一条真也です。
宮崎に来ています。ブログ「都萬神社」で紹介した日本最初の結婚式が行われた場所を訪れた後、わたしは延岡に向かいました。その途中で木城町にある「日向新しき村」に寄りました。
峠の展望台から見た「日向新しき村」
峠の展望台にて
武者小路実篤の文学碑を背に
武者小路実篤の文学碑
「新しき村」とは「食うための労働を全員で分担することで労働時間を1日6時間以内とし、残りの18時間は各自が自己実現のために時間を使う」ことをモットーにしたユートピア的共同体です。白樺派の作家・武者小路実篤とその同志により、理想郷を目指して1918年(大正7年)宮崎県児湯郡木城町に開村されました。1938年(昭和13年)にダムの建設により農地が水没することになったため、1939年(昭和14年)に一部が埼玉県毛呂山への移転を余儀なくされましたが、残りは「日向新しき村」として存続し、2017年に創立100周年を迎えました。
Wikipedia「新しき村」の「歴史」には、以下のように書かれています。
「武者小路実篤とその同志により、理想郷を目指して1918年(大正7年)宮崎県児湯郡木城町に開村された。1938年(昭和13年)にダムの建設により農地が水没することになったため、1939年(昭和14年)に一部が現在の位置(「東の村」)に移転し、残りは日向新しき村(ひゅうがあたらしきむら)として存続した」
「日向新しき村」のようす
「日向新しき村」にて
「日向新しき村」の豚
人なつこい犬がいました
武者小路実篤記念館の前で
武者小路実篤記念館の石碑と
一般財団法人 新しき村ホームページの「村の概要」には、「新しき村は、武者小路実篤が提唱した、新しき村の精神に則った生活をすることを目指して、その活動を続けている」と書かれています。そして、その精神とは、
●全世界の人間が天命を全うし、各個人の中にある自我を生長させることを理想とする。
●自己を生かすため、他人の自我を害してはならない。
●全世界の人々が我らと同じ精神、同一の生活方法をとることによってその義務を果たし、自由を楽しみ、正しく生き、天命を全うすることができる道を歩くように心がける。
●かくのごとき生活を目指すもの、かくのごとき生活の可能性を信じ、また望むもの、それは我らの兄弟姉妹である。
武者小路実篤記念館の内部
武者小路実篤記念館の中で
武者小路実篤記念館の中で
ユーゴーの首(ロダン作)
共に咲く喜び
君も僕も美しい
ユートピア紀行―有島武郎・宮沢賢治・武者小路実篤 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
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わたしは、2001年にサンレーの社長に就任してすぐの時期に「日向新しき村」を訪れました。ちょうどその頃、『ユートピア紀行』伊藤信吉著(講談社文芸文庫)という本を読んだのですが、「日向新しき村」について書かれていたので興味を持ったのです。もともと、わたしは、『リゾートの思想』(河出書房新社)や『リゾートの博物誌』(日本コンサルタントグループ)などの内容からもわかるように「理想郷」というものに強い関心を抱いていたのです。その後、『愛情生活 虚構の告白 白樺記』荒俣宏著(集英社文庫)という小説を読んで、「新しき村」の内情などを知りました。荒俣氏によれば、武者小路実篤は「最も多くの本を書いた日本人」だとか。白樺派といえば筋金入りの理想主義者の集団といった印象がありますが、並外れた行動力も併せ持った武者小路は「白樺派の闘将」と呼ばれました。
その後、わたしは「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生と「ムーンサルトレター」という満月の文通を交わすことになりましたが、その記念すべき第1信(プロローグ)で「一条さんは、現代の『白樺派』やね」と言われたことを思い出します。
昭和13年の写真パネル
武者小路実篤記念館の色紙
本が売られていました
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そして、2017年に「新しき村」は開村100周年を迎えました。
それを記念して出版された『「新しき村」の百年』前田速夫著(新潮新書)を読んだのですが、世界的にも類例のないユートピア実践の軌跡をたどり、その現代的意義を問い直す内容で、改めて「人類共生」の夢を掲げた「新しき村」に興味を抱いた次第です。同書の中でも述べられているのですが、武者小路実篤の理想の中には「無縁社会」を乗り越えるための大きなヒントが隠されているように思います。また、「相互扶助」の実現を目指して生まれた生協や互助会などがアップデートするためのヒントもあるように思えてなりません。わたしも社長に就任してもうすぐ17年になりますが、17年前に「新しき村」を訪れたときの想いや志が思い起こされました。
2018年5月24日 一条真也拝