死を乗り越える手塚治虫の言葉

 

人間は何万年も、
あした生きるために
今日を生きてきた。

手塚治虫

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、日本の漫画家、アニメーター、医学博士であった手塚治虫(1928年~1989年)の言葉です。大阪府に生まれた彼は、戦後日本においてストーリー漫画の手法を確立、現代にまでにつながる日本の漫画表現の基礎を作りました。代表作に鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『アドルフに告ぐなど。



手塚治虫は「漫画の神様」と呼ばれます。ジャパンカルチャーの生みの親と言っても言い過ぎではありません。「人間は何万年も、あした生きるために今日を生きてきた」とは、手塚の名作ブラック・ジャックに登場する言葉です。ブラック・ジャックは金のために医療活動をする悪徳医師というキャラクターで描かれています。



手塚には火の鳥ブッダといった深い思索的な作品もありますが、医者という道も志していた彼は、天才医師が非合法に活躍する『ブラック・ジャック』で、自らの死生観を描き切ったのかもしれません。手塚の死に立ち会った医師によると、「頼むから仕事をさせてくれ」が手塚の最後の言葉であったといいます。実際、未完の作品が多く逝ったのは、ファンの1人として本当に残念です。



2023年、「ブラック・ジャック」の新作が生成AIによって作られました。システムには「ブラック・ジャック」や手塚治虫の他の漫画作品、合わせて400話分の物語の構造や世界観などの膨大なデータを読み込ませたとか。人間とAIの真剣勝負の「対話」によって、新たに作り出されたブラック・ジャック。AIは、どこまで“漫画の神様”の創造性に近づくことができたのか。その是非はともかく、彼の作品は永遠です。そして、その才能も永遠です。なお、この手塚治虫の名言は、死を乗り越える名言ガイド(現代書林)に掲載されています。

 

 

2024年3月22日  一条真也

 

一条真也です。
たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回の「こころの一字」は、「会」です。



わが社は接客サービス業ですが、お客様と接する瞬間の重要性を社員に説くとき、「一期一会」という言葉をよく使います。一期一会とはもともと、茶人としても知られた井伊直弼が好んで行なった茶道の心得です。すなわち、一生涯にただ一度会うことかも知れぬという心情で、風炉の前に主客端座する。そのとき、今生においてこれ限りかも知れぬ、人命というものは朝露の如きものです。



朝会って、夕べは計ることができません。ここで会えばまた会うことは人間として必ずしも期することができないのです。そこで、今生にこれを限りと思う気持ちになります。そこで茶を点てると、人間はふざけた心、雑念というものをことごとく落として、真心が表われます。そして、その真心を重んじたのが「一期一会」の精神なのです。

 

 

わたしの父である、サンレーグループ佐久間進名誉会長は、小笠原家古流という茶道の師範でもありますが、一期一会の精神を接客の精神として何よりも重視し、「一球入魂」を、もじって、「一客入魂」の言葉を常にサービスの現場スタッフに向かって吐いてきました。

 

 

さて、一期一会の思想は、最近になって形を変え、サービス・マネジメントの世界に登場しました。「真実の瞬間」です。これは、自社のサービス品質が、お客様に評価される決定的瞬間のこと。1985年、ヤン・カールセンという人物が、赤字の続くスカンジナビア航空(SAS)の建て直しに社長として入ったとき、サービスの向上がなければ生き残れないことを感じた。そして、すべての従業員に「真実の瞬間」という言葉を説きました。きっかけは、彼がSASで機内食のサービスを受けたとき、汚れた皿が1枚あるのを見つけたことでした。彼は汚れた皿を見ているうちにいやな気分になり、「この飛行機はエンジンの整備もいいかげんではないのか」と思い、そこから「もしかすると、この飛行機は墜落するのでは」と非常に不安な気分になったのです。



予約電話を取ったとき、チケットカウンターで発券する際、廊下ですれ違ったとき、食事を出した時などなど、一日5万回以上も、お客様と航空会社の誰かが接触する瞬間、すなわち真実の瞬間があるといいます。そのとき、その会社のサービス品質がお客様に伝わり、瞬時に評価される決定的な瞬間なのです。たとえ1回でもさえない瞬間があれば、サービスの評価はさえないものとなり、お客様を失うことにさえなります。顧客満足とは、1回1回の真実の瞬間の積み重ねの結果です。ミスは許されません。真実の瞬間の公式は、100−1=0、決して99ではないのです。だからこそ、接客サービスという仕事は、一期一会の茶道にも通じるほど奥が深く、真にプロフェッショナルな仕事なのです。なお、「会」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。

 

 

2024年3月21日  一条真也

 

一条真也です。
たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回の「こころの一字」は、「驚」です。


忘年会でエア・ピアノを披露♫

 

わたしは、人を驚かせることが子どもの頃から大好きでした。いつも、親や弟や友達を驚かせようと、変装してみたり、隠れていて突然現われたりしました。長じて会社の社長になっても、この癖は治りません。社員へのスピーチの際には必ず、何らかのサプライズを入れることにしていますし、忘年会や新年会では、打ち合わせなしのコスプレでみんなを仰天させたりします。



