐに拾ったほうがいいと思いますが、読み終わった本は、すぐに投稿する必要はありません。テキストの下書きさえ完了していれば、その後しばらく寝かせておいてもいいし、順番の入れ替えも自由です。実際に、私は読んだ本をまったく順番どおりに投稿していないのですが、言わなければ誰も気づきませんし、何の問題もありません。いつ投稿してもいいんだったら、なるべく『その季節』や『その日』に合ったものをぶつけたい。これって、やっていることは『マーケティング』と同じだと思いませんか?」と述べるのでした。本書には、わたしの知らないことも書かれていて勉強になりましたが、特に「村上座談会」が面白かったですね。本書は、著者の最初の著者だそうですが、クリッピングの経験を生かした本をこれからも書いていただきたいと思います。

 

情報吸収力を高めるキーワード読書術

情報吸収力を高めるキーワード読書術

 

 

2020年9月15日 一条真也

菅新総裁へのお願い

一条真也です。
14日、東京に来ました。ずいぶんと涼しく、秋の気配を感じました。羽田空港から西新橋にある一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会に直行し、担当副会長を務める儀式継創委員会の会議に参加しました。委員長をはじめ、委員のみなさんはリモート参加でした。

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自民党の新総裁に菅氏が!(NHK)

 

会議冒頭の副会長挨拶で、わたしは「今日、自民党の新総裁が決定します。先日、候補のお三方が少子化について討論しておられましたが、わたしは日本においては少子化の前に非婚化・晩婚化の問題があり、この問題を解決するためにも結婚式が必要であると考えます。結婚式を挙げないと、結婚する意欲が確実に低下し、夫婦ができず、子どもが生まれないからです。また、葬祭業はエッセンシャル・ワークであり、冠婚も葬祭もともに社会の存続のために不可欠の文化装置であると考えます。新しい総裁には葬祭の大切さをよくご理解いただき、結婚式を挙げる若いカップルを助成する政策を立てていただきたいと思います」と述べました。そして、その直後、菅義偉官房長官が新総裁に選出されました。心よりお祝いを申し上げます。

 

 

わたしが、菅新総裁に初めてお目にかかったのは、横浜で行われた冠婚葬祭業界の大先輩の「お別れ会」でした。その方の息子さんとの親交も深く、菅総裁は冠婚葬祭の重要性をよく理解されておられるようです。また、菅総裁は一連のGoToキャンペーンを主導してこられた方です。ブログ「GoToウエディングの実施を!」にも書きましたが、ぜひ、菅総裁が総理大臣になられた暁には、日本人が結婚式を挙げる政策を立てていただきたいと思います。結婚式の費用とか交通費などを助成する、いわば「GoToウエディング」です。「GoToウエディング」は「GoToトラベル」のように業界救済、つまり経済のためではなく、社会のために行うものです。日本は、いま最大の国難に直面しています。それは新型コロナウイルスの問題でも、中国の領土侵犯の問題でも、北朝鮮のミサイル問題でもありません。より深刻なのが人口減少問題です。

 

 

国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した「日本の将来推計人口」(2017年)によれば、15年には約1億2700万人だった日本の総人口が、40年後には9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減少することが予測されます。ブログ『未来の年表』で紹介したベストセラーの著者である大正大学客員教授の河合雅司氏は、「こんなに急激に人口が減るのは世界史において類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代を生きているのである」と述べています。人口減少を食い止める最大の方法は、言うまでもなく、たくさん子どもを産むことです。そのためには、結婚するカップルがたくさん誕生しなければならないのですが、現代日本には「非婚化・晩婚化」という、「少子化」より手前の問題が潜んでいます。

 

儀式論

儀式論

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2016/11/08
  • メディア: 単行本
 

 

わたしは、『儀式論』(弘文堂)において、人間は儀式という「かたち」によって不安定な「こころ」を安定させ、幸せになれるのではないかと述べました。儀式とは人間が幸福になるためのテクノロジーであると言えるでしょう。また同書の中で、わたしは「結婚式は結婚よりも先にあった」という自説を展開しています。一般に、多くの人は、結婚をするカップルが先にあって、それから結婚式をするのだと思っているのではないでしょうか。でも、そうではないのです。

 

古事記 (岩波文庫)

古事記 (岩波文庫)

  • 作者:倉野 憲司
  • 発売日: 1963/01/16
  • メディア: 文庫
 

 

日本人の神話である『古事記』では、イザナギイザナミはまず儀式をしてから夫婦になっています。つまり、結婚よりも結婚式のほうが優先しているのです。他の民族の神話を見ても、そうでした。すべて、結婚式があって、その後に最初の夫婦が誕生しています。結婚式の存在が結婚という社会制度を誕生させ、結果として夫婦を生んできたのです。結婚式があるから、多くの人は婚約し、結婚するのです。結婚するから、子どもが生まれ、結果として少子化対策となります。

 

 

結婚がなくなれば、子どもの出生が少なくなり、子どもが成長して大人となり、老いていって次の世代へ繋がることもなくなります。すなわち、結婚は生命のサイクルの起点なのです。観光や外食と違って、結婚式は社会の維持のために絶対に必要です。冠婚業はけっして単なるサービス産業ではありません。日本という国を継続させていくエンジンのような存在です! 菅新総裁は、今日の当選挨拶の最後に「私の目指す社会像は、自助・共助・公助、そして絆であります。まず自分でできることは自分でやってみる。そして地域や家族で共に助け合う。その上に立って、政府がセーフティネットでお守りをする。そうした、国民から信頼される政府を作っていきたい。そのためには、役所の縦割り、既得権益、そして悪しき前例主義、こうしたことを打破して、規制改革を進めてまいります。そして、国民の皆さんのために働く内閣を作ってまいります」と述べられました。自助・共助・公助、そして絆の社会とは、まさに相互扶助の互助社会ではありませんか! ぜひ、互助の精神で「GoToウエディング」の実施を切に願うものであります。



最後に、東京に来て、あまりの涼しさに「ああ、夏が終わったな」と感じました。7年8カ月という長かった安倍政権の夏も終わりました。今日の東京の新型コロナウイルスの感染者は80名でした。このまま減少し続けることを願うばかりです。今年のコロナ禍の夏は、わたしを含め、多くの方々が「何もできなくて・・・夏」といった感じだったのではないでしょうか? 今後は良いことがたくさんありますように!

 

2020年9月14日 一条真也

『積読こそが完全な読書術である』

積読こそが完全な読書術である

 

一条真也です。
自民党の総裁選が行われる14日、東京に行きます。
積読こそが完全な読書である』永田希著(イースト・プレス)を読みました。著者は書評家。1979年、アメリカ合衆国コネチカット州生まれ。書評サイト「Book News」を運営。「週刊金曜日」書評委員。その他、「週刊読書人」「図書新聞」「HONZ」「このマンガがすごい!」「現代詩手帖」「はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド」で執筆しているそうです。

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本書の帯

 

本書の帯は横向きに文字が書かれていて非常に目立つのですが、「まずはこの本を読んで、堂々と本を積もう。気鋭の書評家が放つ、逆説的読書論。」というコピーの後、「千葉雅也氏推薦 読まずに積んでよい。むしろそれこそが読書だ。人生観を逆転させる究極の読書術!」と書かれています。

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本書の帯の裏

 

帯の裏には「読めないことにうしろめたさを覚える必要などない」として、「たしかに本は、人に「いま」読むことを求めてきます。でも、それと同時に、書物は「保存され保管される」ものとして作られたものだったことを思い出してください。情報が溢れかえり、あらゆるものが積まれていく時代に生きているからこそ、書物を積むことのうしろめたさに耐えて、あなたは読書の前にまず積読をするべきなのです。(本文より)」と書かれています。

