北陸祝賀式典   

一条真也です。
昨日、東京から金沢に入りました。
16日の午前中、サンレー北陸の新年祝賀式典を行いました。会場は、マリエールオークパイン金沢です。さまざまな部署から、総勢200名近くが参集しました。

f:id:shins2m:20200116105855j:plain入場のようす

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勇壮なふれ太鼓

f:id:shins2m:20200116105958j:plain最初は、もちろん一同礼!

f:id:shins2m:20200116110025j:plain全員で社歌を斉唱

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S2M宣言」を全員で唱和

 

まず、金沢紫雲閣の大谷支配人による「ふれ太鼓」で幕を明け、総務課の上本さんによる「開会の辞」に続いて全員で国旗・社旗拝礼の後に社歌を斉唱しました。それから営業推進部第1ブロックの上川ブロック長によって「経営理念」および「S2M宣言」を全員で唱和しました。

f:id:shins2m:20200116110529j:plainみなさんに新年の挨拶をしました

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社長訓示を行いました

 

そして、いよいよ「社長訓示」です。
わたしは、以下のような話をしました。
あけましておめでとうございます!
輝ける令和2年をみなさんととともに迎えることができて嬉しく思います。今年は、いよいよ東京オリンピックパラリンピックの年です。

f:id:shins2m:20200116110651j:plain改元の年は儀式の年でした

 

昨年は「平成」から「令和」への改元の年でした。
天皇陛下の御即位にあたり、日本文化の核ともいえる儀式群が斎行されました。10月22日、「即位の礼」の中心的な御儀たる「即位礼正殿の儀」が平安絵巻さながらに執り行われました。11月14日の夕方から15日の夜明けまでは、「大嘗祭」の中心儀式である「大嘗宮の儀」が皇居・東御苑で古式ゆかしく行われました。これは天皇陛下皇位継承に伴い、一世に一度だけ行う皇室伝統の大がかりな神事です。即位の礼大嘗祭と一連の儀式を合わせ、「御大礼」とも称されます。

f:id:shins2m:20200116110912j:plain「令和」の時代は「礼輪」の時代!

 

儀式産業そして儀式文化に携わる者として、いま、この時代に立ち会えた幸運に感謝するばかりです。新しい御代が誰にとっても平穏で、そして儀式の華ひらく時代となることを心より願う次第です。大嘗祭の終わった15日は、全国各地で七五三が行われました。「日本は儀式の国である」と痛感しました。儀式は「礼」を形にしたものです。「令和」の時代は「礼輪」の時代となるように思います。至るところで冠婚葬祭が大切にされ、「おめでとう」と「ありがとう」の声が行き交う社会が実現するのです。

f:id:shins2m:20200116111634j:plain昨年のわが社を振り返りました

 

さて、わがサンレーですが、昨年は 紫雲閣および三礼庵が全国で80館を超える中、中核施設である 小倉紫雲閣北九州紫雲閣が災害時に予定避難所として使用できるよう北九州市と協定を結ばれるなど新しい動きもありました。各種の新聞、雑誌、NHKニュースでも大きく取り上げられ、サンレーがどれだけ地域にとって欠かせない存在であるかが示されました。「人間尊重」という当社の経営理念のもと、地域貢献にもつながりますし、なにより相互扶助の精神をもとにした互助会の真骨頂でもあります。将来は、他の自治体ともぜひ連携したいです。

f:id:shins2m:20200116111737j:plain今後のビジョンを示しました

 

今年も引き続き紫雲閣の新規出店は続きます。2020年中に90館超、21年で100館になる予定です。わが社は現在、紫雲閣およに三礼庵をセレモニーホールから「コミュニティセンター」へ発展させているところです。「葬儀をする施設」ではなく「葬儀もできる施設」です。現在、「寺院消滅」が叫ばれていますが、従来の「寺院」が担っていたような地域のランドマークであり、人が集う場所を目指したいと思います。

f:id:shins2m:20200116112058j:plainコミュニティセンター化の推進を!

