気高く、強く、一筋に(中村天風)

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一条真也です。
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、異色の哲学者・中村天風の言葉です。天風は、生涯数え切れないほどの多くの講演で「心」の持つ力の偉大さを説き続けましたが、「新しい計画の成就はただ不屈不撓(ふとう)の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」という言葉を残しています。

 

成功の実現

成功の実現

 

 

中村天風はヨガを基本とした独特の成功哲学を打ち立て、多くの経営者を指導した異色の哲人ですが、松下幸之助稲盛和夫といった戦後の日本を代表する経営者たちにも強い影響を与えています。京セラやKDDIを立ち上げ、さらには日本航空を再生させた稲盛和夫氏によれば、リーダーは次の4つのことを果たす人だそうです。



第1は組織の目指すべきビジョンを高く掲げる人。困難に直面しても目指すべきただ一点に向かって集団を率いるのがリーダーです。第2は組織のメンバーとビジョンを共有できる人。社員がビジョンに心から賛同しミッションに取り組まなければなりません。第3は人間性のある人。人間性を高めるだけでなく、いわゆるフィロソフィーを組織に広める。これが組織を1つにするのです。最後に業績が向上する仕組み作りの能力もリーダーに問われます。具体的には全社員が参加できる管理会計システムの構築が重要であると、稲盛氏は述べます。

 

心。

心。

 

 

以上4つのポイントを日本航空再建でいかに実践したか。2010年2月に稲盛氏が日航会長に就任した時、企業再生支援機構の手などによりビジョンに相当する事業再建計画ができていました。給与や人員削減、路線縮小など厳しい内容で報道でも実現性を疑う見方が多かったといいます。二次破綻も指摘される中、再建したいという強い思いから、稲盛氏は会長就任の挨拶で中村天風の『新しい計画の成就はただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に』を紹介しました。計画達成はくじけず強烈に思い続ける心にかかっています。稲盛氏は、決意と覚悟を社員に示したのです。このエピソードは、稲盛氏の著書『心。』(サンマーク出版)で詳しく紹介されています。

 

心を高める、経営を伸ばす―素晴らしい人生をおくるために(PHP文庫)

心を高める、経営を伸ばす―素晴らしい人生をおくるために(PHP文庫)

 

 

「新しい計画の成就はただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」という天風の言葉は、情熱の大切さを説いたものだと言えるでしょう。稲盛氏は著書『心を高める、経営を伸ばす』において、「情熱がものごとを成就させる」として、こう述べています。
「人を判断するに当たっては、才能、能力をよく見なければなりませんが、私は情熱も重視します。それは、情熱さえあれば、まずはものごとが成就するからです。情熱さえあれば、自分に能力がなくても、能力のある人を自分の周囲に配すればいいわけですし、資金や設備がなくても、自分の夢を一生懸命にれば、応えてくれる人はあるはずです。ものごとを成就させていく源は、その人が持つ情熱なのです。成功させようとする意志、熱意、情熱が強ければ強いほど成功の確率は高いのです」

 

続けて、稲盛氏は以下のように述べるのでした。
「強い情熱とは、寝ても覚めても、24時間そのことを考えている状態のことを言います。しかし、実際には、24時間も思い続けるということは不可能なのことです。常にそのように心がけることが大切なのです。そうすることにより、願望が潜在意識にまで浸透し、自分でも気づかないうちに、願望実現への行動をとり始め、今よりはるかに大きな仕事ができるようになるのです。ものごとの成功、不成功の鍵は、まずは情熱が握っていると私は思います」

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わたしは、ブログ「営業責任者会議」で紹介した会議をはじめ、機会あるごとに「新しい計画の成就はただ不屈不撓の一心にあり。さらばひたむきにただ想え、気高く、強く、一筋に」という天風の言葉と、稲盛氏の考え方をわが社のみなさんに紹介しています。もちろん、わたし自身も経営者の端くれとして肝に銘じています。それにしても、「気高く、強く、一筋に」とは、なんと美しい言葉でしょうか!

 

2019年9月22日 一条真也