記念すべき100冊目上梓

一条真也です。
27日、スターフライヤーで東京に来ました。
羽田空港に到着して、メールをチェックしてみました。
すると、サンレー本社に業界のオピニオン・マガジンである「月刊フューネラルビジネス」8月号が届いたことがわかりました。ブログ「グリーフケア×葬祭業」で紹介したように、4月号にはわたしが巻頭インタビューで登場しています。

f:id:shins2m:20200727223127j:plain「月刊フューネラルビジネス」2020年8月号 

 

同誌の8月号には、わが社の遠賀紫雲閣のオープンなどが紹介されていますが、「BOOK」のコーナーで拙著『死を乗り越える名言ガイド』と『心ゆたかな社会』(ともに現代書林)が紹介されていました。記事は「一条真也氏、記念すべき100冊目を上梓」のタイトルで、こう書かれています。
一条真也ペンネームで作家としても活動する、大手互助会サンレー(本社:北九州市小倉北区代表取締役佐久間庸和氏は、5月に『死を乗り越える名言ガイド~言葉は人生を変えうる力をもっている』『心ゆたかな社会』の2冊を相次いで上梓した。この2冊をもって、一条氏の著書・編著・監修書はトータル100冊となる」

 

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

また、記事には「『死を乗り越える名言ガイド~言葉は人生を変えうる力をもっている』は、上智大学グリーフケア研究所客員教授も務める著者が、言葉にはグリーフを軽減する力があるとして、『死』をテーマとした名言を取り上げたもの。小説や映画に登場する言葉を含め、聖人や哲人、賢人、偉人、英雄たちの言葉、ネイティブ・アメリカンたちによって語り継がれてきた言葉など、著者の死生観形成に役立った『100の言葉』を選定し、人物の解説や名言が生まれた背景とともに紹介している。なお、本書は著者がこれまでに刊行している『死を乗り越えるシリーズ』の3作目に当たる」とも書かれています。

 

心ゆたかな社会 「ハートフル・ソサエティ」とは何か
 

 

さらには、記事には「『心ゆたかな社会』は、著者が2005年に上梓した『ハートフル・ソサエティ』(三五館)を全面改稿したもの。『ハートフル・ソサエティ』では、人類が経験してきた農業革命や工業革命、情報革命に続き、次なる社会は人間の心が最大の価値をもつ『心の社会』であると提唱した。それから15年経過した現在、心の社会は血縁、地縁が希薄化するとともに『ハートレス』社会へ向かっていることに危機感を覚えた著者が、『心ゆたかな社会』『ハートフル』な社会へ方向転換するためのヒントを本書で示す」と書かれています。いつもながら、「フューネラルビジネス」誌のご厚意に感謝いたします。1人でも多くの業界の方々に『死を乗り越える名言ガイド』と『心ゆたかな社会』の2冊が読まれることを願っています。



2020年7月28日 一条真也

4連休明けに東京へ!

一条真也です。
「GoToトラベル」キャンペーンのただ中の4連休最終日となる26日、福岡県で新型コロナウイルスの新規感染者が最多の90人を記録しました。東京は239人と、6日連続で200人超え、累計で1万1000人を突破しましたね。

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北九州空港の前で

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今朝の北九州空港のようす

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土産物店も再開していました

f:id:shins2m:20200727111549j:plain北九州空港にて

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ラウンジも再開していました


4連休明けの27日の朝、わたしは北九州空港から東京に向かいました。正直に言うと、この時期の東京出張などしたくないのですが、業界の大事な会議や国会議員の先生方との面談などがあるのです。久々に訪れた北九州空港は思っていたよりも人の数が多く、土産物店やラウンジなども再開していました。わたしは、ずいぶん久しぶりにラウンジでパソコンを開き、メールのチェックなどをしました。

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スターフライヤーの機内で

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奥田理事長から渡された書類を読む

 

スターフライヤーの機内もほぼ満員で、親子連れも多かったです。機内では、思わぬ知人にお会いしました。「隣人愛の実践者」ことNPO法人「抱樸」の奥田知志理事長です。有縁社会の再生をめざす、わが同志である奥田理事長は「最近、こういうことがありました」と1枚の紙を渡してくれました。その紙を見ると、なんとマスク姿で天皇皇后両陛下と向かい合っている写真が掲載されているではないですか! なんでも、天皇皇后両陛下は、新型コロナウイルスの影響が続く中、生活が困窮した人たちを支援している奥田理事長から、現状や課題についての説明を受けられたそうです。


感染拡大の影響が続く中、両陛下はさまざまな分野の専門家などから詳しい説明を受けられているそうですが、16日、奥田理事長および厚生労働省の担当幹部から1時間半近くにわたって話を聞かれたのだそうです。この中で、奥田理事長が、寮などに住みながら働く非正規雇用の人たちが、今後、仕事と住まいを同時に失うケースが増える可能性が高いなどと説明したところ、天皇陛下は「家を失うのは大変ですね」とか「現場は本当に大変なのですね」などと、繰り返し述べられたそうです。また、皇后さまは、日本がアメリカと比べて社会的な孤立の度合いが5倍にもなるというデータに強い関心を寄せられ、コロナが孤立に追い打ちをかけているという説明に熱心に聞き入られていたとか。両陛下は予定の時間を大幅に超えて話を聞き、最後に「本当に大変でしょうけど、頑張ってください」などと、励ましのことばを贈られたということです。いやあ、素晴らしいお話ですね。不遜ながら、天皇陛下には、ぜひ、コロナ禍で不安のただ中にある国民にメッセージを寄せていただきたいと願っております。

 

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機内で読書をしました
 

その後、機内ではコーヒーを飲みながら、『日本文化の核心』松岡正剛著(講談社現代新書)を読みました。「知の巨人」と呼ばれる著者が「ジャパン・スタイル」を読み解いた本ですが、天皇制の起源にも言及していました。また、「結び」と「産霊」については非常にコンパクトに説明されており、勉強になりました。たとえば、「古代日本では男児のことをヒコ(彦)と、女児のことをヒメ(姫・媛)と呼ぶことが多いのですが、ムスコは『ムス・ヒコ』のこと、ムスメは『ムス・ヒメ』なのです」といったくだりなどです。今日のスターフライヤーの機内では、奥田理事長が天皇皇后両陛下に説明された資料と、『日本文化の核心』を続けて熟読し、「日本とは何か」を考える時間を持つことができました。

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羽田空港に到着しました

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まずまずの人出でした

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ラーメン店が再開していました

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味噌ラーメンが旨かった!

 

到着した羽田空港も、ここ半年に比べて人の数が多かったです。やはり、「GoToトラベル」の余波でしょうか? 
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、ずっと閉店していた札幌ラーメン店「雪あかり」もこの日は開いていたので、迷わずに入店。昼食として、味噌ラーメンをいただきました。いやあ、とっても旨かったです!