以前、吉田松陰についての本を読んでいて、松陰があれほど多くの塾生を集め、かつ彼らに影響を与えることができたのかを考えたとき、「驚き」というのが1つのキーワードではないかと思いつきました。 松陰は学問の心得として、「学者になってはならぬ、人は実行が第一である」と常に塾生に説いていました。そして彼自身も、常にこの教訓を胸に刻んで実践してきたのです。



脱藩して東北を遊歴したり、アメリカ密航を企てたりといった一見、血気にはやったような危険な行動も、若い塾生たちにとっては、血湧き肉踊る武勇伝であり、冒険談でした。それは講談や紙芝居もかなわないエンターテインメントであったとさえ言えるでしょう。萩以外の世界を知らない塾生たちの多くは、松陰の話に大いに驚き、その話を窓として、そこから広大な世界を見ようとしたのです。現代で言うなら、パスポートを持たずに世界中を飛び回ったとか、宇宙からやってきたUFOに乗ろうとしたという話に匹敵します。そんな物凄い体験を重ねている本物の英雄が松陰であり、血沸き肉躍る話を聴いた少年たちは心から彼に憧れ、深い尊敬の念を抱いたのでしょう。



わたしは、人間の心は驚きを必要としていると思います。
人はときどき衝撃を受けて、特に自己に衝撃を受けて驚き、目が覚める、目を覚ますということが最も大切です。退屈とは、案外いけないことなのです。人間の生命というものは、慢性的、慣習的、因襲的になると、たちまちだれてしまいます。これにショック療法として、ときどき衝撃を与えないと生命は躍動しないのです。



世の中にはなぜ、文学や哲学や美術や宗教といった精神の営みの世界があるのでしょうか。その理由には諸説ありますが、1つには、その日その日の生活に追われて、心を失ってしまう、人間が人間であることを失ってしまいやすい時に、はっきりと目を覚ますためだという説があります。古代ギリシャの哲学者であるアリストテレスは、「哲学は驚きにはじまる」と言いました。



よく驚くということこそ、人間の本質的な要求なのです。安岡正篤は、この驚くという人間の一番尊い要求が、次第に信仰や学問、芸術などの尊い文化を生んだのであると述べています。なお、「驚」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。

 

 

2024年3月21日  一条真也

春分の日に春が来た!

一条真也です。
3月20日は「春分の日」。この日、ブログ『上級グリーフケア士が一条本を読む』で紹介した金沢紫雲閣の大谷賢博総支配人からLINEが届きました。ブログ「星の旅人たち」で紹介したグリーフケア映画を読んで、実際に鑑賞したそうで、その感想が長文で綴られていました。「告白とは人と人を結びつける魂」との視点が秀逸でした。

北國新聞」2024年3月20日朝刊

 

わたしが「素晴らしい感想です!」と大谷総支配人に返信すると、彼から「素晴らしい映画を教えていただき、ありがとうございます! それと私事ですが、震災を経験した大谷家にも良いことがありました」というLINEメッセージとともに今朝の「北國新聞」の記事が送られてきました。そこには、「倍率20・2倍の最難関 東京藝大油画に2人同時に現役合格」との大きな見出しが躍っていました。記事には、芸術系大学の最高峰・東京藝大で最難関とされる美術学部絵画科油画専攻に、大谷真結香さん(18)=金沢二水高3年=と池村柚(ゆず)さん(18)=北陸学院高3年=が合格したことが紹介されていました。美術関係者によると、「石川県内から同専攻に現役合格した例はほぼなく、2人同時は初めてとみられる」とのこと。この記事に登場する大谷真結香さんが大谷総支配人の長女だと知って、大変驚きました。これは快挙です!

 

東京藝大の油画専攻の今年の一般選抜は1109人が志願し、合格者数は55人で倍率は20・2倍と全学科・専攻で最高だったそうです。石川県内の公立高で美術専攻のある辰巳丘高と小松市立高によると、両校から油画専攻に現役合格した生徒はいないとか。県立高で美術教諭の勤務経験があり、現在も錦丘高で講師を務めるボザール絵画研究室(金沢市)の開光市代表(65)は「県全体でも少なくとも40年間は現役合格者はいない。私自身、教え子を東京藝大に入れるのが夢だった」と感慨深げに話したそうです。ボザールで切磋琢磨した大谷さんと池村さんは能登半島地震で避難生活も経験し、苦難の冬を乗り越えて快挙を成し遂げたのです。これは本当に素晴らしいことです。2人には心から「おめでとう!」と言いたいですし、2人を指導した開光市氏には深く敬意を表します。

MRO「ハッピーフライデー」より

 

大谷真結香さんの父である大谷賢博さんは日本初の上級グリーフケア士の1人です。今年の1月1日、能登半島地震に帰省中に被災し、実家が全壊して避難所に入っていました。現在、その被災体験とケアの実践を彼が語ったグリーフケア動画が冠婚葬祭互助会業界で注目を浴びています。大変な読書家であり、映画も愛する彼の感想に接するたびに、わたしは「素晴らしい感性をしているな」と感心していました。「星の旅人たち」の感想LINEにも、「風も太陽も夕焼けも雨も、そして水の流れさえも、まるで人間の喜びや悲しみ、人との縁の繋がりを表しているような美しい映画でした」との表現がありましたが、非常に絵画的な印象を受けます。わたしは、この彼の感性が娘さんにも受け継がれたのではないかと思いました


春分の日、大谷家に春が来た!

