GM

 

一条真也です。
わたしは、多くの言葉を世に送り出してきました。今回は「GM」という言葉を提案したいと思います。この言葉の意味は、「ゼネラル・モータース(General Motors)」でも「ゼネラル・マネージャー(General Manager)」でもありません。「グリーフケア(Grief care)」と「マインドフルネス(Mindfulness)」の、それぞれの頭文字から取ったもので、「グリーフケア&マインドフルネス」の意味です。


グリーフケアについて、上智大学グリーフケア研究所の公式HPには「『グリーフ』とは、深い悲しみ、悲嘆、苦悩を示す言葉です。『グリーフ』は、さまざまな『喪失』、すなわち、自分にとって大切な人やものや事柄を失うことによって起こるもので、何らかの喪失によってグリーフを感じるのは自然なことです。1999年、世界保健機関(WHO)は、健康の定義について「身体(physical)」、「精神(mental)」、「社会(social)」そして「スピリチュアル(spiritual)」の4つの領域があることを提案しています。グリーフケアとは、スピリチュアルの領域において、さまざまな『喪失』を体験し、グリーフを抱えた方々に、心を寄せて、寄り添い、ありのままに受け入れて、その方々が立ち直り、自立し、成長し、そして希望を持つことができるように支援することです。多元価値社会とも言える現代は、一人ひとりが、自らの生きがいを求める時代、人間らしい死に方を求める時代であると言うこともできます。それは、医療や先端科学技術の現場はもとより、福祉や介護の現場、災害や事件・事故の現場、教育の現場、葬儀の現場など、さまざまな現場において、グリーフケアが必要とされる時代となっています」と書かれています。


一方、マインドフルネスについて、『現代精神医学事典』(弘文堂)には、以下の様に記されています。
「1979年にジョン・カバットジンによりマサチューセッツ大学医学部にストレス低減プログラムとして創始された瞑想とヨーガを基本とした治療法。慢性疼痛、心身症摂食障害、不安障害、感情障害などが対象となる。ジョン・カバットジン鈴木大拙の禅に影響を受け、仏教を宗教としてではなく人間の悩みを解決するための精神科学としてとらえ、医療に取り入れた。その基本的考えは、煩悩からの解脱と静謐な心を求める座禅に軌を一にしている。マインドフルネスの語義は”注意を集中する”である。一瞬一瞬の呼吸や体感に意識を集中し、”ただ存在すること”を実践し、”今に生きる”ことのトレーニングを実践する。これにより自己受容、的確な判断、およびセルフコントロールが可能となる。マインドフルネスは認知行動療法に取り入れられ脚光を浴びるようになった。しかし、認知行動療法は認知の変容を目指すのに対して、マインドフルネスは認知のとらわれからの解放を誘導する」

 

マインドフルネスの効果として、1970年代よりアメリカを中心に科学的・医学的な研究が進み、効果が最も実証されている瞑想の1つであり、ストレスや不安を取り除き、ココロを休め、生産力があがるということが実証されています。海外の企業ではGoogle・Apple・ゴールドマンサックスや日本の企業でもヤフー・メルカリほか多くの企業で取り入れられ、社員のメンタルヘルス対策として、モチベーション、集中力、創造性、記憶力、生産性などの向上や改善のために、人材フォローの一環として行われています。


グリーフケアは、ケアをするケア者とケアを受けるクライアントの相互の関係性、マインドフルネスが瞑想により自己を見つめていくというように実践の方法や関わる人数など異なった点があります。この2つの間には共通する部分があります。それは、どちらにおいても「ありのまま」の心の動きが重要な要素であるということです。グリーフケアの中で行われるものとして「ナラティブ・アプローチ」というものがあります。これは悲しみを抱える相手のケアを行う際に、相手の語る「語り・物語(narrative)」を通して何らかの現象に迫る(アプローチする)実践方法ですが、その人の語るストーリーという形でその人の問題や課題を外に出してもらい、語り手と聞き手が「語り」を通して相互に影響しあい、ストーリーが変わっていくことで、考え方や課題を変えていくという手法です。


そしてこの手法を通して、その人らしい悲しみの寄り添いかたを一緒に見つけていく方法となります。ここで大切なのは自己の心の中にある悲しみを言語化し「語り」というかたちで外在化するということです。この「語り」は自己の心を自分なりに「ありのまま」に表したものです。また、マインドフルネスにおいても「ありのまま」というワードが大切となります。瞑想の中で浮かんでくる思想や雑念に意識を向け、瞬間的に展開する思想や雑念を素直に受け入れて瞑想を続けることで、自分が無意識のうちに評価していることに気付き、物事をありのままに受け入れ適切な対応が可能となってくるというものです。


「GM」の時代へ・・・・・・

 

グリーフケアとマインドフルネスにおいて、「他者に語る言葉」と「自己の内にある思想や雑念に気付くこと」という違いはあっても、最も大切なのは「ありのまま」の心の動きを感じることについて共通する部分があるのではと考えられます。拙著『心ゆたかな社会』(現代書林)の帯には「マインドフルネス」と「グリーフケア」という言葉が明記されています。ハートフル・ソサエティ=心ゆたかな社会を創造するために、グリーフケアとマインドフルネスは欠かせない存在となるのです。

心ゆたかな社会』(現代書林)

 

サンレーグループでは、「WC」つまり「ウェルビーイング&コンパッション」の産霊(むすび)をカタチとした「サンレーズ・アンビション・プロジェクト(SAP)」を推進しています。SAPには大小さまざまな事業が内包されており、今後さらに増やしていきますが、それらの事業を実現するために必要なものが「GM」すなわち「グリーフケア&マインドフルネス」だと考えています。マインドフルネスの実践でモチベーション、集中力、創造性、記憶力、生産性を高めて、より多くの方、より深いグリーフを抱えた方のケアに取り組んでいきたいと思います。

ウェルビーイング?』『コンパッション!』の双子本

 

2023年8月1日 一条真也