世に生を得るは事を成すにあり
(坂本龍馬)
一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています
今回の名言は、坂本龍馬(1836年~1867年)の言葉です。彼は、幕末の志士であり、実業家。貿易会社と政治組織を兼ねた「社中」(一般的には亀山社中)、「海援隊」を結成。薩長連合、大政奉還の成立に尽力し大きく貢献したとされています。幕末動乱期の最大のヒーローとして、高い人気を誇っています。33歳没。
「世に生を得るは事を成すにあり」は、坂本龍馬が「志」というものの本質を語った言葉です。「志」は「死」や「詩」と深く結びついています。いずれも「シ」と読みます。日本人は辞世の歌や句を詠むことによって、「死」と「詩」を結びつけました。死に際して詩歌を詠むことは、おのれの死を単なる生物学上の死に終わらせず、形而上の死に高めようというロマンティシズムの表れでしょうか。
そして、「死」と「志」も深く結びついていました。死を意識し覚悟して、はじめて人はおのれの生きる意味を知ります。龍馬のこの言葉こそは、死と志の関係を解き明かした言葉にほかなりません。また、山本常朝の『葉隠』には「武士道といふは死ぬ事と見つけたり」という句があります。これは、武士道とは死の道徳であるというような単純な意味ではありません。
龍馬の写真の前で日本刀を持つ
武士としての理想の生をいかにして実現するかを追求した、生の哲学の箴言なのです。このように、もともと日本人の精神世界において「死」と「詩」と「志」は不可分の関係にあったのです。龍馬の言葉に触れると、その生き様とあわせて、「何のために生きるのか」といったことを考えずにはおれません。今回の坂本龍馬の名言は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。
2024年9月12日 一条真也拝