小倉昭和館復活! 

一条真也です。
14日、とても嬉しい出来事がありました。ブログ「さよなら、小倉昭和館」で紹介したように昨年8月10日夜に発生した旦過市場の火事によって老舗映画館の小倉昭和館が焼失しましたが、多くの昭和館の想いがかなって焼失前と同じ場所で再建され、そのこけら落としに参加したのです。樋口智巳館主とも喜びの再会を果たしました。


復活した「小倉昭和館」の前で


多くのお客さんが行列を作っていました


ベンチに座って「本当に良かった!」とつぶやく


わたしが贈った花が入口に飾られていました


歓びの樋口館主と


ロビーには伝説の看板が・・・・・・


劇場内のようす


笑福亭鶴瓶シートに座りました


以前のように売り子をする樋口館主


こけら落としの挨拶をする樋口館主

 

この日は、前日の13日からはじまった「北九州国際映画祭」の特集上映「帰れ北九州へーー青山真治の魂と軌跡」が、再生した小倉昭和館こけら落としとして開催され、その1作品目として上映された日本映画「共喰い」(2013年)を鑑賞しました。第146回芥川賞受賞を受賞した田中慎弥の小説を、『EUREKA』『東京公園』の青山真治監督が映画化。山口県下関市を舞台に、高校生の遠馬、暴力的な性癖を持つ父、その愛人らが繰り広げるひと夏の出来事を、原作とは異なる映画オリジナルのエンディングとともに描き出した作品です。主人公の遠馬を演じるのは、撮影当時に若手俳優ホープだった菅田将暉です。


再建のための寄付をさせていただきました

 

ブログ「小倉昭和館支援TV取材」で紹介したように、今年6月15日、松柏園ホテルでテレビ局各社の取材を受けました。小倉昭和館再建のための寄付をさせていただく場面を取材したいとのことでした。小倉昭和館の樋口智巳館主もご一緒でした。取材では、「佐久間社長と小倉昭和館の関係は?」との質問もありました。小倉昭和館さんには若い頃から大変お世話になってきました。2館並んでいて、それぞれ2本立て。洋画・邦画、そしてヨーロッパ・アジアのミニシアター系作品が上映されていました。東京や博多でしか観れなかった珠玉の名作を鑑賞できることは本当に有難かったです。


テレビ取材を受けました

 

小倉昭和館さんは「風と共に去りぬ」もリアルタイムで上映したそうです。じつは、わたしが初めて観た長編の洋画が「風と共に去りぬ」なのです。テレビの「水曜ロードショー」で観ました。ヴィヴィアン・リーの吹き替えを栗原小巻さんが担当しましたが、ラストシーンの「明日に希望を託して」というセリフが子ども心に深く残りました。2016年に小倉昭和館さんが創業77周年を迎えたとき、わたしはその祝賀会に参加し、栗原小巻さんにお会いしました。わたしは、栗原さんに少年時代の感動のお礼を申し上げました。栗原さんは、とても喜んで下さいました。小倉昭和館には、そんな思い出もあります。

西日本新聞」2023年8月17日朝刊

1939年は映画史における奇跡の年でした。西部劇の最高傑作「駅馬車」、ラブロマンスの最高傑作「風と共に去りぬ」、そしてミュージカルおよびファンタジー映画の最高傑作「オズの魔法使」の3本が誕生したからです。そしてこの年、誕生したのが小倉昭和館なのです。小倉が誇った名画座は、偉大な世界の三大名作と同じ年に生まれていたのです。映画を愛する映画館にふさわしい偶然と言えるでしょうが・・・火災のニュースに触れるたとき、わたしはこの事実に気づいて、また泣けてきたのでした。

小倉昭和館への想いを語りました

 

「今回、寄付をしようと思った理由は?」という質問もありました。小倉昭和館さんが綿々と築かれてきた「映画文化の灯を消してはいけない」という想いからです。それは「北九州を文化の砂漠にしてはならない」という想いでもあります。じつはシネコンが充実している北九州市は人口一人あたりの映画館数が日本一という説もある「映画都市」です。でも、弊社もシネアドを提供していますが、映画を観る場所がシネコンだけでは味気ない。小倉昭和館のようなミニシアター系の名作が常に上映されている名画座の存在が欠かせません。名画座があってこそ、真の「映画都市」と呼べるのではないでしょうか。そんな想いから気持ちばかりの金額ですが、寄付をさせていただくことにしました。あくまでも今回をきっかけとして、弊社としては継続的に支援をしていく予定です。樋口館主の夢の続き(エンドロールの続き)に、伴走することができればと思っています。

心ゆたかな映画』(現代書林)

 

心ゆたかな映画』は2022年11月に出版されましたが、校正作業を行っていた8月10日の夜、小倉昭和館の焼失のニュースが飛び込んできたのです。茫然自失となりました。わが人生において映画の存在は限りなく大きいですが、そんなわたしを作り上げたのは他でもない小倉昭和館だと思っているからです。同書では急きょ、「あとがきに代えて『ありがとう小倉昭和館』」というタイトルで、小倉昭和館への想い、そして樋口館主への感謝のメッセージを記しました。今日ここに、火の中から不死鳥のように蘇って本当に良かったです。小倉昭和館よ、永遠なれ!

 

なお、復活した小倉昭和館では、来年2月17日10時よりブログ「グリーフケアの時代に」で紹介したドキュメンタリー映画が上映されます。わたしも出演しており、当日は舞台挨拶でも登壇いたします。生まれ変わった小倉昭和館で、この映画が上映されるなんて本当に幸せです。ちなみに、ヒューマントラストシネマ有楽町での昨日の上映には、わたしと縁の深い出版関係者や映画関係者の方々もたくさん御来場いただいたようです。心より感謝申し上げます。ブログ「北九州国際映画祭開幕!」で紹介したように、昨日は念願の映画祭がスタートし、多くの映画人の方々と交流ができました。わたしは映画による縁を「映縁」と呼んでいますが、映縁のありがたさ、素晴らしさを痛感した2日間でした。



2023年12月14日 一条真也