 

今日の朗報に、今も避難所で暮らしておられる大谷総支配人のご両親も大喜びだそうです。春分の日、避難所に一足早い春が来ましたね。真結香さんは「多才な人が集まる大学でいろんなことを吸収したい」と期待を膨らませているそうですが、心から応援しています。ぜひ、大学で大いに学んで、将来は多くの人たちを幸せにする心ゆたかな絵画を描いて下さい。心から、わたしは楽しみにしています。改めて、本当におめでとうございました。最後に一言。
冬来たりなば春遠からじ!

 

 

2024年3月20日  一条真也

『アンビショナリー・カンパニー』

一条真也です。106冊目の「一条真也による一条本紹介」はアンビショナリー・カンパニー(現代書林)。株式会社サンレー創立55周年記念出版。「サンレーグループの大いなる志」というサブタイトルがついています。著者名は「一条真也」ではなく、「佐久間庸和」です。

f:id:shins2m:20211102165155j:plainアンビショナリー・カンパニー』(現代書林)

f:id:shins2m:20211102165213j:plainこれで4冊が揃いました!

 

これまで、ペンネームでは多くの著書を上梓してきました。しかし、本名、そして、サンレーの社長としては、『ハートフル・カンパニー』『ホスピタリティ・カンパニー』『ミッショナリー・カンパニー』(すべて三五館)に続く4冊目の出版となります。「出版寅さん」こと内海準二さんのプロデュースで、版元を三五館から現代書林に代えて上梓することができました。装丁は前作と同じデザイナーの方にお願いすることができました。快くデザイナーさんをご紹介下さった三五館シンシャの中野長武社長をはじめ、関係各位には心より感謝を申し上げます。

f:id:shins2m:20211102200833j:plain本書の帯

 

本書の帯にはわたしの写真が使われ、「サービス業からケア業へ 時代は大きく動いている!」の文字が躍り、「アンビション(大志)をもつ会社しか成長できない」「冠婚葬祭業=心のエッセンシャルワーク! それを証明するサンレーの思想と活動とは?」「株式会社サンレー創立55周年記念出版」と書かれています。

f:id:shins2m:20211102200855j:plain本書の帯の裏

 

帯の裏には、『ハートフル・カンパニー』『ホスピタリティ・カンパニー』『ミッショナリー・カンパニー』の3冊が紹介されています。また、カバー前そでには以下のように書かれています。
「わたしは、志というのは何よりも『無私』であってこそ、その呼び名に値するのであると強調したいです。吉田松陰の言葉に『志なき者は、虫(無志)である』というのがありますが、これをもじれば、『志ある者は、無私である』と言えるでしょう。平たく言えば、『自分が幸せになりたい』というのは夢であり、『世の多くの人々を幸せにしたい』というのが志です。夢は私、志は公に通じているのです。自分ではなく世の多くの人々、『幸せになりたい』ではなく『幸せにしたい』、この違いが重要なのです。真の志は、あくまでも世のため人のために立てるものなのであり、『志』に通じている『夢』ほど多くの人々が応援してくれるために叶いやすいのでしょう。わたしは、無縁社会を克服して、有縁社会を再生するという志を立て、そのために『人間尊重』思想を広める『天下布礼』に取り組んでいます」

f:id:shins2m:20211102173719j:plain新時代のM&Aは、ミッション&アンビション!

 

本書の「目次」は、以下のようになっています。
「まえがき」
「刊行に寄せて」佐久間康弘
第1章 ミッショナリー・カンパニー
     ――2016年12月

仕事の誇りは人生の幸福 自らの仕事に使命感を持とう!
第2章 「終活」から「修活」へ
      ――2017年1月〜12月

美しく人生を修め 有終の美を飾るお手伝いを!
北九州の成人式を変える 儀式で世直しをしよう!
『古事記』公演大成功! 大いなるサンレーの物語
美しき礼の島で誓い合う 冠婚葬祭で『人間尊重』の実現を!
ドラッカーの教えを生かし 第二創業期に大いに発展しよう!
老いる覚悟と死ぬ覚悟こそ 人生を美しく修める真髄だ!
『論語』を学び直そう そして、人の道を知ろう!
「空」とは「永遠」のことだった! 『般若心経』の真意を知る
ご先祖さまを大切にすれば 仕事も人生も好転する!
ヴィラルーチェOPEN! いま、お祝いの意味を考える
後期高齢者を光輝好齢者に変える コミュニティセンターを作ろう!
日本最大の国難を克服せよ 婚活事業こそ国策事業だ!
第3章 日本人と儀式
     ――2018年1月〜12月

日本人の「よりどころ」とは? 儀式の国ニッポンを支えよう!
絶対に失敗の許されない仕事 冠婚葬祭業に誇りを持とう!
創業以来空前の好業績 知行合一でさらなる前進を!
何よりも志が大切 天を相手に仕事しよう!
愛なき時代を生きる日本人 グリーフケアの普及に努めよう!
人生の四季を愛でながら生き 最後は堂々と旅立とう!
年中行事は「生活の古典」である! 「こころの備忘録」を大切に!
真の国際人となるために 聖典や経典に親しもう!
アップデートする冠婚葬祭 新たな儀式の時代を拓こう!
老いと死があってこそ人生 高齢者の覚悟を育むお手伝いを!
日日是好日 何事も陽にとらえて前進しよう!
月の光と太陽の光を届ける グリーフケア・サポートを!
第4章 冠婚葬祭互助会の使命
               ――2019年1月〜12月

