一条真也です。
13日の11時からサンレー本社の貴賓室で、総合ユニコムが発行している「月刊フューネラルビジネス」の取材を受けました。インタビュアーは同誌の吉岡真一編集長です。取材内容は同誌の11月号に掲載されます。
インタビュー取材のようす
同誌はフューネラル業界のオピニオン・マガジンとして知られています。互助会経営者には、基本的に同業者が読む業界誌の取材を受けたがらないという傾向がありますが、わが社は「天下布礼」の旗を掲げていますので、少しでも業界発展のためになるならと快諾しました。また、今回はわたしが一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の理事長に就任したことについての取材依頼でしたので、財団の広報活動のためにもお受けした次第です。
財団について説明しました
いくつか質問がありました。まずは、「財団設立の経緯から、事業内容、これまでの活動内容」について質問されました。わたしは、以下のように答えました。一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団は、人の一生に関わる儀礼である冠婚葬祭に代表される様々な人生儀礼の文化を振興し、次世代に引き継いで行くための事業を行い、わが国の伝統文化の向上、発展に寄与することを目的として、2016(平成28)年に設立されました。本財団では、古来より続く冠婚葬祭文化を見直し、振興し、次世代に引き継いでいくべく、助成金の交付、儀式等への支援、講座の開催、顕彰などの支援事業を行っております。
財団の具体的な事業について
本財団が実施しております具体的な事業は、資格制度事業・儀礼儀式文化振興事業・社会貢献基金事業・冠婚葬祭総合研究所事業を主とした4つの事業となります。
①資格制度事業として、ブライダルプロデューサー資格制度、終活コーディネーター資格制度、グリーフケア資格制度を実施しており、毎年多くの方に受験いただいております。消費者の皆様の安全と安心を目的として、冠婚葬祭の役務サービスについての施行レベルと技術の向上。
②儀礼儀式文化振興事業として、冠婚葬祭講座のプログラムを推進し、日本最大級の冠婚葬祭情報サイト「sikisaisai」による一般の生活者への発信を行っています。また、冠婚葬祭産学連携事業として、大学との公開講座、寄付講座を設けております。國學院大學・上智大学・大正大学などの公開講座を行っています。
財団の具体的な事業について
③社会貢献基金事業として、調査・研究、冠婚葬祭承継事業を行う団体や個人に対する助成を実施しております。冠婚葬祭に関する研究への助成・絵画コンクール(第8回 絵画コンクールテーマ「わたしのおもう結婚式」「思い出に残る⽇本のぎしき」)も実施しています。
④冠婚葬祭総合研究所事業として様々な調査研究を実施しております。取り組んでいるテーマとしては、「 冠婚葬祭互助会システムや儀礼文化の変遷」「少子高齢化等の現代社会の課題が儀礼文化や産業に与える影響」「 冠婚葬祭互助会への期待と制度面をはじめとする諸課題」「冠婚葬祭産業の新たなビジネスモデルの研究」などです。今後も本財団は、一般の生活者の方に冠婚葬祭や年中行事等の情報に触れる機会を増やし、冠婚葬祭や行事が日常の行動としてこれからも実施され、冠婚葬祭文化への関心が高く、文化として継承されていく状態を目指していきます。
理事長としての所信表明を訊かれました
次に、「理事長としての所信表明をお聞かせ下さい」と言われました。わたしは、以下のように答えました。
8月21日に北海道の函館市で開催された一般社団法人 全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)総会で理事長主任のご挨拶をさせていただきました。挨拶の中で「日本には茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲・武道など、さまざまな伝統文化がございます。しかしながら、わたしは冠婚葬祭こそ文化の中の文化、『文化の核』であると思っております。冠婚葬祭文化の振興という仕事を天命ととらえ、全身全霊、命をかけて取り組む所存です」と述べました。記念すべき設立10周年を理事長として迎えることになりますが、身の引き締まる思いです。
「こころ」と「かたち」と儀式について
「日本文化」といえば、代表的なものに茶道があります。わが社の 佐久間進名誉会長が小笠原家茶道古流の会長を務めている関係で、わたしも少しだけ茶道をたしなみます。茶道といえば、茶器が大切です。茶器とは、何よりも「かたち」そのもの。水や茶は形がなく不安定です。それを容れるものが器です。水と茶は「こころ」です。「こころ」も形がなくて不安定です。ですから、「かたち」としての器に容れる必要があるのです。その「かたち」には別名があります。「儀式」です。茶道とはまさに儀式文化であり、「かたち」の文化です。人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。