 

カバー前そでには、以下の内容紹介があります。
「情報が濁流のように溢れかえり、消化することが困難な現代において、充実した読書生活を送るための方法論として本書では『積読』を提案する。バイヤールやアドラーをはじめとする読書論を足掛かりに、『ファスト思考の時代』に対抗する知的技術としての『積読』へと導く」

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「はじめに」
第一章  なぜ積読が必要なのか 
情報の濁流に飲み込まれている
読書とは何だったろうか 
情報の濁流のなかのビオトープ 
蔵書家が死ぬとき、遺産としての書物
第二章  積読こそが読書である
完読という叶わない夢
深く読み込むことと浅く読むこと
ショーペンハウアーの読書論
「自前」の考えをつくる方法
第三章  読書術は積読術でもある
一冊の本はそれだけでひとつの積読である
読めなくていいし、読まなくてもいい
本を読まない技術
積読のさらなるさまざまな顔
第四章  ファスト思考に
     抗うための積読

デジタル時代のリテラシー
書物のディストピア
積読で自己肯定する
「おわりに」
「参考文献」

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わが書斎の積読

 

積読を推奨した本書の「はじめに」の冒頭を、著者は以下のように書きだしています。
「普通、『積読』と言えば『本を買ったけれど読んでいないこと』を指します。『積ん読』と書く場合もあります。だいたいの場合、『その本、買ったんだけど積読にしちゃってて』などと、どこか『うしろめたい』ニュアンスとともに口にされる言葉でしょう。本書は、その『積読』をあえて、『完全な読書術である』として読者に勧めるものです」

 

著者は、「積読」を大きく2種類に分類しています。
1つは、「本(書物)に限らない、映画などの動画コンテンツ、音楽、ゲーム、演劇などさまざまな情報が日々大量に供給され、それを体験したり消費したりできないままに時間が過ぎていってしまうという『情報の濁流』の状況」です。著者は、「この状況のなかで人々は、いやおうなく「積読」へと駆り立てられています。『積読』は辞書的な意味では『買ったけれど読んでいない』状態を指しますが、現代人はそれを『買った』かどうかはさておき、読みたい、観たい、聴きたい、遊びたい、体験したいという気持ちだけがどんどん『積まれる』状況に身を置いています」

 

もう1つが、その情報の濁流のなかに自律的に構築される「積読」です。本書ではこのふたつめの「積読」を「ビオトープ積読環境」と呼んでいます。詳しくは本文で紹介されていますが、著者は「ビオトープ(biotope)」という、生き物たちが暮らす環境を例にして説明しています。人工的なビオトープは小中学校の校庭の隅に作られていたりするので、読者にもイメージしやすいのではないかというのです。

 

第一章「なぜ積読が必要なのか」の「情報の濁流にのみ込まれている」では、「あらゆるメディアが積まれていく」として、著者は「電子メールによって仕事にもたらされたのと同じような変化が、いわゆる余暇、エンターテインメントあるいは学習の領域にも起きています。映画、音楽、ゲームなどさまざまなジャンルについて、そして公的・私的を問わない学習の領域で、50年前、100年前、1000年前にはとうてい考えられなかったような密度と速度が実現されつつあります。高密度、高速度で仕事やエンターテインメント、学習を処理することが可能になった結果、人は処理可能な「物事」をかつてなく大量に「積む」ようになりました」と述べています。

 

本書ではこのような、あらゆるメディアで情報が鑑賞されることなく氾濫し蓄積されていく状況を「情報の濁流」と呼びますが、「情報を消化しきれない時代を生きている」として、著者は「この情報の濁流のなかで生きる人々にとっては、あらゆる情報は自分の環境にどんどん勝手に積み上がっていくように感じられるはずです。つまり、ある意味で、現代人はすでに『積読環境』に暮らしているのです。情報の濁流のなかでは、情報は勝手に積まれ、勝手に更新されていきます。その状況を前に焦ったり、茫然自失したり、自暴自棄になる人も珍しくありません」と述べています。

 

また、最近はネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどのサブスクリプションサービスが登場し、いちいちDVDやCDを買ったりレンタルをしないでも済むようになったものの、いずれにせよ自分が観たい聞きたいと思っているコンテンツをすべて再生するだけの時間は、自分の人生に今後残されているのかと自問し、著者は「書物はもともと『積む』ことができる形状をしているので、『積読』という表現が普及していますが、『積読」的な状況は書物にのみ限った話ではないのです。本書は読者に「読書よりまず積読を」と勧めるものですが、そもそもまず現代という時代が、人々が自発的に積読をする以前から勝手に積読的な環境を進展させているのです。書物に限定されない、あらゆるものが消費されることを待ち望み、消費されるべく勝手に積み重なっていく、そんな世界をわたしたちは生きているのです」と述べます。

 

著者によれば、世界そのものが、すでに積読環境だといいます。やりたいこと、やらなければならないことがすでに山積みしていて、日々、刻一刻とさらに積み重なり、互いを押し流しているからです。著者は、「読みたい本を読む前に、別の読みたい本が現れ、その本を読んでいるとまた読みたい本が現れる。本を読んでいるとメールが、電話が、スマートフォンの通知が、あなたを急き立てる。あなたはどれも中途半端に放り出しつつ、そのすべてをどこかに積み上げていくしかないのです」と述べていますが、それは切実に感じますね。

 

著者は、「書物の本質」を考え、「人類最古の「書物」は古代メソポタミアの粘土板だと言われています。いまから6000年前、やはり人類最古の文字と言われる楔形文字を記したもので、当時の王朝の図書館に大量に保管されていたと考えられています。この時代からすでに書物が大量に保管されるものだったということが重要です。DVDもブルーレイも、もちろんインターネットもない時代、書物はすでに『積まれ』ていたのです」と述べます。なるほど、たしかに書物とは積まれるものですね。

 

さらに著者は、「書物の歴史の最初期には、巻子本も冊子本も、基本的にはすべて『平置き』されていました。いわゆる『棚差し』が可能な本棚が登場していなかったので当然と言えば当然のことです。その頃はまだ書物は非常に貴重な工芸品であり、印刷技術も製本技術も未発達で量産ができず、財宝のたぐいとして扱われていたのです。文字を書かれたもの、つまり『書物』は、何千年もの昔から、保存するためのものとして受け継がれてきました。なお、紙や木板、竹板、粘土板と比較しても圧倒的な耐久性のある石の書物(石碑など)は、何百年も残したい言葉を記すためのメディアとして現代でも使われています。また、普通は『書物』として認識されていませんが、コンピュータが読むためのプログラムはきわめて現代的な『書物』だと言えるでしょう」とも述べています。

 

そして、「積読することのうしろめたさ」として、著者は「たしかに本は、人に『いま』読むことを求めてきます。でも、それと同時に、書物は『保存され保管される』ものとして作られたものだったことを思い出してください。情報が溢れかえり、あらゆるものが積まれていく時代に生きているからこそ、書物を積むことのうしろめたさに耐えて、あなたは読書の前にまず積読をするべきなのです」と述べるのでした。

 

思考の取引――書物と書店と

思考の取引――書物と書店と

 

 

「読書とは何だったろうか」では、「書物は時間を蓄積するもの」として、著者は以下のように述べます。
「フランスの現代哲学者ジャン=リュック・ナンシーは、書店論でもあり書物論でもある『思考の取引』(岩波書店)のなかで、書物とは『閉じと開かれのあいだにあるもの』であると書いています。表紙と裏表紙に挟まれた書物は、それが閉じられている状態と、それぞれのページが開かれている状態と、このふたつの状態の『あいだ』にあるのです」

 

