『人は老いるほど豊かになる』

一条真也です。
わたしは、これまで多くのブックレットを刊行してきました。わたしのブックレットは一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として出しています。いつの間にか44冊になっていました。それらの一覧は現在、一条真也オフィシャル・サイト「ハートフルムーン」の中にある「佐久間庸和著書」で見ることができます。整理の意味をかねて、これまでのブックレットを振り返っていきたいと思います。 


『人は老いるほど豊かになる』(2007年1月刊行)

 

今回は、『人は老いるほど豊かになる』をご紹介します。2007年1月に刊行したブックレットです。わたしは、朝日新聞発行の「はつらつ新聞ひまわり」に2005年7月15日から2007年1月19日までコラムを連載しました。それを1冊にまとめたのが、このブックレットです。以下の12のコラムが掲載されています。

 1  生老病死をとらえなおす
 2  老いとは、人間的完成である
 3  老いの神話を知っていますか?
 4  高齢者は人生の勝利者
 5  心ゆたかに生きるには
 6  グランドカルチャーの世界
 7  ライブドア事件の原因とは?
 8  俳句が与えてくれるもの
 9  「すみません」と「ありがとう」の間
10  人生は、アルバムづくり
11  丹波哲郎さんの堂々人生
12  誕生日を祝っていますか?


12のコラムが掲載されています


老福論〜人は老いるほど豊かになる』(成甲書房)

 

わたしは、「人は老いるほど豊かになる」という言葉を、拙著『老福論』(成甲書房)のサブタイトルに使いました。「老い」は人類にとって新しい価値です。自然的事実としての「老い」は昔からありましたし、社会的事実としての「老い」も、それぞれの時代、それぞれの社会にありました。しかし、「老い」の持つ意味、そして価値は、これまでとは格段に違ってきています。老いること、病むこと、そして死ぬこと、すなわち「生老病死」を人間にとっての苦悩とみなしています。現在では、生まれることが苦悩とは考えられなくなったにせよ、まだ老病死の苦悩が残ります。しかし、私たちが一個の生物である以上、老病死は避けることのできない現実です。それならば、いっそ老病死を苦悩ととらえない方が精神衛生上もよいし、前向きに幸福な人生が歩めるのではないでしょうか。すべては、気の持ちようなのです。

 

 

わたしは古今東西の人物のなかで孔子を最も尊敬しており、何かあれば『論語』を読むことにしています。その『論語』には、次のあまりにも有名な言葉が出てきます。
「われ十有五にして学に志し、三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従って矩を踰えず」
60になって人の言葉が素直に聞かれ、たとえ自分と違う意見であっても反発しない。70になると自分の思うままに自由にふるまって、それでいて道を踏み外さないようになった。ここには、孔子が「老い」を衰退ではなく、逆に人間的完成としてとらえる思想が明らかにされています。そう、人は老いるほど豊かになるのです。

f:id:shins2m:20210707121335j:plain加地伸行先生と 

 

ブログ「加地伸行先生と対談しました」で紹介したように、2021年7月7日、わたしは日本における儒教研究の第一人者である加地先生と対談させていただきましたが、わたしが「孔子こそは、世界で初めて『人は老いるほど豊かになる』と宣言した人ではないでしょうか」と申し上げたところ、加地先生は「確かにそうですね」と賛同して下さいました。まことに嬉しく、感激いたしました。

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加地先生との対談のようす 

 

人は必ず老い、そして死にます。「老い」や「死」が不幸であれば、人生はそのまま不幸ということになるのです。これでは、はじめから必ず負け戦に出ているのと同じではありませんか。不幸や苦悩はすべて自分の心が生み出すものです。これからは、次の幸せになる魔法の呪文をいつも心の中で唱えてください。毎日、唱えてください。そうすれば、必ず幸せになれます。その呪文とは、こうです。

 

人は老いるほど豊かになる

 

2021年7月8日 一条真也