 

2020年7月27日 一条真也

「透明人間」

一条真也です。
映画「透明人間」を観ました。H・G・ウェルズの古典SFをベースとしながらも、現代を舞台にしたサイコスリラーにアレンジされています。恋人が自死した女性の物語ということで、最初はグリーフケア映画の予感がして鑑賞しました。実際はグリーフケアとは無縁でしたが、殺された肉親の復讐という要素はありました。想像していた以上の秀作であり、SFホラー映画の傑作でした。



ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『ゲット・アウト』や『パージ』シリーズなどのジェイソン・ブラムが製作を担当したサスペンス。自殺した恋人が透明人間になって自分に近づいていると感じる女性の恐怖を描く。メガホンを取るのは『アップグレード』などのリー・ワネル。『アス』などのエリザベス・モス、『ファースター 怒りの銃弾』などのオリヴァー・ジャクソン=コーエン、『キリング・グラウンド』などのハリエット・ダイアーのほか、オルディス・ホッジ、ストーム・リードらが出演する」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「天才科学者で富豪のエイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)の恋人セシリア(エリザベス・モス)は、彼に支配される毎日を送っていた。ある日、一緒に暮らす豪邸から逃げ出し、幼なじみのジェームズ(オルディス・ホッジ)の家に身を隠す。やがてエイドリアンの兄で財産を管理するトム(マイケル・ドーマン)から、彼がセシリアの逃亡にショックを受けて自殺したと告げられるが、彼女はそれを信じられなかった」



「透明人間」は、ユニバーサル・スタジオの礎を築くモンスターの世界の新たなる幕開けとなる「ダーク・ユニバース」シリーズの第2弾です。ブログ「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」で紹介した第1弾は、トム・クルーズを主演としながらも、期待したほどのヒットになりませんでした。同作は、1932年製作の「ミイラ再生」を新たによみがえらせたアクションアドベンチャーで、エジプトの地下深くに埋められていた王女の覚醒と、それを機に始まる恐怖を活写しているのですが、あまり怖くなかったです。ホラー映画という感じではなかったですね。



ユニバーサルといえば、モンスター映画の老舗として知られますが、同社が「アヴェンジャーズ」や「ジャスティス・リーグ」ばりのフランチャイズ企画として立ち上げたのが「ダーク・ユニバース」です。自社の財産である怪物キャラを再生させていくのが目的だと言えるでしょう。「ダーク・ユニバース」では、1920〜1950年代にユニバーサルが精力的に作っていた「ユニバーサル・モンスターズ」シリーズより、「魔人ドラキュラ」「フランケンシュタイン」「ミイラ再生」「透明人間」「フランケンシュタインの花嫁」「狼男」「オペラの怪人」「大アマゾンの半魚人」などの中からリブート作品を製作していく企画です。


「ダーク・ユニバース」のFacebook公式ページなどのSNS上では、ラッセル・クロウハビエル・バルデムトム・クルーズジョニー・デップソフィア・ブテラが一同に介した写真が公開されていますが、とんでもない豪華メンバーたちが新時代のモンスター映画で競演してくれることになりそうです。「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」の公開後、ブログ「美女と野獣」で紹介した映画を手掛けたビル・コンドン監督が、1935年の名作「フランケンシュタインの花嫁」で新たにメガホンを取り、ハビエル・バルデムフランケンシュタインを演じるという話がありましたが、まだ実現していません。さらには、、ジョニー・デップが透明人間を演じるという話もありましたが、結局は実現しませんでしたね。

 

第1弾の大作が期待以上のヒットにならなかったためにダーク・ユニバースは打ち切りかとも囁かれましたが、低予算の700万ドルで作られた第2弾の「透明人間」が全米で2月28日に公開スマッシュヒットし、5ヵ月遅れで日本公開されたのです。透明人間のモンスター映画というよりは、見えない存在に怯えて精神が病んでいくサイコホラーとして作られていますが、これが大成功。ウェルズの『透明人間』はこれまでに何度も映画化されていますが、本作が最高傑作ではないでしょうか?



透明人間誕生のきっかけも、これまでのように、ただ新薬を飲んで全身が透明化するという設定ではありません。もともと、その設定だと色々と無理があるというか、突っ込み所が多かったです。しかし、今回の「透明人間」では、新進気鋭の光学の研究者が驚くべき方法を思いつきます。そして、21世紀の透明人が誕生するわけですが、これ以上はネタバレになるので書けません。悪しからず。



今回の「透明人間」はとにかく怖いです。透明人間そのものの本質や恐怖をよく描いていました。見えない存在というだけでも怖いのに、それが自分を攻撃してくるとしたら、その怖さはハンパではありません。どんな格闘技の達人だって、銃やナイフを持っていたって、透明人間の敵ではありません。どこかの国がこんなものを実際に兵器として開発したら、戦場では無敵でしょうね。そんな無敵の透明人間に立ち向かうヒロインのセシリアを演じたエリザベス・モスがすごく良かったです。見えない敵と戦う知恵も素晴らしいし、後半の奮闘ぶりは「エイリアン」の女主人公を演じたシガニー・ウィーパーを連想させました。



 よく考えたら、フランケンシュタインの怪物や吸血鬼ドラキュラや狼男やミイラ男や半魚人などよりも、透明人間のほうがずっと怖いことに気づきました。そして、透明人間というのは悪魔や悪霊のメタファーなのだということにも気づきました。それは「不可視の邪悪なるもの」とでも呼ぶものなのです。「不可視の邪悪なるもの」ならば、ウイルスのメタファーとも言えますね。ウイルスといえば、「コロナマン」というモンスターがいずれ誕生するかも? まあ、現在は世界中どこでも、「俺はコロナだ!」と叫ぶだけで皆が逃げて行きますけどね。(苦笑)

 

それから、この「透明人間」という映画、H・G・ウェルズというよりも江戸川乱歩の雰囲気があると思いました。ひょっとすると、ジェイソン・ブラムリー・ワネル監督のどちらかが乱歩ファンなのかもしれません。マッドサイエンティストとしての光学博士は『鏡地獄』の主人公のようですし、姿が見えないのに人の気配がするという不安は『人間椅子』に通じる世界、セシリアが屋根裏部屋で体験する恐怖(映画の中で最も怖いシーンでした)は『屋根裏の散歩者』に通じる世界でした。ということは、ラストシーンは『お勢登場』でしょうか。おっと、これ以上はネタバレになりますので、興味のある方は劇場でご覧ください。マスクをお忘れなく!

 

2020年7月27日 一条真也

「コンフィデンスマンJP プリンセス編」

一条真也です。
日本映画「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」を観ました。コロナ禍で鳴りをひそめている映画館ですが、本来は5月に公開されるはずだったこの作品の公開が「映画館復活ののろし」的なイメージがありました。ところが、7月23日の公開日に東京都の366人をはじめ、日本全国で感染者数が激増。「第2波」の到来が確実なものとなりました。まことに不運なめぐりあわせですが、この映画をずっと観たかったのと、亡くなった三浦春馬さんの供養の気持ちも込めて、思い切って映画館に足を運びました。もちろん、ソーシャルディスタンスに配慮して、席の間隔が空けられていました。作品は非常に面白く、今回も気持ち良くダマされました!



ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「2018年に放映されたドラマ『コンフィデンスマンJP』の劇場版シリーズ第2弾。香港でし烈なだまし合いを繰り広げた詐欺師たちが、今度は大富豪一族が抱える遺産を狙う。シリーズの演出・監督を務めてきた田中亮がメガホンを取る。ダー子、ボクちゃん、リチャードを演じる長澤まさみ東出昌大小日向文世のほか、竹内結子江口洋介広末涼子らシリーズに登場した面々に加え、ビビアン・スー北大路欣也デヴィ・スカルノらが新たに出演する」

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ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「世界屈指の大富豪として知られるレイモンド・フウ(北大路欣)が逝去し、彼の子供たちのブリジット(ビビアン・スー)、クリストファー(古川雄大)、アンドリュー(白濱亜嵐)が遺産をめぐってにらみ合うが、相続人として発表されたのは所在のわからない隠し子のミシェル・フウだった。すると、10兆円とされるばく大な遺産を狙うため、世界各国から詐欺師たちが集まりミシェルを装う事態になり、信用詐欺師のダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)もフウ家に潜り込む」