また、「ふたつの状態のあいだにある、という書物の性質は、それを読んでいない時間と、それを読んでいる時間という、時間と書物との関係にもあてはまります。書物は、それを読んでいない時間と、それを読んでいる時間との『あいだ』に存在しているのです」とも述べています。たしかに本は、「読むためにある」という性質を持っていますが、それと同時に、矛盾するようですが、「読まれないため」にも本は存在しているのです。著者によれば、本という形態は、それを読まずに「とっておく」ためにも機能するようにできているからだそうです。

 

さらに著者は、「楽しみのための読書」として、「書物は、現実をそのまま書き写すことができません。現実をそのまま書き写すことはできませんが、書物はその特性を活かして、むしろ現実とは違った世界を描きだすことができます。書物は、現実から読者を救い出し、楽しませることができるのです。しかし、書物が読者を現実とは違う世界へと誘うものだとしても、その書物自体は現実の存在物です。書物が現実の存在物である以上は、それを作り、売る人々がいます。そして書物が現実の存在物である以上は、情報の濁流という現実と無縁ではないのです」と述べています。

 

そして、「積読環境のなかに積読環境を作る」として、著者は「現代社会の積読環境の発展は、コンテンツ産業、メディア産業の都合によるものです。新しいメディアが次々と生み出され、そのメディアごとに新しいコンテンツがどんどん生成されていく。この外的で他律的積読環境=情報の濁流のただなかで、人は自律的な積読環境=ビオトープを構築する必要があるのです」と述べるのでした。

 

「情報の濁流のなかのビオトープ」では、「ポートフォリオとしての自立的積読環境」として、著者は「記憶術が、過去や現在の情報を『頭のなか』に秩序だてるものだとすれば、複式簿記は、現在と未来を『頭のそと』に可視化するための技術です。複式簿記の登場により、投資をはじめとした金融市場は発展を続け、現代世界の金融資産の総額は200兆ドルを超えています」と述べます。

 

この巨大な金融市場は、不動産などの資産価値を数字という「情報」に変換し、その変動もまた「情報」として扱う証券化によって拡大を続けているとして、著者は「情報が情報を生み、情報の市場が拡大していくさまは、コンテンツやメディアがどんどん増えて蓄積されていく状況と表裏一体の関係にあります。情報そのものの在り方が、金融の世界でも、コンテンツの世界でも、それぞれに爆発的に膨張を続けている、それが現代なのです」と述べています。

 

「蔵書家が死ぬとき、遺産としての書物」では、「ゴミ屋敷と断捨離のあいだ」として、世界サイズの積読環境という他律的な「大きなカオス」の中に自分で相対的に「小さなカオス」を作ることが自律的積読環境、ビオトープ積読環境の構築であると指摘し、著者は以下のように述べています。
「刻一刻と増え続け、人々の目の前を流れ去り、そしてどこかへと消えていく新刊と古書の市場から本を選び出し、選んだ書物を自分の環境に加え、そして定期的にその一部を市場へと放出する。ゴミ屋敷のような、死んで膨れていくばかりのシステムではなく、牧場や精肉工場のような有機的なシステムとして積読環境を維持していくイメージがわかりやすいかもしれません。それは、地球規模の自然環境の片隅に、個人的なビオトープを作ることと同じことです」

 

第二章「読書術は積読術でもある」の「積読のさらなるさまざまな顔」では、「音楽的積読と絵画的積読」として、著者は「だいたいの書物はそれ単独で存在しているわけではなく、学術論文などでは『先行研究』と呼ばれるような、関連する他の文献がある場合がほとんどなのです。したがって、その文献を読んでいる人にとっては、新しく手に取った書物の内容を把握するには、先行研究との「差分」を見極めればいいということになります。もちろん、どこからどこまでが先行研究と重複していて、どこからが『差分』になるのかということはだいたいの場合あまり明確ではありません」と述べます。

 

それでも、多くの本を読んでいる人は、どこが「差分」なのかを見つけ出すカンのようなものが育まれているので、初学者よりも速く読めるのだという著者は、「ある分野の専門家がその分野の専門書を読む速度をまのあたりにして初学者が、感銘を受けるということがあります。しかし専門家が専門書に目を通すのは名人芸でもなんでもありません。見た目でわかる速度よりも、いかに深く読めているか、どう面白がれるかのほうがはるかに重要です」と述べるのでした。

 

 

第四章「ファスト思考に抗うための積読」の「デジタル時代のリテラシー」では、「ファスト思考とスロー思考」として、著者はこう述べます。
「ユヴァル・ノア・ハラリが『サピエンス全史』(河出書房新社)で描きだしたように、人類は農耕を始めたことで安定的で『より豊かな』生活を手に入れると同時に、増え続ける人口のために『より豊かな』そして『より安全で便利な』生活を絶えず求め続けることを運命付けられました。現代人は、より美味しいものを食べたい、より美しく着飾りたい、より楽しく暮らしたいし、楽をして稼ぎたい、死の恐怖からできるだけ離れて健康に生きたいと考えながら暮らしています。この傾向は、1万年前から方向づけられたことなのです」

 

さらに具体的に、著者は「食べログやインスタグラム、その他のSNSやテレビや雑誌で話題のお店を調べて、よりお得に美味しいものを食べたいと努力したり、スマートフォンで地図検索をして目的地により早く、より楽に到着できるように調べたり、さまざまなアプリで暮らしを便利にすることもまた、その人類の長年にわたる営みの延長線上にあることです」と述べています。

 

また、「豊かさを『生み出す側』と『消費する側』」として、著者は「現代社会を覆っている技術のなかで最新で、かつもっとも注目に値するテクノロジーは、間違いなくスマートフォンバイスです。よく言われることですが、前世紀までの人々は『21世紀の人類は宇宙旅行を楽しみ、テレビ電話で会話する』と思っていました。しかし実際に21世紀になってみたら、宇宙旅行の実現はまだ先のことであり、テレビ電話は可能になりましたがそれほど普及していません。その代わりにわたしたちの21世紀に一般化したのは、各自が小さな『電話』を持ち、しかしその『電話』で会話するよりもはるかに頻繁に『文字で会話する』という状況です」と述べています。

 

積読で自己肯定する」では、「セルフネグレクトとしての本の山」として、「書物には妖しい魅力があり、ときに悪魔的に人を引き寄せ、大なり小なり、人を狂わせる場合があります。書物に危険な側面があるということは以前からよく語られてきました。ある書物を読まずに積んでおくということは、その危険な側面から目を背ける卑怯な態度に思われるのかもしれません。だからこそ積読はうしろめたいのです」と述べています。まったく同感ですね。

 

 

また、「スロー思考と瞑想」として、著者は「わたしは読者に瞑想の実践を勧めるわけではありません。というより、身ひとつで行う『瞑想』ではなく、ビオトープ的な積読環境を構築し、その『自分の積読環境ごと瞑想すること』を勧めたいのです」と述べます。本書の第一章で著者は『記憶術全史』という本を紹介しますが、「かつて紙が貴重品で、クラウド環境はおろか、インターネットすらなかった時代、情報を自分の脳という身体に保存するしかなかった時代とは異なり、現代においては、情報は書類という紙の束として大量に供給されており、またクラウドという仮想空間がインターネット上に広がっています。情報は、書籍として本棚に保存できるし、クラウドに保存することもできるようになったのです。したがって、情報の集積としての『自己』はあなたの肉体だけでなく、あなたの本棚にも、クラウドにも拡張されています」と述べています。

 

