北九州市への提言

一条真也です。
15日の11時から、北九州市公式HPに掲載するためのインタビュー取材を受けました。場所は、松柏園ホテルの貴賓室です。北九州市企画調整局の企画製作部の森川部長をはじめとした3名の方々をお迎えしました。


北九州市のインタビュー取材のようす

 

今回のインタビューですが、事前に「現在、有識者の方々に『将来も引き継ぐべき北九州市(民)の歴史や価値観』『北九州市が持つポテンシャル』『北九州市が目指すべき姿』などについてインタビューをさせていただいております。つきましては、冠婚葬祭、介護事業など、人生の大きなポイントにおける事業を展開されるサンレーの佐久間社長様からのお話しをお伺いしたいと思っています」とのメールが送られていました。


北九州の過去を振り返る

 

インタビューのテーマは主に3つありました。過去・現在・未来に関するものです。1番目は「過去を見据えた視点からのコメント」で、「世界でも例を見ない五市対等合併による誕生、日本の近代化や戦後の高度成長を牽引してきた求心力、深刻な公害を克服した市民力や産学官民の連携、多様性を受け入れる包容力などの『将来も引き継ぐべき北九州市(民)の歴史や価値観』」についてです。
わたしは、以下のようにコメントしました。
昨年、北九州市が誕生60周年を迎えました。門司・小倉・戸畑・若松・八幡の旧5市が合併に最終合意し、その調印式会場に選ばれたのが、この松柏園ホテルでした。わたし自身も60年前に松柏園で生まれたことから、「北九州市と自分は同い年の兄弟だ」と思ってきました。北九州市は、全国の政令指定都市の中でもっとも高齢化が進んでいます。世界一の高齢化率であることを考えると、北九州市は世界一高齢化が進んだ街と言えるでしょう。人口が100万人を切ったことから、北九州市の衰退が叫ばれています。しかし、わたしはつねづね、「高齢者が多いことは北九州の強み。それを悪いことと思い込んできたことが意気消沈してきた原因ではないか」と感じています。

「老いるほど豊かになる」老福都市の創造を!

 

かつて筑豊は炭鉱で日本中を豊かにし、八幡は製鉄で日本中を豊かにしました。もう一度、北九州が全国に「豊かさ」を発信できるとすれば、それは「老いの豊かさ」であると確信します。私はこの北九州でこそ「老いるほど豊かになる」老福都市を創造していきたいと願っています。つまり、これまでに北九州市の「弱み」とされてきたものを「強み」ととらえ直して、まったく新しい都市モデルを示すべきであると考えます。まさに「老い」がそうです。北九州市は日本一の高齢化都市ですので、全国の独居老人にどんどん移住してもらい、高齢者の楽園にすればよい。つまり、高齢者福祉特区を作って、日本一、高齢者が住みやすい街を作るのです。


北九州市の現在について語る

 

2番目は「現在を見据えた視点からのコメント」で、「アジアに近い地理的優位性、交通・物流インフラの充実、環境産業などの技術力、医療・福祉環境の充実、都市と近接した豊かな自然、歴史ある文化・伝統、地元への愛着や人情に厚い市民気質などの『北九州市が持つポテンシャル』」についての意見を求められました。
わたしは、以下のようにコメントしました。
北九州市は世界初の5市対等合併により誕生したため、それまでの5市ごとに強固な社会資本が形成されていて、現在にもつながっています。例えば、人口10万人当たりの医療機関の数では政令市の中で病院数が3位、診療所が4位、病床数は病院、診療所ともに2位と充実している他、救急車を要請して病院に到着するまでの時間は一番早いです。また保育態勢もしっかり確立されており、待機児童数は10年以上0が続いています。このような点が「住みたい都市」として高い人気を得ている原因でしょう。


「映画」と「医療」の街づくりを!