平成最後、新元号最初の年 互助会のアップデートを目指そう!
新時代が来ようとも 冠婚葬祭互助会は不滅である!
東日本大震災を経て いま、グリーフケアの時代へ
新元号は「令和」に決定! 変えてはならないものとは?
儀式の時代が花開く 令和の時代に礼の輪を!
この世は縁に満ちている 全社員が縁行者を目指そう!
紫雲閣を災害避難所に 互助会から互助社会を作ろう!
八月は死者を想う季節 日本にはグリーフケア仏教がある!
グリーフケアの時代到来 日本一の実践集団を目指そう!
計画の成就は不屈不撓の一心にあり ただ想え、気高く、強く、一筋に
即位の礼に創立記念式典 儀式の力を改めて知ろう!
ローマ教皇来日 キリスト教の大いなる愛を知る!
第5章 グリーフケア時代の幕開け
               ――2020年1月〜12月

正月そして成人式 文化の核が日本人を幸せにする!
歌に託したわが社の志 言霊は最強の力となる!
グリーフケアの本質を考える 互助会が推進する理由とは!
パンデミック宣言とオリンピック延期 何事も陽にとらえて考えよう!
経済よりも社会が大事 日本で葬儀崩壊を起こすな!
コロナと共に生きる時代 死を乗り越える言葉を持とう!
コロナの時代を生きる 絶対に忘れてはならないこと
なぜ人間は死者を想うのか 礼欲という本能の発見
冠婚葬祭とは「糸」を張ること 日本人の幸福度を上げよう!
冠婚葬祭業は永久に不滅 互助会が日本の国難を救う!
コロナ禍の中で「礼」を考える 身体は離れても心を近づけるには?
コロナ禍の中での大ヒット 『鬼滅の刃』から学ぶこと
第6章 アンビショナリー・カンパニー
               ――2021年1月〜11月

社会現象となった『鬼滅の刃』 日本人の「こころ」の本質とは?
「論語と算盤」はサンレー哲学そのもの 利の元は義にあることを知ろう!
混ざりあった日本人の心 二宮尊徳の唱えた天道を知ろう!
グレート・リセットとは何か? いま、相互扶助の時代が始まる
儀式が日本人を幸福にする カタチのチカラを侮るなかれ!
さらば、ブルシット・ジョブ ケアワークの時代が始まる!
グリーフケア時代の幕開け さあ、心の仕事を極めよう!
葬礼を最重要視する儒教 冠婚葬祭の意味を考える
読書は心の中の森を育てる 本を読んで心を太らせよう!
注目されるリベラルアーツ グリーフケアの本質とは?
おかげさまで55周年 アンビショナリー・カンパニーへ!

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2021年11月度社長訓示

 

本書に収録されている文章は、わたしが社員のみなさんの前で話したメッセージです。いわゆる「社長訓示」と呼ばれているものです。すべてのメッセージは毎月の社内報に掲載してきました。また、ホームページ上にも「マンスリーメッセージ」としてアップされています。社内向けのメッセージを外に向けてもオープンにしているわけで、いわば「公開社長訓示」と言えるでしょう。これには、理由があります。多くの方々に「 サンレーの社長はこんなことを言っているが、現場では本当に実践できているのか」とチェックしていただきたいのです。いくら社長が口でうまいことを言ったとしても、お客様と接する現場で生かされていなければ何にもなりません。それを、ぜひ見ていただきたいのです。実際、「ちゃんと実行できていますね」とお褒めの言葉を頂戴することもあれば、「あそこの施設では、社長の考えと反対のことをやっているよ」とお叱りの言葉を受けることもあります。どちらも、ありがたいアドバイスであり、本当に感謝しています。

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リアル社長訓示のようす

 

また、最近ではホームページでの「公開社長訓示」を同業他社の経営者や社員の方々もよく読んで下さっているようです。自社での朝礼やスピーチで使わせてもらったという声もよく頂戴します。わが社の理念や取り組みが業界の皆様のヒントになれば、こんな嬉しいことはありません。前作の『ミッショナリー・カンパニー』に詳しく書きましたが、会社人として仕事をしていくうえで「ミッション」が非常に大切です。「ミッション」は、もともとキリスト教の布教を任務として外国に派遣される人々を意味する言葉でしたが、現在はより一般的に「社会的使命」や「使命感」を意味するようになっています。ミッション経営とは、社会について考えながら仕事をすることであると同時に、お客様のための仕事を通して社会に貢献することです。要するに、お客様の背後には社会があるという意識を待たなくてはなりません。

f:id:shins2m:20210401101735j:plainカンパニーズ・ビー・アンビシャス!