「コンフィデンスマン」というのは日本語で「信用詐欺師」のことです。「コンフィデンスマンJP」のドラマや映画で仕掛けられる詐欺は非常に大掛かりです。中には「それは絶対ありえないだろう」というリアリティのない案件も多く、突っ込みどころも満載なのですが、まあ面白いからいいでしょう。大掛かりな詐欺を描いた映画といえば、「スティング」(1973年)が有名ですね。信用詐欺(コンゲーム)を扱った代表的な映画です。1936年のシカゴの下町を舞台に、3人組の詐欺師たちが繰り広げる痛快コメディ映画です。監督はジョージ・ロイ・ヒルアメリカン・ニューシネマの代表作「明日に向って撃て!」で共演したポール・ニューマンロバート・レッドフォードが再共演を果たし大ヒットしました。 第46回アカデミー賞作品賞受賞作品であり、2005年に合衆国・国立フィルム保存委員会がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の1つでもあります。



前作に続いて、「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」でも、主役のダー子に扮する長澤まさみの演技が最高です。変顔も炸裂していて、役者魂を感じさせます。また、彼女は詐欺のために航空会社のCAやファッションモデルなど多様な役を演じるのですが、どれも良く似合う。スタイルが抜群なのでどんなコスプレも似合ってしまいます。ブログ「キングダム」で紹介した日本映画では、古代中国の辺境に住む「山の民」を武力で束ねる美しき女王・楊端和を演じましたが、セクシーなアクションシーンで観客を魅了しました。彼女なら、ワンダーウーマンにだってなれると思います。近作の「マザー」では祖父母殺害事件を犯す息子を溺愛する母親役を怪演しているそうですが、この作品もぜひ観たいです。

 

「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」の内容は、正直、ドラマを観ていないとわからないキャラやエピソードが満載です。じつは、この「コンフィデンスマンJP」というドラマ、シリーズで10作、プラスSPドラマ「運勢編」があるのですが、それらは必ずしも正しい時系列で放送されていませんでした。脚本家の古沢良太氏は、放送前のインタビューで、「とにかく暗くならないよう、明るく痛快にというのは考えています。1話1話が単独の話になっていて、あまり前後の話に相関関係がないようにしているので、放送される順番で起こる出来事は、必ずしも時系列ではないという含みを持たせたかったんです。だから、『あれはいつ起こったんだろう?』と思って見てほしいと思います」と述べています。なお、ドラマ「コンフィデンスマンJP」の時系列については、このブログが非常に参考になります



ブログ「コンフィデンスマンJP  ロマンス編」で紹介した劇場版第1弾は、とにかく面白かったです。特に、恋愛詐欺師ジェシーを演じた三浦春馬、香港の女帝ラン・リウを演じた竹内結子が良かったです。この劇場版では、長澤まさみ東出昌大小日向文世といったおなじみの役者陣の他にも、ドラマの各編で騙される役を演じた江口洋介(第1話・ゴッドファーザー編)、吉瀬美智子(第2話・リゾート王編)、石黒賢(第3話・美術商編)、小池徹平(第9話・スポーツ編)、佐藤隆太(第10話・コンフィデンスマン編)といった面々が登場し、さながらオールスター映画のようでしたね。子どもの頃に観た夏休みの「東映まんが祭り」で、一話完結の「仮面ライダー」に登場するショッカーの怪人たちが劇場版で一同に会した時と同じ「お得感」がありました。(笑)今回の「プリンセス編」でも、江口洋介石黒賢が前回に続いて出演し、新たに広末涼子(SPドラマ・運勢編)、前田敦子(第7話・家族編)が参加しています。



しかし、「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」で一番印象に残ったのは、なんていってもヒロインのコックリを演じた関水渚です。広瀬すずにそっくりで驚きましたが(実際、2人はともに22歳で身長も同じ159センチ!)、彼女は映画「町田くんの世界」(2019年)に主演した新人だそうです。「町田くんの世界」は未見ですが、「舟を編む」で日本アカデミー賞最優秀監督賞を最年少で受賞し、世界から注目を集める石井裕也監督の作品です。主人公の町田くんは運動も勉強も苦手で、見た目も地味ですが、人を愛する才能がズバ抜けていました。そんな彼が初めて“わからない感情”を知った時、周りのすべての人を巻き込んでいくドラマだとか。“町田くん”こと町田一を演じた細田佳央太、ヒロインの猪倉奈々を演じた関水渚のW主演ですが、2人は1000人を超えるオーディションから大抜擢され、演技経験ゼロのまま同作に主演を果たしました。



関水渚は1998年6月5日、神奈川県出身。一青窈やMayJ.などを輩出した森村学園中等部・高等部卒業。ホリプロ所属。石原さとみに憧れて芸能界を志し、2015年に行われた「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」のファイナリストに選ばれたことをきっかけに芸能界入りしました。2017年4月「アクエリアス」のCMでデビュー。この年に大学に進学。グラビアアイドルとしては2017年9月6日発売の「週刊少年サンデー」、11月13日発売の「ヤングマガジン」で初登場にして表紙を飾りました。初の主演映画「町田くんの世界」では、第43回山路ふみ子映画賞山路ふみ子新人女優賞、第74回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、第62回ブルーリボン賞新人賞、第93回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞を受賞。10月クールのドラマ「4分間のマリーゴールド」でドラマ初出演。そして、2020年7月23日公開の「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」にダー子の子猫としてチームに新加入するコックリ役で出演したわけです。これからの日本映画界にとって期待の大型新人で、広瀬すずとの共演も楽しみ!



不倫騒動でバッシングされ続けた東出昌大の姿もスクリーンで久々に観ました。唐田えりかとの不倫が報じられ、妻が妊娠・出産、育児を経験している大変な最中のアバンチュールに「東出不倫」は主婦を中心に猛バッシングに発展しました。妻・杏は離婚に向け、弁護士を立てたとも報じられています。そんな“崖っぷち”の東出でしたが、実はいま、彼のもとに仕事のオファーが殺到しているといいます。ところが、新型コロナウイルスが世界を席巻したため、テレビ番組は再放送へとシフト。6月にはアンジャッシュ渡部建の「多目的トイレ不倫」、それから芸能界から引退を表明した木下優樹菜に世間の注目がスイッチしたのです。渡部、木下と、東出の後に続いた不倫スクープがあまりにゲスすぎたため、形勢逆転。東出不倫の罪深さが薄らいできたというわけです。SNSでは、「渡部に比べて、東出の方が浮気相手を大事に扱ってる感」「ユッキーナみたいに全方位に網張ってるわけじゃないから、浮気相手と純愛と言われたらそんな気もする」という声も上がっています。



さて、東出が復活できたもう1つの理由として、「コンフィデンスマンJP」シリーズの主役である長澤まさみが堂々と東出のサポートを明言したことが大きかったようです。映画宣伝のため、長澤、東出、小向の3人があるインタビューを受けたとき、記者から「今後、どんな役を演じたいですか」と聞かれた東出は「今の僕に‟次”を語る資格はありません」と答えたところ、長澤は「そんなこと言わないでよ」と言って泣き出したそうです。それを見ていた関係者は「東出さんのしたことは、女性にとって許せないことであり、それは長澤さんも感じていることでしょう。しかし彼女には“これまで映画を共に盛り上げてきた戦友”という思いもあるようです」と語っています。長澤は東出について「このまま俳優として終わってほしくない」いう思いがあり、「コンフィデンスマンは3人じゃないと!」と宣言したことで、今後もシリーズで東出さんの続投は決定的となったとか。当初は3作目のお蔵入りもささやかれていましたが、来年3月以降にハワイロケをする方向で話が進んでいるとか。



そして、亡くなった三浦春馬について。
今月19日、人気俳優として活躍していた彼はクローゼットの中で首を吊って死亡していたそうですが、わたしは一条真也の映画館「東京公園」で紹介した映画を観て以来のファンでしたので、かなりショックを受けました。まだ30歳と若く、これからが楽しみだったのに非常に残念です。彼は生真面目な性格で、ネットでの誹謗中傷などを憎んでいたとか。今年1月、彼は、スキャンダルを報じられるなどした有名人に対するネット上のバッシングが激烈を極める現状に「立ち直る言葉を国民全員で紡ぎ出せないのか」との思いをツイッターに投稿し、世間の風潮に異論を唱えました。じつは、それは友人である東出昌大を思ってのことでしたが、彼の投稿に対しては批判的な声が多く寄せられ、彼自身もネットでの誹謗中傷に悩まされることになります。



