「GoToウエディング」の実施を!

一条真也です。
宮崎県の延岡から福岡県の小倉に戻ってきました。
9日、自民党の青年局・女性局が主催する公開討論会が開かれ、総裁選の立候補を届け出た石破茂元幹事長、菅義偉官房長官岸田文雄政調会長が出席。主に少子化対策などで論争を繰り広げました。



注目の少子化対策について、お三方は興味深い発言をされています。石破元幹事長は「出生率が一番低いのが東京。世界のいろんな事例に学んで、できることはたくさんあるはず。地方創生が大事だと思う」と語りました。菅官房長官は「子どもを産むことのできるハードルを下げるべき。不妊治療の保険適用を実現したい」と語りました。岸田政調会長は「育休等の環境整備、保育所の受け皿の整備。街づくりの観点からも、少子化を考えないといけない」と語っています。

f:id:shins2m:20200910162005j:plain今朝の各紙朝刊 

 

お三方の発言はそれぞれ正論だと思いますが、わたしは、もっと考えるべき問題があると思います。それは「少子化」の前に「非婚化・晩婚化」の問題があるということです。日本は、いま最大の国難に直面しています。それは新型コロナウイルスの問題でも、中国の領土侵犯の問題でも、北朝鮮のミサイル問題でもありません。より深刻なのが人口減少問題です。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した「日本の将来推計人口」(2017年)によれば、15年には約1億2700万人だった日本の総人口が、40年後には9000万人を下回り、100年も経たないうちに5000万人ほどに減少することが予測されます。

 

 

ブログ『未来の年表』で紹介したベストセラーの著者である大正大学客員教授の河合雅司氏は、「こんなに急激に人口が減るのは世界史において類例がない。われわれは、長い歴史にあって極めて特異な時代を生きているのである」と述べています。人口減少を食い止める最大の方法は、言うまでもなく、たくさん子どもを産むことです。そのためには、結婚するカップルがたくさん誕生しなければならないのですが、現代日本には「非婚化・晩婚化」という、「少子化」より手前の問題が潜んでいます。

f:id:shins2m:20200910161833j:plainサンデー毎日」2018年2月4号

 

政府がこれまで少子化に対する具体策として講じてきたのは、男女共同参画、待機児童対策などであるが、これらは既に結婚、出産、子育てを経験している人々に対するもの。その手前の「非婚・晩婚」については、特に政策として具体的な手が打たれることはなかったのです。国が国難に対応できないのは困りますが、じつはこの問題、わが社のような冠婚葬祭互助会が最も対応可能であると思っています。わが社も「婚活クラブ」を運営しています。専属カウンセラーが、成婚まででなく披露宴まで徹底サポートすることが特徴ですが、創業33年で700組を超える実績があります。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、メイン事業である「婚活パーティー」がなかなか開催できません。

f:id:shins2m:20200910161856j:plainサンデー毎日」2016年9月4日号

 

また、冠婚葬祭互助会は結婚式を提供しますが、この結婚式が新型コロナウイルスによって延期や中止が相次ぎ、日本のブライダル産業そのものが危機的な状態にあります。葬儀部門を抱えている互助会はまだ大丈夫ですが、結婚式場だけの会社やホテルはかなり厳しいのではないでしょうか。おそらく今年の結婚式の数、婚姻数も過去最低となることは明らかです。しかし、わたしは、結婚式は社会を維持していくために必要な文化装置であると考えます。なぜなら、結婚式を挙げなかったら婚約する覚悟というものが定まらず、結婚そのものが減少するからです。わが社では、毎年8月に、小学生とそのお母さんたちを対象に模擬結婚式をはじめとする「親子で一緒にウエディング体験会」というイベントを開催しているのですが、コロナ禍の今年は中止となり、まことに残念でした。

f:id:shins2m:20200910160935j:plain毎日新聞」2016年8月21日朝刊

 

わたしは、ぜひ、新しい首相には、日本人が結婚式を挙げる政策を立てていただきたいと思います。結婚式の費用とか交通費などを助成する、いわば「GoToウエディング」です。これは「GoToトラベル」とか「GoToイート」と違って、単なる特定の業界のための救済策ではありません。「GoToトラベル」に東京が加わるようですが、それよりも「GoToウエディング」の方がずっと重要です。なぜなら、これは経済のためではなく、社会のために行うものだからです。本当に必要でないのなら、日本人はこれから結婚式を挙げなくても構いません。ブライダル産業が消滅しても仕方ないでしょう。しかし、結婚式は絶対に必要なものなのです!

 

儀式論

儀式論

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2016/11/08
  • メディア: 単行本
 

 

わたしは、『儀式論』(弘文堂)において、人間は儀式という「かたち」によって不安定な「こころ」を安定させ、幸せになれるのではないかと述べました。儀式とは人間が幸福になるためのテクノロジーであると言えるでしょう。また同書の中で、わたしは「結婚式は結婚よりも先にあった」という自説を展開しています。一般に、多くの人は、結婚をするカップルが先にあって、それから結婚式をするのだと思っているのではないでしょうか。でも、そうではないのです。

 

古事記 (岩波文庫)

古事記 (岩波文庫)

  • 作者:倉野 憲司
  • 発売日: 1963/01/16
  • メディア: 文庫
 

 

日本人の神話である『古事記』では、イザナギイザナミはまず儀式をしてから夫婦になっています。つまり、結婚よりも結婚式のほうが優先しているのです。他の民族の神話を見ても、そうでした。すべて、結婚式があって、その後に最初の夫婦が誕生しています。結婚式の存在が結婚という社会制度を誕生させ、結果として夫婦を生んできたのです。結婚式があるから、多くの人は婚約し、結婚するのです。結婚するから、子どもが生まれ、結果として少子化対策となります。

 

 

結婚がなくなれば、子どもの出生が少なくなり、子どもが成長して大人となり、老いていって次の世代へ繋がることもなくなります。すなわち、結婚は生命のサイクルの起点なのです。観光や外食と違って、結婚式は社会の維持のために絶対に必要です。冠婚業はけっして単なるサービス産業ではありません。日本という国を継続させていくエンジンのような存在です!
お三方のうちのどなたが自民党の総裁になられ、日本の首相となられても、ぜひ「GoToウエディング」を実施していただきたいと願っています。

 

2020年9月10日 一条真也