東京五輪を中止するのは誰か?

一条真也です。
昨日、28日の東京都の感染者は925人、大阪府は過去最多の1260人、福岡県も過去最多の440人でした。医療体制の逼迫具合は深刻さを増す中で、東京五輪を強行開催しようとする日本政府に激しい怒りを感じています。今朝UPした「シンとトニーとムーンサルトレター第193信」でも、宗教哲学者の鎌田東二先生と東京五輪について意見交換していますので、よろしければお読み下さい。



大阪府と福岡県の新規感染者数が過去最多を記録した28日、東京五輪パラリンピック組織委員会橋本聖子会長(56)、東京都の小池百合子知事(68)、丸川珠代五輪相(50)、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長(44)による5者協議が始まりました。新型コロナウイルスの変異株が日本中で猛威を奮っている中、五輪開催中止の可能性でも協議してくれればいいのですが、このメンバーですので開催前提での協議となりました。従来の感染防止策を強化する方針で合意し、当初は今月中に方向性を示すとされていた国内観客の上限については、6月までの決定として先延ばしされる見込みというから笑わせます。

f:id:shins2m:20210429214728j:plain5者協議のようす

 

5者協議の冒頭あいさつで、リモート参加したIOCのバッハ会長は「われわれは日本国政府の決定、都が要請された緊急事態宣言を尊重している。日本の国を守ろうという勤勉な精神を非常に称賛している。五輪コミュニティーは日本とともに歩んでいる。日本国民とともに歩み、思いを寄せている」と述べ、さらに「日本の社会は連帯感をもってしなやかに対応している。大きな称賛をもっている。精神的な粘り強さ。へこたれない精神をもっている。それは歴史が証明している。逆境を乗り越えてきている。五輪も乗り越えることが可能だ。献身的な努力で未曽有のチャレンジをしている」と呼びかけました。

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IOCのバッハ会長

 

さらにバッハ会長は、「リスクを最小化し、日本国民に安心してもらえる五輪になる」と強調しました。わたしは、これほど白々しいお世辞を聞いたことがありません。ヨーロッパ貴族の集まりであるIOCの利権のために日本国民の命を危険にさらすというのに何という言い草。「へこたれない精神を持っているのはお前だろう!」と言いたくなりますね。先日の3度目の緊急事態宣言発出の会見で、菅義偉首相は困惑した表情というか、怯えたような表情で「五輪開催の決定権はIOCにある」と発言していましたが、日本国で開催するのに日本に決定権がないというのは非常に違和感があります。IOCというのは、GHQのように日本を支配する組織なのでしょうか?


GHQといえば、現在の東京五輪を開催するのは絶対に無理なのに強行開催の方向に進んでいる日本を見ていると、太平洋戦争の末期を連想をするのはわたしだけではありますまい。もっと早く降伏していれば、広島と長崎に原爆も落とされず、神風特攻隊で若い命も散らず、戦艦大和も沈まず、沖縄の惨劇も避けられたと思うと、つくづくリーダーの最大の使命とは、自己犠牲の精神で重大決定をすることだと痛感します。本来は、内閣総理大臣である菅氏がその任にありますが、期待できません。こうなったら、天皇陛下の御英断を仰ぐしかないと思いますが、現実では難しいです。でも、東日本大震災後の上皇陛下(平成天皇)のメッセージのように、今上陛下がコロナ禍に苦しむ日本国民へのメッセージとして、「国民の健康を阻害する一切の行事を控えることを希望します」と一言でも口にして下されば、一気に流れは変わるのではないでしょうか。

 

自民党は五輪で国民をお祭りムードにして、そのまま秋の衆院選に臨もうと甘く考えているのでしょうが、そうは問屋が卸しません。五輪を強行開催すれば、その後の変異株による感染大爆発は必至で、衆院選では自民党は歴史的大敗を喫すのは火を見るより明らかです。自民党も本音を言えば、五輪などより選挙で勝つ方が大事でしょうから、一刻も早く五輪中止の方向にシフトするべきです。最近、ポロリと本音を口にする傾向のある二階俊博幹事長あたりが「五輪中止宣言」を菅首相に進言し、菅首相がそれを実行すれば、自民党衆院選大勝も夢ではありません。誰であれ、東京五輪中止を宣言すれば国民的英雄になれます。