 三浦春馬が投稿した意図は不明ですが、東出昌大は何か感じ取ったことがあったようです。映画の宣伝のために出演した番組で、この件には触れずに「凄い頑張り屋さんで大好きだった彼なので、彼のした選択を言い訳にして、僕らが頑張らないっていうことを決めちゃったら、それこそ彼に対して申し訳が立たない」と声を絞り出しました。騒動からの再起を図る東出にとって、亡き友人からのメッセージは大きかったようです。また、長澤まさみ三浦春馬との突然の別れに「弟のように思っていたところがあったのでとても残念」と沈痛な面持ちで話しました。「コンフィデンスマンJP プリンセス編」に三浦春馬は天才恋愛詐欺師のジェシー役で出演していますが、ダー子を演じた長澤まさみと息の合ったダンスや掛け合いを見せてくれました。スクリーンの中で生き生きと動き回る彼がもうこの世にはいないということが信じられないほどの躍動感でした。ルックスも演技もダンスも歌(桑田佳祐から「歌がうまい」と太鼓判を押された)も最高レベルだった彼の自死は、本当に残念でなりません。

死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)

 

拙著『唯葬論』(サンガ文庫)にも書きましたが、わたしは、すべての人間の文化の根底には「死者との交流」という目的があると考えています。さらに、拙著『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)に書いたように、映画とは「死者との再会」という人類普遍の願いを実現するメディアであると思っています。そう、映画を観れば、わたしは大好きなヴィヴィアン・リーオードリー・ヘップバーングレース・ケリーにだって、三船敏郎高倉健菅原文太にだって再会できます。そして、三浦春馬の出演映画を観れば、いつでも彼に会えるのです。しかし、それにしても、あまりにも才能豊かだった彼の若すぎる死が惜しまれてなりません。



コロナ禍の中で散っていった三浦春馬は、アメリカ人にとってのジェームス・ディーンのような「永遠の生」のアイコンとなる可能性を秘めているのではないでしょうか。自死の直後に公開された「コンフィデンスマンJP  プリンセス編」を劇場で観ることは、わたしにとっては彼の葬送儀礼であり、そのとき映画館はセレモニーホールと化したのです。
謹んで、故人のご冥福を心よりお祈りいたします。合掌。

 

2020年7月26日 一条真也

『実践 幸福学』

実践 幸福学 科学はいかに「幸せ」を証明するか (NHK出版新書 612)

 

 一条真也です。
24日、親族の結婚式に参列しました。コロナ禍の中にあっても、やはり結婚式とは幸福のセレモニーであると再確認しました。新郎新婦の末長いお幸せをお祈りします。
『実践 幸福学』友原章典著(NHK出版新書)を読みました。「科学はいかに『幸せ』を証明するか」というサブタイトルがついています。著者は青山学院大学国際政治経済学部教授。1969年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。ジョンズ・ホプキンス大学大学院Ph.D(経済学)。米州開発銀行世界銀行コンサルタントニューヨーク市立大学助教授、UCLA経営大学院エコノミストを経て現職。

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本書の帯

 

本書の帯には「日本はG7最下位の男性優位社会」「でも、女性の幸福度が圧倒的上。その理由とは?」「男女間の幸福度格差は世界一!」「行動経済学の俊英が、科学的データをもとに『幸せ』のあり方を提唱する」と書かれています。

f:id:shins2m:20200518170255j:plain本書の帯の裏

 

帯の裏には、「お金に執着する人は、不幸になる?」「幸せも不幸も伝染する?」「自分にお金を使うより、他人に使ったほうが幸せになれる?」「幸運な人=幸せな人?」「150もの最新論文を参照してまとめあげた『幸福学』の決定版!」と書かれています。

 

さらに、カバー前そでには、以下の内容紹介があります。
「『幸せはお金では買えない?』『お金に執着する人は、不幸になりやすい?』『お金持ちは、貧乏な人よりも幸せ?』・・・・・・こうした疑問にに科学はどう答えるのか。行動経済学の専門家が、最新の『幸福学』の知見とデータをもとに、一人一人の特性に合った『幸せ』を提唱する」

 

本書の「目次」は、以下の構成になっています。

「まえがき」

幸せペンタゴン・テスト――あなたの幸せ度をチェックする

第1章 誰がいったい幸せか

1 幸せな人生を予知する
  ――デュシェンヌ・スマイル

2 お金でできること、できないこと

  ――幸福の逆説への反証

3 ちやほやされたい

  ――年齢、学歴、美容整形

4 誰が勝ち組で、誰が負け組なのか

  ――キャリア、結婚、子育て

5 性格と健康の関係で見る幸せ

  ――心身一如

6 幸運は自分で切り開く

  ――幸運な人の特徴 

第2章 幸せとは目指してつかむもの

1 危機に対する防衛本能

  ――闘争・逃走本能

2 ストレスを溜め込まない対処法

  ――科学のお墨付きの気分転換

3 ストレスに強い人、弱い人

  ――脳の反応

4 幸せな人をまねてみよう

  ――ポジティブ心理療法

5 無意識に行う考え方の癖

  ――認知のゆがみ

6 なりたい自分になる

  ――アファメーション

第3章 幸せとはありのままを 
            受け入れるもの?

1 今、この瞬間に意識を向ける

  ――マインドフルネス

2 感情を言葉にしてみよう

  ――ラベリング

3 マインド・ワンダリングでストレス進化

  ――デフォルト・モード・ネットワーク

4 マインドフルネスで変わる

  ――脳あ遺伝子の変化

5 アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)

  ――価値観と行動

6 伸びしろが期待されるマインドフルネス

  ――第三世代の認知行動療法

第4章 自分に合った幸せを見つける 

1 頼ること、頼られること

  ――社会とのつながり

2 信じる者は、幸せになる?

  ――宗教やスピリチュアル

3 最強の処方箋はどれだ

  ――ポジティブ心理療法vs.マインドフルネス

4 人生の季節に合った生き方をする

  ――幸せ成分の調合法

「あとがき」
「出典一覧」

 

「まえがき」の冒頭を、著者はこう書きだしています。
「私は大学で幸福の経済学を教えています。幸福の経済学は、行動経済学の一分野で、心理学や社会学神経科学とも関係がある学際的な分野です。お金で幸せになれるかなどは、幸福の経済学を説明する分かりやすい例です。行動経済学は、心理学と経済学が融合したもので、心理学的な事実と整合性のあるように経済モデルを構築します。また、神経経済学は、神経科学と経済学や心理学が融合したもので、神経科学(いわゆる脳科学)に基づいて経済的な意思決定を解明しようとします。ここ数十年で急速に発展した分野で、いずれも最近、人気の分野です。

 

幸せについては、心理学、神経科学、政治経済学をはじめ、いろいろな学問分野で研究されているそうです。ただ、同じ対象を異なる角度から見ているだけで、脳の反応であろうが、心の動きであろうが、結局、似たような結論に集約していくとして、著者は「幸せのために重要なこと。それらは意外と単純です。人生の価値観をしっかり持ち、感謝や親切の気持ちを忘れてはいけません。お金はあるに越したことはありませんが、一般的に思われているほど重要ではありません。むしろ、身近な人を気遣って、安定した人間関係を築くことが大事です。また、楽観的に考えられ、人生を変えられると思う人は、幸せを引き寄せています」と述べています。

 

