オウム全員死刑執行

一条真也です。
東京に来ています。これから北九州に帰ります。
今朝開いた新聞でオウムの6人の確定囚の死刑が執行されたと知り、驚きました。昨日はずっと会議続きで、夜はブログ「渋谷の夜」で紹介した会食があり、このニュースを、わたしはまったく知りませんでした。


産経新聞」2018年7月27日朝刊



産経新聞」の2018年7月27日朝刊の1面TOPには「オウム13人全員の死刑執行」の大見出し、「残る6確定囚 執行」「教団事件の法手続きすべて終結」の見出しで、以下のリード文が書かれています。
法務省は26日、松本・地下鉄両サリン事件など一連のオウム真理教事件で死刑が確定した教団元幹部ら6人の刑を執行したと発表した。上川陽子法相が命令した。元教祖の麻原彰晃元死刑囚=本名・松本智津夫、執行時(63)=ら7人は6日に執行されており、これで一連の事件で死刑が確定した13人全員が執行された。有罪が確定した教団の関係者190人全員の刑が執行されたことにもなり、日本社会を震撼させた未曾有の事件の法手続きは全て終結した」


地下鉄サリン事件をはじめとする一連のオウム真理教事件は、わたしの考え方にも多大な影響を与えました。今から8年前の2010年の3月20日、地下鉄サリン事件15周年の日、わたしはオウム関連の記事を1日に6本も書きました。以下の通りです。
『オウム〜なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』
『アンダーグラウンド』
『約束された場所で』
『1Q84』BOOK1&2
『二十歳からの20年間』
「地獄」(石井輝男監督)


オウム-なぜ宗教はテロリズムを生んだのか-

オウム-なぜ宗教はテロリズムを生んだのか-

その中の島田氏の大著『オウム〜なぜ宗教はテロリズムを生んだのか』の書評記事で、わたしは次のように自分なりにオウム事件を総括しました。
「日本の犯罪史上に残るカルト宗教が生まれた背景のひとつには、既存の宗教のだらしなさがあります。あのとき、オウムは確かに一部の人々の宗教的ニーズをつかんだのだと思いますが、そのオウムは自らを仏教と称していました。そもそもオウムは仏教ではなかったという見方ができました。オウムは地獄が実在するとして、地獄に堕ちると信者を脅して金をまきあげ、拉致したり、殺したり、犯罪を命令したりしたわけです。本来の仏教において、地獄は存在しません。魂すら存在しません。存在しない魂が存在しない地獄に堕ちると言った時点で、日本の仏教者が『オウムは仏教ではない』と断言するべきでした。ましてやオウムは、ユダヤキリスト教的な『ハルマゲドン』まで持ち出していたのです。わたしは、日本人の宗教的寛容性を全面的に肯定します。しかし、その最大の弱点であり欠点が出たものこそオウム真理教事件でした。仏教に関する著書の多い五木寛之氏は、悪人正機説を唱えた親鸞に『御聖人、麻原彰晃もまた救われるのでしょうか』と問いかけました。核心を衝く問いです。五木氏は最近、小説『親鸞』(講談社)上下巻を発表してベストセラーになっていますが、くだんの問いは、親鸞が開いた浄土真宗はもちろん、すべての仏教、いや、すべての宗教に関わる人々が真剣に考えるべき問いだと思います」
それから8年が経過した今でも、わたしのオウム事件に対する考えは基本的に同じです。


それにしても、元教祖である麻原彰晃元死刑囚ら7人の死刑執行から20日後に6人の死刑が執行されたのは、どうしてか。「なぜ、この時期なのか?」という疑問を多くの人が抱いていると思います。もちろん、「平成のうちに」というのが最大の理由でしょうが、あと、わたしは「7月中に終わらせたかったのではないか」という気もします。この7月には、西日本豪雨という大災害で多くの犠牲者を出しましたが、その悲劇の記憶とともに今月中にすべてを終わらせたかったのではないかという気がするのです。


産経新聞」2018年7月27日朝刊



というのも、あと数日で8月です。8月は日本人全体が死者を思い出す季節です。 6日の「広島原爆の日」、9日の「長崎原爆の日」、12日の御巣鷹山日航機墜落事故の日、そして15日の「終戦の日」というふうに、3日置きに日本人にとって忘れられない日が訪れるからです。 そして、それはまさに日本人にとって最も大規模な先祖供養の季節である「お盆」の時期とも重なります。まさに8月は「死者を想う季節」と言えるでしょう。
この日本人の「こころ」と「たましい」にとって最も大切な時期を迎える前に、日本史上に残る凶悪犯罪であるオウム事件終結させたかったのではないか。わたしには、そのように思えてなりません。


なお、各紙の報道によれば、麻原元死刑囚の遺体は今月9日に東京都内で火葬されたそうです。麻原元死刑囚の四女は遺骨を引き取る意思を示し、四女の代理人弁護士は「太平洋での散骨」を望む意向を表明しました。一方、麻原元死刑囚の妻や三女らは「(元死刑囚の生前の)精神状態からすれば、特定の人を自分の遺体の引き取り人として指定することはあり得ない」として、妻への引き渡しを求めています。日本人の精神史に大きな爪痕を残した麻原彰晃の「葬」はどのように行われるのか。
0葬ではないようですが、海洋散骨になるのか、それとも?
わたしは最後まで、この問題に注目したいと思います。



2018年7月27日 一条真也