冠婚葬祭は「文化の核」

一条真也です。
11月3日は「文化の日」ですね。
文化といえば、わたしは冠婚葬祭は「文化の核」であると考えています。そのことを日本最大級の冠婚葬祭サイトであるsikisaisaiのコラムに書きました。

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sikisaisai」は、わたしが副理事長を務める一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団が運営するサイトで、「儀式や行事の“ナゼ”を知って、暮らしを彩る冠婚葬祭メディア」です。全国の冠婚葬祭互助会の社員さんや会員さんが読まれているので、非常に影響力がありますが、そこでわたしはコラムを連載することになりました。

コラム:冠婚葬祭は「文化の核」である

 

わたしは、「冠婚葬祭は『文化の核』である」として、世界各国のセレモニーには、その国の長年培われた宗教的伝統や民族的慣習などが反映していることを指摘しました。儀式の根底には「民族的よりどころ」というべきものがあるのです。日本には、茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲といった、さまざまな伝統文化があります。そして、それらの伝統文化の根幹にはいずれも「儀式」というものが厳然として存在します。すなわち、儀式なくして文化はありえません。儀式とは「文化の核」と言えるでしょう。

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茶道といえば、茶器が大切!

 

文化とは何でしょうか。「日本文化」といえば、代表的なものに茶道があります。父の佐久間進小笠原家茶道古流の会長を務めている関係で、わたしも少しだけ茶道をたしなみます。茶道といえば、茶器が大切ですね。茶器とは、何よりも「かたち」そのものです。水や茶は形がなく不安定です。それを容れるものが器です。水と茶は「こころ」です。「こころ」も形がなくて不安定ですね。ですから、「かたち」としての器に容れる必要があるのです。

 

その「かたち」には別名があります。「儀式」です。茶道とはまさに儀式文化であり、「かたち」の文化です。人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。「冠婚葬祭」のことを、ずばり結婚式と葬儀のことだと思っている人も多いようです。たしかに婚礼と葬礼は人生の二大儀礼ではありますが、「冠婚葬祭」のすべてではありません。すなわち、「冠婚+葬祭」ではなく、「冠+婚+葬+祭」なのです。

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「冠」はもともと元服のことで、現在では、誕生から成人までのさまざまな成長行事を「冠」とします。すなわち、初宮参り、七五三、十三祝い、成人式などです「祭」は先祖の祭祀です。三回忌などの追善供養、春と秋の彼岸や盆、さらには正月、節句、中元、歳暮など、日本の季節行事の多くは先祖をしのび、神をまつる日でした。現在では、正月から大みそかまでの年中行事を「祭」とします。そして、「婚」と「葬」です。結婚式ならびに葬儀の形式は、国や民族によって、きわめて著しく差異があります。これは世界各国のセレモニーには、その国で長年培われた宗教的伝統や民族的慣習などが反映しているからです。

 

 

つまり、儀式の根底には「民族的よりどころ」というべきものがあるのです。結婚式ならびに葬儀に表れたわが国の儀式の源は、小笠原流礼法に代表される武家礼法に基づきますが、その武家礼法の源は古事記に代表される日本的よりどころです。すなわち、日本神話に描かれたイザナギイザナミのめぐり会いに代表される陰陽両儀式のパターンこそ、室町時代以降、今日の日本的儀式の基調となって継承されてきました。

f:id:shins2m:20211101235431j:plain決定版 冠婚葬祭入門(PHP研究所)

 

現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれています。しかし、この世に無縁の人などいません。どんな人だって、必ず血縁や地縁があります。そして、多くの人は学校や職場や趣味などでその他にもさまざまな縁を得ていきます。この世には、最初から多くの「縁」で満ちているのです。ただ、それに多くの人々は気づかないだけなのです。わたしは、「縁」という目に見えないものを実体化して見えるようにするものこそ冠婚葬祭なのです。

古事記と冠婚葬祭』(現代書林)

 

今月21日、115冊目の一条本である古事記と冠婚葬祭(現代書林)が刊行されます。「神道と日本人」というサブタイトルがついています。ブログ「鎌田東二先生との対談」ブログ「鎌田先生との対談2日目」で紹介したように、わたしは今年3月8日・9日に「バク転神道ソングライター」こと京都大学名誉教授で宗教哲学者の鎌田東二先生と対談しましたが、その内容が本書に掲載されています。帯には「人間は神話と儀礼が必要!」と書かれていますが、『古事記』という神話も日本人にとっての「文化の核」です。日本文化の本質について大いに語り合った古事記と冠婚葬祭を、ぜひ、ご一読下さい!

 

 

2023年11月3日 一条真也