さらに、著者は「マインドフルネス」に言及し、「瞑想(マインドフルネス)の段階にはいくつかあるのですが、そのひとつに『ボディスキャン』と呼ばれる段階があります。足の爪先から、あるいは頭頂部から、身体のさまざまな部位に意識を向けていき、自分の身体をスキャンする段階です。自分の積読環境にこの段階を導入することによって、あなたは外部記憶装置ごと瞑想することになるのです。このときに忘れてはならないのが、情報の濁流の脅威と、積読がもたらす『うしろめたさ』です。ファスト思考への耽溺に誘い、あなたのビオトープを破壊しかねない情報の濁流への危機感が、あなたのスロー思考を働かせます」と述べています。

 

「おわりに」で、著者は以下のように述べています。
「本書でわたしは、書物の存在がどのようなものとされてきたのか、そして書物の存在が今後どのようになっていくのか、それを積読論として、また情報の濁流とわたしが呼ぶものがどのような経過を辿り、また現在どのようになっていて、そして今後どのようになっていくかを論じ、そのようなマクロな積読環境のなかでどのように読書が可能なのかという読書論として、ビオトープ積読環境の構築とわたしが呼ぶものをどのように運用するのかを論じてきました」

 

本書の主題は、「増殖を続け自ら崩壊していく情報の濁流というマクロな積読環境と、そのなかでビオトープ的な積読環境をどのように構築し、どのように運用するか」を明らかにすることでした。それは、ある意味で「貨幣」の問題にも通じています。貨幣にはその額面価格を示す文字が不可欠ですし、コンピュータのプログラムもまた「書かれたもの」なので、どちらも広義の「書物」として扱えるのではないかと、著者は述べます。

 

そして、著者は「いささか突飛に思われるかもしれませんが、現在の出版界にグローバルな影響を与えているアマゾン社の創業者ジェフ・ベゾスが金融業出身であること、いまやクラウド事業で利益の大半を生み出しているアマゾンがその活動の端緒にオンライン書店業を選んでいたこと、そして将来的にアマゾンが銀行業に進出する可能性があること、さらには昨今ますます普及しつつある電子通貨の問題を考慮すると、わたしのこの想定も単に突飛なだけとは言えないのではないかと思います」と述べるのでした。この書物と貨幣の共通性という視点は非常に新鮮で、今後も考えてみたいテーマです。

 

知的生活の方法 (講談社現代新書)

知的生活の方法 (講談社現代新書)

  • 作者:渡部 昇一
  • 発売日: 1976/04/23
  • メディア: 新書
 

 

さて、積読といえば、 ブログ『知的生活の方法』で紹介した永遠のロングセラーの著者であり、「稀代の碩学」「知の巨人」「現代の賢者」などと呼ばれた故 渡部昇一先生が「積ん読もまた楽しからずや」という言葉を残しておられます。渡部先生は1冊の本を読んでいると、そこに出てくる別の本をどうしても読みたいと思うことが多かったそうです。夏目漱石を読んでいて森鴎外が読みたくなることもあれば、哲学の本を読んでいて自然科学のことを教えられ、新しい分野の本を注文されることもしばしばだったとか。

 

 

読書にキリがなくなり、本が増えて置き場所に困るようになると慨嘆しながらも、芋づる式に読書の範囲が広がっていくことは自分の視野を広めることになるとした上で、『楽しい読書生活』(ビジネス社)で、「私は、新しい興味を覚えたらとりあえず本を買っておいたほうがいいという考え方をしています。たしかに、そうやってとりあえず注文したり買ったりした本が『積ん読』の元凶になるわけですけれども、『積ん読』もまた楽しからずや―と思えばいいのです」と述べておられます。


渡部昇一先生の書斎に積まれた蔵書

 

渡部先生は、「積ん読」は必要悪であり、これを全部やめてしまったら読書としては不完全であるとまで言い切られています。本を読んでいるとどうしてもその関連本を読みたくなるのは人情であり、あえて人情に逆らうのはよくないし、何より「別の世界が開けてくる可能性」や「新しい発見」も「積ん読」の魅力であると語られています。まさに読書の醍醐味を知り尽くした渡部氏の「積ん読」論に、勇気づけられる読書家、蔵書家、愛書家も少なくないでしょう。


渡部昇一先生の書斎で、先生と

 

わたしは、「世界一」と呼ばれる渡部先生の書斎および書庫を拝見させていただきました。2階建ての書斎には膨大な本が並べられており、英語の稀覯本もたくさんありました。チョーサー『カンタベリー物語』やパスカル『パンセ』の初版本などをはじめ、日本に1冊だけ、世界でも数冊しかない貴重な書籍の数々を見せていただきました。伝説の『ブリタニカ百科事典』第1版の初版をはじめ、歴代のブリタニカもすべて全巻揃っていました。

永遠の知的生活』(実業之日本社

 

ちなみに先生の蔵書は約15万冊だそうです。これは間違いなく日本一の個人ライブラリーでしょう。何よりもわたしが感銘を受けたのは、この素晴らしい書斎および書庫を渡部先生はなんと77歳で作られたということです。もう凄すぎます! なお、渡部先生とわたしは対談本『永遠の知的生活』(実業之日本社)において、本や読書の魅力についてたっぷり語り合いました。この思い出は、わが人生の宝物です。

 

積読こそが完全な読書術である

積読こそが完全な読書術である

  • 作者:永田 希
  • 発売日: 2020/04/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

2020年9月14日 一条真也

『本脈』

本脈―発見!本と本とのつながり

 

一条真也です。
九州北部地方に停滞している前線の影響で12日の小倉は雨でした。ブログ『頭がいい人の読書術』には多くのアクセスがあり、同書の著者である尾藤克之さんからは「拝見しました。こんな長文をサラリと紹介するなんてすご過ぎです。読書本は私にとってチャレンジでしたがホントに出してよかったと思います。有難うございました!!」とのメールが来ました。喜んでいただけて良かったです。尾藤さんとは15日に東京でお会いする約束をしました。楽しみです!
さて、尾藤さんの本にわたしの名前を発見して驚きましたが、以前もこんな経験をしたことを思い出しました。『本脈』柏本湊著(ごま書房新社)という本を読んだときです。2012年に刊行された同書には、「生きる知恵が次々見つける新しい読書の楽しみ方!」というサブタイトルがついています。

 

著者は、生き方研究家・節約家・個人投資家・読書家(年間250~350冊)。1968年生まれ、大阪府出身。東京大学法学部卒業後、某大手金融機関(メガバンク)に勤務。その間、法人営業、産業調査・企業調査、事業会社への業務出向、海外勤務(アジア)、日本企業の海外戦略推進支援、取引先向けセミナーの企画・運営等の業務を歴任。特に産業調査・企業調査では、10年以上に亘り延べ100件超の案件を手掛け、調査のプロとして活躍。2012年春に独立し、フリーランスでビジネス書、評論、エッセイなどの執筆活動を本業として開始。尾藤さんが1967年生まれですから、著者はその1年後のお生まれですね。お二人とも同世代ということになります。

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「はじめに」
1 生き方や夢について考える
第1章 あらゆる本に学びあり(一条真也

第2章 サプライズという彩り(小山薫堂
第3章 極端であること(見城徹
第4章 幸せのとらえ方(五木寛之
第5章 セレンディピティ(諸富祥彦)
第6章 人生があなたに期待している 
    (ビクトール・E・フランクル
第7章 全ては自分の責任(フィリップ・マグロー)
第8章 リスクマネジメントについて(勝間和代
第9章 負の感情との付き合い方(神田昌典
第10章 講演の値段をどう見るか 
     (ジャック・ウェルチ
第11章 手帳で夢を!(熊谷正寿
第12章 日記で夢を!(今村暁)
第13章 地図で夢を!(望月俊孝
第14章 人は選んで付き合いなさい(鳥居祐一)
2 お金や時間について考える
第15章 時間をかけて成果を出す人達  

