「積ん読」もまた楽しからずや(渡部昇一)


一条真也です。
ブログ「渡部昇一先生 逝く」に書いたように、4月17日、私淑する渡部昇一先生が逝去されました。謹んで哀悼の誠を捧げさせていただきます。
「知の巨人」であり、「稀代の碩学」であり、「現代の賢人」であった渡部先生は多くの名言を残されています。


渡部昇一氏の書斎に積まれた蔵書



渡部先生は1冊の本を読んでいると、そこに出てくる別の本をどうしても読みたいと思うことが多かったそうです。夏目漱石を読んでいて森鴎外が読みたくなることもあれば、哲学の本を読んでいて自然科学のことを教えられ、新しい分野の本を注文されることもしばしばだったとか。


楽しい読書生活―本読みの達人による知的読書のすすめ

楽しい読書生活―本読みの達人による知的読書のすすめ

読書にキリがなくなり、本が増えて置き場所に困るようになると慨嘆されながらも、芋づる式に読書の範囲が広がっていくことは自分の視野を広めることになるとした上で、渡部先生は著書『楽しい読書生活』(ビジネス社)において次のように述べられています。
「私は、新しい興味を覚えたらとりあえず本を買っておいたほうがいいという考え方をしています。たしかに、そうやってとりあえず注文したり買ったりした本が『積ん読』の元凶になるわけですけれども、『積ん読』もまた楽しからずや―と思えばいいのです。」


渡部昇一 青春の読書

渡部昇一 青春の読書

積ん読」は必要悪であり、これを全部やめてしまったら読書としては不完全であるとまで言い切られています。本を読んでいるとどうしてもその関連本を読みたくなるのは人情であり、あえて人情に逆らうのはよくないし、何より「別の世界が開けてくる可能性」や「新しい発見」も「積ん読」の魅力であると語られています。まさに読書の醍醐味を知り尽くした渡部先生の「積ん読」論に、勇気づけられる読書家も少なくないでしょう。


わたしは、「世界一」と呼ばれる渡部氏の書斎および書庫を拝見させていただきました。2階建ての書斎には膨大な本が並べられており、英語の稀覯本もたくさんありました。チョーサー『カンタベリー物語』やパスカル『パンセ』の初版本などをはじめ、日本に1冊だけ、世界でも数冊しかない貴重な書籍の数々を見せていただきました。


渡部先生の書斎で、先生と



伝説の『ブリタニカ百科事典』第1版の初版をはじめ、歴代のブリタニカもすべて全巻揃っていました。ちなみに先生の蔵書は約15万冊だそうです。
これは間違いなく日本一、いや世界一の個人ライブラリーでしょう。
何よりもわたしが感銘を受けたのは、この素晴らしい書斎および書庫を渡部先生はなんと77歳で作られたということです。もう凄すぎます!
なお、渡部先生とわたしは対談本『永遠の知的生活』(実業之日本社)において、本や読書の魅力についてたっぷり語り合いました。
この思い出は、わが人生の宝です。


永遠の知的生活』(実業之日本社



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2017年4月19日 一条真也