 

そして、ミッションと並んで会社人に必要なものが、アンビション、つまり「大志」です。「ボーイズ・ビー・アンビシャス」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。ウィリアム・スミス・クラーク(クラーク博士)による有名な名言の1つで、「少年よ、大志を抱け」と訳されます。ならば、わたしは「カンパニーズ・ビー・アンビシャス(会社よ、大志を抱け)」と言いたい。企業理念として設定されている概念であるミッション、ビジョンは、米国では「古い」とされているとかで、それに代わる概念としてのパーパス(目的)が注目されています。パーパスは「志」と訳されることも多いですが、いかにも経営用語といった軽い印象があります。わたしは「志」にはアンビションという言葉を使っています。「大志」といった方がいいでしょうか。そもそも英語の「Ambition」は、「野望」と「大志」というように、良い意味でも悪い意味でも使います。「天下布武」という「信長の野望」の英訳は「Nobunaga‘s Ambition」ですが、「天下布礼」というわが社の大志は「Sunray‘s Ambition」。すなわち、サンレーの「M&A」は「使命」と「大志」のことなのです。

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わが社には大志がある!

 

志というのは何よりも「無私」であってこそ、その呼び名に値するのであると強調したいです。吉田松陰の言葉に「志なき者は、虫(無志)である」というのがありますが、これをもじれば、「志ある者は、無私である」と言えるでしょう。平たく言えば、「自分が幸せになりたい」というのは夢であり、「世の多くの人々を幸せにしたい」というのが志です。夢は私、志は公に通じているのです。自分ではなく、世の多くの人々、「幸せになりたい」ではなく「幸せにしたい」、この違いが重要なのです。企業もしかり。もっとこの商品を買ってほしいとか、もっと売上げを伸ばしたいとか、株式を上場したいなどというのは、すべて私的利益に向いた夢にすぎません。そこに公的利益はないのです。社員の給料を上げたいとか、待遇を良くしたいというのは、一見、志のようではありますが、やはり身内の幸福を願う夢であると言えます。真の志は、あくまで世のため人のために立てるものなのです。わが社には無縁社会を乗り越え、有縁社会を再生するという志、また、グリーフケアによって世の人々の悲嘆を軽くするという志、そして冠婚葬祭という儀式によって日本人を幸福にするという志があります。

f:id:shins2m:20211018092623j:plainこころのM&A戦略が大切!

 

今後の会社経営においてはミッション(使命)とアンビション(大志)による「M&A」戦略が必要とされます。特に「ホスピタリティ」を提供するあらゆるサービス業において、施設の展開競争に代表されるハード戦略は、もう終わりです。今後は、ますます「ハード」よりも「ハート」、つまりその会社の「想い」や「願い」を見て、お客様が選別する時代に入ります。まさにそのときに「M&A」が最重要となります。そして、サービス業そのものがケア業へと変貌を遂げていくように思えてなりません。いま、人類は未曽有の危機に直面しています。新型コロナウイルスによるパンデミックです。このたびのコロナ禍は世界中を疲弊させ、大きな不安と深い悲しみをもたらしました。今ほど、不安定な「こころ」を安定させる「かたち」としての儀式、悲しみに対処するグリーフケアが求められる時代はありません。

f:id:shins2m:20211102190347j:plainハートフル・エッセンシャルワークとは?

 

コロナ禍という前代未聞の国難を経て、社会が大きく変化しています。わたしはコロナ後の社会に関する本を大量に読みましたが、「資本主義の終焉」とか、「ビジネスの役割は終わった」とかのショッキングな論説が多いです。確かに一理ありますが、少し行き過ぎた部分も感じます。しかし、「グレート・リセット」とか、「エコノミーにヒューマニティを取り戻す」などのキーワードは的確であり、今後の社会では「相互扶助」が求められることを示唆しています。さらに今後のビジネスにおいては「ケア経済」が最大のキーワードです。そういったトレンドも踏まえて、わたしには、「これからは、冠婚葬祭互助会の時代ではないか」という思いがしてなりません。儀式やグリーフケアの分野は、社会に必要なハートフル・エッセンシャルワークであると確信します。

f:id:shins2m:20211102175303j:plain道歌を披露するようす

 

なお、本書に収められた社長訓示の最後には、メッセージの要約となる短歌が掲載されています。「庸軒」は、わたしの歌詠みの雅号です。江戸時代の石田梅岩が開いた「心学」では、人の道を説くメッセージ・ポエムとしての「道歌」が詠まれました。同じく、本書に登場する短歌も芸術性の追求ではなく、社員や読者のみなさんの理解を深めていただくための道歌をめざして詠んだものです。短いですが、わが志が込められていると思っております。本書の「まえがき」の最後には、「志つねに忘れず何事も 陽にとらへて前に進まん 」という道歌を披露しています。

f:id:shins2m:20211122114002j:plain「刊行に寄せて」

 

本書には、「刊行に寄せて」として、弟の佐久間康弘(株式会社サンレー〈沖縄〉社長)が素晴らしい心に沁みる文章を寄せてくれました。感謝を込めて、以下に紹介させていただきます。最初に、弟は「このたびは『アンビショナリー・カンパニー』のご刊行おめでとうございます。著者の佐久間庸和 は、私の実兄です。年齢が6歳も離れていることもあり、私にとっては兄というより人生の先輩です。我々の父である佐久間進は、國學院大學柳田国男折口信夫などの日本民俗学を研究していたこともあり、実家には国学民俗学を中心とした蔵書を収納する書庫があります。兄は幼い頃から二宮金次郎の如く、この書庫にある膨大な各種全集を読んでいました。いま思えば、これが経営者、教養人としての 佐久間庸和の原点になっているのでしょう。日本民俗学には『日本人を幸福にする』という志があります。実践重視の民俗学をもとに、冠婚葬祭という人間の幸せを第一に願う事業を構築した冠婚葬祭互助会を父が生業としたことに運命的なものを感じます。『冠婚葬祭で多くの人々を幸せにしたい』という父の使命感と志を、兄は引き継いでいます」と書いています。

f:id:shins2m:20131014012043j:imageハートフルに遊ぶ』(1988年5月20日刊行)

