人類十七条  

 

一条真也です。
わたしはこれまで多くの言葉を世に送り出してきました。この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。今回は、「人類十七条」を取り上げます。

世界をつくった八大聖人(PHP新書)

 

ブログ『世界をつくった八大聖人』に書きましたが、わたしは「グリーフケア」や「隣人祭り」などに取り組んできましたが、その真の目的は自死孤独死をなくすことです。そして、それらの活動はブッダやイエス孔子の思想に基づいています。もし現在、ブッダやイエスが生きていたら、自死をなくす活動をするでしょうし、孔子が生きていたら隣人との交流を推進して孤独死をなくす活動をするのではないかと思います。わたしの心の中には、いつも聖人たちが生きています。拙著世界をつくった八大聖人(PHP新書)では、ブッダソクラテス孔子老子聖徳太子モーセ、イエスムハンマドの8人の「人類の教師」たちのメッセージを集約して、「人類十七条」としてまとめてみました。

 

 1.水を大切にする。
 2.他者に思いやりをかける。
 3.他者からの思いやり
   に対して感謝する。

 4.挨拶をする。
 5.困っている者を助ける。
 6.他者の生命を奪わず、
   自分も自殺しない。

 7.意味なく生きものを殺さない。
 8.他国を侵略しない。
 9.核兵器を使用しない。
10.自国の文化に誇りを持ち、
   他国の文化を尊重する。

11.他者が信仰する
   神や聖人を侮辱しない。

12.一切の差別をしない。
13.盗まない。
14.強姦しない。
15.不正を犯さない。
   たとえ不正を加えられても、
   不正によって復讐しない。

16.親が亡くなったら、
   必ず葬式をあげる。
17.地球環境に配慮した
   生活をする。



数えてみると、偶然にもSDGsの数と同じ17でした。SⅮGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」という意味です。「SDGs(持続可能な開発目標)は、国連で採択された「未来のかたち」です。健康と福祉、産業と技術革新、海の豊かさを守るなど経済・社会・環境にまたがる17の目標があり、2015年の国連総会で全加盟国が合意しました。そして、2030年までにそのような社会を実現することを目指しています。わたしの「人類十七条」は『世界をつくった八大聖人』刊行の2008年に提案したものですので、SDGs誕生の7年前となります。



また、「人類十七条」は聖徳太子が作ったとされる「十七条憲法」と同じ数でした。この十七条は、聖徳太子を含む八大聖人との心の会話によって生まれたものですが、人類が他の生命に迷惑をかけないという、いわば「人類の品格」ともなっています。聖徳太子は、宗教における偉大な編集者でした。儒教によって社会制度の調停をはかり、仏教によって人心の内的不安を実現する。すなわち心の部分を仏教で、社会の部分を儒教で、そして自然と人間の循環調停を神道が担う。3つの宗教がそれぞれ平和分担するという「和」の宗教国家構想を説いたのです。

 

 

パナソニックの創業者であり、PHP研究所を創設した松下幸之助は生涯を通じて「人間は偉大である」ということを言い続けた。そして、著書『人間を考える』の中には、「新しい人間道の提唱」という一文があり、そこには「人間には、万物の王者としての偉大な天命がある。かかる天命の自覚に立っていっさいのものを支配活用しつつ、よりよき共同生活を生み出す道が、すなわち人間道である。人間道は、人間をして真に人間たらしめ、万物をして真に万物たらしめる道である。」と書かれています。

 

 

人間が万物の王者という考え方には、「傲慢である」と反発する人もいるでしょう。たしかに、仏教では人間以外のすべての有情の幸福を説き、ディープ・エコロジーの考え方でも、すべての生命を一体としてとらえている。そこに他の生命を「支配活用」するなど、とんでもないことかもしれません。しかし、わたしは松下幸之助が言いたかったのは、そんな小さなレベルの問題ではないと思います。たしかに誤解を招きやすい表現ではありますが、「支配活用」というのは経営学ピーター・ドラッカーのいう「マネジメント」の意味だと、わたしは考えます。「支配活用」の「支配」とはおそらく「支配人」の「支配」であって、決して「支配者」の「支配」ではないと思うのです。つまり、支配活用者とはマネジャーのことなのです。松下幸之助は、人類は地球のマネジャーだというのです。

ウェルビーイング?』『コンパッション!』の双子本

 

ドラッカーは、万人のための帝王学としての「マネジメント」をめざしました。それは、万人が幸福になる道でした。人類も、万物のマネジャーとして万物の幸福を追求するのです。それは、結局、責任の問題です。国家では元首が、会社では社長が、家庭では家長が一切の責任を負うように、水から生まれながら火を得たことによって文明を手に入れた人類が地球の責任者としてリーダーシップを発揮し、地球上の全生命の幸福を追求するのです。それこそが松下幸之助の本心であり、「人類の品格」そのものであると思います。わたしは、人類の目指すべき理想は「平和」と「平等」に集約されると考えます。そして、それらは「ウェルビーイング」や「コンパッション」といった現代的コンセプトの底流に流れているのではないでしょうか。


「人類十七条」のうち、第一条の「水を大切にする」は、『世界をつくった八大聖人』の執筆を通じて、わたしが心から痛感したことでした。人類の理想が「平和」と「平等」なら、人類の存続に関わる最重要問題はつまるところ「戦争」と「環境破壊」に集約されます。そして、その2つは「水を大切にする」という1つの考え方によって、基本的には避けられると考えます。この世界も生命も水から生まれました。戦争を引き起こす心も、環境を破壊する心も、結局は水を大切にしない心に通じます。「世界平和」と「地球環境」の問題は別々の問題ではなく、実は完全につながっているのです。いま、地球上には広島に落とされた原子爆弾の40万個に相当する核兵器が存在するという。また、地球温暖化をはじめとした環境問題は深刻化する一方です。しかし、2つの問題の解決への糸口とは「水を大切にする」という1つ答えではないでしょうか。


2023年11月18日  一条真也