文化産業としての冠婚葬祭業について
日本には、茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲・武道といった、さまざまな伝統文化があります。そして、それらの伝統文化の根幹にはいずれも「儀式」というものが厳然として存在します。武道は「礼にはじまり、礼に終わる」と言いますが、儀式なくして文化はありえません。儀式とは「文化の核」と言えるでしょう。そしてこの儀式を行う冠婚葬祭はまさに「文化の核」であり、この仕事をすることは、日本人の「かたち」を守ることであり、ひいては「こころ」を守ること。そのために冠婚葬祭業は単なるサービス業から「文化産業」へと転換する必要があります。
笑顔で今後の抱負を語りました
続いて、「理事長としてこれまでの事業でさらに注力することを教えて下さい」と言われました。わたしは、以下のように答えました。新たに取り組むことですが、今後も本財団は、全互協と連絡を密に協力して、互助会業界の環境の整備に貢献していきたいと考えています。設立より8年目を迎えるに当たり、本財団としての独自性を出していくために、本年度より新たに立ち上げた儀式委員会と資格委員会を中心に財団事業を推進してまいります。儀式委員会では冠婚葬祭講座のプログラムを推進し、日本最大級の冠婚葬祭情報サイト「sikisaisai」による一般の生活者への発信を行っています。また、冠婚葬祭産学連携事業として、大学との公開講座、寄付講座を設けております。資格制度事業にはグリーフケア資格認定制度・終活コーディネーター資格認定制度・ブライダルプロデューサー資格認定制度などがありますが、消費者の皆様の安全と安心を目的として、冠婚葬祭の役務サービスについての施行レベルと技術の向上を目指し、各種の資格認定制度を全互協の加盟互助会各社等を対象に運営しております。
冠婚葬祭が衰退すれば日本国も衰退します!
この他にも、調査・研究、冠婚葬祭承継事業を行う団体や個人に対する助成を行う社会貢献基金事業・冠婚葬祭総合研究所事業として様々な調査研究を実施しております。これらを通じて、一般の生活者の方に冠婚葬祭や年中行事等の情報に触れる機会を増やし、冠婚葬祭や行事が日常の行動としてこれからも実施され、冠婚葬祭文化への関心が高く、文化として継承されていく状態を目指して参りたいと考えています。また、わたしは「超高齢社会を迎えたわが国にとって、葬儀も変わらなければいけないと思っています。要・不要論ではなく、どう変化していくかです。わたしはそれを『アップデート』と呼びたいと思います。残さなければいけないもの、変化させていいもの(場合によっては取りやめてもいいもの)と精査する時期だということです。あえていうのならチャンスです。それは葬儀を営んできた寺院、葬儀会社も変わらなければいけないでしょう。でも、葬儀は必要です。葬儀を消滅させる社会であってはならないと考えています。冠婚葬祭とは文化そのものであり、冠婚葬祭が衰退すれば日本文化、ひいては日本国そのものも衰退します」と述べました。
わが社のグリーフケア・サポートについて
わたしは財団の理事長として、これからは「冠婚葬祭業のサービス業から文化産業への転換」「互助会加入の義務化」「互助会営業員の民生委員化」の3つの提案を重点的に発信していきたいと語りました。吉岡編集長は驚きながらも、理解を示して下さいました。さらには、グリーフケアについても語りました。わが社では、2010年から遺族の方々のグリーフケア・サポートに積極的に取り組んできました。葬儀を行ったご遺族を中心とした遺族会である「月あかりの会」の会員は現在のべ15000人余り、その中で生まれた同じ悲嘆をもつ方々の自助グループである「うさぎの会」には約40名の会員がおり、様々な角度から、持続的な心の安定(幸福)をサポートさせていただいています。そこでは地縁でも血縁でもない、新しい「縁」が生まれています。この悲嘆による人的ネットワークとしての新しい縁を「悲縁」と呼んでいますが、この悲縁によって相手を支えることで、自分も相手から支えられる互いのグリーフケア・サポートが生み出されています。
グリーフケア資格認定制度について
「月あかりの会」のメンバーは、高齢の方が多いので、亡くなられる方もいらっしゃいますが、その際、他のメンバーはその方の葬儀に参列されることが多いです。楽しいだけの趣味の会ではなく、悲しみを共有し、語り合ってきた方たちの絆はそれだけ強いことを感じさせられます。また、副会長を務めた全互協では、グリーフケアPTの座長として、グリーフケア士の資格認定制度を立ち上げました。現在、業界全体ではグリーフケアの専門家としてのグリーフケア士は1,000名を超え、またその上位資格である上級グリーフケア士も32名おりまして、グリーフケアを広め、実践していくために活躍しております。そして一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団がこの制度を運営管理しています。なんとか、ここまで来ました!