本書には、幸せに感じるための工夫がまとめてありますが、150近い論文を参照して執筆された知の結晶だそうです。科学に基づいてよりよい生き方の工夫が記された本書には、類書にはない次のような特徴があるとして、著者は「まず、従来の幸福学で認知されている事柄は概観するに留め、最近の研究を踏まえて、新しい知見に大幅に紙面を割いています。また、おなじみのトピックスに関しても、新しい切り口を提供しています。幸福の逆説(お金では幸せになれない)や子育て(子育てで親は不幸になる)に対しては、お金の恩恵は否定されていないことや子育てで不幸になるわけでもないことを見ていきます。また、結婚による恩恵があることや共働きよりも専業主婦(主夫)のほうが幸せな可能性についても触れていきます」と説明します。

 

また、著者は「就活、婚活、子育て、定年、終活など、人生の節目だけでなく、日々の生活は、大変なことの連続です。そうした中で、誰でも幸せになるにはどうしたらよいかと考えているでしょう」と読者に問いかけます。本書の執筆も、科学的に信頼できる方法はないものかと思いながら、いろいろな文献を読んだことが始まりだといいます。そして、「多くの研究に共通していたことは、人とのつながりが重要だということです。結局、人は、社会性のある生物なのでしょう。一人では、幸せに生きられないようです」と述べています。まったく同感です。

 

第1章「誰がいったい幸せか」の1「幸せな人生を予知する――デュシェンヌ・スマイル」では、「将来おひとり様か否かは卒アルで分かる?」として、カリフォルニア大学バークレー校の心理学者ハーカーとケルトナーが、女子大学の卒業アルバムの写真を使って研究を行ったことが紹介されます。彼女たちの写真の表情を分析することにより、その後の人生との関係を調べたわけですが、30年にわたる追跡調査の結果、「デュシェンヌ・スマイル」をする女性の多くは、幸せな人生を送っていたことが判明しました。デュシェンヌ・スマイルとは、「本物の笑顔」と呼ばれる表情のこと。フランスの神経学者デュシェンヌにちなんで名づけられましたが、大頬骨筋によって口角が上方外側に引き上げられるだけでなく、眼輪筋が収縮して、目の下の頬が上がったり、目の端にカラスの足跡のようなシワができる笑顔のことです。

 

ハーカーとケルトナーの研究結果について、著者は「デュシェンヌ・スマイルを見せた人たちが、その後の人生において、幸せに感じているのはなぜでしょうか」と疑問を提示し、以下の2つの可能性を紹介しています。1つは、「もともとの性格と精神的成長の伸びしろです。本物の笑顔は、良好な人間関係を築いたり、状況を適切に認知したりする能力を反映しています。幸せな環境作りがうまいわけです」というもの。もう1つは、「デュシェンヌ・スマイルが強い人ほど、年をとるにつれて、精神的に安定して、目標に向かって努力をするだけでなく、嫌な出来事にも捕らわれないようになっていきます。幸せになる素養があるだけでなく、人間的に成長し続けて、幸せを引き寄せるようになるのです」というものです。

 

わたしの専門テーマであるグリーフケアにおいてもデュシェンヌ・スマイルは重要な役割を果たすようで、著者は「配偶者を亡くす悲劇に見舞われた時、デュシェンヌ・スマイルを見せる遺族は、高い『レジリエンス(精神的回復力)』を示します。3年間以上生活を共にした配偶者の死後、約2年後までインタビューが行われ、その時の顔の表情を分析しました。すると、亡くなった配偶者の話をしている時に、デュシェンヌ・スマイルを見せた遺族ほど、配偶者を亡くした喪失から早く立ち直っていたのです」と述べています。この事実は、非常に興味深く感じました。

愛する人を亡くした人へ』(現代書林)

 

拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)にも書きましたが、わが社では葬祭部門のスタッフにも笑顔を求めています。営業や冠婚部門に笑顔が必要なのは当然ですが、葬祭部門には関係ないのではと思った人もいるかもしれません。しかし、それは誤った認識です。仏像は、みな穏やかに微笑んでいます。これは優しい穏やかな微笑みが、人間の苦悩や悲しみを癒す力を持っていることを表しています。葬儀だからといって、暗いしかめ面をする必要などまったくないのです。わが会社のセレモニーホールの「お客様アンケート」を読むと、「担当の方の笑顔に癒されました」とか、「担当者のスマイルに救われた」などの感想が非常に多いのですが、これは大変嬉しく思います。もちろん、葬儀の場で大声で笑ったり、ニタニタすることは論外ですが、おだやかな微笑は必要ではないかと思います。

孔子とドラッカー新装版』(三五館)

 

孔子とドラッカー 新装版』(三五館)でも「笑い」について書きましたが、「笑う門には福来たる」という言葉があるように、「笑い」は「幸福」に通じます。笑いとは一種の気の転換技術であり、笑うことによって陰気を陽気に、弱気を強気に、そして絶望を希望に変えるのです。さらに、地上を喜びの笑いに満たすことが政治や経済や宗教の究極の理想ではないだろうか。「笑い」のない宗教も哲学もどこかいびつで、かたよっているように思う。実際、ソクラテスはよく笑ったし、老子もよく笑った。如来もそうだし、ブッダもしかりである。さらには、孔子もよく笑っていたと想像される。『論語』の中には、孔子が弟子をからかってみたり、冗談を言ってみたり、非常に和やかなムードが満ちているのです。ちなみに、ドラッカーもユーモアにあふれた人で、よく笑ったそうである。

 

笑顔など見せる気にならないときは、無理にでも笑ってみせることです。アメリカの心理学者ウイリアム・ジェイムズによれば、動作は感情に従って起こるように見えるけれども、実際は、動作と感情は並行するものであるといいます。だから、快活さを失った場合には、いかにも快活そうにふるまうことが、それを取り戻す最高の方法なのです。不愉快なときにこそ、愉快そうに笑ってみることが大切ですね。著者も、「脳をだまして幸せになろう」として、「実は、作り笑顔でも、ストレスには、よりよく対応できます。口にお箸を挟むとデュシェンヌ・スマイルみたいになりますが、こうした作り笑顔でも効果があるのです。ストレスで心身が緊張していると、自律神経のバランスが崩れ、心拍数が高くなります。そこで、ストレスがかかる時に、人為的に笑顔を作ります。すると、ストレスから回復する時の心拍数が低くなるのです」と述べています。

 

2「お金でできること、できないこと――幸福の逆説への反証」では、「プライスレス――幸せはお金で買えない?」として、著者は以下のように述べています。
「一般的に、お金が手に入ると幸せになると思われています。しかし、『幸福の政治経済学』で著名なフライとスタッツァによると、必ずしもそうではありません。たとえば、宝くじに当たった人は、幸せになっていません。一時的に幸せに感じますが、その後、借金を頼まれるなど悩み事が増えるからです。また、お金に執着する人は不幸になりやすいとされています。ほとんどの人は、満足のいくお金を手にできず、失望感を味わうだけでなく、お金を稼ぐ過程で、人間関係を犠牲にすることも多く、孤独を感じることも原因です。古典的な心理学の知見は、概してお金の効能に否定的です。経済学の研究でも、幸せはお金で買えないという有名な見解があります。国家が経済的に成長しても、国民一人ひとりが幸せに感じていないからです。こうした状況は、『幸福の逆説』(または「イースタリン・パラドックス」)と呼ばれています」

 

所得が増えても幸せにならない。この奇妙な現象には、いくつかの説明があるとして、そのうちの2つを著者が紹介します。1つは、周囲との比較です。著者は、「私たちは、自分の所得が増えても、周りの所得も増えていれば、あまりありがたみを感じません。所得の絶対額だけが問題なのではなく、むしろ、自分の所得を、周囲の人たちの所得と比べて、どう感じるかという相対性が大事なわけです。特に、現在のように他人との交流が盛んになると、自分の所得が高いとか低いとかいうことに敏感になります。身近な人としか接しない場合に比べ、比較する相手の数も多くなるからです」と述べています。もう1つは、「私たちは、新しい環境に適応(順応)します。所得が増加しても、やがてそれを当たり前に思ってしまうのです。増加した所得による快楽の変化に慣れてしまうことは、『快楽の踏み車』と呼ばれます。また、期待も変化します。所得が増えて社会的な地位が上がると、より多くの所得を望むようになります。こうした期待値の変化に注目した考え方は、『野心の踏み車』と呼ばれます。このため、せっかく所得が増えても、思ったほど幸せに感じないことになります」と述べています。

