建国記念の日と『古事記』

一条真也です。
2月11日は「建国記念の日」でした。
当然ながら、わが国の建国を祝う日ですね。



国民の祝日に関する法律」では、2月11日を建国記念の日とし、“建国をしのび、国を愛する心を養う日”として定めています。2月11日は初代天皇とされる神武天皇が即位した日です。神武天皇は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の孫にあたる邇邇藝命(ににぎのみこと)の3代目にあたり、別名は神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)、若御毛沼命(わかみけぬのみこと)あるいは豊御毛沼命(とよみけぬのみこと)といいます。

 

 

このあたりは、すべて古事記に詳しく書かれています。初代の天皇として知られる神武天皇は今の宮崎県の高千穂に暮らしてみましたが、東方に美しい地があることを知り、天下を治めるための旅に出ることを決意し、日向から出航します。地元の豪族の抵抗にあって兄弟を失うなど、旅の途中ではいくつもの困難が起こるものの、それらを乗り越えて大和の地に到着。そこで都づくり、橿原宮(かしはらぐう)を建て、そこで初代天皇に就いたといわれています。それが「辛酉年春正月庚辰朔」。つまり、旧暦の紀元前660年1月1日。その即位日を明治になって新暦で換算したところ、2月11日になったとのこと。


朝日新聞」2016年10月28日朝刊

 

古事記』は、日本書紀とともに日本人にとって最重要の書物です。ともに日本の神話が記されており、両書を総称して「記紀」といい、その神話を総称して記紀神話と呼びます。『古事記』は日本最古の歴史書であり、『日本書紀』は最古の官撰の正史とされます。記紀では、神話が歴史の中に含められ、神々が姿を現して日本の国を整え、やがて人の歴史へと続く流れが一連の出来事として記載されています。国学者本居宣長は、大著古事記伝によって、『古事記』の再評価を図りました。宣長は、漢文によって書かれたがゆえに、さかしらな「漢意(からごころ)」に満ちた書として『日本書紀』を低く評価し、逆に『古事記』を「やまとごころ」の書として絶賛しました。

古事記と冠婚葬祭』(現代書林)

 

古事記』はあらゆる日本人が読んでおくべき書ですが、なかなかそうもいかないようです。そこで、わたしが『古事記』について京都大学名誉教授で宗教哲学者の鎌田東二先生と対談した古事記と冠婚葬祭(現代書林)を一読されてはいかがでしょうか? 「神道と日本人」というサブタイトルがついた同書の帯には、わたしたち2人の写真とともに「人間は神話と儀礼が必要! 日本人のDNAに刻まれた神道の姿が明らかに。」「希代の神道学者と儀式の第一人者による奇跡の対談!」と書かれています。建国記念の日にぜひ読んでいただきたい一冊です。

 

 

2024年2月11日  一条真也