礼業

 

一条真也です。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「礼業」を取り上げます。

礼を求めて(三五館)

 

世の中には農業、林業、漁業、工業、商業といった産業がありますが、わが社のような冠婚葬祭会社が関わっている領域は「礼業」です。「礼業」とは「人間尊重業」であり、「ホスピタリティ・インダストリー」の別名でもあります。「礼」の意味について考えたいと思います。「礼」は儒教の真髄ともいえる思想です。それは、後世、儒教が「礼教」と称されたことからもわかります。

論語と冠婚葬祭(現代書林)

「礼」は儒教の真髄ともいえる思想です。
それは、後世、儒教が「礼教」と称されたことからもわかります。そもそも礼(禮)という字は、「示」(神)と「豊」(酒を入れた器)から成るように、酒器を神に供える宗教的な儀式を意味します。古代には、神のような神秘力のあるものに対する禁忌の観念があったので、きちんと定まった手続きや儀礼が必要とされました。これが、礼の起源であると言われます。礼は、冠婚葬祭の基本です。

 

ところが、もう1つ、「礼」には意味があります。「示」は「心」であり、「豊」はそのままで「ゆたか」だというのです。ということは、「礼」とは「心ゆたか」であり、「ハートフル」ということになります。「ハートフル」はわたしの造語として流行しましたが、なんと「礼」という意味だったのです。

ハートビジネス宣言東急エージェンシー

 

ハートフル」をコンセプトにしたビジネスは、「ハートビジネス」と呼ばれます。心ゆたかな社会としての「ハートフル・ソサエティ」において産業の主流となっていく ハートビジネスには さまざまな業種がありますが、現在、「第3次産業」としてひととくくりにされています。 しかし、この第3次産業という概念は経済学者コーリン・クラークが1940年代に提案したものであり、時代遅れ以外の何ものでもありません。現在の産業は7つのレベルで分類するとわかりやすいでしょう。

 

第1次と第2次は従来通りとして、第3次は手や足などによる「筋肉サービス」で、代表的な業種は洗濯業 、宅配業、運送業など。第4次は、いわゆる装置産業で、知恵によって開発して筋肉によって保守などをする 「複合サービス」。金融機関、私鉄、貸しビル、不動産業などがこれに含まれます。 第5次は「知恵のサービス」で、教師、コンサルタント、システム、エンジニアなど。マスコミやシンクタンクもここに入ります。第6次は「情緒サービス」で、レジャー施設業、映画会社、劇団、芸術家など。そして第7次が「精神サービス」で、冠婚葬祭業 、神社、寺院、教会などが含まれます。つまり、高次の産業になればなるほど付加価値が高くなるわけです。そして、 ハートビジネスは主に第6次と第7次の産業に集中しています。 ハートビジネスとは人をハートフルにするビジネスであり、この最高位にあるものこそ「礼業」なのです。

 

2023年11月27日  一条真也