 

また、弟は以下のように書いています。
「1988年に『一条真也』のペンネームで刊行された兄の処女作は『ハートフルに遊ぶ』。『ハート化時代の柔らかな卒論』というサブタイトルが附されていますが、兄の大学での卒論は三浦梅園の思想研究という硬派な内容でした。三浦梅園は江戸時代に『慈悲無尽講』という保険的思想の相互扶助的システムを構築した人物で、結婚式とお葬式の二大儀式に備えるため、会員同士が助け合う相互扶助の仕組みである『冠婚葬祭互助会』と共通する思想です。『処女作にはその作家のすべてが含まれている』と言われますが、『ハートフルに遊ぶ』には永遠のテーマである『多くの人々を幸せにしたい』という志が一貫して流れています。このテーマは、その後の百冊を超える著書にも一貫しており、 サンレーの経営思想の構築に多大な影響を及ぼしています」

f:id:shins2m:20211102171344j:plain「鬼滅の刃」に学ぶ』(2021年1月28日刊行)

続けて、弟は「『ハートフルに遊ぶ』はトレンドを切り口として執筆されていたこともあり、当時はデートスポットのエッセイ等の連載依頼が多かったようですが、兄は毅然と断っていました。好評を博した兄の近著『「鬼滅の刃」に学ぶ』の出版後、寄せられた多くのオファーを断っているのと同じ構図です。私は『佐久間庸和は現代の二宮尊徳だ!』と考えており、一時的に売れるために執筆スタイルを変えて大衆に迎合する必要はなく、このままで良いと思っています。人間にとって真っ当な正論を書いていってほしいのです。戦前、二宮金次郎の物語は道徳の教科書に取り上げられ、全国の多くの学校に、薪を背負って歩きながら本を読む姿の像が建てられました。金次郎は長じて『尊徳』と名乗ります。尊徳の報徳思想は、経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されるというものであり、渋沢栄一の道徳経済合一説にも継承され、ドラッカーもその経営哲学を高く評価していました。また、父から連なるサンレー思想や互助会の本質『一人は万人のために、万人は一人のために』とも通じています。神道儒教・仏教のいいとこ取りをした教えや『至誠』『勤労』『分度』『推譲』といった思想は、日本人の社会規範や道徳としての精神的価値の基盤になっており、日常の家庭や職場、地域社会で生きていくうえでの有益な指針です。人生の指針となる本を執筆する佐久間庸和 は現代の二宮尊徳と言えるでしょう」と書いています。


孔子とドラッカー』(2006年4月18日刊行)

 

さらに、弟は以下のようにも書いています。
「兄の著書『孔子とドラッカー』の中で、『私は非常に弟を頼りにしている。私が広告代理店出身で企画・営業向きだとしたら、銀行出身の弟は財務・管理向きで、それぞれの足らない部分をうまく補い合っていると思っている。でも、私のほうが助けられることが圧倒的に多い。心から、自分には過ぎた弟だと思う。いつまでも一緒に仕事ができたらいいと心から願っている』と過分な言葉をもらっていますが、私は常に『自分が助けてもらっている』という実感しかありません。また、同書で『もともと同じ親から生まれて、同じ環境で育ってきたのだから、兄弟は考え方に共通するものがある。一緒に力を合わせれば、これほど心強い味方はいない』と書かれており、この考えには強く共感しています。お互いが何かを『得る』ためではなく『与える』ために、その関係に力を注ぐこと。これこそ、互助の精神の体現であると確信しています」

f:id:shins2m:20200107115646j:plain弟の佐久間康弘社長と

 

そして、弟は「ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』では、独自の基本理念が求心力となり企業を継続的に進歩させるということでしたが、『ビジョナリー・カンパニーになれる正しい基本理念はない。それよりも理念が本物であり、どこまで理念を貫き通しているかの方が、内容よりもずっと重要である』とも警鐘を鳴らしました。その意味でも、佐久間庸和の理念は本物だと常々感じています。企業の掲げるべき『志』とは他人の幸せを願い、より良い社会をつくることに集約されます。今まで資本主義を駆動してきた欲望を超えて、他者にとって価値のあることをしたいという利他的な信念こそが志です。人間の高い志や熱意が周りの賛同を生み出し、新たな価値を生むのです。そして志を社内、社外に広め、共有することで、ますます価値は高まります。これからは『資本主義』ではなく『志本主義』の時代です。志を実現しようとする決意こそ、未来を切り開く力となります。兄であり、人生、経営の大先達である佐久間庸和 社長を輔翼しながら、志のある会社を目指していきます」と述べるのでした。