     (クリス岡崎)
第16章 ロバート・キヨサキ氏のマネー戦略 
     (ロバート・キヨサキ
第17章 顔を出さない著名人達(本田健) 
第18章 となりの億万長者 
     (トマス・J・スタンリー) 
第19章 サラリーマン債券で十分か(橘玲
第20章 希少性を高めよう(内藤忍
第21章 堅実な資産形成法(木村剛
第22章 長期投資で応援しよう(澤上篤人
第23章 人知れぬ努力(山田真哉
第24章 自分の時間を増やすには(柴田英寿)
第25章 週末起業の情報管理(藤井孝一)
第26章 圧倒的な読書量の人達(水野俊哉)
第27章 レバレッジの威力(本田直之
3 知の巨人や偉人の考えに触れる
第28章 最初の仕事はくじ引きである  

     (P・F・ドラッカー
第29章 教養軽視のつけ(齋藤孝
第30章 会ってみたい歴史上の賢人(ゲーテ
第31章 命を絶つこと(水木しげる
第32章 コミュニケーションしづらい人々
     (村上隆
第33章 逃げ出すということ(日垣隆
第34章 集中投資のすすめ(午堂登紀雄)
第35章 思考停止に陥らない(養老孟司
第36章 知の巨人の衝撃(松岡正剛
第37章 親兄弟というもの(ドストエフスキー
4 芸能人や著名人の考え方に学ぶ
第38章 大きいものは信じない(東国原英夫

第39章 成功の要諦(島田紳助
第40章 人生、運が98%(秋元康
第41章 思い立ったらすぐ着手(茂木健一郎
第42章 アイデアは本質をながめれば尽きない  
     (佐藤可士和
第43章 不屈の生き抜く力(矢沢永吉
第44章 人とは違う着眼点(テリー伊藤
第45章 自立のすすめ(藤原和博
第46章 アイデアは速く形に(原尻淳一)
第47章 ファン層の裾野(梅田望夫
第48章 凄さの裏にあるもの(羽生善治
5 様々な方法論を知る
第49章 「仕組み」を作る(泉正人)

第50章 長期の経営戦略・経営計画はラフに  
     (吉越浩一郎)
第51章 新書礼賛(奥野宜之)
第52章 検索の向こうで勝負(野口悠紀雄
第53章 CD・オーディオブックの活用
     (大橋悦夫)
第54章 恐るべしフェルミ推定佐々木正悟
第55章 読書をしても変われない理由(丸山純孝)
第56章 不平等な扱いを学ぶ(高田靖久)
第57章 既に実現した未来(道幸武久)
第58章 商業出版を実現する法(吉江勝)
第59章 貯蓄の極意(岡本吏郎)
第60章 人生の最大幸福とは(本多静六
「掲載書籍一覧(著者50音順)
「おわりに」

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第1章に登場するのは一条真也

 

この「目次」を見ておわかりのように、本書の第1章は一条真也の章になっています。初めてこれを知ったときは非常に驚きました。そもそも、著者はどうして本書を書こうと思ったのか? 「はじめに」の冒頭で、著者は以下のように書いています。
「海外勤務から日本に帰ってきて、久しぶりに本を読み始めたところ、読書から離れた生活をしていた反動からか、あっという間に数百冊の本を読み終えていました。そしてある時、『本が別の本を紹介してくれている』ことに気付いたのです。ある本の著者が別の著者や作品に触れていることが多いことに、私は興味を覚えました。読んだ本が別の本を呼んでいる、声をかけている、と感じるようになったのです」

 

その後、著者はどの本がどの本について言及しているのか、細かく見て記録していく作業を日々行うようになりました。そして、数十冊の本が、数十人の著者が一本の線でつながった頃に、人脈ならぬ「本脈」として、1冊の本にすれば面白いのではないかと思うようになったそうです。ちなみに「本脈」というのは著者の造語で、ビジネス社会で「人脈」という言葉があることから、1冊の本が別の本に導いてくれる繋がりを、「本脈」という言葉で表現してみたとか。

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本書のカバーデザイン

 

本書における「本脈」で繋がった本は60冊(60人の著者)で、ジャンルは、ビジネス書、人生訓、小説、哲学書、マネー本、エッセイなど多岐に亘ります。本のカバーデザインは、60名の著者の繋がり(=本脈)を図にしたもので、著者が自宅で、手書きで大きな紙に描いてきたものがベースになっているそうです。著者は、「そもそもは個人的な乱読がスタートですが、広がりのある知の繋がりになったと思います。従って、思いがけない本と出会う新しい読書の楽しみ方を示した本であると同時に、知の繋がりを発見するガイドブックでもあります」と述べています。

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ドナルド・トランプの名も!(本書のカバー裏表紙)

 

なかなかユニークな試みであると思いますが、残念なことにそれほど話題にならなかったようです。それでも、「知の繋がり」を見える化する壮大なプロジェクトのトップバッター、あるいはスターターに小生が選ばれたことは光栄であります。まあ、わたしが選ばれたというより、本の構成上たまたまだったのかもしれませんが、ある編集者の方は「それでも、一条真也が起点となったのは事実ですよ」と言ってくれました。

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あらゆる本に学びあり!

 

1「生き方や夢について考える」の第1章「あらゆる本に学びあり」の冒頭を、著者は
「本書のスタートは、‟本脈”の冒頭にふさわしい読書術の本です。そもそも本好きな私は、基本的に読書術の本に目を通すことはあまりないのですが、本のタイトルに惹かれて手に取ったのが『あらゆる本が面白く読める方法 万能の読書術』(一条真也著、三五館)です。実は、読後に自分が書いたメモには、『要はこの著者は本が大好きであって、本が嫌いな人への処方箋にはああまりなっていないだろう』と辛口コメントを残していました。また、一条さんには数多くの著書がおありですが、私にとってはこの本が初めてだったので、著者の知見や思考の深さといったところまではよく分かりませんでした」と書きだしています。


あらゆる本が面白く読める方法』(三五館)

 

著者の言う通りで、わたしは本が大好きでたまりません。そして、本が嫌いな人のことなど、どうでもいいのです。というか、「この世に、本が嫌いな人がいるなんて信じられないな。本を読まないなんて、もったいない!」と考えているのです。当然、本が嫌いな人への処方箋などを書く気は毛頭ありませんでした。本が好きな人にもっと好きになってもらおうと思って、ブログ『あらゆる本が面白く読める方法』で紹介した本を書いたのです。ある意味で、「看板に偽りあり」ですが、この書名はわたしではなく、版元の社長さんが付けたものです。わたしは『心ゆたかな読書』とか『ハートフル・リーディング』といったタイトルを提案したのですがダメでした。まあ、その社長さんはわたしが提案するタイトルでは「ど直球過ぎて売れない」と判断したのでしょうね。同書の冒頭が本が嫌いな人への処方箋的な内容になっていますが、これも自分の考えというより、編集者の考えを反映した部分が多く、今読み直すと、「とってつけた」感があります。ですから、著者の柏本氏が「本が嫌いな人への処方箋にはああまりなっていないだろう」とコメントされたのは当然だと思います。

 

しかし、著者が『あらゆる本が面白く読める方法』を読んで、「これは自分の実感とぴったりだなあと思った箇所があるそうです。「それは、《どんなにつまらない本でも、少しは知らないことも書いてあるし、良いことも書いてある》、《くだらないと思える本でも知らないことや驚くことが1つはあるものです》、です。私は本を読むと、必ず自分にとって新しい考え方や情報、知らなかった言葉づかいなどをパソコンに記録するようにしているのですが、何も記録することがない本はほとんどありません。『こんなこと全部知ってるよ』と、たやすく片付けられる本はまずないのです」と書いています。

 

 