菅首相以外に「東京五輪中止」を決定できる人物といえば、これはもう東京都の小池百合子都知事しかいないでしょう。実際、「横槍・百合子」の異名を持つ小池都知事は何をしでかすかわからないデンジャラスなキャラクターであり、巷でも「小池都知事が五輪中止を宣言するのではないか?」という声が聞こえてきます。元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏も、「小池都知事は民意の風に乗ることに関しては天才的。彼女が中止宣言する可能性はある」と発言していました。丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣が、大会期間中の医療体制について、「具体的な提示がない」と東京都に苦言を呈しました。小池百合子知事は「事務的には詰めている」と反論しましたが、オリンピック開幕まで3カ月を切る中で、国と都の対立が表面化した形になります。これは、小池の乱を事前に察知した政府の不安が表面化したようにも思えますね。


4月16日配信の「日経ビジネス」電子版では、コラムニストの小田嶋隆氏が「彼女が中止のホイッスルを吹く日」という興味深いコラムを書かれています。それによれば、小田嶋氏の知人が以下の見立てを語ってくれたそうです。

1.いくつかの国や競技団体が五輪への不参加を言い出す

2.小池百合子都知事が突然五輪の中止を宣言

3.ついでにIOCとの契約の詳細
      (どうせ守銭奴契約)を暴露

4.右も左も小池百合子バンザイ状態

5.責任を取って都知事を辞任とか言い出す

6.でもって衆院選に打って出る

7.もちろん小池新党を結成。しかも維新あたりと握手

8. 当然、菅さんの選挙区から出馬する

9.どうせ大勝利

10. 日本初の女性宰相へ……とか

11. ありそうだよね。
      とにかく度胸だけは日本一なわけだから

12. いやだなあ。ほんとにいやだなあ。ありそうで。


小田嶋氏は「五輪中止をいきなり持ち出す権限と度胸と政治的センスと悪辣さと野心を全部持ってる人間は、小池百合子以外に考えられない。うまいタイミングで五輪中止をブチ上げて、同時にIOCの腐敗を告発しつつ被害者面をキメて見せれば、右も左も保守もリベラルも両手を挙げて支持するよね。いやだなあ」と書かれていますが、わたしは諸悪の根源であり、日本にとって暗黒の未来製造機である東京五輪というブルシット・イベントをぶっ壊してくれるなら、小池都知事が日本初の女性宰相となってもいいと考えます。いや、それだけの行動力があれば、その栄誉にじゅうぶん価するでしょう。「東京五輪ジャンヌ・ダルク」は電通社員の妹である池江璃花子選手ではなく、小池都知事となる可能性は大いにあると思います。


28日に行われた衆院厚生労働委員会で、政府のコロナ分科会の尾身茂会長は、東京五輪パラリンピックの開催について「組織委員会など関係者が感染のレベルや医療のひっ迫状況を踏まえて、議論をしっかりやるべき時期に来ている」と発言しました。東京五輪の開催について政府から非公式に意見を求められた尾身会長は、「発展途上国も含めて感染が非常に広がっていることは事実ですよと。このことをよく分かって頂いた方が良いと、リスクは当然あるということ。したがって感染の状況とか医療の逼迫というような状況を考えてくれない、そのことをもうそろそろ考えて国民に知らせてもらうのが組織委員会、あるいは関係者の責任じゃないかということは申し上げました」と述べました。検査体制、ワクチン接種が発展途上国以下、劣等生以下の惨状になった責任の一端は間違いなく尾身会長にあるとの声も強いですが、この日の発言には土壇場で日本国民を真剣に心配する真心のようなものが感じられ、わたしは尾身会長のことを少し見直しました。



また、尾身会長は開催の判断をする立場にないとした上で、「外国からの人流を減らすことが今、求められている」と述べ、水際対策をさらに強化し、感染を抑え込んでおく必要があるという認識を示しました。これは明らかに「五輪開催中止」を示唆しています。29日の民放各局のワイドショーなどを観ましたが、紀州ドンファン事件の報道とともに、これまではタブーだった「五輪中止すべき」発言がバンバンされていました。昨日から潮目が変わった気がします・・・・・・と、ここまで書いたところで、29日の東京都の新規感染者が1027人との発表がありました。先週の木曜日(861人)と比べて166人増加しており、1日あたりの感染発表が1000人を超えるのは1月28日以来3か月ぶりです。はてさて、こんな都市で3カ月後に本当に五輪ができますか?

 

2021年4月29日 一条真也