 

「コミュニティセンター」となった紫雲閣三礼庵では葬儀以外に、グリーフケアも積極的に実践していきます。悲嘆にくれるばかりではなく、遺族に寄り沿いつつ、悲しみを乗り越えるために読書会や映画鑑賞会、カラオケ大会といった新しいグリーフケアの形を提唱していきます。現在、わたしが副会長を務める一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会と、客員教授を務める上智大学グリーフケア研究所 とがコラボし、グリーフケアの専門資格認定制度を立ち上げ準備中です。わたしがプロジェクトチームの座長を務めまして来年秋には資格認定制度が動き出します。大きなミッションです。

f:id:shins2m:20200116112532j:plainラグビー日本代表との縁について

 

さて、2019年に最も活躍した「令和元年の顔」といえば、なんといっても、ラグビー日本代表の面々です。ワールドカップで初のベスト8入りした奮闘ぶりは、日本中に感動を与えました。じつは、彼らが心の支えにしていたのが、わたしが詠んだ歌であることを最近知って驚きました。「朝日新聞」の元旦の朝刊に出たのですが、わたしが15年前に詠んだ歌が、ラグビー日本代表強化委員長の藤井雄一郎さんの心に響いそうです。「おそれずに 死を受け容れて 美に生きる そこに開けりサムライの道」という歌なのですが、日本代表は、サムライの美しさを意識したチーム作りをしました。その中心にいた藤井さんは、インターネットで検索し、この歌にたどり着いたそうです。かつての武士が身につけていた潔さや謙虚さを教わる気持ちになったといいます。

f:id:shins2m:20200116111518j:plainワンチームで行こう!

 

わたしがサンレーの社員向けに詠んだ歌がラグビー日本代表の教化委員長の目にとまり、選手のみなさんを指導する一助になっていたことを知り、わたしは非常に驚きました。そして、大きな感動をおぼえました。やはり、この世は「有縁社会」であることを痛感しました。ラグビーという競技は「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」という思想に支えられています。「一人は全員のために、全員は一人のために」と訳されることが多いですが、これは互助会の根本理念である「相互扶助」そのものです。ラグビー日本代表は「ワンチーム」を合言葉に、サムライの精神で頑張りました。わたしたちもサンレーグループというワンチームで頑張りましょう。働く土地は違えど、「こころ」は1つです!

f:id:shins2m:20200116113245j:plain日の本に礼の光を放たんと こころ一つにさらに進まん

 

元旦、門司にある皇産霊神社で初詣をしました。歳旦祭の前には見事な初日の出を拝みました。わたしは、「やはり太陽ほど偉大なものはない!」と思いました。日本とは日の本、太陽の国です。サンレーとは日の光、太陽の会社です。日はまた昇る。今年こそ、大輪の花、大きな「礼の輪」を咲かせましょう。相互扶助の心と人生を肯定する冠婚葬祭に基づく互助会は永久に不滅です。新しい時代を高い志で切り拓いてゆきましょう!」と述べてから、わたしは「日の本に 礼の光を 放たんと こころ一つに さらに進まん」という道歌を披露し、盛大な拍手の中を降壇しました。

f:id:shins2m:20200116113559j:plain各種の表彰を行いました

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心をこめて表彰状をお渡ししました

f:id:shins2m:20200116113818j:plain葬祭ディレクター技能審査1級合格者の表彰

f:id:shins2m:20200116114031j:plainサンレーおもてなし賞」の表彰

 

また、各種表彰状を対象者のみなさんにお渡ししました。
まず、年間情報売上表彰の半田さんと山岸さん。それから、葬祭ディレクター技能審査1級合格者の備後さん。そして、「サンレーおもてなし賞」の中川さん、坂本さん、浦川さん。以上の方々に金一封を添えて表彰状をお渡ししました。

f:id:shins2m:20200116114358j:plain決意表明のようす

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東常務から受け取りました

 

その後、各責任者が部門別決意表明行いました。
続いて、「部門別決意表明」です。営業推進部の岸部長、 冠婚事業部の山下部長、紫雲閣事業部の青木部長、MSセンターの畑中チーフマネージャー、がそれぞれの決意を読み上げました。そして、北陸本部長である東常務が代表して決意書を渡してくれました。東常務から決意表明を受け取ったわたしは、「みなさんはサムライですか?サムライとは武士のことです。武士は食わねど高楊枝・・・・・・そして、武士に二言はありません。どうか、いま言ったことは必ず実行して下さい。わたしは、みなさんを信じています」と述べました。

f:id:shins2m:20200116115003j:plain和のこえ」で締めました 

f:id:shins2m:20200116115036j:plain最後は、もちろん、一同礼!

