一条真也です。
東京に来ています。『情報吸収力を高めるキーワード読書術』村上悠子著(フォレスト出版)を読みました。著者は、情報クリッピングマスター。京都市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。2005年から現在まで、クリッピング業務(=新聞・雑誌から必要な記事を見つけて切り抜くこと)に従事。「文章を読むプロ」として14年間、毎日朝から晩まで「アンテナを立てて、情報を漏らさず、大量の活字を読みまくる生活」を送り、クライアントに20万点以上の記事を提供してきた実績を持ちます。プライベートでも近所の図書館を10カ所はしごするほどの“無類の本好き"で、これまでに3500冊を読破。読んできた文字数の合計は、公私を合わせると「30億字」を超えているとか。これまでの経験・知識・知恵から導き出したノウハウを「キーワード読書術」として完全体系化。本書が初の著書となります。
本書の帯
本書の帯には「超一流「情報クリッピングマスター」が伝授する、必要な情報を吸収し、忘れない読書術」「なぜ、同じ本を読んでも、欲しい情報を吸収できる人、できない人がいるのか?」「3500冊を読破・吸収するテクニック大公開!」と書かれています。帯の裏には、「質の高い読書は、事前準備が9割。人生が変わる新・読書術、一挙大公開!」と書かれています。
本書の帯の裏
カバー前そでには、「キーワード読書術」の4つの特長として、
●欲しい情報を着実に吸収できる
●省エネができる(速く読めるようになる)
●自分に合った本を選べるようになる
●期待外れの本からも、役立つ情報を吸収できる
と紹介され、「クリッピング業務から完全体系化した自分を成長させる読書術、大公開!」と書かれています。
本書の「目次」は、以下の構成になっています。
「はじめに」
第1章 なぜ、今まで「欲しい情報」が
とれなかったのか?
第2章 キーワードを設定する方法
第3章 設定したキーワードが出ている
本を選ぶ方法
第4章 キーワードをアップデートする方法
第5章 読書でさらに情報を吸収する秘策
第6章 インスタグラムに読書記録を残そう!
「はじめに」では、「なぜ同じ本を読んでも、欲しい情報を『とれる人』と『とれない人』がいるのか?」として、本を読んでも情報がとれないのは、ズバリ、「読む前にキーワードを設定していないから」だと断言する著者は、「普段、何か調べたいことがあるときは、Googleで検索しますよね。いわゆる『ググる』という行為ですが、これは検索ボックスにキーワードを入力することで、欲しい情報をとっているわけです。キーワードを入れなければ、当然、何の情報も表示されません」と述べています。
また、著者は「現代においては、『情報をとること』と『キーワードを入力すること』は常にセットになっているのです。これを読書に当てはめて考えると、本を読む前に『キーワード』を設定して、それを『検索するような感覚』で本文を読めば、欲しい情報がとれると思いませんか?」とも述べています。
本書の中で最も面白かったのは、第1章「なぜ、今まで『欲しい情報』がとれなかったのか?」の「『キーワード』を意識して欲しい情報をキャッチする練習」に登場する「村上座談会」という架空の座談会です。著者は、「キーワード」を意識して欲しい情報をキャッチする練習として、同じ姓の有名人たちとの架空対談を行います。著者「村上悠子」さんの他には、作家の「村上春樹」「村上龍」、お笑い芸人の「村上ショージ」、プロフィギュアスケーターの「村上佳奈子」も加わって、以下のような会話が展開されます。
悠子「皆さん、好きな食べ物は何ですか?」
春樹「僕はやっぱりカキフライだね」
龍「僕は魚とか、和食系が好きかな」
ショージ「僕は醤油味のものなら何でも。しょうゆうこと!」
佳菜子「私はかき氷です。1日3食、かき氷を食べないと気が済まないんですよ。食べ歩きもよくするんですが、皆さんは何か趣味はありますか?」
春樹「僕はランニングかな。1日のうちにだいたい1時間ぐらい走る。だから僕は1日は23時間しかないんだと決めて生きているんですよ」
悠子「私もマラソンやってます! 走るのって楽しいですよね」
ショージ「僕は水墨画です。京都の誓願寺で個展を開いたこともあるんですよ」
龍「それは知らなかった。僕は『無趣味のすすめ』という本を出しているぐらいだから、特にないなぁ」(『情報吸収力を高めるキーワード読書術』P.29)
