古事記・論語・般若心経     

一条真也です。
5日、「サンデー毎日」2017年9月17日号が発売されます。表紙の人物は、「ミュージカルのプリンス」と呼ばれる井上芳雄さん。わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。第95回目のタイトルは、「古事記論語・般若心経」です。


サンデー毎日」2017年9月17日号



はじめての「論語」』(三冬社)と『般若心経 自由訳』(現代書林)を続けて上梓しました。『論語』も『般若心経』も、多くの日本人から「こころの書」として親しまれています。もう1つ、日本人には大切な「こころの書」があります。『古事記』です。このコラムでも紹介しましたが、今年1月、わたしが経営する会社では「古事記」の舞台を上演しましたが、その原作は宗教哲学者の鎌田東二氏による『超訳 古事記』(ミシマ社)でした。


超訳 古事記 はじめての「論語」 しあわせに生きる知恵 般若心経 自由訳

ブッダが開いた仏教、孔子が開いた儒教は、日本人の「こころ」に大きな影響を与えました。加えて、日本古来の信仰にもとづく神道の存在があります。わたしは多くの著書で、「日本人の精神文化は神道儒教・仏教の三本柱から成り立っている」と繰り返し述べました。神儒仏が混ざり合っているところが日本人の「こころ」の最大の特徴であると言えるでしょう。



それをプロデュースした人物こそ、かの聖徳太子でした。宗教編集者としての太子は、自然と人間の循環調停を神道に担わせ、儒教によって社会制度の調停をはかり、仏教によって人心の内的不安を解消しました。すなわち心の部分を仏教で、社会の部分を儒教で、自然の部分を神道が、それぞれ平和分担する「和」の宗教国家構想を聖徳太子は説いたのです。



その三宗教の聖典こそ、『古事記』『論語』『般若心経』なのです。最近、わたしには、それらが日本人の「過去」「現在」「未来」についての書でもあるように思えてなりません。すなわち、
古事記』とは、わたしたちが、どこから来たのかを明らかにする書。『論語』とは、わたしたちが、どのように生きるべきかを説く書。『般若心経』とは、わたしたちが、死んだらどこへ行くかを示す書。


この考えを知った鎌田東二氏は、「古事記』とは、日本人の来し方行く末を明示する書。『論語』とは、人間修養を通して世界平和実現を指南する書。『般若心経』とは、迷妄執着を離れて実相世界を往来する空身心顕現の書」と述べました。うーん、なるほど。


サンデー毎日」2017年9月17日号の表紙



2017年9月5日 一条真也