f:id:shins2m:20200116115053j:plain退場のようす

最後は、全員で手をつないでの「和のこえ」を営業推進部第3ブロックの小田ブロック長が音頭を取り、祝賀式典はめでたく終了。全員の心が1つになりました。

 

2020年1月16日 一条真也

雨が降れば傘をさす(松下幸之助)

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一条真也です。
言葉には、人生をも変える力があります。
今回の名言は、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助の言葉です。天理教の本部を視察したことがきっかけになって天理を悟ったという松下幸之助は、「無理をしないということは、理に反しないということ、言いかえると、理に従うことです」と語りました。

 

道をひらく

道をひらく

 

春になれば花が咲き、秋になれば葉が散る。草も木も、芽を出すときには芽を出し、実のなるときには実を結び、枯れるべきときには枯れていく。まさに自然の理に従った態度です。そして松下幸之助は、「人間も自然の中で生きている限り、天地自然の理に従った生き方、行動をとらなければなりません。といっても、それは、別にむずかしいことではない。言いかえると、雨が降れば傘をさすということです」と語りました。事業経営に発展の秘訣があるとすれば、やはりこの天地自然の理に従うことであるといいます。雨が降れば傘をさすごとくに、平凡なことを当たり前にやるということにつきるというのです。 

 

松下幸之助は言います。事業というものは天地自然の理に従って行なえば、必ず成功する。いいものをつくって、適正な値段で売り、売った代金はきちんと回収する。簡単に言えば、それが天地自然の理にかなった事業経営の姿である。そしてその通りにやれば、百%成功するものだ。成功しないとすれば、それは品物が悪いか、値段が高いか、集金をおろそかにしているか、必ずどこかに天地自然の理に反した姿があるからである。孫子は「彼を知り己を知らば、百戦してあやうからず」と言っているが、それが天地自然の理にかなった戦の仕方だからである。そのように経営の神様は言いました。
なお、この名言は、『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)の中で紹介されています。

 

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2011/07/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

2020年1月16日 一条真也

全互連新年行事  

一条真也です。
14日、スターフライヤーに乗って、今年初の東京出張をしました。全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)の新年行事に参加するためで、会場は亀戸の「アンフェリシオン」です。

f:id:shins2m:20200114134303j:plainアンフェリシオンの入口前で

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インフォメーション

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理事会に出席しました

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前会長の挨拶をしました

 

前会長として理事会に参加しました。
14時から理事会が開かれました。理事会冒頭の前会長挨拶では、「あけましておめでとうございます。昨年は改元の年でしたが、一連の即位儀礼で儀式の重要性が見直された年でした。一昨日、次女が新成人となり、わたしも成人式に来賓で参加しましたが、『儀式なくして人生なし』ということを再確認しました。今年はTOKYO2020の年ですが、わが社もアップデートしました。サンレー沖縄の社長に弟の佐久間康弘が就任しました。みなさん、どうぞ、御指導ご鞭撻のほどをお願いいたします。わたし自身は、業界におけるグリーフケアの啓蒙と普及に全力で挑む所存です。今年も、よろしくお願いいたします!」と述べました。

f:id:shins2m:20200114153642j:plain経営者研究会のようす

 

理事会終了後、15時30分からは「経営者経営研究会」が開催されました。テーマは「働き方改革における取り組みについて」した。日頃から関心のあるテーマでしたので、大変勉強になりました。

f:id:shins2m:20200115114957j:plain新年賀詞交換会で乾杯の音頭を取りました

f:id:shins2m:20200114190837j:plainラグビー日本代表との縁を話しました

 

17時からは新年賀詞交歓会でした。杉山会長の挨拶の後、全互協の山下会長、互助会保証の寺坂社長の来賓挨拶を頂戴し、それから、わたしが乾杯の音頭を取りました。登壇したわたしは、ブログ「『朝日新聞』元旦朝刊に庸軒道歌が紹介されました」の話題に触れて、「昨年最も活躍した『令和元年の顔』といえば、なんといっても、ラグビー日本代表の面々です。ワールドカップで初のベスト8入りした奮闘ぶりは、日本中に感動を与えました。じつは、彼らが心の支えにしていたのが、わたしが詠んだ歌であることを最近知って驚きました」

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朝日新聞」2020年1月1日朝刊

 