 

「幸せを招くお金のうまい使い方」として、著者は「結局、お金で幸せになれるのでしょうか」と読者に問いかけた後、「結論として、ある程度の影響はありますが、それほど重要とまでは言えません。もちろん、お金はないと困りますし、あったほうがよいに違いありません。ただ、他の要因のほうが、より大きな影響があります。経済学的には、所得よりも失業やインフレのほうが重要だとされています。失業は幸福感を著しく低下させるだけでなく、時間がたっても元の幸福感には回復しないからです。失業の場合、所得の変化のようには適応できず、慣れてしまうことはありません。また、心理学的にも、物質的な快楽は長続きしないことが指摘されています。このため、幸福感を改善したいのであれば、所得(お金)よりも影響力のある要因のほうが重要だと考えられています」と述べています。

 

また、お金の使い方には、体験以外の知見もあります。自分にお金を使うより、他人に使ったほうが幸せになれるということです。著者は、「毎月の支払いのうち、自分へのご褒美や経費などの自分のために使う支払いは、幸福感とは関係が見られません。しかし、他人への贈り物や献金をした時には、幸福感が高まります。こうした他人を助けたりする行動は、『向社会的』と言われます。お金を使う時には、社会性のあるほうが幸せに感じるのです。向社会的な支出が幸福感を高めることは、文化的な違いにかかわらず、万国共通の性質です」と述べています。確かに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に際しても、医療従事者などに多額の寄付をする有名人が多かったですが、向社会的な支出が幸福感を高めたのかもしれませんね。これを「売名行為」などとケチをつける人がいますが、誰も損をしなくて得をするわけですから、素晴らしいことだと思います。

幸せノート』(現代書林)

 

本書の中で最も気になったのは、第1章「誰がいったい幸せか」の4「誰が勝ち組で、誰が負け組なのか――キャリア、結婚、子育て」です。特に「結婚すれば幸せになるのか否か」ということが気になりました。なぜなら、わたしは『幸せノート』(現代書林)を世に問うたことがあるからです。この問いについて、「やっぱり結婚で幸せになる」として、著者は「実は、結婚している人のほうが、幸せだと感じています。未婚の人、離婚した人、死別した人や片親で子育てをしている人(シングルマザーやファーザー)よりも、幸せに感じる傾向があるのです。この傾向は、性別にかかわらず、男女ともに当てはまります。これは、結婚によって人との結びつきを強く感じるためだとされています。常に、身近に話し相手がいると、孤独から解放されたり、ストレスが解消されたりするからです。予想通りの結果かもしれません。人には社会性があるからです。社会性とは、一人で生活するのではなく、社会とつながりながら生きる性質のことです。結婚による恩恵として、親や兄弟、友人とは違った種類の対人関係を築いていることになります」と述べています。

 

次に、結婚→幸せ、それとも、幸せ→結婚、という因果関係が気になりますが、著者は療法の効果が存在するとして、「まず、幸せな人は結婚する傾向があります。将来結婚する人とずっと独身の人の幸福感を比べると、一部の層(30歳前後時点で独身である人)を除き、将来結婚する人のほうが、ずっと独身の人よりも、独身時代における生活満足度が高いことが示されています。また、幸せな人が結婚しやすいことを考慮しても、結婚すると幸せになります。結婚による恩恵には、健康(身体的・精神的)を含め、いろいろ指摘されています。なかでも、既婚、独身を問わず、加齢などに伴い、私たちの幸福感が低下する時期がありますが、結婚はその低下を緩和してくれます」と述べています。

 

また、「良好な男女関係を長続きさせるには」として、著者は「結婚生活の継続は、配偶者の喪失や離婚に比べて、毎年約1000万円の価値があるという研究があります。また、配偶者が最良の友であると、そうでない場合と比べて、結婚による幸福感が高くなります。特に、男性よりも女性のほうが、その効果が大きいとされます。夫が妻の最良の友ならば、妻の幸福感は大幅に増進するわけです」と述べています。この言葉はじつに耳が痛いですが、つねに妻への感謝を忘れてはいけないと思いました。

 

5「性格と健康の県警で見る幸せ――心身一如」では、著者は「健康は、幸福感を左右する重要な要因です。年齢や性別にかかわらず、身体的な健康は、幸福感と関係があります。また、実際の健康状態はもちろんのこと、健康だと思っている人ほど幸せに感じます。自己の健康評価と幸福感の相関は、健康診断の結果と幸福感の相関よりも強いのです。こうした結果は、多くの国において当てはまります」と述べています。ブログ『幸福の習慣』で紹介した本のテーマは「ウェル・ビーイング」でした。これは、WHOの「健康憲章」の中に登場する言葉です。「ウェル・ビーイング」とは「幸福・福利・健康」などと訳されています。つまるところ、人間が「満足な状態」にあることを示す言葉ですね。わが社にとっては非常に懐かしい言葉で、創立20周年のスローガンが「Being! Wellbeing」、すなわち「ウェル・ビーイングでいよう!」でした。また、現在は「Ray!」と題されているわが社の社内報も、その前は「Wellbeing」というタイトルでした。ですから、サンレーグループの社員には馴染みのある言葉なのです。当時、財団法人・日本心身医学協会の理事長を務めていた佐久間進会長が導入した言葉ですが、現代社会のキーワードになっていると知り、佐久間会長の先見性に驚かされました。


サンレーグループ創立20周年のスローガン

 

6「幸運は自分で切り開く――幸運な人の特徴」では、「幸運な人は幸せな人」として、著者は「幸せ(happiness)の語源は、運や偶然(hap)です。幸運な人は、そうでない人に比べて、人生の満足度が高くなっています。人生全般だけでなく、家族、経済状況、健康、仕事などの個別の質問に対しても、高い満足度を示します」と述べます。また、幸運な人には、いくつかの特徴があるとして、「まず、幸運な人は、偶然の出会いやチャンスに恵まれています。また、夢や目標が実現しやすく、逆境をチャンスに変える力があります。さらに、無意識のうちに正しい選択をしています。一方、不運な人は、その反対です」と述べます。

 

さらに、「幸運な人は未来志向」として、著者は「幸運な人の考え方には、不運も幸運に変えてしまう特徴があります。幸運な人は、不運な出来事にあっても、よいところを探します。最悪の結果を想像し、それに比べればまだましと考えるので、交通事故で足を骨折しても、命が助かってよかったと思うのです。このように、気持ちをうまく切り替えられると、運気が戻ってきます。また、不運な人と比べて、自分のほうが恵まれていると思えます。そして、一見、不運に見える出来事でも、長い目で見ると幸運をもたらすと考えているのです」と述べるのでした。確かに大成功した実業家などを見ると、みんな揃って未来志向というか、何事も陽にとらえるところがありますね。いわゆる「ポジティブ」思考の持ち主ですね。

 

「ポジティブ」というキーワードは、第2章「幸せとは目指してつかむもの?」の4「幸せな人をまねてみよう――ポジティブ心理療法」でも登場します。「ポジティブな感情で成功する」として、著者は「幸せな人は、自分をポジティブに評価しているので、自信があります。他人にもポジティブな態度で接し、社交的かつ活動的で、好奇心も旺盛です。このため、ストレスと上手に向き合え、余暇の活動や人との関わりを楽しむ傾向が見られます。また、喫煙や暴飲暴食、薬物やアルコールの乱用のように、健康を害することをしません。こうしてみると、幸福感は、成功をもたらす行動と大いに関係しているのが分かります」と述べています。