さて、「本脈」の第一走者であるわたしのバトンを受けとった著者は、なんと、放送作家小山薫堂氏でした。小山氏はブログ「おくりびと」で紹介した日本映画の脚本を担当され方なので、「そっちの繋がりかな?」と思ったのですが、違いました。じつは、『あらゆる本が面白く読める方法』の中で、小山氏の『人を喜ばせるということ』(中公新書ラクレ)という著書に言及しています。同書には「だからサプライズがやめられない」というサブタイトルがついており、帯などには小山氏が「サプライズの達人」として知られていることが書かれていました。それで、わたしは具体的なサプライズの事例を期待して読んだのですが、スタッフを騙して驚かせるといった、「ドッキリカメラ」まがいの話が多く、正直言って期待とはたがう内容でした。

 

しかし、同書には、「自分が死ぬときにも人を驚かせたい」という話が出てきました。たとえば、ハート型の金具を飲めば、火葬場で自分の遺体を焼いたとき、ハートが残る・・・・・・。たとえば、ある若者を呼んで「君は僕の隠し子なんだ」とささやいて、驚く相手に遺書を渡す。亡くなった後で、遺書を開くと、そこには「ウソだよん」と書いてある。いずれもイタズラですが、小山氏は「自分が死ぬときに何のサプライズを仕掛けようかと考えていると、不思議と、死ぬのが怖くなくなる」と書かれており、これには、わたしも大いに共感しました。ということで、『本脈』の著者である柏本氏は、この記述から、わたしの後続ランナーに小山薫堂氏を選んだわけです。

 

このリレーの繋ぎ方は、正直言って「ショボい!」と感じました。これでは、ある本に登場する本を次に紹介するだけではないですか! それよりも、もっと、わたしが著書で最も言いたかったメッセージを受け止めて、次の著者の方に繋げていただきたかったです。わたしが『あらゆる本が面白く読める方法』で最も言いたかったのは「DNAリーディング」というものの重要性です。DNAリーディングは、わたしの造語で、いわゆる関連図書の読書法です。1冊の本の中には、メッセージという「いのち」が宿っています。その「いのち」の先祖を探り、思想的源流をさかのぼる、それがDNAリーディングです。当然ながら古典を読むことに行き着きますが、この読書法だと体系的な知識と教養が身につき、現代的なトレンドも完全に把握できるのです。

 

現時点で話題となっている本を読む場合、その原点、源流をさかのぼり読書してゆくDNAリーディングによって、あらゆるジャンルに精通することができます。たとえば哲学なら、ソクラテスの弟子がプラトンで、その弟子がアリストテレスというのは有名ですね。また、ルソーの大ファンだったカントの哲学を批判的に継承したのがヘーゲルで、ヘーゲル弁証法を批判的に継承したのがマルクスというのも知られていますね。マルクスの影響を受けた思想家は数え切れません。こういった影響関係の流れをたどる読書がDNAリーディングです。

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 「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。

 

「本脈」が本のヨコ糸を探る試みなら、DNAリーディングは本のタテ糸を探る試みです。つい最近、「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」というネット記事を目にしました。kindle作家の綿樽剛氏という方が書かれた記事ですが、その冒頭で、わたしのことについて「冠婚葬祭業大手(株) サンレーの社長で、作家で、大学で『論語』を教える客員教授という『知の巨人』一条真也氏の読書法だ。年間700冊を読み、同時に相当のアウトプットもしている。アマゾンを見ると、なかなか重い著作も何冊も書いている。とりわけ、葬祭業なので、死生観についても深い思索を巡らせていることが分かる。軽く書ける本ではなさそう。専業作家ではないんだから、どうやって時間を使っているんだろう? さらに、社長業として、経済学などにも通じており、あらゆるジャンルを幅広く、なおかつ深く読んでいるのがすごい」と書かれています。

 

過分な評価に恐縮の至りですが、綿樽氏は「とにかく、本を愛する気持ちが、行間から、これでもか、これでもかと伝わってくる。そんな一条氏の読書法の中で際立っている『DNAリーディング』を紹介してみたい」として、「DNAリーディングというのは一条氏のオリジナル語彙のようだ。基本的には『関連図書』を芋づる式に読んでいく方法なのだけれど、特に際立っているのは、その作家の思想の源流を探る読み方をするということだ」とも書かれています。

f:id:shins2m:20200912194053j:plain『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」 

 

また、『あらゆる本が面白く読める方法』や『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)といった拙著を紹介された後、「たどって読み続けるうちに、源流にたどり着いていく一条氏の読み方は、まさに『自分の頭で考えている』読書法ではないだろうか。一条氏は「読書というのは、人の頭を借りて考えること」というショーペンハウアーの批判を取り上げつつ、自分の場合は、本を読めば読むほどひらめくと述べている。それも、一条氏が思想の源流をたどるような深い読み方をしているからだと感じた」とも書かれています。

f:id:shins2m:20200912194119j:plain『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。

 

最後に、「ただ、読みやすい本を濫読しているのではないのだ。これは、これから目指していきたい一つの読書法の形になりそうな気がしたので、NOTEに残しておきたいと思った」とも書かれています。まさに、わたしの言いたいことの核心を綿樽氏が衝いて下ったことに感激しました。わたしも多くの本を引用しますが、いやしくも他人様の本を引用するときは、その人が一番言いたいところを引用しなければいけないと痛感しました。いわば「引用の礼」とでも言うべきものです。『論語』を座右の書としているわたしは、何よりも「礼」を重んじるのです!


世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP)

 

この綿樽氏の記事があまりにも嬉しかったので、2人の出版関係者に転送しました。1人は、『あらゆる本が面白く読める方法』の担当編集者で、現在は三五館シンシャ社長の中野長武さん。もう1人は『世界一わかりやすい「論語」の授業』の担当編集者で、現在は造事務所社長の堀川尚樹さんです。中野さんからは、「『たどって読み続けるうちに、源流にたどり着いていく一条氏の読み方は、まさに「自分の頭で考えている」読書法ではないだろうか』など、この人自身がしっかり読みこんで、きちんと自分のものにしていることが伝わってきます」という返信がありました。堀川さんからも、LINEで「たいへんな読書家さんですね。分析がすごいです」という感想が届きました。

 

 

なんだか「本脈」よりも「DNAリーディング」が話題の中心になってきましたが、「本脈」のアンカーとなる60人目の著者は本多静六でした。極貧の貧乏学生から東大教授となり、日本初の林学博士として目覚しい業績をあげ、独自の貯蓄・投資法で大富豪となり、かつ、晩年は多額の資金の寄付で知られた人物です。本書では本多静六の著書『私の財産告白』が取り上げられています。わたしは、同書をブログ『財運はこうしてつかめ』で紹介した渡部昇一先生の著書でその存在を知って、読みました。著者は、第60章「人生の最大幸福とは」の冒頭で、『私の財産告白』の中の「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さには比すべくもない」という本多静六の言葉を紹介しています。

 

 

ところが、著者は「人生の理想形はこの言葉通りと思うのですが、現実にはそうはいかず、大半の人は食べていくために、道楽とは到底呼べない仕事に日々追われる生活を送っています。であれば、そうした仕事に納得する、仕事を正当化させるロジックも必要だと私は感じていました」と述べます。探し求める中で、著者は次の文章に出合い、書き留めたそうです。
古今東西、人間は仕事について様々な考え方をしてきました。現代の養老孟司さんはあの『壁』連作の中で、仕事とは、社会に空いた穴だと言っています。放っておけば、皆が転んで困る。だから埋める。ともかく目の前の穴を埋める。それが仕事というものだと。自分が穴を埋めた分、世の中は平らになる。歩きやすくなる。そこが肝心です。つまりどんな仕事も社会的役割を負っている。仕事とは、人間が生きるための役割分担だということです」(2007年7月28日「読売新聞」朝刊、編集委員・芥川喜好)