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「社長のおススメ本リスト」

f:id:shins2m:20211102174220j:plain「S2MAP」

巻末の「社長のおススメ本リスト」は社内報で紹介した「仕事に役立つ」本の一覧表であり、「S2MAP」では、わが社の各部門における経営理念の具体的実践目標をまとめました。コロナ禍で冠婚葬祭業を含むあらゆるサービス業が苦境にある中、創立55周年記念本を出版することにいささかの躊躇はありましたが、コロナを超えて、サービス業からケア業へとシフトを図るわが社のマニフェストとして上梓する決心をしました。本書には、わが社の志が述べられております。その志に共感し、さらにはサンレーが志を果たすのを応援してやろうという方が現れれば、こんなに嬉しいことはありません。

 

 

2024年3月20日 一条真也

新道喜信氏お別れの会

一条真也です。
札幌に来ています。19日の朝、京王プラザホテル札幌の客室で目を覚ましたら、窓の外が一面銀世界で驚きました。気温は-2度でした。この日、11時から同ホテルであいプラングループの代表であった新道喜信氏のお別れの会が開かれ、わたしも参加しました。


札幌は大雪でした


お別れ会に参加しました


お別れの会の祭壇の前で


遺影はとても優しい表情でした

 

あえて故人を新道社長と呼ばせていただきますが、わたしは新道社長の生前大変お世話になりました。わたしは2014年に全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)の会長に就任しましたが、わたしの1つ前の会長が新道社長でした。わたしが全互連の会長になるにあたって、新道社長はわざわざ札幌から小倉までお越し下さり、わたしの父である佐久間名誉会長(当時は会長)に挨拶をして下さいました。そのとき、礼儀作法にうるさい父が「新道さんのお辞儀は素晴らしい!」と感動していたことを記憶しています。


メモリアル・コーナーにて


故人の思い出の品々

故人の思い出の品々

故人の思い出の品々

故人の思い出の品々(ドラム・セット)

故人の思い出の品々(愛したLPレコード)


故人の人生を紹介したボード

 

お別れの会会場の隣りは、故人の思い出の品を展示したメモリアル・コーナーになっていました。スーツの他、ゴルフウェアやスキーウェア、サッカーのユニフォームなども展示されていましたが、ひときわ目立ったのがドラムのセットです。なんでも、新道社長は大学時代は軽音楽部の部長を務められていたそうで、こよなくジャズを愛されていました。また、社長になられてからはクラシック文化の支援にも熱心で、札幌交響楽団を応援されていたそうです。さらには、演劇の劇団やサッカーチームの支援もされており、広く文化・スポーツ界へ貢献をされた方でした。


お別れの会の冒頭はビデオ上映


挨拶される神田実行委員長


弔辞を読む全互協渡邊会長


弔辞を読む全互連の山下会長


お礼の挨拶をされる新道いくみ新社長


心して拝聴しました

 

お別れの会は故人の生前の功績を紹介するビデオの上映から始まり、お別れの会の実行委員長である日本セレモニーの神田会長の挨拶に続いて、全互協の渡邊会長、全互連の山下会長らが弔辞を読まれました。いずれも故人への愛惜と感謝の念が込められており、故人の在りし日の姿が甦ってくるようでした。最後は、故人のご長女で新社長に就任された新道いくみ社長がお礼の挨拶をされました。突然の父との別れの悲しみが胸にこみあげてきたのか、涙とともに語らえた真心の挨拶を聴いて、同じ年頃の娘を持つわたしは涙が止まりませんでした。


献花のようす


わたしも献花をしました

 

新道社長は1月18日に旅立って行かれましたが、その前日の17日にわたしは言葉を交わしています。全互協理事会が開催される直前だったと思いますが、わざわざわたしの席に来られて、「このたびの能登半島地震のお見舞いを申し上げます」との御挨拶を下さいました。大先輩からの丁重なお言葉に恐縮するばかりでしたが、本当に「礼」のある方でした。そして、その直後の理事会では業界の今後について積極的に発言をされました。正々堂々と正論を述べられる「勇」のある方でした。業界は、本当に惜しい方を亡くしました。わたしは、本当にお世話になりました。


本当に、お世話になりました!

 

2014年に全互連の熊本総会で会長を交代したとき、わたしは新会長として前会長である新道社長に感謝状を贈呈させていただきました。今また、旅立たれた新道社長に心からの感謝の想いを込めて「人生の感謝状」を贈呈させていただき、「お疲れ様でございました。そして、ありがとうございました!」と言いたいです。最後に、新道喜信様の御冥福を衷心よりお祈りいたします。合掌。


新道社長、ありがとうございました!

 

2024年3月19日  一条真也

デューン2を札幌のIMAXで再鑑賞しました

一条真也です。
札幌に来ています。18日の夜、夕食を済ませた後、サッポロ・ファクトリーという商業施設に向かい、そこに入っているユナイテッドシネマ札幌で、ブログ「デューン 砂の惑星PART2」で紹介したSF大作映画のレイトショーを再鑑賞しました。終わったのは23時45分です。


映画怪人、札幌にあらはる!

 

わたしは基本的に時間貧乏にもかかわらず多くの映画作品を観たい人間なので、同じ作品を映画館で再鑑賞することはまずありません。もう一度観たいときはDVDを購入して観ます。60年の人生を振り返っても、映画館で再鑑賞した映画というのはジェームズ・キャメロン監督のタイタニック(1997年)ぐらいではないでしょうか。そんなわたしが、27年ぶりに同じ映画を初鑑賞からわずか3日後に映画館で観たことは、わが人生の大事件です!