わたしの肖像画をお見せしました
それから今年1月1日に発生した能登半島地震の話題になり、サンレー北陸の大谷賢博部長のグリーフケア動画の話が出ました。上級グリーフケア士である大谷部長は能登半島の出身で、地震で実家が全壊しました。その大谷部長の長女・真結香さんが今年、東京藝大の油画専攻に現役合格。合格の報に接したときはわたしも大変嬉しく、ブログ「春分の日に春が来た!」で紹介した記事を書きました。すると真結香さんはそれがとても嬉しかったそうで、ブログ「東京藝大生から肖像画が届きました!」で紹介したように、わたしの肖像画を描いてくれました。それもデッザンがなどではなく、本格的な油絵でした。わたしが60年以上生きてきた中でも最大級の感動でした。
大谷真結香さんの描いた肖像画を持って
ブログ「ブルーピリオド」で紹介した日本映画では、登場人物の1人が「絵画の発生」について主人公に語るくだりがあります。人はなぜ絵を描くのか? それは絵を描くことは「祈り」であり、「その絵を見た人が幸せになることを願っているから」という説を紹介していました。自分の肖像画を見たとき、わたしはそこに「祈り」が込められていると感じました。というのは、わたしは多くのことを祈っているのです。現在は、父の健康、冠婚葬祭文化の振興、能登半島地震の被災地の復興、世界から戦争がなくなること・・・・・・個人的なことから、大きなことまで、いろんなことを祈っているのです。わたしの肖像画から「あなたの祈りが通じることを祈っています」というメッセージを感じました。ありがたかったです!
グリーフケア映画の原案書を持って
最後に、「ご著書『愛する人を亡くした人へ』を原案とした映画『君の忘れ方』(2025年正月に公開)について、お聞かせ下さい」と言われました。わたしは、以下のように説明しました。「君の忘れ方」は、坂東龍汰さんが主演、西野七瀬さんがヒロインを務める映画です。“死別の悲しみとどう向き合うか”をテーマに、恋人を亡くした構成作家の青年が、悲嘆の状態にある人にさりげなく寄り添う「グリーフケア」と出合い、自らと向き合う姿を描くラブストーリーを描いた作品です。平成19年(2007年)に、わたしはグリーフケアの書である『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)を書いたのですが、ほとんどの人が「グリーフケア」という言葉を知らなかったことが思い出されます。本当に、隔世の感があります。
笑顔の絶えない取材でした
『愛する人を亡くした人へ』は11月6日にPHP文庫化されますし、原案とした映画が全国公開されるということで感無量です。多くの方々がグリーフケアに関心を持ち、この作品を観ていただき、「グリーフケアの時代」が到来することを願っています。そして、冠婚葬祭は「文化の核」であり、冠婚葬祭業者は「文化の防人」です。わたしは、一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の理事長の職責を天命ととらえ、全身全霊、命をかけて取り組む所存です!
2024年9月13日 一条真也拝