「中外日報」に『儀式論』の書評が掲載されました

一条真也です。
中外日報」といえば、京都に本社を置く日本最大の宗教新聞です。
特に、仏教界の方々はほとんど購読されているのではないでしょうか。
同紙に『儀式論』(弘文堂)の書評記事が掲載されました。


中外日報」2016年12月9日号



「人が人であるための『葬儀』」の見出しで、こう書かれています。
「『直葬』や『0葬』といった葬儀の簡略化に警鐘を鳴らし、これまで多くの書籍を著してきた筆者が、『儀式は本当に必要なのか』という問いに立って儀式の本質を追求した一冊。14章構成で、神話や宗教、芸能、時間などと儀式の関係について実例を挙げながら、社会学、宗教学、民俗学文化人類学、心理学などの多様な観点から論じている。ネアンデルタール人が行った埋葬儀礼から現代に至るまでの歴史をたどり、儀式とは人類の行為の中で最古のものであり、人間の本能に組み込まれたものであると主張する。儀式の意義を考察し、人間が人間であるために存在してきたことを明らかにしている。特に、葬儀に注目し、人間とは『ホモ・フューネラル』(弔う人間)であるとした上で、『葬儀という営みをやめれば、人が人でなくなる』と述べている。筆者は、日本における儀式を軽視する傾向を憂慮する一方で、現代の仏式葬儀が一種の制度疲労を起こしていると指摘。本書を『新たな出発の書』と位置付け、日本人の葬儀のアップデートの必要性を訴える」


儀式論

儀式論

儀式論』といえば、わが義兄弟である「バク転神道ソングライター」こと宗教哲学者の鎌田東二先生が「ShinとTonyのムーンサルトレター」第138信において以下のようなコメントを下さいました。
「Shinさんは600頁に及ぶ畢竟の大著『儀式論』(弘文堂)を出版されました。本当におめでとうございます。心より貴著の出版をお慶び申し上げます。凄いですね、実に。すばらしい! Shinさんのこれまでの持論の集大成であり、かつ、現代社会・現代世界への『天下布礼』の布石ですね。着々と布石を打っていきますねえ。やりますねえ。次々と。着々と。儀礼に関する重要先行研究に対する目配り。それらへの敬意と吟味。丁寧に先行研究者の業績を紹介しつつ、さらにそこから先に突撃する現代儀礼論の最前線。<不滅の真田丸>ならぬ<不滅の一条丸>、金字塔です。徳川家康に向かって戦いを仕掛ける真田幸村にも似て、戦略戦術においても勇猛果敢さにおいても遜色ない闘いぶりです。もっとも、内容は『戦い』ではなく、『礼』を以て『霊』に対す真摯なものですが。ともあれ、『唯葬論』に続くライフワーク。お見事、Shin!」



「Shin」とはわたしのレター・ネームです。鎌田先生は「Tony」です。わが国を代表する宗教哲学者の鎌田先生から過分なお言葉を頂戴し、恐縮するばかりですが、『儀式論』が『唯葬論』(三五館)に続くわがライフワークというのはその通りだと思っています。じつは、『唯葬論』の紹介記事も「中外日報」2015年10月9日号に掲載されています。


中外日報」2015年10月9日号



「葬儀軽視は精神文化の否定」の見出しで、次のように書かれています。
「『重要なのは人が死ぬことではなく、死者をどのように弔うかである』――問われるべきは『死』ではなく『葬』である、というのがタイトルに込めた著者の思いである。葬儀の歴史や人類史における葬送儀礼の変遷について論じたものはこれまでもある。しかし葬儀が人類にとって未来永劫に必要不可欠の営みであることを、ここまで強く訴えた人はいない。葬式不要論の流行に対し、著者は立て続けに葬儀の必要を訴える本を世に問い、葬儀を軽んじることは精神文化の否定につながると警鐘を鳴らしている。
本書は、もとより『葬儀の意味論』の範疇にとどまるものではない。人類は永遠に繰り返す生と死の営みの中で、豊かな精神文化を築いてきたことを18章にわたり、さまざまな角度から論じていく。筆者は自らの知識を総動員し、人類が生と死にどう向き合ってきたかを考え、『生者は死者に支えられて生きている』こと、葬儀は残された人を死の悲しみから生に引き戻す力となるグリーフケアの文化装置であることを繰り返し説いている」


唯葬論

唯葬論

達意の文章で『唯葬論』の要諦を書いてくれていますが、特に「葬儀の歴史や人類史における葬送儀礼の変遷について論じたものはこれまでもある。しかし葬儀が人類にとって未来永劫に必要不可欠の営みであることを、ここまで強く訴えた人はいない」という一文に胸が熱くなりました。
「葬」の重要性を訴えるのは自分の使命であると思っています。
中外日報」を購読されておられる仏教関係者の方々にぜひ『唯葬論』および『儀式論』をお読みいただきたいと強く願います。それにしても、2年続けて、ライフワークを残すことができたわたしは本当に幸せ者です!



*よろしければ、本名ブログ「佐久間庸和の天下布礼日記」もどうぞ。



2016年12月12日 一条真也