テーマパークシアター誕生!!


圧倒的体感をしてみたい!

 

なぜ、わたしは、「デューン 砂の惑星PART2」を映画館で再鑑賞したのか? それは、同作を公開初日にシネプレックス小倉の4番シアターで観たからです。そこは、いわゆる通常のシアターなのですが、その後に続々とUPされた同作のYouTube解説動画のほとんどすべてに「この映画は絶対にIMAXで観て下さい!」と書かれていたのです。当然ながら、わたしの心は疼きました。


特に、最近わたしが注目している茶一郎さんという映画通の【最高峰の映画体験にして “神” を浴びる神話体験】というデュ―ン2の解説動画を観て、「これは、もう一度、IMAXで観ないとダメだな」と思ったのです。茶一郎さんの「とにかく大きい映画」「動く宗教画」「言葉を失う。現段階で最高峰の映画体験では?」「IMAXで、即ち現行の上映設備でこれ以上の映画体験が今後できるのか?」「到達点にして限界とすら思ってしまう圧巻の出来。圧倒され、言葉が出なかった」「『デューン 砂の惑星PART2』を観ていると、到底、自分と同じ人間が作ったとは思えない」「同じ人間が作ったと思えない巨大なパワーと神々しさ、荘厳さ」などの言葉が心に響きました。


また、茶一郎さんは「IMAX上映でより魅力がわかるIMAXに特化したシリーズ」「世が世なら規制されてもおかしくない暴力的ともいえる映像」「IMAX映画体験の最高峰」「見事な映像設計と圧巻の映像圧力」「千年後には信仰の対象になる巨大な神話映画」「普通の映画では刺激が足りなくなる中毒性の高い映画体験」とも語り、もうこれ以上ないほどの最大級の賛辞を送っています。決め手は、「昔、わし、あの時この『デューン 砂の惑星PART2』を映画館でIMAXで観たんじゃと自慢できる」という一言でした。これはもうIMAXで観るしかありません。小倉にもコロナワールドシネマにIMAX設備があるのですが、ちょうど札幌に出張する予定があったので、ユナイテッドシネマ札幌で観たわけです。


いやあ、IMAXで観る「デューン 砂の惑星PART2」は本当にド迫力でした。映画鑑賞というよりも、テーマパークのアトラクションのシミュレーション施設に入った感じです。画面も大きく、本当に砂漠の中にいるようでしたし、音響もリアルです。この映画はデビッド・リーン監督のアラビアのロレンス(1962年)に強い影響を受けているそうですが、よく理解できました。これほど砂漠を雄大に描いた映画は「アラビアのロレンス」以来でしょうし、砂漠の民フレメンを率いるターバン姿のポールはまさにアラブ人を率いるロレンスに重なりました。


ユナイテッドシネマ札幌の入口で


IMAXシアターの前で

 

ユナイテッドシネマ札幌の11番シアターがIMAXでしたが、ちょうど全体のど真ん中の通路側の席を取りました。座席の前には鉄パイプの柵があり、いかにもテーマパークのライドといった感じです。座席の前の空間が狭くて窮屈でしたけど。あと、外国人の観客が多いことに驚きました。TOHOシネマズ六本木でも、こんなに外国人はいませんよ。IMAXの迫力に圧倒されて、166分の上映時間はあっという間に過ぎました。前回はちょっと寝落ちしましたが、今回は一睡もしなかったです。また、鑑賞直前に大量のサッポロビールを飲んでいたにもかかわらず1度もトイレに行かなかったことは自分でもビックリ!


館内には公開予定作品の大看板も・・・

 

再鑑賞効果で、最初はよくわからなかった「デューン 砂の惑星PART2」の謎のシーンの意味も理解することができました。一度観てストーリーは頭に入っているので、細かい部分の確認や、演出そのものを堪能できますね。1つ気になったことは、ポールの父親が残した大量の核兵器について「大いなる力」などと肯定的に語られていたことです。実際、ポールは香料工場を核爆弾によって破壊すると皇帝を脅して、自身が権力を握ります。このように核を背景にした権力者誕生の物語というのはいかがなものか?


次は、いよいよ「オッペンハイマー」!

 

核兵器が誕生したのは、1945年7月16日、米国ニューメキシコ州ビンガム近くで行われた「トリニティ実験」においてです。ポール・アトレイデスが核兵器で皇帝を脅した8245年前に核融合実験を成功させた男の名は、ロバート・オッペンハイマー。そういえば、「デューン 砂の惑星PART2」の上映前には第96回アカデミー賞で7冠に輝いたオッペンハイマーの予告編がIMAXで流れ、すごい迫力でした。この「原爆の父」の伝記映画は全米では昨年7月21日に公開されたので、今年3月1日公開の「デューン 砂の惑星PART2」よりも前です。核兵器の開発者の伝記映画が大ヒットした直後に、核兵器肯定の大作映画が作られたことに嫌な予感がするのは、わたしだけでしょうか? いずれにせよ、次は、いよいよ、今月29日から日本公開される「オッペンハイマー」を観なければ!


2024年3月19日  一条真也