「スマイルアップ」より「グリーフケア」

一条真也です。
10月2日、ジャニーズ事務所は、都内で今後の会社運営に関する会見を行いました。東山紀之新社長は、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、ジャニーズ事務所の名称を「SMILE-UP.」(スマイルアップ)に変更すると発表しました。

ヤフーニュースより

 

山新社長は「現在のジャニーズ事務所ですが被害に遭われ今もなお苦しんでいらっしゃる方への保証業務のみを行っていくこととします。被害保障の受付窓口として9月13日付で3名の弁護士から構成される被害者救済委員会を設置いたしました。9月30日までにこちらの委員会には478人の方の申し出があったとご連絡をいただいております。そのうち被害を申告して保証を求めている方は325人であります。保証は11月からスタートさせていただきたいと思っています」と説明。

ヤフーニュースより

 

また、東山新社長は「今後は被害者のご相談窓口について臨床心理士などにご協力をいただき、被害者の方に寄り添う形をきちっと作っていきたいと思っております。そして喜多川氏と完全に決別する決意を示す社名を10月17日付けで『SMILE-UP.』と変更していきます」とし、「この『SMILE-UP.』という名称は3年前に社会貢献プロジェクトを推進していくために取得した商標であります」とも語っています。


山新社長は、「スマイルという言葉に違和感を感じていらっしゃる方もいらっしゃると思いますが、まずは被害に遭われた方々への支援や補償を少しでも早く進めていくことが『SMILE-UP.』社の社会的責任と考えております」と再出発を誓いました。しかし、東山新社長の言うように、「スマイル」という言葉には大きな違和感を感じてしまいます。『SMILE-UP.』(スマイルアップ)という社名は、公募で社名を決めるというタレントのマネジメント会社の社名の方がふさわしいと思います。


現在の事務所は故ジャニー喜多川氏から性被害に遭って今もなお苦しんでいる被害者たちへの保証業務を行うとのことですが、こちらの社名は「SMILE-UP.」(スマイルアップ)よりも「GRIEF-CARE.」(グリーフケア)の方がふさわしいように思います。グリーフケアというと死別の悲嘆のケアを連想しますが、もともと「グリーフ」は死別の悲嘆だけではありません。グリーフには、さまざまな喪失の悲嘆があります。ジャニー氏の性加害によって、安心・安全感、純潔、青春、希望、自尊心、大人への信頼、芸能界への夢、そして「こんな自分はいったい何者なのか」というアイデンティティなどなど、さまざまな大切なものを喪失した方々のケアが求められます。ということで、わたしは、ジャニーズ事務所の名称は能天気な「スマイルアップ」ではなく被害者の悲嘆に寄り添う「グリーフケア」に変更すべきだと考えます。



ここまでの当ブログ記事を読んで、グリーフケア関係者たちからの反応がありました。上級グリーフケア士で金沢紫雲閣総支配人の大谷賢博さんは、「私も『スマイルアップ』には相当な違和感を覚えました。肉体的、精神的なダメージを受けたことでトラウマを抱えて、ストレス障害を引き起こすメンバーもいるのに。そしてメンバーだけではなく、ファンの方も同じ心の傷を抱えているはずなのに。両者とも、まだ傷付きやすく無力な状態の中にいるのに、なんて呑気な名前を付けるのでしょうか。悲しむことの意味を一緒に考え、悲しみを生きる力に変える。そうした社会を築くのは大人に課せられた責任であるのと思います。社名を『グリーフケア』に変更。大賛成です!」とのメッセージを寄せてくれました。さすがです!



また、同じく上級グリーフケア士(サンレー  グリーフケア推進部部長)の市原泰人さんは、「この『SMILE-UP.』という新しい社名には違和感を強く感じます。社会貢献のために取得した商標という説明がありましたが、必要なのは社会貢献という耳障りの良い言葉ではなく、真摯に被害者に向き合い尊重することだと思います。なにか当時者としての意識が欠けているような印象を持ちました。自分たちは悪くないとも言い出しそうな感じすらしています。『名は体を表す』という言葉がありますが、グリーフに向き合いケアを行っていくという気持ちがあるのであれば、グリーフケアという言葉が入った社名が相応しいと感じます」とのメッセージを寄せてくれました。これも、さすが! いやあ、この2人、サンレーからスマイルアップ社に出向させたいぐらいです!

 

2023年10月2日  一条真也