第2章「キーワードを設定する方法」では、「『自分株式会社』が必要な情報を、自分でクリッピングするような感覚で読む」として、著者は「私が働いているクリッピング会社は、『クライアントが必要な情報を、調査料金をいただいて、代わりに収集する』のが仕事です」と述べます。これを読書に当てはめると、「『自分株式会社』が必要な情報を、書籍代を払って、自分で収集する」ということになります。つまり、読書とは「1人クリッピング」みたいなものであるというのです。著者は、「最近は、1人カラオケ・1人映画・1人焼肉などのソロ活をする人が増えているそうですが、読書をするときはぜひ、『1人クリッピングをしている』という感覚で本を読んでほしいのです」と述べています。
また、読書とは自分の未来に「お金」と「時間」を投資する作業であるとして、著者は「1冊の本の価格は、だいたい1500円前後。図書館の本は無料で借りることができますが、図書館まで往復する時間を差し出しています。何かと忙しい日々の中で、それだけの投資をしたからには、全力でリターン(=欲しい情報)をとりにいかないといけません」とも述べます。
第3章「設定したキーワードが出ている本を選ぶ方法」では、「『読者のレビュー』を参考にして、表示された本を精査する」として、著者はこう述べます。
「『口コミ』や『レビュー』を見るときに、常に心の片隅に置いておかないといけないのは、『どんな人が書いているかわからない』ということです。たとえば、“芸能界のグルメ王”と呼ばれている寺門ジモンさんや渡部建さんが、『料理がまずかった』と星1つをつけたとしても、衣食住の中で『食』の優先順位が低くて、お腹が膨れれば満足という人なら、『すごくおいしかった』と星5つをつけることもあります。同じお店で同じものを食べても、レビュアーのレベルによって評価は異なる、ということです」
ここで「渡部健」という固有名詞を目にして、思わず苦笑いしたのは、わたしだけではありますまい。
第4章「キーワードをアップデートする方法」では、「読み進めるうちに、気になるキーワードが出てきた場合」として、著者は「『村上座談会』でも、最初は『春樹』目当てで読んでいたけれど、だんだん『龍』のコメントに魅力を感じてきた。『ショージ』のギャグもなんだかクセになるし、『佳菜子』もすごくかわいい。何者かよく知らない『悠子』も、意外にいいことを言っている。このような心境の変化は、往々にして起こるものです。それだったら、途中でキーワードを『村上春樹』から『気に入った人物の名前』にアップデートして読み続ければいい。規定外の『NEW WORD』に出会えるのは、読書の魅力の1つです。気になったキーワードはスルーしないで、頭の中にどんどん追加していってください」と述べています。これは、キーワードの効果というものの、わかりやすい説明になっていると思います。
第6章「インスタグラムに読書記録を残そう!」では、「インスタグラムで人気の『読書アカウント』の2つの特徴」として、最初に「本の情報(=要約)が書いてある」ということが挙げられ、著者は「トマ・ピケティの『21世紀の資本』のような分厚い学術書や、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』ような難解な小説に挑むときに、先にSNSで『読みます宣言』をしてあとに引けない状態にする(自分を追い込む)のは全然ありだと思います。でも毎回、『今から読みます』だけだと、『この人は本当に読んでいるのだろうか?』『読書家アピールをしているだけでは?』などと、見ている側が意地の悪いことを考えてしまうのです・・・・・・」と述べています。ちなみに、2つ目の特徴は「投稿数が多い」ということだそうです。
本書の最後に「読むときは『1人クリッピング』、読んだあとは『1人マーケティング』」として、著者は「床に食べ物を落としたときに、3秒以内に拾えば食べても大丈夫という『3秒ルール』ってありますよね。何でも落としたものはすぐに拾ったほうがいいと思いますが、読み終わった本は、すぐに投稿する必要はありません。テキストの下書きさえ完了していれば、その後しばらく寝かせておいてもいいし、順番の入れ替えも自由です。実際に、私は読んだ本をまったく順番どおりに投稿していないのですが、言わなければ誰も気づきませんし、何の問題もありません。いつ投稿してもいいんだったら、なるべく『その季節』や『その日』に合ったものをぶつけたい。これって、やっていることは『マーケティング』と同じだと思いませんか?」と述べるのでした。本書には、わたしの知らないことも書かれていて勉強になりましたが、特に「村上座談会」が面白かったですね。本書は、著者の最初の著者だそうですが、クリッピングの経験を生かした本をこれからも書いていただきたいと思います。
2020年9月15日 一条真也拝