わたしは、「『朝日新聞』の元旦の朝刊に出たのですが、わたしが15年前に詠んだ歌が、ラグビー日本代表強化委員長の藤井雄一郎さんの心に響いそうです。『おそれずに 死を受け容れて 美に生きる そこに開けりサムライの道』という歌なのですが、日本代表は、サムライの美しさを意識したチーム作りをしました。その中心にいた藤井さんは、インターネットで検索し、この歌にたどり着いたそうです。かつての武士が身につけていた潔さや謙虚さを教わる気持ちになったといいます」と述べました。

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朝日新聞」2020年1月1日朝刊

 

続いて、わたしは「わたしがサンレーの社員向けに詠んだ歌がラグビー日本代表の教化委員長の目にとまり、選手のみなさんを指導する一助になっていたことを知り、わたしは非常に驚きました。そして、大きな感動をおぼえました。やはり、この世は『有縁社会』であることを痛感しました」と述べました。

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全互連もワンチームで行きましょう!

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カンパ~イ!

 

ラグビーという競技は「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」という思想に支えられています。「一人は全員のために、全員は一人のために」と訳されることが多いですが、これは互助会の根本理念である「相互扶助」そのものです。ラグビー日本代表は「ワンチーム」を合言葉に、サムライの精神で頑張りました。わたしは「わたしたちも全互連というワンチームで頑張りましょう!」と述べてから、乾杯の発声をしました。

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新年賀詞交歓会のようす

f:id:shins2m:20200114184448j:plain最後は大石副会長が締めました 

 

乾杯後は楽しい歓談の時間となりました。アンフェリシオンの美味しい料理も堪能しました。特に、ステーキが絶品でした。最後は大石副会長による中締めの挨拶&一本締めでフィナーレを迎えました。全互連は、冠婚葬祭互助会業界の保守本流であります。素晴らしい仲間たちのいるわたしは本当に幸せです。その帰り、亀戸から総武線で四ッ谷に出ると、上智大学の上空に見事な月が上っていました。明日は東京駅から北陸新幹線で金沢へ向かいます。

 

2020年1月14日 一条真也

同じ風でも  

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夏に吹く涼風。
冬に吹く寒風。
どちらも冷たい風であることに変わりはないが、人々の受け取り方はずいぶん違う。(『後懐玉』)

 

一条真也です。
空海は、日本宗教史上最大の超天才です。
「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっています。「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」の異名が示すように、空海は宗教家や能書家にとどまらず、教育・医学・薬学・鉱業・土木・建築・天文学・地質学の知識から書や詩などの文芸に至るまで、実に多才な人物でした。このことも、数多くの伝説を残した一因でしょう。

 
超訳空海の言葉

超訳空海の言葉

 

 

「一言で言いえないくらい非常に豊かな才能を持っており、才能の現れ方が非常に多面的。10人分の一生をまとめて生きた人のような天才である」
これは、ノーベル物理学賞を日本人として初めて受賞した湯川秀樹博士の言葉ですが、空海のマルチ人間ぶりを実に見事に表現しています。わたしは『超訳 空海の言葉』(KKベストセラーズ)を監訳しました。現代人の心にも響く珠玉の言葉を超訳で紹介します。

 

2020年1月14日 一条真也

「パラサイト 半地下の家族」

一条真也です。
13日、ようやく今年最初の映画鑑賞ができました。
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」です。



 ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『母なる証明』などのポン・ジュノが監督を務め、第72回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した人間ドラマ。裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる物語を描く。ポン・ジュノ監督作『グエムル -漢江の怪物-』などのソン・ガンホをはじめ、『新感染 ファイナル・エクスプレス』などのチェ・ウシク、『最後まで行く』などのイ・ソンギュンらが出演」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる」

 

この作品、映画通の友人が昨年末に東京での先行上映で観ていました。その人から、「パラサイト凄かったです。評判通り、予測もつかない展開で、とても考えさせられる映画でしたね。ネタバレするとつまらないので1月にぜひ劇場へ!」とLINEにメッセージが届きました。というわけで、今日ようやく観たわけですが、その人が言う通り、予測もつかない展開の連続でしたね。ブラック・ユーモア映画というふれこみですが、とても良くできたサスペンス映画だと思いました。



映画通の友人は「予測もつかない展開で、とても考えさせられる映画」と表現していましたが、確かに「考えさせられる映画」でした。それは、ずばり貧富の問題、あるいは格差社会の問題です。この映画には富める家族と貧しい家族が極端なコントラストで描かれています。貧しい家族は全員が失業中ですが、彼らが何の能力もないのかというと、そんなことはありません。兄は英語の家庭教師、妹は美術の家庭教師、父は運転手、母は家政婦として、それなりに高いスキルを持っています。こんな人々がなかなか就職できないというのも社会が悪いのでしょうか?



