自分で自分を尊敬できる人間になれ(渡部昇一)

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言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、「稀代の碩学」であり「知の巨人」、そして「現代の賢者」である渡部昇一先生の言葉です。渡部先生は昭和5年(1930年)に山形県鶴岡市でお生まれになりました。上智大学大学院修士課程修了後、ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学に留学。母校である上智大学で長年教鞭を執られ、同大学の名誉教授を務められました。平成29年(2017年)逝去。


自分の品格 (知的生きかた文庫)

自分の品格 (知的生きかた文庫)

 

渡部先生は「読書家」にして、「愛書家」であり、「蔵書家」。この3つが矛盾なく一致しておられる稀有な教養人でした。その渡部先生ご自身は、著書『自分の品格』(三笠書房)で「品格」について、「品格のある人、品性の高い人というのは、周囲の人たちと比べて、『卑しいことはやらない』という高いプライドを持っている人のことだ。あるいは、辱めを受けないということを、肝に銘じている人のことだろう。そしてこのプライドを持ってこそ、人は自分の限界を破っていけるのである」と述べられています。

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稀覯本について説明して下さった渡部先生

 

真に品格のある人の特長は「簡単に物事を諦めないこと」だと渡部先生は喝破され、自分がやりたいことに情熱を注げば必ず人生は好転していくはずだと力強く語られます。
どんな仕事、職業であれ、「できない理由」探しはせず、やるための意義を見つけていく姿勢を堅持し続けるがゆえに一流の域に達するのであり、この過程で品格が醸成されていくのです。「人生でいちばん大事なことは何か、1つだけあげよ」と問われたならば、「できない(やらない)理由を探すことなく、志を保ち、自分で自分を尊敬できる人間になれ」と渡部先生は語られています。


渡部先生こそは理想の「品格の人」でした

 

わたしは本を読むという行為そのものが豊かな知識にのみならず、思慮深さ、常識、人間関係を良くする知恵、ひいてはそれらの総体としての教養を身につけて「上品」な人間をつくるためのものだと確信していますが、まさに渡部先生こそ、わたしの理想とする「品格の人」でした。わたしは晩年の渡部先生の謦咳に接する機会に恵まれましたが、その思いやりと礼節に心の底から感銘を受けました。品格は風貌に現れるものです。『論語』を出典とする「威ありて猛からず」という言葉は、渡部氏にこそ相応しい形容ではないでしょうか。なお、渡部先生とわたしは対談本『永遠の知的生活』(実業之日本社)において、教養と品格について大いに語り合いました。この体験は、わたしの人生の宝です。


永遠の知的生活』(実業之日本社

 

2020年6月11日 一条真也