 

それだけではありません。「ポジティブな感情」で表される喜びなどの幸せは、仕事、人間関係や健康に見られる成功の原因と考えられているとして、著者は「幸せな人は、その後の人生において、生産的な仕事をしたり、満足のいく人間関係を構築したり、心身の健康を享受したりしているからです。就職しやすく、業績を上げ、上司による評価も高いだけでなく、仕事によって燃えつきることもあまりありません。健康的で、友人が多く、社会支援のネットワークを持っています。その源となっているのが、ポジティブな感情です。つまり、成功が人を幸せにするだけでなく、ポジティブな感情が成功に導くわけです」と述べます。

f:id:shins2m:20200518171551j:plain心ゆたかな社会』(現代書林)  

 

第3章「幸せとはありのまま受け入れるもの?」では、1「今、この瞬間に意識を向ける――マインドフルネス」として、現在注目されている「マインドフルネス」が取り上げられます。わたしも、最新刊『心ゆたかな社会』(現代書林) で、マインドフルネスに言及しました。著者は、「マインドフルネスとは、価値判断することなく、現在のこの瞬間に意識を向けることです。無理にポジティブに考える努力をすることではありません。過去でも未来でもなく、現在に注意を向け、今起こっている事実を客観的に観察するように努めます。すると、ネガティブな思考や感情に陥りにくくなります」と説明しています。

 

また、著者は、以下のように述べています。
「マインドフルネスの定義は分かりにくいかもしれません。初めて聞いたのであれば、なおさらです。分かりやすいイメージは、『瞑想』です。マインドフルネスという概念は、原始仏教にルーツを持ちます。ブッダのアプローチが、禅や東南アジアのヴィパッサーナ瞑想を経て、現代のマインドフルネスに取り入れられました。ただし、仏教に帰依するわけではなく、僧侶のようなつらい修行も積みません。現代のマインドフルネスは、宗教性を排除し、瞑想や『ヨガ』などを利用して実践されています。また、その効果は科学的にも証明されてきています。マインドフルネスに基づいた瞑想を行うと、比較的短い期間にもかかわらず、心身への効果が表れます。また、その効果を実感するには、何年にもわたる長期間の瞑想が必要ではないのです」

 

2「感情を言葉にしてみよう――ラベリング」では、「言葉がネガティブな感情を解放する」として、著者は「もし、過去に引き戻されて怒りを感じたら、過去の怒りが癒えていないと自覚するように努めてみましょう。自分を客観的に観察するわけです。そして、怒ってしまったら、何度でもその自覚をします。こうして、機会あるごとに自覚の訓練を続けていると、記憶が作り出す過去の怒りが徐々に消えていきます。自分を客観的に見る際には、言葉にして、『私は怒っている』と言ってみるとよいでしょう。そして、言葉に意識を向け、その言葉を繰り返します。このような手法は、『ラベリング』と言いま」と述べていますが、これなど誰にでも実践できる良い方法だと思います。

 

3「マインド・ワンダリングでストレス悪化――デフォルト・モード・ネットワーク」では、「気分が落ち込むマインド・ワンダリング」として、著者は「私たちは、常に余計なことを考えています。会議に参加しながら、『このあとビールでも飲もうかな。おつまみは・・・・・・』と思うのはよくあることです。ただ、おつまみを思案している間にも、メモをする手は休みません。無意識のうちに動き続けています。こうした心の状態は、『マインド・ワンダリング』と呼ばれます。目の前の行為に集中していない状態です。通常、マインド・ワンダリングは、私たちを不幸な気分にしています」と述べていますが、これは初めて知った言葉でした。勉強になりました。

 

また、著者は「みなさんもよく、昔の出来事を思い出してクヨクヨすることはないでしょうか」と読者に問いかけ、「これは、すでに存在しないもの、つまり、記憶が生み出した妄想に悩んでいる状態です。また、将来を心配して不安になることもあるでしょう。明日、○○したらどうしようとソワソワしてしまうことです。これは、まだ起こってもいないことを妄想し、勝手に悩んでいる状態です。過去にしろ、未来にしろ、余計なことを考えているわけです。こうしたマインド・ワンダリングは、ストレスを悪化させます。過去や未来を考えることで、ストレスが溜まってしまうからです」と述べています。非常に納得できました。

 

さらに、著者は「ストレスは脳が感じるものです。たとえば、ぼんやりと過去の悲しい出来事を思い出して、○○しておけばよかったとクヨクヨします。そして、気がつくと、何度も同じことを考えていることはないでしょうか。このように、ネガティブな思考を繰り返すことを『反芻思考』と言います。反芻思考は、脳を疲れさせ、私たちを疲弊させます。反芻思考は、うつ病患者によく見られ、うつ病の身体的症状の1つが、疲労感や倦怠感です。私たちは、日常の動作を意識せずに行っています。歩いたり、食べたりはその典型です。身体に意識を向けなくても、自動的に身体を操縦しているわけです。ただ、身体が自動操縦されると、過去や未来のことを考えやすくなり、不安になってしまうのです」と述べています。これは、コリン・ウイルソンが「脳のロボット状態」と呼んだ現象を指している思いました。体が疲れたときほど暗い想念に取りつかれるのは事実ですので、気をつけたいものですね。

 

第4章「自分に合った幸せを見つける」の1「頼ること、頼られること――社会とのつながり」では、「幸せな人のそばにいると、幸せになれる」として、著者は「幸せになりたければ、幸せな人のそばにいることです。カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者フォウラーとハーバード大学医学大学院の社会学者兼医師のクリスタキスによると、「幸せ」は、社会的なつながり(付き合いの輪)を通じて、伝播します。個人の幸せが、時間の経過とともにどのように波及するかを、20年にわたる追跡調査に基づいて研究した結果です」と述べています。これも共感できる内容でした。

 

また、著者は再び「結婚」について取り上げ、「安定した結婚生活で、認知力がアップ」として、こう述べています。
「人との関わりという意味では、安定した結婚も恩恵があります。認知症でない70歳から90歳の人を対象にした研究では、軽度認知障害認知症を防ぐ要因として、結婚が挙げられています。一方、加齢や嗅覚が弱いとそれらの危険が高まります。面白いことに、これには性差もあります。女性よりも男性は、軽度認知障害認知症の危険が高いとされています。喫煙経験がある男性も、記憶力の低下を起こしやすくなります。一方、嗅覚が弱い女性は、軽度認知障害認知症の危険が高くなります」

 

さらに、「ストレス反応を緩和する、身近な頼れる人の存在」として、著者は「社会とのつながりには、こちらからの働きかけだけでなく、相手からの支援も含まれます。学術的には、『社会支援(ソーシャルサポート)』という分野において、研究対象となっています。頼ることでも、よい効果があるのです。社会支援とは、助けが必要な時に、手助けしてくれる人とのつながりです。家族や友人だけでなく、近所や地域の人との親密な関係を含みます。そして、滅入っている時(精神的)や体が動かない時(肉体的)だけでなく、お金に困った時(金銭的)にも助けを求められることとされています。社会支援は、ストレスへの反応を緩和し、心身の健康を促進します」と述べています。まさに、アリストテレスも言ったように、人間とは「社会的動物」なのですね。


隣人の時代』(三五館)

 