富める者と貧しい者との対比といえば、日本映画の名作「天国と地獄」(1963年)を思い出します。巨匠・黒澤明監督による傑作サスペンスです。ナショナル・シューズの権藤専務(三船敏郎)は、自分の息子と間違えられて運転手の息子が誘拐され、身代金3000万円を要求される。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して3000万円を用意する。無事子どもは取り戻したが、犯人は巧みに金を奪い逃走してしまい、権藤自身は会社を追われてしまいます。逮捕された犯人は、高台に建つ権藤の豪邸を見上げているうちに強い憎悪を抱いたと告白するのでした。



 ブログ「アス」で紹介したジョーダン・ピール監督のスリラー映画のことも連想しました。休暇で海辺にやって来た一家が、自分たちにそっくりな人物に遭遇するのですが、彼らはアメリカ合衆国の地下に棲息する人間ならざるものたちでした。映画「アス」では、地上に住む「人間」と地下に住む「人間もどき」との対立構造を描きましたが、「パラサイト 半地下の家族」でも同じ構造を見ることができます。なぜなら、半地下とは地上ではないからです。ネタバレにならないように注意深く書くと、この映画には半地下だけでなく地下に住む人間も登場します。地上・半地下・地下という三層構造になっているのですが、その最大の違いは太陽光線が届くかどうかです。地上には太陽光線が降り注ぎますが、半地下では少しか陽の光が届かず、地下にはまったく届きません。



異色の哲学者・中村天風は「太陽の光線は、美人の顔も照らせば、犬の糞も照らしている」とは強烈なインパクトのある言葉を残しています。天風が言いたかったのは、「太陽は万物にとって平等である」ということです。そう、太陽はあらゆる地上の存在に対して平等ですね。わが社の社名は「サンレー」ですが、万人に対して平等に冠婚葬祭を提供させていただきたいという願いを込めて、太陽光線(SUNRAY)という意味を持っています。ただし、太陽光線が降り注ぐのはあくまで地上であり、「太陽は万物にとって平等である」という言葉の前には「地上において」という前置きが付くわけです。地下というのは「地獄」のメタファーにほかなりません。キリスト教の死後の世界は、天国・煉獄・地獄という三層構造になっていますが、映画「パラサイト 半地下の家族」の地上・半地下・地下の三層構造は「不平等な世界」を見事に表現しています。


たしかに、わたしも「この世は不平等だ」と感じることが多々あります。裁判中にもかかわらず、海外に逃亡したレバノン人経営者も、恋人と破局したわずか2カ月後にTVのお見合い番組の企画に乗る日本人経営者も、ともに資産が1000億円だそうですが、こういう連中に巨額の富が集中するには、わたしのような経営者の端くれでもやはり強い違和感を感じます。ましてや、その日の食事にも困っているような人から見たら、格差社会を呪いたくなる気持ちもわかります。「パラサイト 半地下の家族」はカンヌ映画祭のグランプリである「パルムドール」を受賞していますが、前年にはブログ「万引き家族」で紹介した日本映画が同賞を受賞しています。カンヌの審査員というのは、アジアの貧しい家族の物語が好きなんですかね?

香をたのしむ』(現代書林)

 

万人に対して平等に冠婚葬祭を提供させていただきたいと願って「サンレー」という社名を持っているわが社のミッションは「人間尊重」です。そこでは「人間の尊厳」というものが重要にあります。「パラサイト 半地下の家族」では、ある人物が悪臭を放つことを指摘され、プライドをズタズタにされます。そして、その人物はある破滅的な行動を起こしてしまうのですが、その原因はすべて「くさい」と言われて人間の尊厳を損なわれたことにありました。拙著『香をたのしむ』(現代書林)で、わたしは悪臭について書きましただいたい耐えられないほどの悪臭というのは、糞便か遺骸が放つ臭いに大別できます。そこでいつも思い起こすのは、アウシュビッツなどの強制収容所で犠牲になったユダヤ人たちのことです。わたしは人類最大の愚行であるナチスユダヤ人虐殺について関心が深く、さまざまな本を読み漁っています。

