葬祭責任者会議

一条真也です。
26日の15時から「朝日新聞」の取材を受けました。ブログ「本と映画とグリーフケア」で紹介した講義の取材記者がサンレー本社を訪れ、追加質問を受けしました。16時半からは、 サンレーグループの葬祭責任者会議が行われたのです。各地から「おくりびと」ならぬ、わが社の「きわめびと」たちが集結しました。

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最初は、もちろん一同礼!

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葬祭責任者会議のようす

 

わたしは、16時半から、いつものように60分ほどの社長訓話をしました。
4月1日より、わたしは上智大学グリーフケア研究所客員教授に就任いたしました。ブログ「グリーフケアと葬儀」で紹介した講義が客員教授としての初講義でしたが、最初にその講義の内容を振り返りました。

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「葬儀」について語りました

 

その講義において、わたしは最初に「葬儀」についての考えを明らかにしました。わたしは、人類の文明も文化も、その発展の根底には「死者への想い」があったと考えています。約7万年前に、ネアンデルタール人が初めて仲間の遺体に花を捧げたとき、サルからヒトへと進化しました。その後、人類は死者への愛や恐れを表現し、喪失感を癒すべく、宗教を生み出し、芸術作品をつくり、科学を発展させ、さまざまな発明を行いました。

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葬儀は最大の自己実現である!

 

つまり「死」ではなく「葬」こそ、われわれの営為のおおもとなのです。葬儀は人類の存在基盤です。葬儀は、故人の魂を送ることはもちろんですが、残された人々の魂にもエネルギーを与えてくれます。もし葬儀を行われなければ、配偶者や子供、家族の死によって遺族の心には大きな穴が開き、おそらくは自死の連鎖が起きたことでしょう。葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなるように思えてなりません。葬儀という「かたち」は人類の滅亡を防ぐ知恵なのではないでしょうか。

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小学生時代の油絵「茶器」を掲げる

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「かたち」と「こころ」を説く

 

わたしは、ブログ「小学生時代の油絵」で紹介した「茶器」と題する絵画を掲げながら、「これが『かたち』です」と言いました。水や茶は形がなく不安定です。それを容れるものが器という「かたち」です。水と茶は「こころ」です。「こころ」も形がなくて不安定です。ですから、「かたち」に容れる必要があるのです。その「かたち」には別名があります。「儀式」です。茶道とはまさに儀式文化であり、「かたち」の文化です。人間の「こころ」はどこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。

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小学生時代の油絵「欲望」を掲げる

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この絵を見て、どう思いますか?

 

また、わたしは「欲望」という黄金を摑もうとする腕が白骨化する油絵を紹介し、みなさんに「この絵を見て、どう思いますか?」と1人づつ質問しました。わたしは、「自分は小学生の頃から拝金主義が嫌いだった」と述べました。カルロス・ゴーン氏の逮捕をめぐる一連の騒動にも言及し、「利によりて行なえば怨み多し」という『論語』の言葉を紹介しました。互助会経営者の中にも拝金主義者がいますが、本当に困ったものですね。

f:id:shins2m:20181126165912j:plain「死」について考えてみよう!

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グリーフケアとしての読書と映画鑑賞について

 

続けて、わたしは「冠婚葬祭互助会ほど日本人に合ったビジネスモデルは存在しません!」と訴え、次のように「アップデートする冠婚葬祭」をおさらいしました。

■冠婚葬祭1.0

(戦前の村落共同体に代表される旧・有縁社会の冠婚葬祭) 

■冠婚葬祭2.0

(戦後の経済成長を背景とした互助会の発展期における冠婚葬祭) 

■冠婚葬祭3.0

無縁社会を乗り越えた新・有縁社会の冠婚葬祭)

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無縁社会」をどう乗り越えるか? 

f:id:shins2m:20181126172213j:plain「互助会4.0」とは何か 

 

さらに、互助会のアップデートについて考えてみた場合、次のようになります。「互助会4.0」までを展望してみました。

■互助会1.0

(結や講といった日本的相互扶助システム)

■互助会2・0

(戦後に横須賀で誕生し、全国で発展した冠婚葬祭互助会)

■互助会3.0

無縁社会を乗り越えて、有縁社会を再生する互助会)

■互助会4.0

(結婚をプロデュースし、孤独死自死をなくす互助会)

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これからのグリーフケアについて

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『没イチ』を紹介しました

 

それから、「グリーフケア」についても話しました。わたしたちの人生とは喪失の連続であり、それによって多くの悲嘆が生まれます。大震災の被災者の方々は、いくつものものを喪失した、いわば多重喪失者です。家を失い、さまざまな財産を失い、仕事を失い、家族や友人を失った。しかし、数ある悲嘆の中でも、愛する人の喪失による悲嘆の大きさは特別です。グリーフケアとは、この大きな悲しみを少しでも小さくするためにあるのです。グリーフケアに関連して、ブログ『没イチ』で紹介した本についても話しました。第一生命経済研究所主席研究員の小谷みどり氏の著書です。夫を突然死で失った著者は、自らの境遇をバツイチならぬ「没イチ」と呼びます。

 

没イチ パートナーを亡くしてからの生き方

没イチ パートナーを亡くしてからの生き方

 

 

死別の喪失感は抱きつつも、せめて亡き人の分も楽しく生きようと提案します。じつは今朝、著者の小谷氏からメールが届いたのですが、そこには「ブログを拝読しました! 詳細に紹介してくださって、ありがとうございます! 本当にうれしいです。また私のことを絶賛してくださって、お恥ずかしい限りです。大して何にも考えていないから、なせる業です」と書かれていました。小谷氏は私財を投じて、「没イチメンズコレクション」と銘打った、没イチ男性のファッションショーを12月9日に開催されるそうです。素晴らしい企画ですね。

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「かたち」に「こころ」を入れろ!

f:id:shins2m:20181126201708j:plain最後は、もちろん一同礼!

 

2010年6月、わが社では念願であったグリーフケア・サポートのための自助グループを立ち上げました。愛する人を亡くされた、ご遺族の方々のための会です。月光を慈悲のシンボルととらえ、「月あかりの会」という名前にしました。同会の活動をはじめ、「隣人祭り」や「ともいき倶楽部」「笑いの会」など、これまでわたしが実践してきた実例を紹介しながら、無縁社会=グリーフ・ソサエティを超える方策について語りました。最後は、わたしがもう一度、「茶器」を絵を掲げて、「『かたち』に『こころ』を入れろ!」と叫びました。

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懇親会での会長挨拶のようす

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わたしも挨拶しました

f:id:shins2m:20181126180843j:plain東常務の音頭でカンパイ!

f:id:shins2m:20181126191224j:plain〆の鯛茶漬けが好評でした

f:id:shins2m:20181126193333j:plain最後は 「末広がりの五本締め」で♪

f:id:shins2m:20181126193511j:plain松柏園ホテルのクリスマス飾り

 

なお、社長訓話後は、サンレー本社から松柏園ホテルに移動して、懇親会が開催されました。冒頭、佐久間会長とわたしが挨拶し、東常務の音頭による乾杯で宴が開始。和気あいあいとしたムードの中で、みなさんが懇親を深めました。最後は、大分事業部の祐徳事業部長によるサンレー名物「末広がりの五本締め」で幕を閉じました。本当は久々に会ったみなさんと一緒に二次会に参加したかったのですが、風邪を引いたのか喉が痛いので、この日はおとなしく帰宅しました。翌27日からは、東京に出張します。

 

2018年11月27日 一条真也