隣人の時代』(三五館)に詳しく書きましたが、わが社では一人暮らしの高齢者を中心とした食事会である「隣人祭り」の開催をサポートしてきました。孤独死をなくすことが目的だったわけですが、「孤独な人ほど、早く亡くなる」として、著者は「社会支援の恩恵は、死亡率にも表れます。ブリガム・ヤング大学の心理学者ホルト=ルンスタッドらが行ったメタ分析によると、孤独な人ほど、早く亡くなる傾向があります。35年分の研究を検証したところ、社会的孤立や一人暮らしという客観的な指標以外にも、孤独感という主観的な指標も含めた全ての孤独の指標が、死亡率と関係していました。社会的孤立により29%、一人暮らしでは32%、孤独感では26%、死亡する確率が上昇します。この傾向は、性別や地域とは関係ありません」と述べています。

 

血縁や地縁が希薄化し、現実には社会の「無縁化」が進行していますが、新たな「縁」をフェイスブックなどのSNSに求める人は多いようです。しかし、「SNSでの友人数は幸せとは関係ない」として、著者は「現実世界で直接、人間関係を構築する重要性は分かりました。では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のように、インターネット上での交友関係はどうでしょうか。これからの社会を占うような研究についても見てみましょう。大学生の場合には、フェイスブックの友人数が多いほど、幸せに感じています。しかし、その幸福感は、社会支援とは関係なく、単に友人数の多さへの満足でした」と述べています。

 

さらにフェイスブックについて、著者は「ヘルシンキ大学の心理学者レンクヴィストとベルリン自由大学の心理学者デタースによる研究では、フェイスブック上の友人の多さは、幸せと関係ないとしています。大学生の場合、フェイスブック上の友人が多くても、よりよい社会支援を享受していると感じていませんでした。ここまでは一緒ですが、彼らの分析は、もう一歩踏み込みます。友人数の多さは性格と関係するため、性格の影響を取り除くと、フェイスブック上の友人数と幸せには関係がなくなると指摘したのです。性格の中でも、特に、外向性の影響を調整するだけで、フェイスブック上の友人数と幸せには関係がなくなります。単に、社交的な人ほど幸せに感じていたに過ぎないのです。結局、現段階では、インターネット上での交友関係は、現実の交友関係に比べると、幸せへの影響はさほど強くないと言えます」とも述べています。我が意を得たり、といった思いです。

 

最後に、幸福感といえば信仰の問題と切っても切り離せません。2「信じる者は、幸せになる?――宗教やスピリチュアル」では、「宗教の恩恵は、人とのつながりや精神性」として、著者は「信仰心がある人は、そうでない人よりも、幸せです」と断言します。そして、「信仰心がある人が、幸せに感じるのは、人とのつながりが広がるためだとされています。ウィスコンシン大学マディソン校の社会学者リムとハーバード大学社会学者パットナムは、それ以外の要素は、幸せにあまり関係ないとしています。教義による恩恵より、人との交流による恩恵が幸せの源だと言うのです。宗教が私たちを幸せにするメカニズムを調べると、宗教的な集会に多くの親友がおり、その宗教が自己意識に重要である時だけ、宗教は幸せと関係していました。一方、集会にあまり親友がいない人では、宗教が自已意識に重要と感じていても、幸福感に影響がありません。つまり、宗教が心のよりどころであっても、独りぼっちでは、宗教によって幸せにならないことになります」と述べるのでした。

 

本書は、膨大なデータを駆使して「幸福」について探求しており、日頃から「幸福とは?」とか「心の豊かさとは?」とか、そんなことばかり考えているわたしにとって非常に参考になりました。わが社は冠婚葬祭互助会ですが、「結婚」を増やす婚活事業や「孤独死」をなくす隣人交流イベントなどに取り組んでいます。冠婚葬祭は神道や仏教やキリスト教などの宗教にも密接な関係があり、「人とのつながりや精神性」を求める信仰というテーマとも通じています。さらには、ホスピタリティやマインドフルネスやグリーフケアにも取り組む互助会は、日本人の「幸福」に大きく寄与することができるという確信を得ることができました。そう、互助会経営とは幸福学の実践そのものなのです。

 

 

2020年7月25日 一条真也

ハートビジネス

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一条真也です。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。
もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。
今回は、「ハートビジネス」という言葉を取り上げます。


産業の高次化を唱えた『ハートビジネス宣言

 

1992年に上梓した『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)で初めて提示された「ハートビジネス」とは、人を幸福にするビジネスです。冠婚葬祭、ホテル、イベント、リゾート 、エンターテインメント、アート、スポーツ、レストラン、ナイトスポット、その他いろいろ・・・・ ハートビジネスは人の心に働きかけ、感動を与えたり、病んだ心を癒したりすることができます。 つまり、「感動」と「癒し」のビジネスなのです。

 

ハートビジネスは、これからのハート化社会において産業の主流となってゆきます。ハートビジネスには さまざまな業種がありますが、現在、「第3次産業」としてひととくくりにされています。 しかし、この第3次産業という概念は経済学者コーリン・クラークが1940年代に提案したものであり、時代遅れ以外の何ものでもありません。現在の産業は7つのレベルで分類するとわかりやすいでしょう。

 

第1次と第2次は従来通りとして、第3次は手や足などによる「筋肉サービス」で、代表的な業種は洗濯業 、宅配業、運送業など。第4次は、いわゆる装置産業で、知恵によって開発して筋肉によって保守などをする 「複合サービス」。金融機関、私鉄、貸しビル、不動産業などがこれに含まれます。 第5次は「知恵のサービス」で、教師、コンサルタント、システム、エンジニアなど。マスコミやシンクタンクもここに入ります。第6次は「情緒サービス」で、レジャー施設業、映画会社、劇団、芸術家など。そして第7次が「精神サービス」で、冠婚葬祭業 、神社、寺院、教会などが含まれます。つまり、高次の産業になればなるほど付加価値が高くなるわけです。そして、ハートビジネスは主に第6次と第7次の産業に集中しています。ハートビジネスとは人をハートフルにし、ハートピアを想起させるビジネスなのです。

 

2020年7月24日 一条真也

死を乗り越える孔子の言葉

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いまだ生を知らず、
いずくんぞ死を知らん。
孔子

 

一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は、孔子(紀元前551~紀元前479)の言葉です。孔子は、春秋時代の中国の思想家で、儒家の始祖です。「礼」による社会秩序の再建を目指しましたが、政治的には失敗。教育者として生涯を終えました。漢代以後は各王朝から聖人として祀られ、儒教は中国思想の根幹となりました。

 

論語 (岩波文庫)

論語 (岩波文庫)

 

 

孔子の言葉は『論語』の先進編に登場します。「まだ生について十分理解していないのに、どうして死を理解できるだろうか」という意味です。孔子はまた、「五十にして天命を知る」という言葉も残しています。人生100年時代を迎えた今だからこそ、この孔子の言葉に重みを感じています。50歳という年齢から新しいこと(天命)をはじめても、健康であればあと50年が残ります。孔子の言葉がリアルなミッションとして伝わってくるのはわたしだけでしょうか。

 

いま、亡くなった親の葬儀を行わないといった風潮があります。「礼」と「孝」を重んじた聖人・孔子の言葉をもう一度かみしめてみてはいかがでしょうか。50歳を超え、やがて親を見送るとき、初めて人は「死」が持つ本当の意味を知るのかもしれません。母親が葬儀を営む巫女であった孔子は、何よりも葬礼を「礼」の中心に置きました。

 

彼は、礼制に詳しい単なる知識人や学者ではなく、「礼」に関わる事実の持つ意味を徹底的に考えました。たとえば古代中国の礼制に「三年の喪」というものがあります。父親が亡くなったとき、子が喪に服する期間のことです。弟子の宰我という秀才が、三年では長すぎると意見を述べました。すると孔子は、「いや必要だ。自分は赤子、幼児として父母にたいへんお世話になったから、そのお返しをするのだ」と答えています。なお、この言葉は『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

死を乗り越える名言ガイド 言葉は人生を変えうる力をもっている

  • 作者:一条 真也
  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

2020年7月24日 一条真也