 

アウシュヴィッツの音楽隊

アウシュヴィッツの音楽隊

 

 

その中に、シモン・ラックスとルネ・クーディーによる『アウシュビッツの音楽隊』というノンフィクションがあります。その本で知ったのですが、各地のユダヤ人たちはすし詰めの列車に乗せられて収容所へと送られてきましたが、車両ごとに便所がわりのタライが載せられていました。当然ながらタライは悪臭を放っていましたが、その底には蓋が付いており、その蓋を外して中の糞便を空にする係がいたそうです。それは、もう鼻がひんまがるほどの臭いだったとか。本を読んでいるわたしまで気分が悪くなるようでしたが、そんな劣悪な環境に閉じ込められて収容所に送られ、最後は殺されたユダヤ人たちの無念さを思うと涙が出てきました。

 

縞模様のパジャマの少年

縞模様のパジャマの少年

 

 

もう1冊、印象深い本があります。映画化もされたジョン・ボインの寓話『縞模様のパジャマの少年』という本です。強制収容所のすぐ近くにドイツ人である所長一家が住んだのですが、収容所の煙突から時々流れてくる煙の悪臭がひどいという描写がありました。その悪臭とは、もちろんユダヤ人たちの遺骸を焼いた臭いです。人間は生きている間は糞便の臭いを撒き散らし、死んでからは死臭を撒き散らすわけです。いずれにしても、わたしは匂いというものが人間の尊厳に深く関わっていることを感じずにはおれませんでした。



介護を受ける必要のある高齢者の最大の悩みは、自身の大小便の臭いだそうです。自分が不快だというのではなく、その臭いを他人から嗅がれることが非常な屈辱であるというのです。「匂い」の問題は、「人間尊重」と直結しているのです。ちなみに、「パラサイト 半地下の家族」は韓国映画ですが、現在の日韓の関係は最悪です。
以前、在日朝鮮人の差別問題の背景には、キムチなどの料理に入っているニンニクの匂いの問題が大きいと聞いたことがあります。キムチの匂いが漂う人を「くさい」と言って差別するわけです。それで、差別解消のために無臭のキムチを開発した人がいるそうです。それほど、「匂い」は人間の尊厳に関わっています。くれぐれも他人に対して「口臭」とか「加齢臭」などを露骨に指摘してはなりません。

 

2020年1月13日 一条真也

 

北九州の成人式 

一条真也です。
13日の「成人の日」の前日となる12日、何かと話題の北九州市の成人式が行われました。来賓として招待されたわたしは、会場の北九州メディアドームを訪れました。今年の北九州市では9576名が新成人となりましたが、今日はあいにくの雨でした。

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会場となった北九州メディアドーム

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来賓受付前で

ブログ「成人式 IN 北九州」で紹介したように、3年前にも、わたしは来賓で招待されました。そのときは「天下布礼」の幟を持って参加しましたが、今回は幟は持参しませんでした。来賓席では、小倉北区の北里区長とご一緒でした。北里区長のお嬢さんとわたしの次女が同級生で、以前から親しくさせていただいています。

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来賓席にて

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小倉北区の北里区長と

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会場内のようす

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会場内のようす

 

3年前を思い起こすと、予想していたのとはまったく違い、会場内の新成人たちはみな静聴していました。会場に入る前は「儀式を壊す者がいたら、俺が許さん!」と意気込んでいたのですが、杞憂でした。これまでは先に式典が行われて、その後にアトラクションでしたが、今年はアトラクションが先で、式典が後でした。

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今年はアトラクションが先でした

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「令和最初の大抽選会」のようす

 

11時半から開始されたアトラクションでは「令和最初の大抽選会」が行われましたが、ご当地ヒーローであるキタキュウマンが司会を務めました。阪急フェリーの大阪行きペア券が当たった新成人の男性に、キタキュウマンが「大阪ではどこに行きたいですか?」と聞いたところ、彼がすかさず「飛田新地です!」と叫んだのには笑いました。こういう切り返しが即座にできるとは、頭の回転が速い証拠ですね。

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大抽選会のラストは・・・

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われらが松柏園ホテルのディナー&宿泊券!!

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俺に当ててくれ!!

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松柏園のディナー&宿泊券、大人気!!

