「小説家の映画」

一条真也です。
東京に来ています。19日の14時から一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の経営会議がありました。その後、夕方から新宿で打ち合わせして、夜は新宿シネマカリテで韓国映画「小説家の映画」を観ました。モノクロ(最後だけはカラー)で会話ばかりの展開に眠くなりました。結局、何が言いたかったのか、よくわかりませんでしたね。


ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『逃げた女』『イントロダクション』などのホン・サンス監督による人間ドラマ。名声を得ながらも大きな葛藤を抱えた作家と女優が、偶然の出会いを通じて映画を撮ろうとする。『あなたの顔の前に』でホン監督と組んだイ・ヘヨンと同監督作『夜の浜辺でひとり』などのキム・ミニが主演を務め、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、キ・ジュボンらホン監督作に出演してきたキャストが共演。第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で審査員グランプリを受賞した」

 

ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「作家として成功を収めながらも執筆から遠ざかっているジュニ(イ・ヘヨン)は、疎遠になっていた後輩を訪ねる旅に出る。その道中、韓国・ソウル近郊の町でかつての人気女優・ギルス(キム・ミニ)と出会う。初対面ながらも彼女と気持ちが通じ合うのを感じたジュニは、ギルスを主演に短編映画を撮りたいと持ち掛ける」


「小説家」も「映画」も、わたしにとっては気になるワードです。その2つが組み合わさったのだから大変心が惹かれたのですが、本当に小説家が短編映画を撮ろうと思い立つだけのストーリーで、出来上がった映画そのものは登場しないので、フラストレーションが残りました。ブログ「君たちはどう生きるか」で紹介したアニメ映画以上に「何が言いたいのかわからない」内容で困惑しました。ただ、カメラのローアングルといい、画面のトーンといい、小津安二郎の映画に似ているなとは感じました。考えてみれば、小津の映画も何気ない日常を描いて、結局はドラマティックな事件などは起きません。その代りに、結婚式や葬儀などの冠婚葬祭のシーンが必ず入りますけど。


この映画のトークイベントに女優の筒井真理子が出演していました。彼女といえば、 ブログ「波紋」で紹介した日本映画の大傑作に主演し、現在も公開中です。「波紋」はとにかく凄い映画でした。いろんな事件が起こるし、観客の予想の斜め上を行く展開で、一瞬もスクリーンから目を離せない緊張感がありました。その意味で、「小説家の映画」は「波紋」とは真逆の映画だと言えるでしょう。でも、その筒井真理子ホン・サンス監督の大ファンというのですから、面白いじゃありませんか!


「小説家の映画」は本当に印象に残るシーンが少なくて、レビューを書くのにも困ってしまいます。ただ、わたしは、初対面のジュニとギルスが意気投合して、昼食を共にする場面がわりと好きでした。ジュニはラーメン、ギルスはビビンバを美味しそうに食べるのですが、それをローアングルで撮影しています。女優ギルスに気づいた少女が食堂の窓の外からずーっと覗いていたり、なんだか不思議な間を感じさせる映像でした。


 

あと、この映画は基本的に会話劇ですが、何分間もの長いセリフを見事に諳んじる女優の凄みを感じました。ジュニは、俳優であるギルスの夫が自分の映画に出演してくれることを希望します。「もし出演してくれたら、彼のイメージで原作を書く」とまで言います。そのシーンを見て、クラーク・ゲーブルの大ファンだったマーガレット・ミッチェルがゲーブルのイメージでレット・バトラーが登場する風と共に去りぬを書いたエピソードを思い出しました。その後、ジュニはギルスに誘われて、彼女の知り合いの詩人と飲むことになります。その詩人はなんとジュニと過去に関係のあった男性でした。何が言いたいのかわからない映画でしたが、「この世は有縁社会」ということが言いたかったのかもしれませんね。わかりませんけど。

 

2023年7月20日  一条真也