トムは60代のヒーロー!

一条真也です。
パリ五輪の閉会式が11日(日本時間12日)、陸上などが行われたフランス最大級のスタジアム「スタッド・ド・フランス」で行われました。ブログ「パリ五輪の閉会式に思う」に書いたように、開会式とはうって変わって素晴らしいセレモニー&ショーでした。


ワイヤーで降臨したトム・クルーズ

 

華やかな閉会式の中でひときわ輝いたのが、ハリウッドの大スターであるトム・クルーズ(62)の登場でした。フランスを代表するバンド「フェニックス」を中心としたライブショーの後、オリンピック賛歌の演奏が行われ、オリンピック旗が掲揚台から降ろされました。アンヌ・イダルゴ パリ市長に旗が手渡され、国際オリンピック委員会・バッハ会長を経由して次回の開催地アメリカ・ロサンゼルスのカレン・バス市長に渡されました。ここからアメリカのショーが始まります。俳優のトム・クルーズがスタジアムの屋根の上に登場し、ワイヤーを使ってグラウンドに降り立つと、選手たちも大興奮でトムを迎えました。


バイクで疾走するトム・クルーズ

 

トム・クルーズはバス市長から旗を受け取り、バイクに乗って姿を消します。ここで映像に切り替わり映画「ミッション:インポッシブル」さながら、トムがアメリカに旗を届ける様子が流された。まさにスーパースター、トム・クルーズの面目躍如といったところでした。そしてスタジアムには、今大会競泳で4冠に輝いたレオン・マルシャン(22)が、小さなランタンに入った聖火を持って入ってくる。バッハ会長や選手たちとともに、フッと息を吹きかけると、聖火は消えた。花の都・パリで100年ぶりに開催された五輪はこうして幕を閉じた。 ブログ「パリ五輪の開会式に思う」に詳しく書いたように、開会式はセレモニーとしてもショーとしても最低でしたが、閉会式はセレモニーとしてショーとしても良かったと思います。

ヤフーニュースより

 

トム・クルーズは60代のヒーローです。ブログ「還暦のトム・クルーズ」に書いたように、2022年7月3日にトム・クルーズは60歳の誕生日を迎えました。ちなみに、翌4日はアメリカ独立記念日「7月4日に生まれて」(1989年)で初のオスカー候補入りを果たした彼は、この独立記念日の前日で60歳になりました。わたしの誕生日が来るたびに、いつもしつこいぐらいに言っているのが、トム・クルーズがわたしの1つ年上で、ブラッド・ピットジョニー・デップが同い年、そして、キアヌ・リーブスが1つ年下ということです。「それで?」と言われれば、困ってしまいますが。(苦笑)この華麗な顔ぶれの中でも、わたしの一番のお気に入りはトム・クルーズで、彼が出演する多くの映画を観てきました。

猿渡さんは、「彼自身は、自分が高齢者と呼ばれる年齢に近づいていることを、まるで意識していないようなのだ。いや、逆に、意識しているからこそ、できるうちになるべく多く大作映画のヒーローを演じたいと思っているのかもしれない。年齢を重ねていく中で、あえて見た目の冴えない中年男の役とか、困難に直面した実在の人物などを選び、演技力を証明しようと(そしてあわよくば賞をもらおうと)するハリウッド俳優は多いが、クルーズはそんなことに興味はない」と書いています。

 

過去にはポール・トーマス・アンダーソン監督の「マグノリア」やコメディミュージカル映画「ロック・オブ・エイジス」で助演として良い味を見せたトム・クルーズですが、この10年はずっとアクションやSF大作の主演に専念してきています。現在、ブログ「トップガン マーヴェリック」で紹介した2022年日本公開の映画が全世界で大ヒットしましたが、同作でも変わらぬアクションスターぶりを見せました。パイロットという職業に対するマーヴェリックの愛情とプライドには感銘を受けました。無人機が主流となる戦闘機の世界で、今やパイロットという職業が絶滅しつつあると、サイクロン海軍中将(ジョン・ハム)は冷徹にマーヴェリックに告げます。しかし、「今は、まだ存在している」と言って、マーヴェリックは任務に就くのでした。


トップガン マーヴェリック」という映画そのものが、トム・クルーズの映画俳優という仕事への愛情とプライドを示しています。この作品のキャッチコピーは「誇りをかけて、飛ぶ」ですが、トムはにとっては「誇りをかけて、演じる」だったのです。この作品は2019年に製作されました。直後に新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、何度も公開が延期されています。ついにはネット配信に入れるという案も何度も出たそうですが、トムは「この映画は、どうしても劇場で観てほしい」と譲らなかったそうです。結果は、映画館での映画鑑賞という営みがこの上なく素晴らしいものだということを世界中で証明しました。トムは配信系オリジナル作品に1度も出演してない最後のスクリーン俳優です。「トム・クルーズがいる限り “映画体験” は絶滅しない」といった声も多く、「トップガン マーヴェリック」は確実に映画体験の価値を高めました。

 

 

わたしは、世界中の俳優たちの中でも、トム・クルーズを心からリスペクトしています。それは、ブログ『トム・クルーズ キャリア、人生、学ぶ力』で紹介した本を読んだことがきっかけでした。トム・クルーズ難読症失読症=ディスクレシア)であり、それを乗り越えたことが紹介されます。トムはこの障害について隠そうとしませんでした。同書には、「先達から現場で学ぶ力」として、20代後半~30代のトムが大先輩から徹底的にさまざまなことを吸収した様子が描かれています。


トップガンと同じ1986年に公開されたハスラー2」(原題は〝The Color Of Money”)で、トムはベテラン俳優のポール・ニューマンと共演します。二人はとても親密な関係を築き、トムはニューマンから「成功に惑わされない心の余裕」を学びました。続いて、トムはもう一人の大先輩との共演を果たします。ダスティン・ホフマンです。名作レインマン(1988年)でホフマンと共演したトムは、何を学んだのでしょうか。それは、「映画にとって何がベストかを知る」ということ。


「相手の話をよく聞く」というのがトムの特質ですが、それは難読症の経験とも無縁ではないでしょう。わたしは、ここに「禍転じて福となす」というか「何事も陽にとらえる」というか、自身の障害をプラスに転じきったトムの前向きな生き方に深い感動をおぼえました。ちなみに、「ハスラー2」でポール・ニューマンは生涯初めてとなるアカデミー主演男優賞を受賞しました。「レインマン」でも、ダスティン・ホフマンはアカデミー主演男優賞を受賞したのみならず、作品賞、監督賞、脚本賞の主要部門を独占しています。二人とも、トムと共演したことによって、俳優として頂点を極めたのです。トムは、自分に「学び」を与えてくれた先輩たちに最高のお礼をしたのでした。



同書を読んだのは、わたしが50歳のときでした。その頃、50代に突入したことにショックを受け、「自分はまだ何も成し遂げていない」「もう50代だから、若くはない」とネガティブな感情にとらわれていたのですが、トム・クルーズの生き様を知り、そんな自分が恥ずかしくなりました。「これからは、トムのように前向きに自分のキャリアを自分自身で作ろう」と誓ったものでした。そして、そのためには、トムのように「他者から学ぶ」ということを大切にしたいとも思いました。現在61歳であるわたしは、1歳年長のトム・クルーズをこれからも「60代のヒーロー」として応援し続けていきたいです!

 

2024年8月13日 一条真也