 

著者は、仕事で苦しんでいるときに、この言葉を何度も思い返したといいます。しかし、一方で「自分が心底好きなことを仕事にできればいいなあ」と何度も何度も思ったそうです。著者は、こう書いています。
「昔の人は、しばしば『どんな仕事でも歯を食いしばって取り組んでいれば、その仕事はものになる(好きになる)』、『仕事を選ぼうとするな。自分に合った仕事があてがわれるのだ』と言います。これはこれで否定はしません。やってみないと分からない、好きか嫌いか分からない仕事も多いわけで、選り好みせずまずはやってみるということは大切です。しかし一方で、『やっているうちに好きになっていく仕事』と『最初から好きなことで、それにさらに打ち込める仕事』の間には、決定的な違いがあると私は感じます。わかりやすく表現すれば、前者は‟好きになれた仕事”であり、後者はずばり“天職”だと思うのです。誰しも、早いうちから『これが自分の天職に違いない』という仕事に巡り合いたいでしょう」

f:id:shins2m:20180723230107j:plainあらゆる本が面白く読める方法』の帯

 

わたしの本業は冠婚葬祭業です。しかし、もともと書くことが好きだったのですが、作家業も仕事にすることができました。さらには、大学の客員教授として研究や講義をしたりすることも仕事にできました。そういう意味では、わたしは非常に恵まれている人生を歩んでいると思います。『あらゆる本が面白く読める方法』の帯には、「経営者、作家、客員教授・・・・・・一人三役を可能にする驚くべき読み方!本邦初公開」と書かれています。でも、わたしは「一人三役」だとは思っていません。経営者、作家、客員教授もそれぞれが分かちがたく結び付き合っていると思っています。

 

わが社の冠婚営業のエースである松柏園ホテルの中田武志副支配人が、綿樽氏の書かれた「『一条 真也』流: 読書術『DNAリーディング』で思想的源流をさかのぼる。」を読んで、「社長の本当にスゴいと肌で感じたのは、各施設に随行でお供させていただいた時でした! 読書量と読む速さ、また得た知識を活かし新たなミッションへ導く発想力! 私はいつも社長の側で貴重な経験をさせていただいております!」という嬉しいメッセージをLINEに送ってくれました。たしかに、彼の言うように、わたしは、どんな本を読んでも、そこで得た知識やヒントやアイデアを必ず本業で活かしたい、また本業のミッションを再確認する一助としたいと考えるのは事実です。

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世界孔子協会の孔健会長と

 

わが社のミッションは「人間尊重」です。そして、2500年前に孔子が説いた「礼」の精神こそ、「人間尊重」そのものだと思います。わたしは「天下布礼」の幟を立てています。かつて織田信長は、武力によって天下を制圧するという「天下布武」の旗を掲げました。しかし、わたしたちは「天下布礼」です。武力で天下を制圧するのではなく、「人間尊重」思想で世の中を良くしたいのです。冠婚葬祭ほど、人間関係を良くするものはありません。太陽の光が万物に降り注ぐごとく、この世のすべての人々を尊重すること、それが「礼」の究極の精神です。天下、つまり社会に広く人間尊重思想を広めることがサンレーの使命です。わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいていると思っています。

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これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。また、わたしが大学で教壇に立つのも、講演活動を行うのも、本を書くのも、すべては「天下布礼」の活動の一環であると考えています。ですから、作家業は大好きな仕事ではありますが、わたしの天職は礼業すなわち冠婚葬祭業であると思っています。著者は「最初から好きなことで、それにさらに打ち込める仕事」が「天職」だと定義していますが、わたしの考えは違います。やはり、「好き」よりも大切なことは「誇り」だと思います。さらに大切なことは「使命感」や「志」だと思います。その仕事に心からのプライドを持ち、自らのミッションやアンビションに気づいたとき、「好き」という次元さえも超越して、そこには大いなる「天職」の地平が現れてくるのではないでしょうか?

f:id:shins2m:20190313160847j:plain本も書くけど、本業は「礼業」です!

 

最後に、これほど「礼」の世界にどっぷりと浸かっているいるわたしですが、「金」にはあまり縁がありません。本書で伝説の大富豪である本多静六翁とはスターターとアンカーという不思議な御縁をいただきました。この御縁によって、わたしも少しは財運に恵まれるでしょうか?(笑)いずれにしても、日本を代表する賢人たちから、ゲーテドストエフスキードラッカーまで参加した華麗なる「知のリレー」の先頭を切らせていただけたことは光栄でした。良い思い出になりました。著者の柏本氏に感謝申し上げます。

 

本脈―発見!本と本とのつながり

本脈―発見!本と本とのつながり

  • 作者:柏本 湊
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 単行本
 

 

2020年9月13日 一条真也

『頭がいい人の読書術』

頭がいい人の読書術

 

一条真也です。
『頭がいい人の読書術』尾藤克之著(すばる舎)を読みました。「1冊10分でインプットし、30分でアウトプットする技術」というサブタイトルがついています。著者はコラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所研究員。東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしておられます。

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本書の帯

本書の帯には、「読むのが遅い」「忘れてしまう」「3日坊主」「時間がない」「集中できない」「速読で挫折した」「積ん読の山」という人でも大丈夫。」「全部読まなくてOK」「1日1冊の読書習慣で、人生が好転する!」と書かれています。 

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本書の帯の裏

 

帯の裏には、「速く、深く、楽しく読書できる『秘訣』がギッシリ!」として、こう書かれています。
・どんな本でも10分で読むことができる
・読みたくない本は、読まなくてもかまわない
・3分の1だけ読んで理解する技術
・記憶に定着する読み方は、ココがポイント
・10分で読んでも理解力が増す4つのテクニック
・頭がいい人がやっている、
 読書に集中するための儀式とは?

・本は何を読むかより、何を読まないかが9割
・10分で本を読み、
 30分でアウトプットできる秘訣

 

アマゾンの「内容紹介」には、こう書かれています。
議員秘書コンサルタント、会社役員など、さまざまな仕事を経験してきた、超人気コラムニストが「本・新聞・ネット記事の賢い読み方」を教えます! 誰でもできる読書スキルが満載! 読書を通じて、仕事、人間関係、ライフスタイル、すべてが好転します! 老若男女あらゆる世代に使えて、一生役立つスキル。100年時代を楽しみ、有意義に過ごすために、本書を通じて、読書生活を始めましょう」

 

さらには、「出版社からのコメント」として、以下のように書かれています。
「人気コラムニストの著者は、1年に1000冊の本を読み、400本の記事を執筆。これまで読んできた本は優に1万冊を超え、アウトプットしてきた本は7000冊以上にものぼります。本書では、著者が実践してきた【1冊10分でインプットし、30分でアウトプットする技術】を初公開。誰でも無理なく実践できて、簡単にマネできるように、わかりやすく解説しました。あなたが読んだ本を血肉に変えて、『行動や成果に変える秘訣』を伝授します。さらに、効率的に記憶に定着させる方法や、アウトプットの技術まで、あなたが読書で得られる学びを最大化する方法が盛りだくさん!! 今まで読書を習慣化できなかった人も大丈夫! 楽しくたくさん読めて、グンと成長できる本書の読書術で、あなたの人生は好転します!!」