 

「令和最初の大抽選会」のラストは、われらが松柏園ホテルのディナー&宿泊券でした。賞品が発表されると同時にものすごい歓声が起こって、わたしはニンマリしました。会場で最も「当ててくれ!」パフォーマンスをした人にカメラがズームアップしていき、最後に当選者にフォーカスする抽選会だったのですが、みなさん、ものすごくノッてパフォーマンスをしてくれました。当選したのは真面目そうな青年でしたが、とても嬉しそうで良かったです。

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三村監督のビデオメッセージ

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泉谷しげるさんのビデオメッセージ

 

大抽選会の後は、「航路(みらい)をひらく君たちへ」として、北九州市出身の有名人たちによるビデオ・メッセージが上映されました。何人か登場しましたが、わたしの知らない人ばかりでした。でも、親しくさせていただいている映画監督の三村さん、ミュージシャンの泉谷しげるさんのメッセージは興味深く聴きました。ちなみに、映画「君は一人ぼっちじゃない」完成披露試写会」で紹介したように、わたしは三村監督の映画に出演した経験があります。やはり舞台は北九州でした。

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12時から式典がスタート!

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最初は国家を斉唱♪

f:id:shins2m:20200112120641j:plain次に市歌を斉唱♪


アトラクションの後は、式典が12時から開始。最初に国家、市歌を斉唱した後、北九州市長の祝辞、続いて来賓代表として北九州市会議長の祝辞がありました。3年前と同様に今年も、新成人たちは礼儀正しく清聴していました。

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北橋市長による祝辞

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新成人にお祝いのメッセージを述べました

 

市長と市会議長の祝辞の後は、男女2人の新成人が、両親や周囲の人々への感謝の言葉を述べました。成人式に限らず、結婚式でも葬儀でも、通過儀礼というのはすべて「感謝」の心を表す場なのです。男性は「最後の最後に付き合っている彼女に『大好きだよ!』と伝えたいです」と述べましたが、爽やかでとても好ましく感じました。突然のサプライズに彼女も喜んだことでしょうね。

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挨拶する新成人

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挨拶する新成人

 

冠婚葬祭業であるわが社にとって、成人式はビッグイベントです。各地で運営するホテルや結婚式場でも振袖のレンタルを行っており、数多くの新成人のみなさんのお手伝いをさせていただきます。当日は早朝からヘアメークや着付けを行うため、現場スタッフはほぼ徹夜で準備からお見送りまでを行います。

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新成人の挨拶を聴きました

 

しかし、ここ数年来、北九州市の成人式は「派手すぎる」と注目を浴びてきました。その様子はテレビのワイドショーを通じて全国に流されました。金銀の羽織袴や花魁姿で傍若無人に振る舞う新成人が話題を呼びました。その異様な姿が多くのメディアで取り上げられ、あろうことかインターネット上では「安定のヤンキー文化」「修羅の国」などと正月の風物詩(?)として拡散していました。まったく、情けないかぎりでした。

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今年の実行委員会メンバーが勢揃い!

 

実際に彼らに接すると、服装は派手でも顔を見ると気の良さそうな若者が多かったです。わたしは、「これは仮装大会のようなもので、ハロウィーンと同じだな」と思ったものです。でも、暴力団追放運動がようやく実を結んだ北九州市にとっては、ヤンチャな彼らの姿が報道されることは大きなイメージダウンとなります。はっきりと言わせてもらいます。わたしどもがお手伝いをさせていただいているお客様に「修羅の国」のようなスタイルをした方は1人もいません。早朝眠い目をこすりながら家族とともに来館され、着付け後は晴れやかな笑顔で家族や友人たちと記念撮影をする姿はとても微笑ましいものです。

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3年前のようす

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3年前のようす

修羅の国」は新成人たちだけのせいではありません。「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます」という成人式の趣旨を無視し、「稼ぐこと」に特化した一部の貸衣装業者による「間違えた差別化」がこのような現象を起こしています。また一部の事象のみを面白おかしく報道するマスメディアの姿勢にも問題があります。いずれにせよ、大人たちの商売の都合で、一生に一度の晴れの日を「修羅の日」にしてはなりません。

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わが社が仕掛けた「おそうじ大作戦」

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今年は雨で中止でした。残念!