 

あと、意外に知られていませんが、北九州市は人口1人あたりの映画館数が日本一です。これからの超高齢社会で、市民の暮らしやすさや住みやすさを考えるうえで大きな魅力となるでしょう。また若年層に目を向けると、北九州市内には4年制大学が10あり、人口比での学生数はかなり高いのに、大学卒業と共に多くが北九州市を去っています。これは1にも2にも、受け皿となる企業が乏しいためです。かつての八幡製鉄のような大企業がなくとも、魅力ある中小企業があれば、若者の働き方への考えが変化している中で、学生を引き留められるのではないか。その意味で、市には企業の誘致や育成への努力が求められます。


北九州市の未来像を描く

 

3番目は「未来を見据えた視点からのコメント」で、「人口減少による経済・社会活動の維持、GX・DX・AI などの技術革新、脱炭素社会に向けたエネルギー転換など、『国内外における時代の潮流や転換への対応』を踏まえ、『稼げるまち』『ハイクオリティなまち』『安全に、安心して暮らせるまち』などについて、概ね20年先を見据えた北九州市が目指すべき姿」についてです。
わたしは、以下のようにコメントしました。
日本一の高齢化都市であることに加え、ホームレス支援やシングルマザー家庭支援も北九州の特徴です。全国で困っている人がいたら、みんな「北九州へ行こう!」が合言葉になればいいと思います。死別の悲嘆に暮れている方々も、グリーフケア都市としての北九州に来ればいい。わたしは、北九州市がその「強み」を生かせば、世界一の都市になれると本気で思っています。その未来像は「有縁都市」であり、「老人安住都市」であり、「隣人都市」です。「思いやり都市」であり、「助け合い都市」です。それらの総称としての「コンパッション都市」ですね。


「コンパッション都市」の創造を!

 

「コンパッション都市」とはWHOの「健康都市」を発展形であり、老い、病、死、喪失を受けとめ、支え合うコミュニティのことです。まさに、北九州市が目指すべき都市像です。わが社では、配偶者の死が自死の要因となるケースも多いため、ご遺族の立ち直りを支援するグリーフケアを推進してきました。またNPO法人を設け、地域の独居高齢者らが集う「隣人祭り」を開き、孤独死防止を図ってきました。すべては、コンパッションに基づいた企業活動です。また血縁や地縁の希薄化がみられる中、わが社では趣味などの新たな縁作りの手伝いにと、囲碁や俳句大会も開催しています。さらに、「ともいき倶楽部」「笑いの会」なども開催しています。これは「人間尊重」というわが社のミッション、「有縁社会の再生」というわが社のアンビションを果たすことでもあります。

世界一の「コンパッション都市」を目指せ!

 

こうした取り組みはコンパッション都市作りに通じます。全国で独居老人が増えていますが、わたしは、北九州市を高齢者特区にして、高齢者向けのショッピングセンターや娯楽施設、医療も受けやすくすることを提唱しています。孤独死しない隣人都市を作り、全国から独居老人が北九州に集まってくれば人口も増えます。さらに、困窮者やシングルマザー支援も充実させ、「困ったら北九州に行ってみよう」という街にする。そうすれば、北九州市は世界一のコンパッション都市となるでしょう。


終始、笑いの絶えない取材でした

 

北九州市長選の選挙前に武内市長にお会いし、北九州市を「コンパッション都市」にする構想をお話ししたところ、「素晴らしい考えですね。ぜひ、やりましょう!」と言って下さいました。このたびの能登半島地震に際して、福岡市はいち早くさまざまなコンパッション対応を打ち出しました。わたしは、福岡市の高島市長のリーダーシップに感服するとともに、「本当は、北九州市がやるべきなのに」とも思いました。能登半島地震や魚町火災へのコンパッションの欠片もない成人式でのパフォーマンスには大いに落胆しましたが、改めて武内市長の強いリーダシップを求めます。北九州市を世界一の「コンパッション都市」にしてくれることを期待しています。どうか、北九州市を「修羅の国」ではなく「思いやりの街」にして下さい!


また、武内市長と語り合いたいです!

 

2024年1月15日  一条真也