「助け合い」は人類の本能

一条真也です。
ヤフーニュースで素敵な記事を見つけました。
記事のタイトルは、「助け合い心身の癒やしに うどん2玉分を20人で分け合う 珠洲の避難所」です。

ヤフーニュースより

 

記事には、「地震津波に襲われた珠洲市宝立町鵜飼の避難所からカレーの香ばしい匂いがした。約700人が身を寄せる宝立小中では物資が行き届かず、避難した住民が壊れた自宅から野菜や肉などを持ち寄り、自転車置き場に即席の調理場を設けて炊き出しをしている。避難住民が交代で調理し、5日の献立はカレー汁だった。ダイコンやニンジン、白菜など野菜たっぷりのスープが鍋でぐつぐつと煮立ち、女性がケチャップやソースで味を調えた。この日、避難者に振る舞われたのはカレー汁とにぎり飯1つ。『カレーうどん』にして楽しんでもらおうと、うどんが用意されたが、約20人が寝泊まりする教室に配られたのは、わずか2玉分だった。炊き出しは1日1食。お年寄りや子どもが空腹を抱える被災地の『現実』を見せつけられた。(珠洲支局長・山本佳久)」と書かれています。

 

 

この記事のタイトルには「助け合い」という言葉がありますが、これは正確には「相互扶助」ということです。相互扶助のメカニズムを解明するには、現代の進化生物学や、「人の心の歴史」をさぐる進化心理学の見方に照らし合わせてみるとわかりやすいでしょう。人類は、数百万年前から共同体を形成して、その中で暮らすという環境で進化してきました。アリやハチなど、社会をつくる生物は珍しくありません。しかしながら、社会生活からこれほどの利益を得ている動物は、脊椎動物の中でも人間の他にはそう多くありません。オックスフォード大学で動物学を専攻し、英国「エコノミスト」誌の科学記者であるマット・リドレーは、著書『徳の起源 他人を思いやる遺伝子』において、「人間は、人嫌いであるくせに、人と交わらずには生きてゆけない」と述べています。

 

 

拙著心ゆたかな社会(現代書林)でも紹介しましたが、リドレーは「人類を他の動物から区別し、生態系の中で優位な存在にしている理由の1つは、わたしたちが非常に高度な社会的本能を数多く持っているからなのだ」と主張しました。古代ギリシャアリストテレスは「人間は社会的動物である」と言いましたが、近年の生物学的な証拠に照らし合わせてみると、この言葉はまったく正しかったことがわかります。結局、人間はどこまでも社会を必要とするのです。人間にとっての「相互扶助」とは生物的本能であるとともに、社会的本能でもあるのです。相互扶助を基本理念とする互助会であるわが社は、現在、北陸の被災地への物資の提供や人的支援を行っていますが、さらに推進いたします。週明けには、北陸に入ります!

 

2024年1月6日 一条真也