 

数年前、わたしは市の青少年課に連絡し、成人式の正常化への全面協力を訴えました。伏線として、かつて沖縄の「荒れる成人式」を、わが社の新成人が清掃活動によって変えた実績がありました。そして北九州でも、会場周辺で取り組む「おそうじ大作戦」を開始。オリジナルデザインのゴミ袋も製作、市に寄贈しました。今年も、式典終了後に「おそうじ大作戦」が予定されており、特に今年は初の七区対抗ということで、大いに盛り上がるはずでしたが、あいにくの雨で中止になってしまいました。まことに残念です。

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新成人のみなさん、おめでとう!

 

一方、雨で修羅のいでたちで騒ぐ輩の姿はまったく見られませんでした。駆けつけたマスコミも肩すかしを喰った格好になりましたが、いい気味です!(笑)今年は、例のど派手衣裳もほとんど見当たりませんでした。確実に、北九州の成人式が変わってきました。儀式に関わる者として、嬉しいかぎりです。

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次女の晴れ着姿が眩しかったです!

 

ちなみに、北九州メディアドームには、わたしの次女の姿もありました。次女は東京の大学に通っているのですが、今年、新成人となったのです。娘の晴れ着姿は、やはり眩しく、感慨深かったです。改めて、成人式とは親にとっても大切なものであると痛感しました。次女の中学の卒業式のとき、わたしが父兄代表として謝辞を述べたことを思い出しました。やはり、セレモニーはいいものです。記憶に残ります。儀式なくして人生なし!

 

2020年1月12日 一条真也

『ストーナー』   

一条真也です。
125万部の発行部数を誇る「サンデー新聞」の最新号が出ました。同紙に連載中の「ハートフル・ブックス」の第141回が掲載されています。今回は、『ストーナージョン・ウィリアムズ著/東江一紀訳(作品社)を取り上げました。

f:id:shins2m:20200108203622j:plainサンデー新聞」2020年1月11日号 

 

明けまして、おめでとうございます。今年最初にご紹介する本は、わたしが昨年読んだ本の中で最も感動した小説です。作家・乙川優三郎氏の小説『この地上において私たちを満足させるもの』に登場する作品なのですが、実在の小説であり、しかも半世紀も前に書かれています。第1回日本翻訳大賞の「読者賞」を受賞しています。静かな物語ですが、魂が揺さぶられるような素晴らしい作品でした。

 

著者は1922年8月29日、米国テキサス州クラークスヴィル生まれ。軍人や学者の生涯を送り、生涯に4冊しか小説を書きませんでした。本書はその3冊目の作品です。本書の帯には、俳優トム・ハンクスの「これはただ、ひとりの男が大学に進んで教師になる物語にすぎない。しかし、これほど魅力にあふれた作品は誰も読んだことがないだろう」という言葉が紹介され、さらには「半世紀前に刊行された小説が、いま、世界中に静かな熱狂を巻き起こしている。名翻訳家が命を賭して最期に訳した、“完璧に美しい小説”」と書かれています。

 

一段組で330ページに少し満たないこの長編を読み終えると、不思議な感覚にとらわれます。よく「読書で他人の人生を疑似体験する」などと言いますが、それが完全な形で実現されたように感じるのです。わたしは自らの人生とは別のウィリアム・ストーナーという人物の人生を生きたかのような錯覚に陥りました。わたしだけでなく、多くの読者がそのような体験をしたのではないでしょうか。うまくいったのか、うまくいかなかったのか、よくわからない人生。職場の仲間とうまくやれなかったこと。結婚相手とうまくやれなかったこと。ストーナーの人生は、あらゆる人々の共感を呼ぶでしょう。なぜなら、時代や場所は違えど、人生とはみな似たりよったりだからです。

 

わたしは、この小説はグリーフ文学の名著であると思いました。この小説を読めば、誰でも「自分の人生は生きるに値するものだろうか」「自分の人生は生きるに値したことがあっただろうか」という思いが沸々と湧いてきて、大きな悲しみに包まれるでしょう。「訳者あとがきに代えて」でも、担当編集者の布施由紀子氏が「とても悲しい物語とも言えるのに、誰もが自分を重ねることができる。共通の経験はなくとも、描き出される感情のひとつひとつが痛いほどによくわかるのだ。そこにこの作品の力があると思う」と、本書が持つ魅力の本質に触れています。なお、あまりに美しい訳文を紡いだ東江氏は癌のため、本書の刊行直前に他界されました。ご冥福をお祈りいたします。

 

ストーナー

ストーナー

 

 



2020年1月11日 一条真也