死を乗り越える渥美清(フーテンの寅)の言葉

 

寂しさなんてのはなぁ、歩いてるうちに風が吹き飛ばしてくれらぁ。俺のやせ細った死に顔を他人に見せたくない。骨にしてから世間に知らせてほしい。どこにいたって、愛がありゃあ、天国なんじゃないの? そういうもんだよ。渥美清=フーテンの寅)



一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。今回の名言は車寅次郎の言葉です。彼は1936年2月26日生まれのテキ屋で風来坊ですが、映画の中の人物です。演じたのは、渥美清(1928年~1996年)です。日本のコメディアンで俳優。愛称は、寅さん。俳号は「風天」。代表作男はつらいよシリーズで主人公「車寅次郎」を演じ、「寅さん」として広く国民的人気を博しました。没後に国民栄誉賞を受賞しています。



2019年末、「男はつらいよ」の50作目となる男はつらいよ お帰り寅さん」が公開されました。この映画を見ながら、思い出となって人は永遠に生き続けることを改めて知った人も多いのではないでしょうか。渥美清が演じた車寅次郎の職業はテキヤ。旅をしながら地域で開かれる縁日やお祭りで商品を売ることが生業でした。



家族を持たなかった寅さんですが、寅さんは誰からも愛されていました。寅さんにとって、東京柴又に本当の家族があり、旅で出会った人たちも家族同様の存在だったのでしょう。山田監督は、家族とはいつも側にいることが絶対条件ではないことを教えてくれました。松竹の大監督・小津安二郎の流れを受け継ぐ山田監督の「男はつらいよ」には小津映画と同じく冠婚葬祭のシーンもよく登場します。目に見えない「縁」を目に見せるのが冠婚葬祭です。



わたしは「縁」というものにはいくつかの種類があると思います。「血縁」に始まり、地域のつながりの「地縁」、「職縁」、「社縁」という会社のつながりもあるでしょう。ならば、寅さんは「旅縁」というでもいうべき、旅先の縁を作った気がします。きっと、旅先で誰かを笑わせながら、静かに人生を終えたことでしょう。なお、この渥美清(フーテンの寅)の言葉は、『死を乗り越える名言ガイド』(現代書林)に掲載されています。

 

 

2023年9月28日  一条真也