「東京公園」

一条真也です。
いよいよ、今年も残りわずかですね。ブログ「『西日本新聞』シネマ連載開始!」で紹介したように、わたしは、今年8月から「西日本新聞」に映画をテーマにしたエッセーを「佐久間庸和」の本名で連載しました。連載記事については、権利の関係で紙面掲載後1ヵ月間はウェブ公開ができません。その時期がすでに過ぎましたので、晴れてここに公開いたします。第9回目は「東京公園」を取り上げましたが、見出しは「青山監督を再確認したい」です。

西日本新聞」2023年11月23日朝刊

 

青山真治という映画監督がいました。1964年生まれですから、わたしの1学年下です。北九州市の出身です。門司高校から立教大学に進み、映画研究会に所属。元東京大学長で映画評論家の蓮實重彦先生を師と仰ぎ、深い影響を受けたそうです。卒業後はフリーの助監督として、黒沢清井筒和幸といった新鋭監督をバックアップしました。

 

青山監督は故郷である門司を舞台にした「Helpless(ヘルプレス)」で商業映画デビューを果たしました。代表作である「EUREKA(ユリイカ)」は、カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞します。さらに同作を小説化し、2001年に三島由紀夫賞を受賞する多才ぶりも見せました。ところが昨年3月、57歳の若さで亡くなりました。わたしとの対談企画が某広告代理店から出ていましたが、幻に終わりました。まことに残念です。

 

その青山監督の映画に「東京公園」(2011年)があります。ロカルノ国際映画祭で金豹賞(審査員特別賞)を受賞しています。主人公であるカメラマン志望の大学生・光司を三浦春馬さん(2020年に死去)、彼が写真を撮るミステリアスな女性を井川遥さんがそれぞれ演じています。光司は東京の公園を巡り、家族写真を撮りためていました。ある日、シャッターを切っていると、突然現れた男に難癖をつけられ、光治はその男に連絡先を教えます。しばらくして、男は光治に奇妙な依頼をしてきました。娘連れで公園を散歩する女性を尾行し、その写真を撮ってほしいという内容でした。

 

「東京公園」には、さまざまな「愛」のかたちが登場します。しかし、わたしの心に最も強く残ったのは、三浦さん自身の魅力でした。当時の日本人男性の中で一番美しいと思えるぐらい、彼は輝いていました。銀幕の中で、三浦さんは永遠に生き続けています。北九州国際映画祭では「青山真治監督追悼特集」として「東京公園」の上映もありました。今は亡き青山真治監督と三浦春馬さんが確かに存在したことを確認できました。



2023年12月28日 一条真也