活動写真への誘い

一条真也です。
27日の13時からリーガロイヤルホテル小倉で開かれた「澤登翠・デビュー50周年記念九州ツアー 活動写真への誘い」に行きました。ブログ「さよなら、小倉昭和館」で紹介したように今年8月10日夜に発生した旦過市場の火事で焼失した老舗映画館・小倉昭和館のイベントです。


チラシの表


会場の前で


小倉昭和館への応援エールの数々


昭和館名物の物販に取材陣が殺到!


挨拶する小倉昭和館の樋口館主

 

この日は、無声映画活動弁士&音楽伴奏で楽しむイベントで、「忠次旅日記」と「チャップリンの番頭」の2本が上映されました。無声映画の台本・語りは、活動弁士澤登翠さんが務めました。法政大学文学部哲学科卒業。故松田春翠門下。日本独特の話芸「活弁」の第一人者として、国内を始め仏、伊、米他海外にも招聘され好評を博している方です。洋画、現代劇、時代劇とレパートリーも豊富。活弁の継承者としての活動が評価され、これまでに文化庁芸術祭優秀賞、文化庁映画賞他を受賞。無声映画鑑賞会での公演を基盤に国立映画アーカイブや各地の映画祭での公演、大学他での講座、TV番組のナレーション、朗読とその活動は多岐に亘ります。2015年、「文藝春秋」に掲載の「日本を代表する女性120人」に選出、2017年3月には松尾芸能賞特別賞を受賞。周防正行監督最新作映画『カツベン!』では、活動弁士監修を担当しました。


チラシの裏

活弁の第一人者・澤登みどりさん

カラード・モノトーンデュオのお二人♪

 

無声映画音楽伴奏は、カラード・モノトーンデュオでした。楽長:湯浅ジョウイチ(ギター)と鈴木真紀子(フルート)によるデュオ。「カラード・モノトーン」は1994年に結成された無声映画の伴奏音楽(生演奏)を担当する西洋楽器と和楽器とを混成した専属合奏団。ピアノ、フルート、ヴァイオリン、太鼓、パーカッション、三味線、ギター等によって構成。日本独特の活動写真の音楽を地道に研究し、無声映画全盛期における伴奏音楽の再現に取り組む一方で、映画音楽における新機軸を打ち出し、好評を博しています。現在、澤登翠坂本頼光等の活動弁士と共に各地で行っている公演活動は年間数十回(ミニユニットによる演奏を含む)に及びます。高度な演奏技術と共に、日本におけるサイレント時代の映画音楽を再現出来る数少ない演奏家集団としても高い評価を受けています。


最初に上映された「忠次旅日記」ですが、1927年・戦前期の日本映画の名作です。長らくフィルムが紛失しており日本史に残る「幻の映画」として、その存在自体は語り継がれてきましたが、ついに1991年の某所にて残存フィルムが発見されました。欠落部分の補完等を経て今日の復元を果たします。「甲州殺陣篇」「信州血笑篇」「御用篇」の三部曲(作)から成る本作は、“民衆のヒーロー”として語られる江戸後期の侠客・国定忠次の逃亡の旅を描きます。当時新進気鋭の監督を伊藤大輔が勤め、忠次を大河内傅次郎が演じます。
<原作・脚色・監督>伊藤大輔<出演>大河内傅次郎、中村英雄、中村吉次、阪本清之助、磯川元春、澤蘭子、村上英二、秋月信子、尾上華丈、中村紅果ほか


次に「チャップリンの番頭」は、喜劇王チャーリー・チャップリンの56本目、ミューチュアルに移ってからの6本目となる作品で「質屋」と題されることもあります。チャップリンが演じるお調子者の店員チャーリーをはじめとした、同僚や麗しの質屋の娘、したたかな老紳士や怪しい金持ち風の男等、個性豊かなキャラクターが巻き起こす騒動を描きます。中でも質草の目覚し時計をバラバラに解体し持主に返すシーンが有名です。「チャップリン芸術の破綻なき完成を示す玉成的名品」と評されました。
<出演>チャーリー・チャップリン エドナ・パーヴィアンス ヘンリー・バーグマン ジョン・ランド アルバート・オースティン ウェズリー・ラッグルズ エリック・キャンベルほか


樋口館主と『心ゆたかな映画』を持って

 

活動弁士と音楽伴奏による無声映画の鑑賞は、わたしは生まれて初めての体験で、大変面白く、また勉強になりました。トーキー以前の映画というものをリアルに体験することができました。久々にお会いした小倉昭和館の樋口智巳館長もお元気そうで良かったです。じつは、先日、刊行されたばかりの拙著『心ゆたかな映画』(現代書林)を樋口館長にお届けしました。同書の「あとがき」には「ありがとう、小倉昭和館」として、同館の思い出がいろいろと綴られているのですが、それを読んだ樋口館長は大変喜んで下さり、わざわざ御礼の電話をサンレーの社長室までかけてきて下さいました。


わたしも募金しました(⌒∇⌒)

 

そのときのお電話で、この日をイベントを知り、駆け付けた次第です。今後は、わが社ともコラボして、施設などもお貸ししたいと考えています。樋口館長とタッグを組んで、世界一の超高齢都市である北九州市で、高齢者の方々が不安を乗り越えて行くための「老いと死の映画館」を実現させたいと願っています。樋口館長も、御挨拶で「必ず、小倉昭和館を再建しますので、みなさま、ご協力下さい!」と訴えておられました。この日は受付に募金箱がありましたので、わたしも貧者の一灯を捧げさせていただきました。なお、小倉昭和館を応援されたい方は、こちらをクリックされて下さい。頑張れ、小倉昭和館

2022年11月27日 一条真也