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。
【はじめに】本がたくさん読めて、アウトプットできて、楽しくなるコツ
第1章 頭がいい人の読書は何が違うのか?
01 頭がいい人の読書は、ココが違う
02 頭がいい人は本を全部読まない
03 頭がいい人の読書は、アウトプットありき
04 頭がいい人の読書は忘れない
05 頭がいい人は、
   読書がムリなく続く仕組みがある
第2章 本は全部読まなくてもかまわない
06 どんな本でも10分で読むことができる
07 3分の1だけ読んで理解する技術
08 3分の1リーディング実践編
09 10分で読んでも理解力が増す
   4つのテクニック
10 本を読む前に目的を明確にする
11 すべての本を読まなくてもかまわない
12 頭がいい人は、限られた時間で多くの本を読む
第3章 頭がいい人は、読んだら忘れない
    仕組みをつくっている
13 頭がいい人は、忘れない読み方をする
14 頭がいい人は、読んだ内容を人に話す
15 頭がいい人は、読書にふさわしい
   時間帯を知っている
16 頭がいい人は、読書に集中するための
   儀式をもっている
17 頭がいい人は、読書パフォーマンスを上げる
   ツールを知っている
第4章 頭のいい人のネット・新聞・雑誌の読み方
18 頭がいい人のネットの読み方
19 頭がいい人の新聞の読み方
20 頭がいい人の雑誌の読み方
21 頭がいい人の教養書の読み方
第5章 頭がいい人は、本を読んで終わりにしない
22 頭がいい人は、
   読んだ本の内容をアウトプットできる
23 頭がいい人の、
   本をアウトプットする3つのテクニック
24 頭がいい人は、
   アウトプットの仕上げが卓越している
25 頭がいい人は、読書→アウトプットの
   サイクルで常に成長している
【おわりに】
読書をすると、人生が劇的に豊かになる理由

 

【はじめに】「本がたくさん読めて、アウトプットできて、楽しくなるコツ」では、著者は「私は10年間、毎日のように、『1冊10分で読み、30分で記事にする』という作業を繰り返してきました。短い時間で、本をインプットし、読んだ内容をアウトプットしてきて、いまもそれは継続しています」と述べています。また、読書上手、発信上手な、頭がいい人は、特別なことはやっていないとして、「誰もがマネできる、『ちょっとしたコツ』を押さえて、本を読み、アウトプットしています。あなたのまわりにも、仕事が忙しそうなのに、たくさんの本を読んでいて、アウトプット量も多い人がいるはずです」とも述べます。

 

第1章「頭がいい人の読書は何が違うのか?」の01「頭がいい人の読書は、ココが違う」では、「日本速脳速読協会によれば、日本人の平均読書速度は500~800文字/分とされています。参考までに、私は1冊のビジネス書を約10分で読みます。1冊6万文字とすれば、1分6000文字程度の読書速度です」と書かれています。わたしは速読を心がけてはいませんが、著者の読書スピードは相当に速いですね。

 

02「頭がいい人は本を全部読まない」では、「つまらなかったら、途中で読むのをやめてもいい」として、著者は「ビジネス書や実用書は、多くの場合、キラーコンテンツ(著者にとって、最も伝えたいこと)を、最初に持ってくる傾向が強いです」と述べ、ビジネス書や実用書の場合、「はじめに」「おわりに」「第1章」を読めば、内容の7割はつかめるとまで断言しています。

 

SF ねじれた町 (youngシリーズ)
 

 

05「頭がいい人は、読書がムリなく続く仕組みがある」では、「ムリなく読書習慣をつける3つの方法」として、①読書日記をつける、②まずは手軽な文庫本から、③目に見える場所に本を置く、という3つの方法が紹介されます。③については、「目に見えるところに本を置くことで、意識を刺激することも大切です。私は枕元に常に数冊の本を置いています。寝る前の儀式として読みたい本を読むようにしています。私は小学校のときに、はじめてライトノベルを読みました。眉村卓さんの『ねじれた町』という文庫ですが、この本が大好きでいまでも枕元に置いています」と書かれています。ちなみに、この『ねじれた町』というSFジュブナイル、わたしも大好きでした!

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なんと、わたしの名前を発見!!

 

続いて、著者は「一条真也さんの『ハートフルに遊ぶ』と『遊びの神話』もお気に入りです。発刊が1988年、1989年なのでバブル経済の真っただ中ですが、この2冊ほど、バブル経済を照射している本はないと思っています」と書かれていました。ブログ「那覇から姫路へ!」で紹介したように、今年の7月8日、わたしはANA1207便で沖縄の那覇空港から関西の伊丹空港に飛び、その機内で本書を読んだのですが、わたしの名前が急に出てきてビックリしました。「バブルの申し子」のように思われるのはちょっと複雑な心境ではあります(笑)。しかしながら、ブログ『ハートフルに遊ぶ』ブログ『遊びの神話』で詳しく紹介したわたしの処女作&2冊目を今でも愛読して下さる方がいるなんて、とても感激しました。じつは当該ブログ記事を読まれた著者から、ちょうど昨日メールが届いたのですが、そこには「『ハートフルに遊ぶ』『遊びの神話』を読んだのは学生時代です。私の世代からすると、一条先生は学生サークルのドンみたいな印象がありました」と書かれていました(笑)。著者とはこれから新しい物語が始まる予感がして、ワクワクしています!

f:id:shins2m:20200808162222j:plainバブル経済を照射している2冊?(笑)

 

第3章「頭がいい人は、読んだら忘れない仕組みをつくっている」の16「頭がいい人は、読書に集中するための儀式をもっている」では、アスリートのルーティンのように、読書にもルーティンを取り入れることが提唱されています。その中でも「集中力を爆上げできる、とておきの方法」として、気分を落ち着かせるためのお気に入りの場所を持つことを薦めています。著者は、「私の場合は、新宿のビジネスホテルを利用します。高層階から見える風景は気分を落ち着かせてくれます。非日常の空間にいながら優雅に執筆ができて、気分転換の娯楽(ルームシアター)が常備され、集中力も高まる場所です。平日ならラグジュアリーホテルでも宿泊費は1万円弱(1泊)です。大切なことは自分のとっておきの空間であることです。私の場合は、ホテルという場所に入ることで、集中するスイッチを入れているのです。これは読書にも応用することができます」と述べます。

 

17「頭がいい人は、読書パフォーマンスを上げるツールを知っているでは、集中力を格段に上げる方法を紹介していますが、「10分で本を読み、30分でアウトプットできる秘訣」として、「具体的に期限を設定することで集中力が高まります。集中力が高まれば効率がアップすることは間違いありません。これについては、精神科医の樺沢紫苑さんが、『人は追い込まれることで脳内でノルアドレナリンが分泌されること』『ノルアドレナリンは、集中力を高め、学習能力を高め、脳を研ぎ澄ます』ことを効果として挙げています。脳科学の分野では既に検証されている考え方なのです。結果として良質なパフォーマンスを発揮できます」と述べています。「読書にも〆切を!」ということですね。

 

そして著者は、「読書時間を記録することで、楽しく成長を実感できる」として、「『あと1分だ!』と気持ちを引き締めると集中力が高まります。これは、アナログ式の時計からは感じることができない不思議な感覚です。多くの著書を出されている明治大学文学部教授の齋藤孝さんは、『ストップウォッチ』で仕事・勉強のスピードが倍速になるとさえ言っています。著名人の間でもストップウォッチの愛用者は多いと思いますが、ほとんどの方は、私と同じような時間管理と追い込みに使っているはずです。ぜひ、参考にしてみてください」と述べるのでした。わたしは「速読」というものにあまり価値を置いていないのですが、人からは「読むのが速いですね」とよく言われます。本書は「速読」だけにとらわれない「読書」そのものの効用が説かれていて、共感できる箇所が多かったです。基本的に、著者は本が好きで好きでたまらない人なのだと思います。いつか、著者にお会いして読書談義ができる日を楽しみにしています!

 

頭がいい人の読書術

頭がいい人の読書術

 

 

2020年9月12日 一条真也