鎌田先生、実家の書庫へ

一条真也です。
3日の夕方、ブログ「鎌田先生、父を見舞う」で紹介したように、「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生(京都大学名誉教授)がわが実家を訪れ、父・佐久間進サンレーグループ名誉会長)のお見舞いをされました。鎌田先生には感謝の気持ちでいっぱいです。


「気楽庭」の舞台の上で


円形の舞台の上で語り合いました

 

父を見舞った後の鎌田先生を、わたしは自宅の庭にお誘いしました。自宅の庭は「気楽庭」と名付けられており、さまざまな樹木や花とともに、樹齢300年の屋久杉やウミユリの化石である梅花石などが並んでいます。また、中央には満月が映る御影石の舞台があります。設計は、日銀元総裁の白川方明氏の弟さんである白川直之氏です。以前、ブログ「アーキテクト」で紹介した方です。この舞台の上に立って、鎌田先生といろんなお話をしました。


気楽庭にて


気楽亭の前で


気楽亭の内部のようす


気楽亭から円形舞台を望む

 

それから、書庫兼文化サロンである「気楽亭」にご案内しました。同じく、白川直之氏の設計です。入るとすぐ薩摩切子をはじめとしたカラフルなグラス、ウイスキー泡盛などの各種の酒が並べられています。置かれている椅子に座ると、目に映る前庭には円形の御影石の舞台があり、夜になるとそこに月が映し出されます。その御影石に映った月をながめながら、元気な頃の父は酒を飲み、本を読んでいました。なんという贅沢な時間の過ごし方でしょうか!


気楽亭の書庫で


気楽亭の本を眺める鎌田先生


気楽亭を撮影される鎌田先生


気楽亭の本を眺める鎌田先生

 

わたしたちは気楽亭の奥に入っていきました。国史大系』『古事類苑』『廣文庫』『群書類従』『日本随筆大成』『風俗画報』『明治文化全集』といった叢書類がずらりと並びますが、東洋文庫の全点揃いや國學院雑誌』まで揃っているので、鎌田先生は驚かれていました。また、『契沖全集』『賀茂真淵全集』『本居宣長全集』『平田篤胤全集』『定本 柳田國男集』『折口信夫全集』『南方熊楠全集』なども並んでいます。そう、この書庫には国学民俗学に関するあらゆる全集類が揃っています。


毎日新聞」2015年1月9日朝刊

 

ブログ「『日本人とは何か』を問う」などでも紹介したように、わたしの父である佐久間進國學院大學の出身であり、日本民俗学が誕生した昭和10年にこの世に生を受けています。父は亥年なのですが、ともに國學院の教授を務めた日本民俗学の二大巨人・柳田國男折口信夫も一回り離れた亥年でした。父が國學院で日本民俗学を学び、そのまさに中心テーマである「冠婚葬祭」を生業としたことに運命的なものを感じてしまいます。ブログ「國學院大學オープンカレッジ特別講座」で紹介したように、2014年11月11日、わたしは國學院で特別講座を行いました。

 

國學院」の「国学」とは「日本人とは何か」を追求した学問だと思います。契沖、賀茂真淵本居宣長平田篤胤らが活躍しましたが、実家の書庫に彼らの全集が揃っていたおかげで、わたしは高校時代から国学に関心を抱いていました。そして、「日本人とは何か」という国学の問題意識を継承したのが、「新国学」としての日本民俗学です。その日本民俗学國學院で学んだ父は、冠婚葬祭互助会を天職に選びました。わたしは鎌田先生に、「国学のアップデートが日本民俗学なら、さらにそのアップデートが冠婚葬祭互助会ではないのでしょうか?」と申し上げました。すると鎌田先生は、「日本民俗学が、古事記万葉集延喜式祝詞らの文献の中に日本の伝統と折口信夫の言う『生活の古典』と『ライフインデックス』を探し求め、見出し、再構築したのだとすれば、冠婚葬祭の互助会活動に取り組んだ佐久間進サンレー名誉会長)さんのお仕事は、その『生活の古典』を、さらに『古典(伝統)の生活化』に再構築し再編集し直す活動であったと思います」と語られました。さすがは鎌田先生です!


國學院大學での特別講義のようす

 

無縁社会」とか「葬式は、要らない」といった言葉が登場しましたが、わたしは現在、冠婚葬祭互助会各社が加盟する一般財団法人  冠婚葬祭文化振興財団の理事長を務めています。冠婚葬祭互助会の使命とは、日本人の原点を見つめ、日本人を原点に戻すこと、そして日本人を幸せにすることです。結婚式や葬儀の二大儀礼をはじめ、宮参り、七五三、成人式、長寿祝いなどの「冠婚葬祭」、そして正月や節句や盆に代表される生活の古典としての「年中行事」・・・・・・。これらの文化の中には、「日本人とは何か」という問いの答が詰まっています。これからも、わたしは日本人を幸せにするお手伝いがしたいです。一般財団法人  冠婚葬祭文化振興財団の理事長という職責を天命と受け止め、全身全霊、命をかけて取り組む覚悟です!

 

2024年9月4日  一条真也